e-bike試乗レビュー
軽くて速い! e-bikeのメリットとロードバイクの良さを見事に融合したトレック「Domane+」
2022年12月9日 08:00
今回レビューするのはTREK(トレック)のロードバイクタイプe-bike「Domane+ AL 5(ドマーネプラスエーエルファイブ)」です。ロードバイクタイプのe-bikeは、日本ではトレックブランド初です。
2023年新モデルであるDomane+ AL 5の最大の特徴は、約14.06kg(公式値)という軽さ。アルミフレーム採用のe-bikeにおいてはトップクラスの軽量バイクといえます。
このe-bikeで試走した感触をまず書いてしまいますと、「軽いスポーツ自転車が持つ楽しさ」と「e-bikeであるがゆえの快適さ」が高いレベルでバランスしているということ。軽快で速いロードバイクでありつつ、走行中に現れる坂を平坦な道に変えてしまうe-bikeとしてのパワフルさもある。ペダルバイクとe-bikeの良さを両取りしたような魅力溢れる1台です。
e-bikeに対する考え方はライダーの価値観によりさまざまですが、Domane+ AL 5は「e-bikeのひとつの理想形」かもしれません。人力自転車としての楽しさやスポーツ性があり、上り坂でライダーにかかる負担を苦しくなく楽しめるレベルまで落としてくれる。結果、もっと走りたくなる。それがDomane+ AL 5に乗って感じたことです。
さておき以降、Domane+ AL 5についてじっくり見ていきましょう。
Domane+ AL 5でサイクリングロードを試走、街中の激坂も走行
ではDomane+ AL 5で試走してみましょう。軽いロードバイクタイプのe-bikeなので、まず筆者がロードバイクで走り慣れているサイクリングロードを走ってみることにしました。人力とe-bikeではロードバイクの違いがどう出るんでしょうか?
まず意外だったのが「漕ぎ出し」。筆者がこれまで乗ったe-bikeと比べると、Domane+ AL 5は「漕ぎ出しが力強くない」という印象です。「これって人力ロードバイクと同じ感じの漕ぎ出しの重さでは?」と思ってしまいました。
ただ、漕ぎ出して車体が進み始めるとアシストがフワッと加わります。グイッとではなく、フワッと、です。この感じもこれまで乗ったe-bikeのなかでは、かなりソフトなアシスト感です。
しかしそう思っていると、もうアシスト上限。たぶん23~26km/hという速度だと思いますが、車体が軽いからかすぐにスピードが出てしまいます。また、25km/h以上の速度を維持するのも容易。必要に応じてギアを変えながら、人力ロードバイクとほぼ同じ感覚でスイスイヒラリとサイクリングロードを楽しみます。
平坦メインとはいっても、サイクリングロードの途中にはアップダウンもそこそこあります。筆者が覚えている長めのアップダウンで「この緩いけど長い坂、ナニゲに心拍が上がるんだよな」となる道があります。そこをDomane+ AL 5で通過すると……。
スピードがやや落ちて18km/h以下あたりになると「あっアシスト効いてるっぽいな」とわかります。というのは、この「長いけどナニゲに心拍が上がる坂」でもほとんど負担を感じず、心拍もあまり上がらないからです。
誤解を恐れず書きますと、Domane+ AL 5のアシスト特性は「非常に自然でスムーズ」だと感じられます。急にグイッとアシストが入ったりすることはまずないので、「あれ? アシスト力が大して強くない? 弱い?」と思いがちですが、状況と足の踏力を考えると「けっこうアシスト力が出ているハズ」と理解できます。
それはもう少しキツめ長めの登坂でよくわかります。たとえば川沿いサイクリングロードにはきっとある「橋をくぐるためのアップダウン」です。
橋の下を通過して上りにさしかかると、Domane+ AL 5は意外に強くアシストしてくれていることがわかります。人力ロードバイクだと少しギアを軽くして上っていた坂で、Domane+ AL 5だと「ギアを軽くするのを忘れる」程度、パワフルなアシストが効いています。
ただ、グイグイと力強いアシスト力という感触ではありません。車体をゆるりと押されているようなソフトだけど確実なアシスト力です。なので意識しないと「アシスト効いてないかも」と思える。でも「この坂はここまで余裕で上がれなかったハズ」と考えると、意外に強いアシスト力が出ているのだと理解できるという感じです。
サイクリングロードを少し外れて街中の激坂も走ってみました。結果、e-bikeならではのパワーで笑顔で激坂をクリアできました。ただ、そのときもグイグイと強いトルクが出ているような感触はあまりありません。Domane+ AL 5のアシスト感は独特だと感じました。
あと、Domane+ AL 5のモーターは終始静か。Domane+ AL 5の走行音自体も静かなので、自然の音をたっぷり聴きながらのサイクリングを楽しめます。
それから700x32Cというロードバイクとしてはやや太めのタイヤと、カーボン製のフロントフォーク。エアボリュームが地面の凸凹や突き上げを吸収し、さらにカーボンフォークも振動を吸収してくれるので、Domane+ AL 5はかなり乗り心地がいいです。カーボンフレームのロードバイクのように、アスファルトに吸い付くように滑らかに走ってくれる。
そういう静かで滑らかな走りがありつつ、前述のようにソフトでスムーズなアシスト感があるので、「e-bikeだがほとんど違和感がない非常に自然なアシストをしてくれる」という印象になります。
この印象は、たぶん「人力ロードバイクのほうが好みだけど、e-bikeというものにも多少興味がある」という、ある種の「人力ロードバイク側のライダー」に「こういうんでいいんだよ!」と言わしめるかもしれない乗り味、かもしれません。なので興味があればぜひご試乗を。これまでのe-bikeとはかなり違う性格のバイクですよ♪
いろいろ嬉しい、約14.06kgという軽さ
Domane+ AL 5の最大の特徴は、約14.06kg(公式値)という軽さ。e-bikeといっても進むためにはペダルを踏む必要があるわけで、やはり軽いほうがイイですよね。
Domane+ AL 5の場合は、そもそも速く走れる車体。実際にアシスト上限の24km/hを超えても車速の維持が容易ですし、そうしていても「車体が重い」と感じることはあまりありません(上り坂でアシストをオフにするとちょっと重いと感じはします)。やはり車体の軽さは正義ですね。
また実際にDomane+ AL 5を扱っていると、「e-bikeなのにコレができる」という嬉しさがあります。けっこうイロイロあります。
たとえば、Domane+ AL 5は片手でスッと持ち上げられるので、車体の位置をちょっとズラすようなことが容易。ペダルを後ろ側やや下にして、それを路上の突起の上に乗せて自立させるのも簡単です。
あと、地味にイイのがサイクルラックの利用。一般的なe-bikeは重いのと、クランクあたりに重量が集中しているので、意外とサイクルラックへ載せるのがタイヘンです。が、Domane+ AL 5だとロードバイク感覚でサイクルラックを利用できます。
それからトランポ。クルマへの積み下ろしも、車体が軽いのでラクです。また、車体が軽いので車内での固定も「軽くすればだいじょうぶ」です。
ほかにも段差がある玄関でのDomane+ AL 5の出し入れも、その軽さから作業がラク。試していませんが、Domane+ AL 5を階上へ持ち運ぶのもつらくないと思います。
それからロードバイクって後輪だけ地面に着けつつ前輪を持ち上げて「立てての押し運び」ができますが、Domane+ AL 5は軽いのでソレも可能でした。いやーやっぱり自転車は軽いほうがいいですね。
そんな感じのDomane+ AL 5。e-bikeのメリットと人力ロードバイクの良さを併せ持つ、完成度の高いe-bikeだと思いますので、興味があればぜひご試乗を。ハマる人にはハマると思います!