e-bike試乗レビュー

軽くて速い! e-bikeのメリットとロードバイクの良さを見事に融合したトレック「Domane+」

トレック「Domane+ AL 5」

今回レビューするのはTREK(トレック)のロードバイクタイプe-bike「Domane+ AL 5(ドマーネプラスエーエルファイブ)」です。ロードバイクタイプのe-bikeは、日本ではトレックブランド初です。

カラーはブラックとレッドの2色。サイズは49/52/54/56/58/61が用意されています。価格は549,890円

2023年新モデルであるDomane+ AL 5の最大の特徴は、約14.06kg(公式値)という軽さ。アルミフレーム採用のe-bikeにおいてはトップクラスの軽量バイクといえます。

このe-bikeで試走した感触をまず書いてしまいますと、「軽いスポーツ自転車が持つ楽しさ」と「e-bikeであるがゆえの快適さ」が高いレベルでバランスしているということ。軽快で速いロードバイクでありつつ、走行中に現れる坂を平坦な道に変えてしまうe-bikeとしてのパワフルさもある。ペダルバイクとe-bikeの良さを両取りしたような魅力溢れる1台です。

Domane+ AL 5はハブモーターを採用しており、容量を抑えた(つまり小型の)250Wh容量のバッテリーをダウンチューブに内蔵。とてもスポーティでスタイリッシュな外観も大きな特徴です

e-bikeに対する考え方はライダーの価値観によりさまざまですが、Domane+ AL 5は「e-bikeのひとつの理想形」かもしれません。人力自転車としての楽しさやスポーツ性があり、上り坂でライダーにかかる負担を苦しくなく楽しめるレベルまで落としてくれる。結果、もっと走りたくなる。それがDomane+ AL 5に乗って感じたことです。

さておき以降、Domane+ AL 5についてじっくり見ていきましょう。

Domane+ AL 5はどんなe-bike?

まずはDomane+ AL 5の概要から。どんなe-bikeなのかをチェックしていきましょう。

Domane+ AL 5はパッと見、普通のロードバイクのよう。サイズは49/52/54/56/58/61が用意されていますが、サイズ56で重量は約14,06kg。アルミフレームの人力ロードバイクは10kg弱という重量のものが多いですが、それより4kg程度重いだけ。外観に加えて重量も普通のロードバイクに近いといえます
主なコンポーネンツはシマノ「105」。ギアはフロントが50/34Tでリアが11-34T(11speed)の22段変速です。フロント34T×リア34Tとして走ればややキツめの登坂であってもアシストなしで進めるでしょう
HYENA(ハイエナ)製の軽量ドライブユニット(250W/40Nm)を採用。リアハブがドライブユニットになっているので、モーターの存在感は希薄です
リアハブがドライブユニットになっているため、フロントダブルのギアを採用できるというわけです
バッテリーはダウンチューブに内蔵されており、容量は250Wh。完全インチューブタイプバッテリーで、ユーザーが外すことはできません(ショップで対応)。満充電からのアシスト走行距離は最大約88km(エコモード)。別売の外付けバッテリーであるレンジエクステンダーを追加すれば、最大走行距離を2倍の約176kmに伸ばせます
バッテリー充電用のコネクターはダウンチューブ下方にあります。キャップは開閉しやすい樹脂タイプ。なお、バッテリーは外せませんので、充電時は車体をコンセント(ACアウトレット)の近くに置く必要があります
電源ボタンと各種インジケーターはトップチューブ前方にあります。長押しで電源オンオフ。赤LEDがアシストレベル(3段階)を、緑LEDがバッテリー残量を示します。なお、Domane+ AL 5にあるディスプレイ類はこれだけ。液晶ディスプレイのようなものはありませんので、走行速度などを知るには別途サイクルコンピューターなどが必要です
ロードバイクタイプe-bikeなので、ドロップハンドル。アシストモード変更用ボタンが左右ブラケット内側にあります。ブラケットを握った状態でもドロップ(下ハン)を握った状態でも、アシストモードを変更できます
タイヤは前後とも700x32C。最大タイヤサイズは38c(フェンダーなし)/35C(フェンダーあり)
フロントフォークはカーボン製
サドルはショートサドルと呼ばれるタイプで、快適にさまざまなライディングポジションを取ることができます
シートポスト高は六角レンチで調節するタイプ。サドル後方には「Bontrager Blendr Saddle Accessory Mount」が装着され、対応リアライト(テールランプ)を容易に着脱できます
シートチューブを後方から見た様子。「WATERLOO CYCLING CLUB」とあります。ウォータールーはトレック本社がある米国ウィスコンシン州の町名です
Domane+ AL 5のフレームには、フェンダーやキャリアを取り付けるためのネジ穴が用意されています。これはシートステー横にあるネジ穴。不使用時は樹脂キャップで塞がれています
フェンダー取り付け用のパーツも装着されています
シートステー端にもネジ穴
フロントフォーク下方にもネジ穴
ダウンチューブとシートチューブにはボトルケージ取り付け用のネジ穴があります
スマートでかっこいいロードバイクタイプのe-bikeです

Domane+ AL 5でサイクリングロードを試走、街中の激坂も走行

ではDomane+ AL 5で試走してみましょう。軽いロードバイクタイプのe-bikeなので、まず筆者がロードバイクで走り慣れているサイクリングロードを走ってみることにしました。人力とe-bikeではロードバイクの違いがどう出るんでしょうか?

主に平坦な道が続くサイクリングロードをDomane+ AL 5で走ってみました

まず意外だったのが「漕ぎ出し」。筆者がこれまで乗ったe-bikeと比べると、Domane+ AL 5は「漕ぎ出しが力強くない」という印象です。「これって人力ロードバイクと同じ感じの漕ぎ出しの重さでは?」と思ってしまいました。

ただ、漕ぎ出して車体が進み始めるとアシストがフワッと加わります。グイッとではなく、フワッと、です。この感じもこれまで乗ったe-bikeのなかでは、かなりソフトなアシスト感です。

しかしそう思っていると、もうアシスト上限。たぶん23~26km/hという速度だと思いますが、車体が軽いからかすぐにスピードが出てしまいます。また、25km/h以上の速度を維持するのも容易。必要に応じてギアを変えながら、人力ロードバイクとほぼ同じ感覚でスイスイヒラリとサイクリングロードを楽しみます。

Domane+ AL 5は、走り出しのアシストはあまり強く感じられませんが、すぐにスピードに乗る車体という印象です。「走り出しが人力ロードよりはけっこうラク」で「スピードのノリや車体コントロールは人力ロードバイクと同様に速くて軽快」というイメージです

平坦メインとはいっても、サイクリングロードの途中にはアップダウンもそこそこあります。筆者が覚えている長めのアップダウンで「この緩いけど長い坂、ナニゲに心拍が上がるんだよな」となる道があります。そこをDomane+ AL 5で通過すると……。

スピードがやや落ちて18km/h以下あたりになると「あっアシスト効いてるっぽいな」とわかります。というのは、この「長いけどナニゲに心拍が上がる坂」でもほとんど負担を感じず、心拍もあまり上がらないからです。

川沿いサイクリングロードにややありがちな緩いアップダウンでは、Domane+ AL 5がアシスト力を出すものの、あまり実感のないアシストという感じです

誤解を恐れず書きますと、Domane+ AL 5のアシスト特性は「非常に自然でスムーズ」だと感じられます。急にグイッとアシストが入ったりすることはまずないので、「あれ? アシスト力が大して強くない? 弱い?」と思いがちですが、状況と足の踏力を考えると「けっこうアシスト力が出ているハズ」と理解できます。

それはもう少しキツめ長めの登坂でよくわかります。たとえば川沿いサイクリングロードにはきっとある「橋をくぐるためのアップダウン」です。

川沿いサイクリングロードにありがちな「橋をくぐるためのアップダウン」。右の道を下って進めば橋をくぐってサイクリングロードをたどって行けますが、下ったぶん、上りがあります

橋の下を通過して上りにさしかかると、Domane+ AL 5は意外に強くアシストしてくれていることがわかります。人力ロードバイクだと少しギアを軽くして上っていた坂で、Domane+ AL 5だと「ギアを軽くするのを忘れる」程度、パワフルなアシストが効いています。

ただ、グイグイと力強いアシスト力という感触ではありません。車体をゆるりと押されているようなソフトだけど確実なアシスト力です。なので意識しないと「アシスト効いてないかも」と思える。でも「この坂はここまで余裕で上がれなかったハズ」と考えると、意外に強いアシスト力が出ているのだと理解できるという感じです。

サイクリングロードを少し外れて街中の激坂も走ってみました。結果、e-bikeならではのパワーで笑顔で激坂をクリアできました。ただ、そのときもグイグイと強いトルクが出ているような感触はあまりありません。Domane+ AL 5のアシスト感は独特だと感じました。

あと、Domane+ AL 5のモーターは終始静か。Domane+ AL 5の走行音自体も静かなので、自然の音をたっぷり聴きながらのサイクリングを楽しめます。

それから700x32Cというロードバイクとしてはやや太めのタイヤと、カーボン製のフロントフォーク。エアボリュームが地面の凸凹や突き上げを吸収し、さらにカーボンフォークも振動を吸収してくれるので、Domane+ AL 5はかなり乗り心地がいいです。カーボンフレームのロードバイクのように、アスファルトに吸い付くように滑らかに走ってくれる。

そういう静かで滑らかな走りがありつつ、前述のようにソフトでスムーズなアシスト感があるので、「e-bikeだがほとんど違和感がない非常に自然なアシストをしてくれる」という印象になります。

この印象は、たぶん「人力ロードバイクのほうが好みだけど、e-bikeというものにも多少興味がある」という、ある種の「人力ロードバイク側のライダー」に「こういうんでいいんだよ!」と言わしめるかもしれない乗り味、かもしれません。なので興味があればぜひご試乗を。これまでのe-bikeとはかなり違う性格のバイクですよ♪

いろいろ嬉しい、約14.06kgという軽さ

Domane+ AL 5の最大の特徴は、約14.06kg(公式値)という軽さ。e-bikeといっても進むためにはペダルを踏む必要があるわけで、やはり軽いほうがイイですよね。

Domane+ AL 5の場合は、そもそも速く走れる車体。実際にアシスト上限の24km/hを超えても車速の維持が容易ですし、そうしていても「車体が重い」と感じることはあまりありません(上り坂でアシストをオフにするとちょっと重いと感じはします)。やはり車体の軽さは正義ですね。

また実際にDomane+ AL 5を扱っていると、「e-bikeなのにコレができる」という嬉しさがあります。けっこうイロイロあります。

たとえば、Domane+ AL 5は片手でスッと持ち上げられるので、車体の位置をちょっとズラすようなことが容易。ペダルを後ろ側やや下にして、それを路上の突起の上に乗せて自立させるのも簡単です。

Domane+ AL 5にはスタンドがありませんが、「ペダルを後ろやや下に回してコンクリートなどの上に乗せての自立」を容易に行なえます。車重が20kg以上あるe-bikeでこれをやろうとすると、一瞬「重っ」てなりますが、Domane+ AL 5なら無問題。なお、写真はペダルと後輪だけがコンクリートに接触しています

あと、地味にイイのがサイクルラックの利用。一般的なe-bikeは重いのと、クランクあたりに重量が集中しているので、意外とサイクルラックへ載せるのがタイヘンです。が、Domane+ AL 5だとロードバイク感覚でサイクルラックを利用できます。

サイクルラックがあるコーヒーショップに到着。Domane+ AL 5って絵になるe-bikeですね
片手でサイクルラックにサドルを掛けられます。20kg以上のe-bikeだとこれがちょっとタイヘン。Domane+ AL 5だとラクです

それからトランポ。クルマへの積み下ろしも、車体が軽いのでラクです。また、車体が軽いので車内での固定も「軽くすればだいじょうぶ」です。

車体が軽いので、ハンドルのブラケット部をクルマに接触させておけば安定して自立します。重いe-bikeだとこれが意外にできず、またクルマを傷つけそうでイヤなんですよね
ひょいと持ち上げてクルマに積めます。2列目キャプテンシート間に前輪を入れ、ドロップハンドル下をシート上部に置き、後輪をタイヤハウジング近くに接触させます。そして後輪を紐で軽く縛れば固定完了です
紐はアシストグリップに結んでいます。アシストグリップは走行中などに座った状態で体を支えるために使うもので耐荷重はあまり高くありませんが、自転車の横揺れを防止する程度なら強度的に問題ないと思われます
この程度の固定で走行中に自転車がズレることはありません
さらにDomane+ AL 5の前輪も紐で固定すれば完璧
Domane+ AL 5のトランポは、これまでしてきたe-bikeトランポのうち、いちばん積み下ろしや固定がラクでした

ほかにも段差がある玄関でのDomane+ AL 5の出し入れも、その軽さから作業がラク。試していませんが、Domane+ AL 5を階上へ持ち運ぶのもつらくないと思います。

それからロードバイクって後輪だけ地面に着けつつ前輪を持ち上げて「立てての押し運び」ができますが、Domane+ AL 5は軽いのでソレも可能でした。いやーやっぱり自転車は軽いほうがいいですね。

そんな感じのDomane+ AL 5。e-bikeのメリットと人力ロードバイクの良さを併せ持つ、完成度の高いe-bikeだと思いますので、興味があればぜひご試乗を。ハマる人にはハマると思います!

スタパ齋藤