e-bike試乗レビュー

役目を終えたお台場巨大施設へ。ルイガノのミニベロe-bikeで撮影サイクリング

なくなってしまうパレットタウンの姿を写真に収めるため、ミニベロe-bikeでお台場周辺を撮影サイクリング

つい最近のニュースでも報じられたように、お台場エリアを象徴するMEGA WEB、Zepp東京、ヴィーナスフォート(まとめてパレットタウン)といった施設が閉鎖となった(観覧車は8月まで営業とのこと)。閉鎖間もないので主要な建物はまだあるが、役目を終えた巨大な施設が放つ雰囲気は大勢の人が訪れていたときとはまったく違うもの。いま、お台場は一種の空白時期に入っているという雰囲気でもある。

昨年末に閉館されたトヨタ自動車の「MEGA WEB」。筆者はクルマ系がメインなので発表会等で訪れた施設。大観覧車はまだ営業中
ヴィーナスフォートは3月27日に閉館となった。荷捌き所にはまだトラックが来ていたので撤収中のようだった

閉館された施設は順次解体される。つまり、これら施設が建つお台場の風景はいましか見ることができない。空白時期ならではの寂しげな雰囲気もいまだけだ。この風景をいまのうちに見て、写真に残しておこうと思った。同時にいずれ変わっていく周辺の風景と新しくなった風景も見ておきたくなった。今回はお台場をe-bikeで巡りつつ風景を撮って回ることにしたのだが、そういった使い方に適しているのは機動性がよく乗り降りしやすいミニベロタイプだろう。そこで借りたのが、サイクルベースあさひが販売するルイガノ「EASEL INTER5E DI2」だ。

今回借りたのはルイガノのミニベロe-bike「EASEL INTER5E DI2」。価格は272,800円。サイクルベースあさひやモトベロなどで扱っている
ドライブユニットにはシマノSTEPS「E5080シリーズ」を搭載。バッテリーも大容量でおよそ100kmの走行が可能。ギアは内装5段変速、20インチタイヤ装着、車体重量は18.5kg

EASEL INTER5E DI2はドライブユニットにシマノSTEPS「E5080シリーズ」を搭載するミニベロe-bike。アルミフレームに20インチのタイヤ、そして内装5段の変速ギアを組み合わせる走行性の良さを求めた作りとなっている。

シマノSTEPS「E5080シリーズ」はエントリーグレードで最大トルクは40Nm。ハイエンドと比べると控えめだが、シマノがセッティングするトルク特性プログラムによってミニベロのギヤ比タイヤ径に適したアシスト量を出してくるので、力不足を感じることはないだろう。

シマノSTEPS「E5080シリーズ」の最大トルクは40Nm。バッテリーは大容量でフル充電であれば約100kmのアシスト走行が可能(ECOモード)。充電時間は6.5時間。メインスイッチはバッテリー左側にある。アシストモードは「ECO」「NORMAL」「HIGH」の3段階でサイクルコンピューターのシマノ製「SC-E5003」で操作する
前後ブレーキは制動力の高い油圧式ディスクブレーキ。ペダルは幅広タイプで、滑り止めもある。フロントにはカゴの装着が可能。キックスタンドは標準装備

そして、EASEL INTER5E DI2の変速機構に大きな特徴として電動変速システムである「DI2」が採用されている。

DI2システムはシマノが開発した自転車用の電動変速装置。通常は手動で切り替えていたギアを、道路状況や速度に合わせて自動でやってくれる。例えば信号待ちで停まれば自動で1速に入り、青になって漕ぎ出すと速度に合わせてギアが上がっていく。また、坂に差し掛かった際はペダルの踏み込みに合わせてギアを落としてくれる便利なものである。また、ハンドルを握る手元に付くプッシュスイッチを操作すれば、マニュアルのギアチェンジもできるので、例えば瞬発的な加速が欲しいときがあったら、スイッチ操作でギヤを変えて対応することも可能だ。

シマノのDI2システムを搭載。内装5段変速を電動で制御する。変速時のショックはなく、変速機構に負担のないシフトを行なえる
マニュアルシフトは右手側に付くスイッチで行なう。上を押すとシフトアップ、下を押すとダウン

初体験のDI2とE5080シリーズの組み合わせ。これは楽に走れる

東京臨海地区には多くの公園があり、どこも施設の設備が整っているし、職員の方による手入れが行き届いているので清潔で安全だ。

そして、このエリアにある公園のなかでも注目したいのが若洲海浜公園。1周約6kmのサイクリングコースがあるので、ファミリー層からスポーツバイク乗りまで人気のスポットになっている。そこで若洲海浜公園のサイクリングコースも走りつつ、お台場周辺の散策をしてみることにした。

いつものようにホンダ「N-VAN」にe-bikeを積んで出かけた。コンパクトなEASEL INTER5E DI2は積むのも楽。同様にクルマにロードバイクを積んできている人も数名見かけた
サイクリングコースはこんな感じ。周回コースだが相互通行。歩行者もいるし、子供も走っているのでスピードを出すような走行は行なわないこと。自分と他人の両方に対して安全第一で走りたい
海沿いの景色を楽しみながらのんびり走ることをオススメしたい。途中にトイレや飲み物の自動販売機、ベンチなどもあるのでファミリーでのサイクリングにも適している

スタート前にサドル高などを調整。ふだん乗っているROADREX 6180では漕ぐことを優先したサドル高にしているので、座った状態では足が地面に届かない。しかし、ミニベロは機動性がいいだけでなく、途中でストップ&ゴーしやすいのも特徴なので、足付きの良さも必要なポイント。そしてペダリングしやすい高さを考慮しつつ、サドルに座った状態で足先が地面に付く高さに調整した。多少前傾姿勢になるがきついことはないし、むしろペダルを踏む足に力を入れやすい感じになった。また、ハンドルより少し高い位置にサドルをセットすると、車体のルックスもバランスが取れた感じでいいと思う。

フレームデザインが特徴的。サドル高は足付き重視。でもここまで上がるので見た目のバランスがいいように感じた

DI2は電動変速システムなので、シマノSTEPSと組み合わせることで自動変速が実現する。サイクルコンピューターのモードをAUTOにしておけば走行状態に適したギアを自動でシフトしてくれる。先述したように、信号待ちで停車しするとギアが自動的に1速に落とされるので発進が楽だ。

ただし、信号待ちからの漕ぎ出しを何度か体験すると、1速ではペダルを踏む力が軽すぎてスムーズな発進からの速度に乗せるような発進がしにくいという印象を受けた。個人差もあると思うが、停車時はDI2のマニュアルシフト用スイッチを操作して、ギアを2段ほど上げてみると、筆者にはとても発進しやすい乗り味となった。

また、ギアが上がれば本来はペダルの踏みごたえは変わるものだけど、シマノSTEPS「E5080シリーズ」のアシストが入っているので踏力にあまり変化はない。そのため「やたらスイスイ走る自転車」という印象なのだ。

もちろん、上り坂でもDI2は機能する。坂に入ってから切り替わる印象だが、ボタン操作からシフトチェンジまでの所要時間になんら不満はない。「ここ」というところでちゃんと変速が間に合うのだ。

自動変速はとても便利。マニュアルでのシフトもできるので状況にあったギア選択も可能。通常ギアのモデルもあるが、オススメしたいのは自動変速のEASEL INTER5E DI2だ。多少価格は上がるが満足度は高い

撮影もサイクリングも楽しめて、ミニベロe-bikeが欲しくなった

若洲海浜公園からお台場へはいくつかのルートがあるが、行きに選んだのは海側を走るルート。京葉線より南側の道路を通るのだが、ここは工業地帯でもあるので路上駐車が多く車道を走るには気を使う。ただ、乗車状態で身体の自由が効きやすいサイズなので、上半身をひねっての後方確認もしやすい。

ミニベロで車体も軽いといっても、タイヤサイズが20インチあれば安定感もあるので路面の荒れにも強く、クルマを避けるため歩道に避難する際の段差越えにも不安はなかった。それにストップ&ゴーが多くても自動変速とアシスト力があるのでスイスイ行けるという感じ。こうした性能は走りやすさだけでなく「一時停止だけど、いったん停まると再スタートから速度に乗せるのが面倒」という気持ちになりにくい。一時停止標識で停まるのはもちろん、危なそうところで停まるor徐行するのも苦ではない。運転が楽であることは安全な走行にも繋がるのだとあらためて実感した。

若洲海浜公園からお台場までのルートは海側を選ぶ。ここでは橋の上から新木場の貯木場が見える

有明エリアに到達。先に東京ビッグサイトの東館が見えてくる。ここまで来ればパレットタウンはすぐだが、その前に東京ビッグサイト横にある防災公園に入る。ここから先は建物を間近で撮るので広角ズームレンズを付けておくといいだろう。公園のベンチ前に停まって小休止とレンズ交換を行なった。

防災公園内は自転車の乗り入れはOKだが、ここでも自転車で飛ばす人がいるようで「高速での走行禁止」の案内があった
ここから先の建物を撮るために広角レンズに交換。ちなみにアシストをHIGHモードにして約12km走ってきたが、バッテリーは全然減らない

有明・お台場エリアに入ると、歩道に自転車走行帯が出てくるのでグンと走りやすくなる。東京ビッグサイトを左手に見ながら「新交通ゆりかもめ」路線に沿って走行すると今回の目的地・パレットタウンが見えてくる。とはいえ、外観上は「まだ変化はないな」と思いきや、ひと足先に閉館したZepp東京(パレットタウンとMEGA WEBの間にあった施設)はすでに更地になっているようだ。

ぽっかり空いた部分にZepp東京。ライブイベントなどを行なっていた施設だった
海側には水上バスの乗り場が。以前から閉鎖されていたが再開して欲しい人も多いだろう
ゆりかもめの青海駅はパレットタウンで働く人やお客さんが利用していた駅。新しい施設ができるとまた賑わうのだろう

先の交差点まで走り、建物側へ渡ってみる。ヴィーナスフォートへの入口には「閉館しました」の張り紙があり、駐車場の入口も営業終了の看板がある。当然のことだが、目の当たりにすると寂しいものだ。青海駅からヴィーナスフォート、MEGA WEBへ入るエントランスがあるが、ここは工事関係の入口に使っているようで簡単な柵が置いてあった。これまでMEGA WEBはクルマ系の取材で何度も来ていたし、このエントランスも利用していたので薄暗さと静かさはグッとくるモノがある。

ヴィーナスフォートの入口前で記念に一枚
駐車場の入口。1台のクルマが入ろうとしたが看板のまえでしばし停車。そして、走り去って行った

りんかい線の東京テレポート駅側へ移動。パレットタウンの正面となるので商業施設のエントランスらしい光景になっている。施設前を通る「シンボルプロムナード公園」の歩道には桜やチューリップが美しく開花していた。閉館してもまだ見に来る人たちの姿が見えるのは嬉しい気持ちになる。

車体と建物の撮影をしていると「ご一緒に入りますか、撮りますよ」と声をかけてくれる親切な方がいた。これまでの思い出のある施設の撮影に来たそう。同士だ。なんとなく嬉しい気持ちになる。

東京テレポート駅側から施設を撮影。画面右がヴィーナスフォート、隣がMEGA WEB、Zepp東京、大観覧車、MEGA WEBライドスタジオという並び
平日だったこともあり貸し切り状態
シンボルプロムナード公園は桜とチューリップが咲いていてキレイな景色となっていた
大観覧車の入口。8月まで営業しているのでお台場周辺に行かれるときは記念に乗ってみては
東京オリンピックで立てられていた東京ビッグサイトの青海棟はすでに更地に
夢の大橋から見える「青海橋」。1994年に廃止されてそのまま残されていたが、遂に撤去が決定。変わって行くお台場で見ておきたい風景のひとつだ
夢の大橋の歩道に埋めこまれていたレリーフ。ここにある公園のすべて巡ってみるのも楽しそう。e-bikeならそのパートナーにぴったりだ

ということで、近いうちに取り壊されてしまうパレットタウンを巡ってみた。臨海地区は風景が激しく変わる印象なので、こうして撮影しておきと後々に見返したとき「あ~そうだった」と懐かしさを楽しめると思う。それにお台場周辺でなくてもどこの地区でも風景やそこにあった建物、お店などはどんどん変わる。EASEL INTER5E DI2のようなミニベロe-bikeがあれば広いエリアを巡るのも苦ではない。e-bikeに興味がある人はぜひ手に入れて、思い入れのある地区の「いまの風景」を巡るサイクリングを楽しんではどうだろう。

筆者はROADREX 6180というグラベルロードe-bikeに乗っているが、EASEL INTER5E DI2の使い勝手を体感すると「増車したい」と考えてしまった。

ここから先はお台場周辺のほかの施設から若洲海浜公園までの帰り道の光景を画像で紹介していくので、最後までご覧いただければと思う。

ここまで来たらお約束のユニコーンガンダム。以前通りかかったとき、すれ違ったガンダムファンらしい方が「1号機」とマニアックに呼んでいた
ちょっと戻って東京ビッグサイト横の有明西ふ頭公園。ここもとあるアニメの聖地となっている
このエリアで古くからあるシンボル的な施設といえば船の科学館。いまは船の形をした本館は閉館中で横にある別館が公開中
船の科学館の屋外展示となるのが日本初の南極観測船「宗谷」。係留展示となり船内は無料で見学できる
船の科学館横の東八潮緑道公園を進むとみえる東京国際クルーズターミナル。2020年開業。晴海ふ頭にあった晴海客船ターミナルに変わる新しい客船ターミナルだ
距離が伸びてくるとe-bikeといえども足に疲れは出てくる。その状態でこうしたアップダウンがあると「うえ~」となるところだが、アシストモードをHIGHにすれば楽にクリア。欲しいところで楽ができるのがe-bikeだ
東京お台場 大江戸温泉物語があった場所。2021年9月に閉館してすでに更地になっている
青海ふ頭公園から青海コンテナ埠頭をバックに撮る。船が着いているとなおカッコいい風景になる
青海周辺の埠頭には海上保安庁の船があちこちに停泊している
ミニベロといえどもヘルメットは着用して欲しい。というか被っていたほうがカッコいいと思う。愛用しているのは「LAZER CAMELEON(レイザー カメレオン)」。つば付きでカジュアルなイメージなのでミニベロにも似合う
船の科学館の前にある駐車場。オリンピックの前から閉鎖されていたが、イベントへの貸出が再開した。隣接するゆりかもめの駅名は船の科学館駅から東京国際クルーズターミナル駅に変わっている
お台場海浜公園まで移動。海の側で休憩できるので気持ちいい。前に見えるのはレインボーブリッジ
人工の渚がある台場エリア。筆者は90年代から台場周辺で撮影をしているが、当時はこの周辺にはヨットか何かの小さい店があるだけで、お台場周辺には何もなかったと記憶している
豊洲市場方面へ移動して豊洲埠頭へ。公園内での走行はできないようだが、一般道からすぐ海沿いまでいけるのでちょっと押し歩き。対岸に見えるのが閉鎖された晴海客船ターミナルとオリンピックで選手宿舎として使われたHARUMI FLAG(ハルミフラッグ)が見える
後方に見えるのは豊洲市場。この周辺はとくに歩道が広く、自転車レーンも整備されていてとても走りやすい
お台場周辺には水素ステーションがあちこちにある。FC(燃料電池)バスも走っている。これも新しい街らしい風景といえる
この更地は有明にあったMZA(エムザ)有明、ディファ有明があった場所。プロレス好きな人には格闘技場という印象か
若洲海浜公園へ戻る道は京葉線、湾岸線より陸側を移動。途中から辰巳の森公園と夢の島緑道を通る
若洲埠頭に入って新木場緑道公園へ。ここもサイクリングコースがある。東京メトロの車両基地を越える歩道橋には線路のイラストが描かれている
新木場緑道公園のサイクリングコースは東京ヘリポートの横を通る。ヘリポートが見学できるベンチも設置されている
走行終了。バッテリーは2メモリ減っていたが、スタート時は満充電ではなく少し減っていたので1.5メモリくらいの消耗か
今回走ったルート。お台場周辺でウロウロしていたのがわかる
10時半スタートで16時戻りのわりに走っている時間は思っていたより短い。ミニベロe-bikeでのんびり走っていたがそれなりにカロリーも消費する
EASEL INTER5E DI2などのミニベロe-bikeは、サイクリングだけでなくふだんの足としても使いやすく、家族との共用もしやすい。休日の空いた時間をe-bikeで走れば体力作りにもなるので、興味が涌いた人はサイクルベースあさひなどの取り扱い店舗で実車をチェックしてみては?
深田昌之