e-bike試乗レビュー

元自転車選手だってe-bikeは楽しい!! 1泊2日のグラベルロード旅へ

はじめまして! 平塚吉光と申します。「#13cRR」という組織を立ち上げ、“自転車で楽しむ!”という仕事をフリーランスで行なっております。“楽しむ“とは私が引率する「ガイドツアーやレッスンなどに参加されるお客様に楽しんでいただくこと」と「自分自身が楽しむ」こと。

そして、実際にはお会いできないお客様に“何か”を感じてもらい楽しさを伝えていく目的など、幅広い意味があります。今回のe-bikeサイクリング旅を通じて、より楽しく自転車に乗れるヒントを読者のみなさんが掴めると嬉しいなと思います!

私は2019年まで自転車のプロ選手でした。その頃は“ノンアシスト”自転車でトレーニングとレースの日々。国内マーケットにおいてもまだまだe-bikeが盛り上がっているわけではなかったので、実はe-bikeには1回しか跨ったことがありませんでした。

ちなみに……当時の感想は、ラクすぎて「一生乗らない」でした(笑)。特に上り坂がラクすぎて、このままだと自転車に乗るのが嫌になってしまうと瞬時に思ったのが理由です。

ですが、転機を迎えます。現役引退後に就職したホテル「コナステイ伊豆長岡」は、e-bikeのレンタルを中心とし、自転車をメインターゲットにする珍しいホテルでした。e-bikeのレンタルやツアーを行なっていくうちに、e-bike沼にハマっていきました。2020年にe-bike Watchとコラボしたe-bike試乗会もそのひとつ。一緒に走った読者の方もいらっしゃると思いますが、そのあたりの話はまた別の機会にお伝えできればと思います。

2020年に開催されたe-bike Watchとコラボしたコナステイ伊豆長岡のe-bike試乗会はガイドを務めました

今回e-bikeで楽しみたいのは「旅」

自己紹介やe-bikeとの出会いなど前置きが少し長くなりました。ここからが本題です。実は最近、自転車の旅に興味を持っています。ホテル勤務時代に出会ったお客様や別のお仕事でご一緒した編集の方など、多種多様の自転車での楽しみ方に出会えたことがきっかけです。

バイクパッキングや輪行の旅、サイクルトレインなど、形のない自由なサイクリングに憧れを抱きました。固定観念の塊になりかけていた私を解き放つきっかけになりました。

まだまだ経験値は足りませんが、最近では少しずつチャレンジを始めている自転車の旅。そのひとつとして、今回はe-bikeを選択。出身地でもあり、現在も活動を続ける伊豆半島が舞台です。お盆直前の時期にあらためて魅力を体感しようと、1泊2日のe-bike旅を楽しむことに。

そして、南伊豆町にあるサイクリスト大歓迎の宿「JU-ZA(ジューザ)」と地元のスルガ銀行が運営する「スルガ銀行サイクリングプロジェクト」とのコラボ企画「JU-ZA Minamiizu RIDE」を活用し、旅にアクセントを加えることにしました。

参加費無料のフリーライドにエントリー。指定ポイントでハッシュタグ付きのSNS投稿をするだけで、完走賞と提携店で使用可能な割引券をもらえるお得なイベントです。

どうせ旅をするなら……ということで「JU-ZA Minamiizu RIDE」を旅のアクセントとして利用することに! スマホにアプリをダウンロードし、QRを読み込むだけです

南伊豆を目指して出発!

スタート地点はスルガ銀行サイクルステーション「KANO BASE」。伊豆市青羽根にあるサイクリング拠点のひとつになっています。駐車場も完備(要予約)しており、この施設でe-bike部・清水氏と待ち合わせ。準備やセッティングなどを済ませて9:30にスタート。南伊豆を目指します。

伊豆でのサイクリング拠点のひとつ「KANO BASE」
出発前に記念撮影。楽しみにしていたe-bike旅を笑顔でスタート

快晴とはいきませんが、夏らしい暑さの天気でした。私の頭の中はすでに“水遊び”がマストになっており、川に浸かる気満々でした。この時は……(笑)。

さて、今回の旅の相棒はKONA(コナ)のグラベルロードe-bike「LIBRE EL(リブル イーエル)」。650Bの太いタイヤでクッション性抜群で、路面の荒れはまったく気にならない強者e-bikeです。

グラベルロードe-bike「LIBRE EL」

太いタイヤとアルミフレームで多少重量があるものの、e-bikeのアシストがそれをカバーしてくれます。ドライブユニットにはシマノSTEPS「6180シリーズ」というミドルレンジのモデルを搭載しています。

ミドルレンジのドライブユニットですが、パワフルさは十分! 荷物を積んだ状態でもガッツリ助けてくれます!

また、平坦や下りはしっかりと安定してくれるセッティングになっており、自転車の扱いが苦手な方も安心して乗れるのではないでしょうか。フロントがシングルギアな点も含めて、初心者にも扱いやすい自転車だと感じました。

まずは国道414号線で南下し、道の駅「伊豆月ヶ瀬」へ。トイレや自販機はもちろん、道の駅らしく地場産品が多く並ぶ道の駅は伊豆のサイクリングにおける重要な休憩ポイントのひとつ。今回はスタートして間もなかったのですが、この先のトイレ事情を考え、ひとまず立ち寄りました。

そして、国道136号線から西伊豆スカイラインの船原峠へ。夏休み期間中だったこともあり、さらに伊豆の主要道路であるためクルマが非常に多い道です。上り坂だと力量によっては蛇行してしまいがちですが、e-bikeであれば上り坂をまっすぐ走りやすくなるので、そのあたりは安心して走れました!!

清水氏はリュックにカメラの大荷物……ありがとうございます!

川遊びからの……予期せぬ最高の水遊び!? を体験

船原峠を走行中、いつも気になっていた川にドボン! 夏です!! 飛び込まずにはいられません。ぼくのなつやすみ感が出てしまいます(笑)。

いつも気になっていた川。この日は暑かったので……
当然こんな状況になります(笑)

真夏のサイクリングは熱中症やオーバーヒートを防ぐためにも、ところどころアイシングが必要です。e-bikeでアシストされているとはいえ、適度な運動であり、さらには気温も高いので無理は禁物。この旅1回目のドボンは足のみしか浸けられませんが、最高に気持ちよかったです!

アイシングを終えた我々は、さらに峠を上り、西伊豆スカイラインへ。標高1,000m付近にあるため夏でも比較的涼しく、おすすめのポイント。船原峠付近は一番窪んだ位置にあるため景色は劣りますが、一番ラクなアプローチであり、左右どちらかに曲がれば、それぞれいい景色を拝めます。

雲も多いですが青空も見えています

今回は左の仁科峠経由で景色を楽しみながら進みました。西伊豆スカイラインは、複数の山の尾根を繋ぐようにできており、天空の道と称されることもあります。今回は走りませんでしたが、船原峠から右に曲がり戸田峠に向かうルートは一番のおすすめです。駿河湾越しの富士山と南アルプス、丹沢山系などが一望できます。

仁科峠で記念撮影し、少しルートを外れて西天城高原「牧場の家」へ。

仁科峠に到着。e-bikeなのでラクラク
ここの景色もおすすめです

牛さんがいる牧場を抜けた先にある赤い屋根の建物は、大好きな休憩スポットのひとつ。腹ごしらえもできますが、今回はいちごみるくを注文。テラス席で海と山を眺めながら糖分補給していると……急に土砂降りに!

雲行きが怪しくなってきたが……いちごみるくは飲む!

実は出発2日前に当然台風が発生し、その影響で雨予報に。さらに前倒しになった雨雲が一気に押し寄せ、“最高の水遊び”が始まりました(笑)。出発前の天気予報では雨は降らない予定だったのですが……明らかに雲行きが怪しかったですね。

夏で気温が高いので水遊び(雨)でもへっちゃら! ただ、スリップや視界不良のリスクはあるのでご注意ください。

雨宿りしながら伊豆名産のグルメを

雨の中少しルートを逆戻りしながら、県道59号線を西伊豆方面に入ります。少し下った先にある「わさびの駅」がこの日の昼食ポイント。

わさびの駅に到着。昼食より雨宿りがメイン? 手前のe-bikeはシマノが関係者の試乗用に制作した非売品の特別なe-bike(公道走行可能)

伊豆名産のわさびの葉で包んだおにぎりは、お腹いっぱいになりすぎない適度な大きさで道中にピッタリなのです! ただ刺激物なので、空腹すぎる状態では要注意ですよ(笑)。

わさびおにぎり

また、この施設には水汲み場が併設されているのも魅力です。今回は自然に水遊びしながら走ってきたので不要でしたが……本来であれば大量の水と戯れることができます。100円で15リットルの水を得られるため、ボトルなどに入れても有り余ります。複数人で行く時にはおすすめです。ちなみに、この日はもったいないので別のご家族に残りを譲りました。地元の方も頻繁に訪れる水汲み場ですので、周りの方の迷惑にならないように配慮をお願いします。

ボトルに水を補給

昼食中に雨が止むことを期待していましたがむしろ雨は強まり……雨雲レーダーをチェックしながら雨宿り。小雨になったところで再出発! 本来の予定では横を流れる仁科川で水遊びを満喫する予定でしたが……以下省略。

鮎釣りのおじいちゃんと世間話。せっかく鮎を釣りに来たのに雨は嫌だね~サイクリングも気を付けてね
このまま雨が止んでくれることを願って、気を取り直して出発

雨は降ったり止んだりの状態が続きます。足早に南伊豆を目指して南下したい気持ちもあるものの、松崎名物のなまこ壁通りに立ち寄ったり、名産の桑葉茶を入手したり、せっかくのe-bike旅なので楽しみながら進みます。

なまこ壁を見学

南伊豆までのルートは国道136号線の「彫刻ライン」を走ります。普段であれば体力が削られて相当なダメージを受けるきついアップダウンですが、惜しげもなくHIGHモードを使って一気にクリア(笑)。常に強いアシストモードで走り続ける必要はなく、それぞれのレベルに合わせて必要とする場面で適切なアシストを使い分けられるのもe-bikeの良いところですね!

1日目ゴール! 南伊豆「JU-ZA」に到着!

e-bikeとはいえ、雨の影響で予想以上にエネルギーを消費してしまった我々。南伊豆町の宿を目前にしながら、ネパールカレーとネパールを中心としたアジア雑貨を販売しているカフェ「ティハール」にピットイン! 食事、軽食、ドリンク&デザートと幅広い場面で今後も活用したいお店でした。

自転車のスタンドも用意されています

残念ながら新型コロナの影響でテラス席のみ利用可で、メニューも限られていましたが、カレーと唐揚げでしっかり腹ごしらえ。宿のJU-ZAは基本的に朝食のみで、夕食は事前予約制オプション。今回はe-bikeで買い出し前提で特に予約していなかったので、実は早めの夕食といった感じでベストタイミングでした。e-bikeではなく我々のエネルギーをしっかり充電。気づけば雨も止んで、最後は晴れ間に迎えられながら、1日目ゴールの「JU-ZA」へ辿り着きました。

もう雨は止まないのかと諦めかけていたので……嬉しくて笑顔に
夕暮れの雰囲気も味わえました
JU-ZAは子浦漁港にあります
到着!

シャワーを浴びてサッパリしたら、旅のご褒美のお酒! 館内にある自販機や売店ではお酒やおつまみなどが購入できます。お酒を軽く嗜みつつ、いろいろな話題で楽しく盛り上がっているうちに夜が更けていきます。子浦の田舎町は静かな海と星空を味わえることができます。浜に繰り出しても素敵な時間が過ごせます。

スマホで撮影したのでだいぶ明るく撮れていますが、とてもいい場所です
翌日に備えてe-bikeも充電(充電器は持参しました)。おやすみ~

2日目の天気はどうなる? 雨? 予報が外れて晴れる?

たっぷり寝て迎えた2日目。希望としては気持ち良く走りたいところですが、実は天気予報的には自信満々の雨予報でした。この日は伊豆の中でも難所として有名な天城峠を越えるルートを予定しています。

ただ、最悪の場合はサイクルトレインサイクルラックバス(伊豆には自転車乗りには嬉しい乗り物があるのです)でワープすると決め込んで来たので、特には気にしていませんでした。何よりも初日にしっかり降られたので、あまり気にせずスタートしました(笑)。

そして、前日にJU-ZAに到着して「JU-ZA Minamiizu RIDE」提携店で使える200円割引クーポンもゲットしています。美味しいものも満喫したいところ。まずは下田を目指すルートですが、序盤は“晴れ”が勝っています。雨がパラついたこともありますが、このまま「天気予報が外れろ」と思いながら、絶好のサイクリング日和です。下田に向けてはいきなり上り坂が待ち構えますが、朝イチから躊躇なくHIGHモードで一気に上り切りました! しっかり充電しておいて良かった(笑)。

いい感じの青空のもと出発
むしろ晴れそうな雰囲気

クーポンが使えるお店はいくつもありますが、悩みながら選んだのがオシャレなカフェ「531 Coffee&Bake」。到着するなり雨に降られたので店内を利用させてもらいましたが、南国感漂うテラス席はサイクリストにとって最高の環境です。次回はぜひテラス席で!

清水氏はエスプレッソスカッシュ、私はブルーベリースムージーを注文。スムージーは朝にピッタリの健康ドリンクでした! 前日の雨で疲れた目も心なしか回復したような気が!?

美味しいドリンクを味わっているうちに雨も止みました
人気のマフィンはまた今度の楽しみに!

本当は南伊豆をもっとのんびり走りたい……ところでしたが、晴れているとはいえ天気も不安定。美味しそうなグルメがあってもお腹に入らない……ということで、クーポンは次回に持ち越して(期限内であれば使用可能)、できるだけ気持ちの良いサイクリングをしながら戻ることにしました。

青空。e-bikeの向こうには海水浴を楽しむ人たちが
前日の雨が嘘のように青い空
寄り道して楽しみながら戻ります

帰路はグラベル盛りだくさんで!

雨も降っていません。しかも我々はグラベルロードe-bikeで旅をしています。そんな帰路を普通に帰るだけではつまらない! ということで、可能な限り悪路を走行しながら帰ることに。グラベルロードe-bikeを思う存分楽しみました。

まずは名もなき悪路の峠……。南伊豆町を抜けて、下田の街中に向かわずに蓮台寺(れんだいじ)に向かう峠をセレクト。あまり他の方を連れて走りたくない道です。勾配もさることながら、道が荒れすぎているため危険を伴うからです。しかも、このタイミングで雨という条件も追加されましたが、グラベルロードe-bikeが「行きたい!」と言っている気がします。日頃からe-bikeに乗りまくっているとはいえ、清水氏の安全も考慮しながら突っ込みました。

ちなみに、ノンアシストであれば絶対に回避する道です(笑)。街中を抜ける道はクルマが多いこともありますが、実は遠回り。今回はe-bikeなので“急がば近道!”作戦で、アシストビュンビュンでの近道上りを選びました。ただ、濡れた下りはアシストがあろうがなかろうが、転倒のリスクもあって危ないです。安心できる案内人がいない限りは、無茶しないでくださいね!

そんな緊張感と冒険感と楽しさのもと走り抜けました。すると、今度は蓮台寺から北上中に脇に見えてきたいい感じのじゃり道。まさに今回のe-bike旅で出会うべくして出会ったような(笑)。

走らずにはいられません

みなさんも突っ込みますよね! 地図で見ると公道のようでしたが、なかなかいいグラベル区間で楽しく走ることができました。

ほかにも気持ち良さそうな道を見つけては走りたくなりましたが、今回は帰路を優先しました

いよいよ最後の締めとなる旧天城峠へ。自転車好きでなくても天城峠はご存じだと思います。旧道は未舗装区間を多く含む楽しい道となっています。そんな楽しい道ですが、通過時にはいよいよ雨が本降り以上になり、判断を迷いましたが、悪天候も踏まえて楽しむのがサイクリングです。とはいえ、正直走ることに必死でしたので、写真は一気に少なくなります。清水氏の安全・生存確認しながら、楽しくなり先を急ぎました(笑)。

旧天城峠において人生で一番ハードな状況下でした。それでも一番楽しめたのはe-bikeのおかげ。天城峠は厳しい峠なうえ、旧道は荒れた砂利道。しかも雨となると、よほど力が余った状態でなければきっと足をついてしまいます。今回は本当にe-bikeのアシストがあって良かったと心から思いました(笑)。

連れ回してしまってごめんなさい!

天城峠通過後は出発地点のKANO BASEまで下るのみです。言わずもがな、雨の下りは危険です。グラベルロードe-bikeでも、そこのリスクは変わりません。前後ライトはしっかり点灯し、マンホールや地面の亀裂なども確認しつつ足速にゴールを目指しました。

今回は、東海バスのサイクルラックバスなど予備手段を用意したうえでの走行でした。そうした情報を持ったうえでのサイクリングなので、多少踏み込んでも大丈夫という判断もしています。みなさんがチャレンジする際は、天気などにも十分注意してくださいね。雨はもちろんですが、雷なども危険ですし、視界不良によるリスクもあります。そのためにはリスクを知ってからサイクリングを楽しむ必要があります。

今回は土砂降りとなってしまったうえ、ハード系のライドでしたが、e-bikeはラクに走ること・ハードに走ることのどちらも楽しめます。次回はもっとイージーで楽しいライド記事をご紹介します。まだまだe-bikeには「ラクな乗り物」といった偏見があるかもしれませんが、初心者でも元選手でもシリアスレーサーでも楽しめることを伝えていきたいと思います。

楽しかったですが、さすがの雨に疲れました(笑)
平塚吉光

元プロロードレーサー。引退後、サイクルツアーなどを中心にe-bikeにハマり、自分の中での自転車の可能性を広げ続けるサイクリスト。ロードもトラックもMTBも、もちろんe-Bikeも大好きです。Instagram:@yoshimitsu_hiratsuka Twitter:@yokkun1113