e-bike試乗レビュー
役目を終えたお台場巨大施設へ。ルイガノのミニベロe-bikeで撮影サイクリング
2022年5月19日 08:05
つい最近のニュースでも報じられたように、お台場エリアを象徴するMEGA WEB、Zepp東京、ヴィーナスフォート(まとめてパレットタウン)といった施設が閉鎖となった(観覧車は8月まで営業とのこと)。閉鎖間もないので主要な建物はまだあるが、役目を終えた巨大な施設が放つ雰囲気は大勢の人が訪れていたときとはまったく違うもの。いま、お台場は一種の空白時期に入っているという雰囲気でもある。
閉館された施設は順次解体される。つまり、これら施設が建つお台場の風景はいましか見ることができない。空白時期ならではの寂しげな雰囲気もいまだけだ。この風景をいまのうちに見て、写真に残しておこうと思った。同時にいずれ変わっていく周辺の風景と新しくなった風景も見ておきたくなった。今回はお台場をe-bikeで巡りつつ風景を撮って回ることにしたのだが、そういった使い方に適しているのは機動性がよく乗り降りしやすいミニベロタイプだろう。そこで借りたのが、サイクルベースあさひが販売するルイガノ「EASEL INTER5E DI2」だ。
EASEL INTER5E DI2はドライブユニットにシマノSTEPS「E5080シリーズ」を搭載するミニベロe-bike。アルミフレームに20インチのタイヤ、そして内装5段の変速ギアを組み合わせる走行性の良さを求めた作りとなっている。
シマノSTEPS「E5080シリーズ」はエントリーグレードで最大トルクは40Nm。ハイエンドと比べると控えめだが、シマノがセッティングするトルク特性プログラムによってミニベロのギヤ比タイヤ径に適したアシスト量を出してくるので、力不足を感じることはないだろう。
そして、EASEL INTER5E DI2の変速機構に大きな特徴として電動変速システムである「DI2」が採用されている。
DI2システムはシマノが開発した自転車用の電動変速装置。通常は手動で切り替えていたギアを、道路状況や速度に合わせて自動でやってくれる。例えば信号待ちで停まれば自動で1速に入り、青になって漕ぎ出すと速度に合わせてギアが上がっていく。また、坂に差し掛かった際はペダルの踏み込みに合わせてギアを落としてくれる便利なものである。また、ハンドルを握る手元に付くプッシュスイッチを操作すれば、マニュアルのギアチェンジもできるので、例えば瞬発的な加速が欲しいときがあったら、スイッチ操作でギヤを変えて対応することも可能だ。
初体験のDI2とE5080シリーズの組み合わせ。これは楽に走れる
東京臨海地区には多くの公園があり、どこも施設の設備が整っているし、職員の方による手入れが行き届いているので清潔で安全だ。
そして、このエリアにある公園のなかでも注目したいのが若洲海浜公園。1周約6kmのサイクリングコースがあるので、ファミリー層からスポーツバイク乗りまで人気のスポットになっている。そこで若洲海浜公園のサイクリングコースも走りつつ、お台場周辺の散策をしてみることにした。
スタート前にサドル高などを調整。ふだん乗っているROADREX 6180では漕ぐことを優先したサドル高にしているので、座った状態では足が地面に届かない。しかし、ミニベロは機動性がいいだけでなく、途中でストップ&ゴーしやすいのも特徴なので、足付きの良さも必要なポイント。そしてペダリングしやすい高さを考慮しつつ、サドルに座った状態で足先が地面に付く高さに調整した。多少前傾姿勢になるがきついことはないし、むしろペダルを踏む足に力を入れやすい感じになった。また、ハンドルより少し高い位置にサドルをセットすると、車体のルックスもバランスが取れた感じでいいと思う。
DI2は電動変速システムなので、シマノSTEPSと組み合わせることで自動変速が実現する。サイクルコンピューターのモードをAUTOにしておけば走行状態に適したギアを自動でシフトしてくれる。先述したように、信号待ちで停車しするとギアが自動的に1速に落とされるので発進が楽だ。
ただし、信号待ちからの漕ぎ出しを何度か体験すると、1速ではペダルを踏む力が軽すぎてスムーズな発進からの速度に乗せるような発進がしにくいという印象を受けた。個人差もあると思うが、停車時はDI2のマニュアルシフト用スイッチを操作して、ギアを2段ほど上げてみると、筆者にはとても発進しやすい乗り味となった。
また、ギアが上がれば本来はペダルの踏みごたえは変わるものだけど、シマノSTEPS「E5080シリーズ」のアシストが入っているので踏力にあまり変化はない。そのため「やたらスイスイ走る自転車」という印象なのだ。
もちろん、上り坂でもDI2は機能する。坂に入ってから切り替わる印象だが、ボタン操作からシフトチェンジまでの所要時間になんら不満はない。「ここ」というところでちゃんと変速が間に合うのだ。
撮影もサイクリングも楽しめて、ミニベロe-bikeが欲しくなった
若洲海浜公園からお台場へはいくつかのルートがあるが、行きに選んだのは海側を走るルート。京葉線より南側の道路を通るのだが、ここは工業地帯でもあるので路上駐車が多く車道を走るには気を使う。ただ、乗車状態で身体の自由が効きやすいサイズなので、上半身をひねっての後方確認もしやすい。
ミニベロで車体も軽いといっても、タイヤサイズが20インチあれば安定感もあるので路面の荒れにも強く、クルマを避けるため歩道に避難する際の段差越えにも不安はなかった。それにストップ&ゴーが多くても自動変速とアシスト力があるのでスイスイ行けるという感じ。こうした性能は走りやすさだけでなく「一時停止だけど、いったん停まると再スタートから速度に乗せるのが面倒」という気持ちになりにくい。一時停止標識で停まるのはもちろん、危なそうところで停まるor徐行するのも苦ではない。運転が楽であることは安全な走行にも繋がるのだとあらためて実感した。
有明エリアに到達。先に東京ビッグサイトの東館が見えてくる。ここまで来ればパレットタウンはすぐだが、その前に東京ビッグサイト横にある防災公園に入る。ここから先は建物を間近で撮るので広角ズームレンズを付けておくといいだろう。公園のベンチ前に停まって小休止とレンズ交換を行なった。
有明・お台場エリアに入ると、歩道に自転車走行帯が出てくるのでグンと走りやすくなる。東京ビッグサイトを左手に見ながら「新交通ゆりかもめ」路線に沿って走行すると今回の目的地・パレットタウンが見えてくる。とはいえ、外観上は「まだ変化はないな」と思いきや、ひと足先に閉館したZepp東京(パレットタウンとMEGA WEBの間にあった施設)はすでに更地になっているようだ。
先の交差点まで走り、建物側へ渡ってみる。ヴィーナスフォートへの入口には「閉館しました」の張り紙があり、駐車場の入口も営業終了の看板がある。当然のことだが、目の当たりにすると寂しいものだ。青海駅からヴィーナスフォート、MEGA WEBへ入るエントランスがあるが、ここは工事関係の入口に使っているようで簡単な柵が置いてあった。これまでMEGA WEBはクルマ系の取材で何度も来ていたし、このエントランスも利用していたので薄暗さと静かさはグッとくるモノがある。
りんかい線の東京テレポート駅側へ移動。パレットタウンの正面となるので商業施設のエントランスらしい光景になっている。施設前を通る「シンボルプロムナード公園」の歩道には桜やチューリップが美しく開花していた。閉館してもまだ見に来る人たちの姿が見えるのは嬉しい気持ちになる。
車体と建物の撮影をしていると「ご一緒に入りますか、撮りますよ」と声をかけてくれる親切な方がいた。これまでの思い出のある施設の撮影に来たそう。同士だ。なんとなく嬉しい気持ちになる。
ということで、近いうちに取り壊されてしまうパレットタウンを巡ってみた。臨海地区は風景が激しく変わる印象なので、こうして撮影しておきと後々に見返したとき「あ~そうだった」と懐かしさを楽しめると思う。それにお台場周辺でなくてもどこの地区でも風景やそこにあった建物、お店などはどんどん変わる。EASEL INTER5E DI2のようなミニベロe-bikeがあれば広いエリアを巡るのも苦ではない。e-bikeに興味がある人はぜひ手に入れて、思い入れのある地区の「いまの風景」を巡るサイクリングを楽しんではどうだろう。
筆者はROADREX 6180というグラベルロードe-bikeに乗っているが、EASEL INTER5E DI2の使い勝手を体感すると「増車したい」と考えてしまった。
ここから先はお台場周辺のほかの施設から若洲海浜公園までの帰り道の光景を画像で紹介していくので、最後までご覧いただければと思う。