e-bike試乗レビュー

BRUNO「e-hop」は、自転車通勤など街乗りや週末ポタリングにも最適なミニベロe-bikeだ!

BRUNO(ブルーノ)「e-hop(イーホップ)」

都心を自転車で移動するビジネスパーソンの姿をよく見かけるようになった。筆者はと言えば、20年くらい前から、職場や取材先へは、無理のない範囲で自転車を使うようにしている。特に朝夕の電車移動が嫌いだからだ。

無理のない範囲というのは、ずばり、東京都東部のゼロメートル地帯や海抜5m前後の、坂道がないエリアであること。筆者はめっぽう坂道が苦手なのだ。筆者が在住しているエリアは標高が2m以下。一方で、インプレスの編集部がある神保町は3.4m。編集部へ行くには、筆者宅からだと約5kmを使って、この1.4mを上っていく。このくらいが筆者の言う無理のない範囲だ。

なぜ「無理のない範囲」にこだわるかと言えば、仕事の移動が多いため。

坂道だって上れないことはないが、無理に上って汗をかいて編集部や取材先に到着しても、仕事に支障が出る。そのため「無理のない範囲」というのは重要だ。

そのため、筆者宅から編集部へは自分の自転車で行き、そこから坂道を上る必要のある、赤坂や六本木方面へ取材する場合には、シェアサービスの電動アシスト自転車を使うことがたびたびあった。

たびたびあるのなら、自身の自転車を電動アシストにしたほうが良いだろう。そんな自然の流れから、電動アシスト自転車探しをスタートさせることにした。

そして今回は、シマノ製の電動アシストユニット(ドライブユニットと呼ばれることが多い)を搭載した、Brunoの「e-hop」を使う機会に恵まれました。価格は299,200円。そんな同自転車を、数週間乗ってみた感想をレポートしたい。

Bruno「e-hop」

漕ぎ出しの自然さが快適

Brunoの「e-hop」は、シマノのスタンダードクラスのドライブユニットが搭載されている。シマノSTEPSは、上位モデルから「E8080シリーズ」、「E6180 シリーズ」、そして「e-hop」が採用する「E5080シリーズ」と、大きく3シリーズに分けられている。

同ユニットの特徴は、シンプルな設計で軽量なこと。そんなユニットを活かすべく、「e-hop」全体の重量も17.9kgに抑えられている。

カラーはNAVY。他にGREY、SANDが用意されている
「e-hop」に搭載されているシマノSTEPS「E5080シリーズ」

なお、筆者が借りた際には「e-hop」に、別売のフロントバスケット(カゴ)やリアキャリア、そして自立させるためのスタンドを取り付けてもらった。これらとは別に、ライトとベルの装着が必須である。

フロントのバスケット
リアキャリア
スタンド

バッテリーには、容量418Whの「BT-E6010」を搭載する。乗る際には、まずペダルに足を掛けずに、同バッテリー側面にある電源ボタンを長押しする。ハンドル左側のサイクルコンピューター(以下:サイコン)の電源がオンになったら、準備は完了。あとはサイコンのアシストモード切替ボタンで、モードを設定すれば、アシスト走行が可能になる。

アシストモードは「ECO」「NORMAL」「HIGH」の3段階。筆者は基本、2段階目の「NORMAL」を使用し、坂道の走行時のみマックスに上げて乗っていた。

ハンドル左側に配置されているサイコン
シフトチェンジはハンドル右側のグリップを回す方式

さっそく漕ぎ出してみる。ペダルに足を掛けて力を入れると、いたって自然なアシストだ。一般的な電動アシスト自転車のような、グンッ! というような加速はなく、違和感が全くない。そのため、普段から自転車に乗っている人であれば、あの電動アシスト自転車の、よくあるガツンッとくるような飛び出しに、慣れる必要がない。それくらい漕ぎ出し時のアシストが自然なのだ。

かといって、アシスト性が低いわけではない。ペダルを漕ぎ始めると、30~40m(6~7漕ぎ)でス~っと20km/h前後まで速度が増していく。街中の狭い道路であれば17km/h前後でも速く感じるので、なんのストレスもない。筆者宅から神保町の編集部までの、よく通る街の裏側の道であれば、50~100m間隔で小さな交差点があるので、3~4漕ぎして惰性で進み、交差点でスピードダウンまたは停止して、また漕ぎ始める……という繰り返しになる。それがとてもラクに行なえる。

特に下町界隈やビジネス街を含む繁華街では、交差する場所が多い。こうした場所では、減速と加速を繰り返すため、改めて「電動アシスト自転車ってラクだなぁ」と感じる。また漕ぎ出しで疲れないので、交差点で躊躇なく減速する。安全面でもe-bikeは、非電動アシストに比べて優位にあるような気がした。

繁華街は減速と加減を繰り返すので、e-bikeだと、とてもラク

自転車に乗り始めて数日後のこと。神田明神(に隣接するホール)での取材依頼が入った。神田明神の場所は、海抜16mもある。その直前の海抜4mの神田明神下から約300mで一気に駆け上らないといけないのだ。普段であれば、「坂の上だなぁ……」という思いが脳裏をよぎるだが、今回は「e-hopの実力を試す時が来た!」といった感じ。

急坂では、さすがにペダルの重さを感じる。ただし、e-hopの素晴らしいのは、ギアが8段階で切り替えられること。そのギアを8速から7速か6速に下げて、さらに3段階のアシストモードをマックスにして走れば、坂道を意識することなくラクに走り切れる。

e-bikeだから当たり前だが、なんの苦もなく神田明神に着いてしまった。そのためか、取材場所の発表会場へ行った時に、ぜぇぜぇと息を乱すこともなく、そつなく仕事ができた。

神田明神に、あっけないほどラクに着いてしまった

その後は、湯島の切り通し(春日通り)や鶯谷から上野公園へ向かう新坂など、これまで敬遠していた近所の坂を上りまくった。

湯島の切り通しの激坂。写真だと分かりにくいが、この先を進むと、一気に傾斜がキツくなる(海抜7mから同20mへ)
鶯谷駅近くの新坂(海抜4mから同12mへ)

大河ドラマ「どうする家康」のロケ地、埼玉県新座市の平林寺へ

数日、仕事で都内を走った後の週末。e-hopでどこかに出かけたいと思った時に、ちょうど行きたいと思っていた場所を思い出した。埼玉県新座市の野火止にある、臨済宗の平林寺だ。

数十年前の一時期に、歩いて30~40分くらいの場所に住んでいたことがあった。それで何度か散歩しに行ったことがある。

先日、NHKの大河ドラマ「どうする家康」を見ていたら、「あれ? ここって平林寺じゃないか?」と思うシーンがあったのだ。調べてみると、やはり平林寺。久しぶりに行きたくなったものの、公共交通機関で行くには、アクセスが悪い場所にある。そこで、週末の朝に思い立って、e-hopで行ってみることにした。

自宅から平林寺へは、最短距離で約24km。ただし筆者は幹線道路を走るのが怖いので、荒川沿いを進むことにした。その場合の距離は、34km。Googleマップによれば、自転車であれば片道2時間12分で行けるという。休日のサイクリングとしては適度な距離と時間だろう。

実際に走った往路のルート

さぁ出発しようと思った時に気が付いた。遠出の準備……バッテリーの充電をしていなかった。バッテリー本体で、残量を確認すると、5段階で3つのランプが点灯している。

これは途中で切れるかもな……と思いつつ、ダメなら途中で引き返せば良いだろうと、行けるところまで行ってみることにした。それに、バッテリーが切れた時の走行性も、とても気になるところ。切れたら切れたで、それもまた良いではないかと。

バッテリー残量は5段階で表示される。出発時の残量は、約3/5

まずは自宅から隅田川を目指して走り出した。基本は、荒川水系に沿って、新座市まで、ひたすら上流を目指す。だが、ところどころで隅田川が荒川になったり、荒川から新河岸川になる。川が変わる際には、土手を外れて街中を走る必要もあった。

ただし、やはり土手沿いの道は信号もなく、快適。

前述の通り、6~7漕ぎすると、ス~っと20km/h前後まで速度が増していく。そこからは、一生懸命にペダルを漕げば、さらに速度を増すが、頑張らないで走るのなら20~23km/h前後がベストな速度だ。急ぐ旅でもないので、土手沿いの道では、この20km/h前後で走ることにした。

土手沿いの道は快適。20~23km/h前後で、のんびり走った

そうして1時間くらい走ると、目的地・新座市の隣の和光市に到着。Googleマップの指示に従い、ここから新河岸川を離れて、市街地を進んだ。

そこで意外だったのは、砂利道があったこと。ここも走行性能を試すのに良いなと思い、避けることなく進んでみた。

まさかの未舗装の道

e-hopのタイヤは、仕様によれば「20×2.1軽量ワイドタイヤ」と太め。ガッチリとしたタイヤのため、(新品時であれば)パンクの心配は皆無と言っていいだろう。今回の砂利道走行だけで、オフロードバイクのように砂利道が得意とまでは言い切れない。だが、少しハンドルがグラグラとするくらいで、転倒するほどバランスを崩すことはなかったし、脳裏にもよぎらなかった。

e-hopのタイヤは太い
砂利道でも安定走行が可能

その後の道は、少し道を間違えたこともあり、アップダウンが激しく、普段使っている(電動アシストではない)自転車で来ていたら、確実に心が折れていただろう。

そして新座市野火止の平林寺に到着したのが、14時37分。出発したのが12時過ぎだったので、往路は約2時間半かかったことになる。Googleマップの推定時間が2時間12分とあったので、まぁ予定どおり。

平林寺はと言えば、自転車のレビューとは関係ないが、とても静謐な雰囲気の、良いお寺だった。自転車を駐輪場に停めてから、休憩無しで境内を1時間も散歩していた。e-hopで来ていなければ、こんな風に休憩無しで散策できなかっただろうし、数十年前に来た思い出に、のんびりと浸ることもできなかっただろう。

平林寺の駐輪場に到着
平林寺の山門
本堂の裏手に広がる林がとてもきれい

バッテリーが切れても、それほど苦ではなかった復路

平林寺を満喫した後は、すぐに帰ることにした。喫茶店でもあればとも思ったが、この日は雨が降り出しそうだったのだ。

駐輪場へ戻り、バッテリー残量を確認すると、5段階のうち点灯しているのは2つ。「あれ? これなら家までバッテリーが持つかもしれないな」なんて思った。ただし、バッテリー残量の表示は、バッテリー本体のほかにサイコンにも表示される。その、サイコンの表示によれば、バッテリー残量が1/5なのだ。まぁ心配しても仕方がない。基本は上流部から下流部へ下っていくのだから、大丈夫でしょう! と、あくまでポジティブシンキングで出発した。

残量は2/5。これなら自宅までバッテリーが持つかも
なぜかサイコンが表示するバッテリー残量は1/5

ただし、バッテリーが切れることを想定して、土手沿いではなく、都心を突っ切ることにした。都心であれば、自転車と筆者のバッテリーが同時に切れても、どこかの駅の駐輪場に預けて、後日取りに来るということもしやすいためだ。

想定ルートでは、27kmの距離を1時間46分で帰れるという。復路の出発が15時45分前後。途中でバッテリーが切れて2時間かかったとしても、18時くらいには自宅に着くだろう。

帰りの想定ルート。距離は27km

帰り道は、ほとんど平地で、基本は下っていくと想定していた。実際に、平林寺は海抜13mのところにあり、自宅は2m以下なので、全体的に見れば27kmをなだらかに下っていくことになる。ただし、走ってみて分かるのは、いくつもの上り坂があった。

その上り坂が、復路の前半に集中していたのは、本当に幸いだった。だが、上り坂が少なくなかったこともあり、バッテリーを多く消費してしまったのも事実だろう。

復路出発から約45分後、首都東京を守る第1師団などがある、練馬の自衛隊駐屯地前で、バッテリーが切れた。それ以前から、手元のサイコンが「もうすぐバッテリーが切れますよ」というような表示になってはいた。だが「まだ大丈夫でしょう」という根拠のない楽観を続けていたため、その時のショックは大きかった。まだ自宅までは15kmの地点だったからだ。

ちょうどバッテリーが切れた川越街道の練馬駐屯地付近で、記念にパシャリ。自宅は日本橋ではないが、同じく15kmの地点だった

うなだれても仕方ない。もともと「バッテリーが切れた時の走行性も試してみたいな」なんて、気楽に考えていた筆者が悪い。だいたい、e-bikeのバッテリーが切れるシチュエーションでは、同様に気持ちが萎えているもの。その気持ちで、15kmの道のりを、アシスト無しで走るのがどれほど大変なのか、それとも言うほどツラくはないのか? まさに試してみるのに絶好のチャンスだ! と、必死で心を入れ替えようと試みる。

そして、その後もゆるやかな上り坂がいくつかあった。e-hopが、電動アシスト自転車の中では軽量だと言っても、「アシスト無しでも、上り坂をラクに走れました!」なんて言ったら、嘘だ。正直、自転車の……というか今や用をなさなくなったバッテリーの、重さを感じる。

だが、ここで活躍してくれたのが8段速のギアだった。

このギアだが、8速もあると速く走れるのでは? という期待に傾きがちだが、むしろ低速走行時に役立つ設定になっている。

1~8速で選べるため、アシスト走行時では、坂のキツさと脚力に応じたギア比が見つけやすい。8速から7速に切り替えるだけでも違いが分かるが、さらに坂道がキツければ6速……5速……と落としていき、重すぎず軽すぎない、ちょうどいいギア比が見つけられる。

めったに起こらないだろうが、今回のようなバッテリー切れの際には、平坦な道であれば(個人差はあるだろうが)6速くらいにするとラクに走行可能だ。

少しスピードを上げたい場合には7速でも、キツイとは感じなかった。この7速の場合の、(アシスト無しでの)無理のない巡航速度は15km/h前後。往路のような土手沿いの道であれば、遅すぎると感じそうだが、街中であれば、安全に走行するのには安全な速度、もしくは少し遅く感じるくらいだろう。

坂道の場合は、ゆるい坂道でも、さすがにだるさを感じた。だが5速くらいに切り替えれば、それほど大変でもない。もし5速でキツければ、4速、3速と変速すればラクに走れる。

心強い8段変速

もちろんゆるい上り坂でも、他の電動アシスト自転車や女性が漕ぐ一般の自転車にも抜かれていったが……焦ったりせず、のんびりと進めば良いのだ。

そうして、無事に池袋や巣鴨を通り過ぎた。このあたりまでは台地の上。ここから下町へはググッと下りる。ここらへんは、少しルートを吟味した。ストンッと一気に下る道を選ぶと、必ず信号に捕まるので、もったいない。少し遠回りになっても、できるだけ自然のアシストを活かせるように、ゆるやかに下っていく道を選ぶ。

結局、自宅近くの銭湯に着いたのは18時。平林寺からは、Googleマップの予測時間よりも少し遅い、2時間15分がかかったことになる。

寄って行きたかったが、既に閉まっていた六義園の塀
このあたりまで来ると、帰れたなという気分になった

e-hopは、コンパクトで扱いやすいe-bike

e-hopを2週間ほど乗って感じたのは、電動アシスト自転車の中では扱いやすいモデルだなということ。

時々、妻の子乗せ用の電動アシスト自転車を借りて乗ることがあるが、あの走り出し時のドンッと前に進む感じが、まだ馴染めていない。一方でe-hopは、とても自然に走り出せる。

また、タイヤが小さい小径モデルという点で、扱いやすい。もちろん子乗せモデルよりも軽く、コンパクト。特に駐輪場での出し入れ時には、圧倒的にラクだ。

さらに小径モデルとはいえ、ホイールベースが極端に短くもない。そのため直進性が確保され、今回のケースで言えば、河川敷の走行でも疲れない。

出勤時などに都市部を走るのにも、休日に郊外をサイクリングするのにも適した、バランスの良いe-bikeだと言える。

駐輪場など、自転車に乗っていない時の取り回しがしやすい
こうしたスピードを出しやすい道でも、ストレスなく走れた
河原塚 英信