e-bike試乗レビュー

もう電動アシスト自転車のない生活には戻れない。VOTANI Q3で坂の街を自由自在に駆けまわる

近所の急坂には「14%」の表示があります。山道で見かけるやつ!

わたくしごとですが昨年夏に、坂のある街に引っ越しました。駅から自宅までは平坦なのですが、そこからグッと急な下り坂となり、谷を越えたらまた上り坂に。おかげでわが家は戸建なのに眺望は抜群!

坂のある街に引っ越したら……ふつうの自転車が乗れなくなった!

……なんて喜んでいる場合ではありませんでした。周囲は、ふつうの自転車ではとても上りきれない坂だらけ。立ち漕ぎしても上れないときは、降りて押すしかありません。どこに行くにもアップダウンを繰り返すので、とにかく疲れる。結局、数日で自転車に乗るのをやめてしまいました。

そのため今は、徒歩5分のスーパーマーケットに買い物へ行くにもクルマを利用していますが、いつまでもこんなことはしていられません。いずれ電動アシスト自転車を購入しなきゃ……でも乗りこなせるか不安……。そう迷っていたある日、夫が帰宅するなり、こう言ったのです。「いやー、このへんで自転車が電動アシストじゃないの、うちだけだね!」

ここでは電動アシストがないと生活できないのだ、と確信した一言でした。

近所のスーパーマーケットの駐輪場を見ても……すべて電動アシスト!

とはいえ電動アシスト自転車など乗ったこともないので、何をどうやって選んだらいいかわかりません。重くない? 取り回しはラク? 充電はどれぐらい持つ? そもそも、この歳で乗りこなせる……?

とにかくどこかで試乗しよう、とあれこれ調べていた矢先、思ってもいなかったメーカーの電動アシスト自転車を借りられることになったのです。

それがe-bike専門ブランドBESV(ベスビー)が扱うセカンドブランド「VOTANI(ヴォターニ) 」の電動アシスト自転車「Q3(キュースリー)」。オランダ発のブランドだそう。人生初の電動アシスト自転車です。価格は168,000円。

VOTANIの電動アシスト自転車「Q3」。お借りしたのは「ミルキーベージュ」カラーで、ほか「スノーホワイト」「カッパーゴールド」があります(フロントバスケットは別売りのオプション)

みんなこんなにラクしてたなんて! 初めての電動アシストに感動

おしゃれなデザインで街乗りにもピッタリ!

Q3を初めて見たときの感想は、「こんなにおしゃれな電動アシストがあったんだ!」という驚きと喜びでした。街でよく見かける電動アシスト自転車はママチャリタイプばかりでしたが、Q3はタイヤサイズ20インチのミニベロタイプ。とにかくかわいく、一見すると電動アシストには見えません。

心配していた重さも、軽量アルミフレームを採用しているため、20.4kgと一般的な(非電動アシストの)ママチャリレベル。電源を入れない状態でも小回りが効き、ラクに動かせます。

押して歩いたり、狭いところをUターンするときも、重さを感じることはありません。本当にふつうの自転車を押している感覚

初めての電動アシスト自転車なので、操作は難しくないかという不安もありましたが、まったく問題ありませんでした。左ハンドルの小型ディスプレイで電源を入れたら、アシストモードを「1(エコ)」「2(ノーマル)」「3(パワー)」「A(オート)」の4段階から選ぶだけ。でも基本的には、最適なアシストを自動出力してくれるBESVのオリジナルアルゴリズムを採用したオートモードにしておけばよさそうです。

力強く上りたいときは、パワフルな3(パワー)モードを選択

バッテリー残量は青色のLEDで表示されるので、「坂道を上っていたら急に充電がなくなった!」という心配もなさそう。バッテリーはサドル下に格納されており、充電時間約3.5時間で、80km(エコ)/60km(ノーマル)/45km(パワー)を目安に走れます。主に近場で乗ることになりそうな筆者には十分すぎるくらい。

バッテリーは、ロゴの描かれたフレームに格納されているのも、電動アシスト感を感じさせないポイントかも
サドルの高さによっては、バッテリーの出し入れで引っかかる場合もあるため、上げ下げしやすいグリップがついていました

ではさっそく初ライドへ。家の近くの坂に行き、上りからチャレンジしてみました。ペダルをひと漕ぎした瞬間、漕いだ以上にグイッと進む! 誰かが後ろから急に押したような加速に驚きました。力加減が分からず、思い切り踏み込んだせいかも。

その後はスムーズに走り出し、今まで力いっぱい漕がなければ上れなかった坂も、ぎゅんぎゅんスイスイ上っていきます。うそ~! みんなこんなにラクしていたの~! ズルい!! この歳にして、新たな世界の扉を開いてしまいました。

坂道なのに、何事もないように座ったままの姿勢で自転車に乗っている自分に笑いました

坂道はもちろん、フラットな道を走る感覚も今までとは全然違います。例えていうなら、ゆったりクルージングしているような心地良さ。ほとんど力が要らないので、サイクリングの気持ち良さだけが享受できます。

Q3に乗って新しい街を冒険!

久しぶりの自転車だったので、最初は少し怖々でしたが、時間が経つにつれ、だいぶ慣れてきました。わが家より駅方面は、クルマや人が非常に多く道も狭いため、クルマで通るには気を遣う場所も多いのですが、自転車ならクルマが少ない道を選びながら走れます。やっぱり自転車は便利!

そこで今度は、今まで行こうと思っていたけれど、クルマでは行けなかったところに行ってみることにしました。まずは、駅近くのサンドイッチ屋に行ってみましたが、年末年始のためお休み。その近くのパン屋でパンを購入しました。

クルマが止めにくい場所にあるパン屋さんにも、スイっとアプローチできました

そして次は、広大な雑木林のある公園へ。自宅から歩いて15分ほどの場所にあるのですが、やはり山坂があるため、引っ越ししてから一度も行っていませんでした。ここにも、スイっと到着。ただ公園内には自転車は入れず、借り物の自転車をひとけが少ない駐輪場に置いていくのは怖かったので、入り口のベンチでパンを食べて帰ることに。

今度来る時は、盗難防止のチェーンを持って来よう
公園の入り口前も坂道でしたが、A(オート)モードで難なく上り切りました

続いては、近所を流れる川沿いに整備された「恩田川自転車歩行者専用道路」へ。この道路は、自宅から徒歩5分ほどのところにあるのですが、引っ越し後は自転車に乗っていなかったため、ふだんは犬の散歩をする程度でした。でも、この道は桜並木の名所に繋がっているので、春になったらサイクリングしてみたいと思っていたのです。

わが家から急な坂を下った先にある恩田川自転車歩行者専用道路

いつもは歩いている道をQ3でサイクリング。道自体はフラットですが、川沿いは開放感があるし、疲れを感じないので、日常を忘れてどこまでも走っていきたい気分に。基本的にインドアな筆者ですが、今までの自分の限界を超えて行動範囲が広がっていくワクワク感は新鮮でした。

散歩する人、ランニングする人、サイクリングする人、さまざまな人とすれ違います
いつも犬を散歩している道も、自転車で走ると景色が違って見えました

どこまでも行ける気がする……そう思って、この道はどこまで続いているのか調べてみました。すると、西側の終点は自宅の近くですが、東側は鶴見川に合流する地点まで続いているよう。距離にして12km、自転車で45分だそうです。これなら運動が苦手な筆者でもチャレンジできそうです。

時間にして45分とありますが、電動アシストなら走れそうな気がします

地図を辿っていて気づいたのが、その恩田川沿いに10数年来の友人が住んでいることです。以前はクルマで遊びに行っていましたが、これからは自転車で遊びに行ける! これもQ3の快適さを知ったからこそイメージできることなのでしょう。

傾斜14%の坂道は上りきれるのか

ところで冒頭でも紹介しましたが、自宅近くには傾斜14%の坂道があります。ふつうの自転車に乗っている人の多くは、自転車から降りて押して上っていますが、中には立ち漕ぎや超ジグザグ走行で上りきる強者もいます。いずれにしても、電動アシストなしでは、まともに上ることはできません。

この急坂をQ3で上ってみました。モードを「3(オート)」にし、ギアを「1」にチェンジ。その結果、最初の上り始めはスムーズでしたが、もっとも傾斜がキツい場所は、少し力を入れないと上れませんでした。それでも感覚的には、普通の自転車でちょっとした坂を上っている程度です。

14%の坂道にチャレンジ!

ちなみに坂の途中から乗ろうとしたら、最初のひと漕ぎが入らず、乗ることができませんでした。傾斜14%、恐るべし!

電動アシスト初心者には満足度100%

2週間ほど乗り回してみましたが、筆者自身、電動アシストは初体験だったので、ただただ快適さしか感じませんでした。唯一心配だったのは、おしゃれなので、盗難されないかということ。必ず施錠し、使わない時はバッテリーを外して室内で保管するのはもちろんのこと、できるだけ人目に触れない場所に置くようにしました。

価格も他社モデルと比較した限り、電動アシスト自転車の中ではやや高い気もしますが、この唯一無二のデザインを考えると、単純に値段だけで比較するのは難しいかもしれません。

見た目がおしゃれなので、家の前に飾りたいほどですが、盗難のことを考えたら隠したほうがよさそう

それ以外は、Q3のおかげで行動範囲が広がり、新しい世界を見ることができた、というのは率直な感想です。日常的な買い物はもちろん、坂の上や坂の下に住んでいる友人宅にも自転車で遊びに行けるし、仕事で煮詰まったら公園に森林浴に行ってみよう。そんな、自分がフットワークの軽い人間になったような錯覚に陥っているところです。

またぎやすい低床U字フレームなので、スカート派の筆者でも乗りやすいのも魅力
田中 真紀子

家電を生活者目線で分析、執筆やメディア出演を行なう白物・美容家電ライター。日常生活でも常に最新家電を使用し、そのレビューを発信している。専門家として取材やメーカーのコンサルタントに応じることも多数。夫、息子(高校生)、犬(チワプ―)の3人と1匹暮らし。