e-bike試乗レビュー

東京五輪のMTBコースも走れる! 伊豆を満喫したレンタルe-bike旅

最近、街中でもe-bikeを見かける機会が本当に増えています。新聞やTVなどのメディアで取り上げられることも多くなり、興味を持つ人も増えているのではないでしょうか。筆者も友人から「e-bikeを購入しようと思っているんだけど」という相談を受けることが多くなっています。

ただ、今はe-bikeを購入しようと思ってお店に行っても、お目当てのモデルが置いてある確率は高くありません。コロナ禍の影響もあり、e-bikeだけでなく自転車そのものが世界的に品薄傾向。注文しても納期が長くかかる場合もあるようです。

とはいえ、悲観していてももったいないので、e-bike Watchとしてはこの期間にできるだけ多くのe-bikeに乗ってみて、ほしいモデルを見定める機会にすることを提案します。最近は、各地でレンタルe-bikeのサービスが展開されているので、実際に走り回って乗り心地やe-bikeの楽しさを味わうことが可能。試乗イベントと違って、ゆっくり乗り味を検証できるので、いろいろ乗り回してみてから、購入モデルを決めるのも悪くありません。

MERIDA X BASEでe-MTBを借りて五輪コースへ

e-bikeのレンタルサービスがいくつもあり、走っても気持ちいい場所の1つが伊豆です。なかでも静岡県伊豆の国市にある「MERIDA X BASE」は、メリダが国内販売する全車種が展示され、そのほとんどがレンタルできる施設。もちろん、同ブランドのe-bikeも揃っています。しかも、周辺はサイクリングしても気持ちいい場所ばかり。そこで今回はe-MTBをレンタルし、e-MTBならではの楽しみ方を体験してきました。

実は筆者は初めて訪れた「MERIDA X BASE」。なんとなく遠いイメージでしたが、都内からクルマで約90分で到着。最寄りの箱根鉄道駿豆線の田京駅からは徒歩8分で、東京駅から約100分なので、思ったよりアクセスがいい
メリダとミヤタのe-bikeも数多く並んでいて、レンタルが可能。料金は2時間2,750円~と利用しやすい。1泊2日や2泊3日でのレンタルも可能なので、伊豆半島一周ツーリングなどにも使えます

今回レンタルしたのは「eBIG.NINE 400」というハードテイルのe-MTB。前後29インチホイールで、キックスタンドも装備しているので舗装路のサイクリングも快適にこなせます。オンロードを移動して、MTBコースも走ろうという今回のようなサイクリングには最適のモデル。

新色のMATT EVERGREENが追加された「eBIG.NINE 400」。価格は495,000円
ドライブユニットはシマノSTEPS「E8080シリーズ」を搭載
装着されているタイヤはノブが低めで、キックスタンドもついているのでオンロードのサイクリングにも便利

今回「MERIDA X BASE」を訪れるのに楽しみにしていたことの1つが、新たに完成したばかりだというパンプトラックを走ること。元は植物園だったスペースに作られていて、屋内なので天候を問わずに利用できます。監修したのはプロMTBライダーで、多くのMTBコースを造成・管理している高橋大喜選手。子供でも走れますが、ペダルを漕がずに1周しようとすると結構難易度が高いという絶妙なコース設計です。

プッシュとプルを使って漕がずに走るというe-MTBのメリットがまったく活かされない遊び方(笑)
レンタルMTBだけでなく、持ち込んだ自転車でも利用可能。料金は2時間で1,100円(入れ替え制)

走ってみると奥が深くて2時間くらいはすぐに経ってしまいそうでしたが、今回は予定があるので先を急ぐことに。目指すは昨年の東京オリンピックの開催地にもなった「自転車の国サイクルスポーツセンター」(CSC)です。五輪によって休園していましたが、今年3月にリニューアルオープン。五輪のMTB(クロスカントリー)競技で使用されたコースも、一部が一般利用も可能な形で公開されているので、そこを走るのが今回の大きな目的です。

MERIDA X BASEからCSCへ向かう道のりはほぼ上り。標高差は約350mで普通の自転車だと結構キツそうですが、e-bikeだと鼻歌を歌いながら上って行けます
ペダルを回していれば特に疲れることなくCSCに到着!
子どもが楽しめるアトラクションも揃っているので、家族で訪れても1日楽しめそう

今回の目的はMTBコースですが、5kmの周回できるロードコースもあります。自転車はMTBやクロスバイク、ロードバイクがレンタル可能。ヘルメットなどもレンタルが用意されているので、手ぶらで来ても楽しめます。料金はレンタルが1時間800円、持ち込みは700円で1日走れるので、かなりリーズナブル。この日はカップルや家族連れもかなり多く訪れていました。

レンタル自転車は数多く用意されていて、メンテナンスも行き届いているので安心して利用できます
富士山型のサイクルラックも

MTBコースは2つのエリアに分かれていて、一般のレンタルで走れるエリアは比較的フラットで走りやすい作り。五輪のレースでも使われたコースですが、フラットで難易度も調整されているので子供でも走れます。この日も小学生や家族連れが何組も走り回っていました。

コースを上から眺めたところ
フラットで走りやすいコースですが、随所に五輪のレースを感じさせる箇所もあって、走り回っていてもかなり楽しい

もう1つのエリアは五輪の際も“天城越え”と呼ばれていた難易度の高い部分を走れるようにしたコース。こちらは持ち込みでの走行に限られますが、激しい上り坂や岩のドロップオフもあったりして、かなり攻略しがいのあるコースです。e-MTBなら上りは大丈夫だろうと思っていたら、石がゴロゴロしていたり、途中で切り返しがあったりして勢いだけでは上り切れない作りになっています。

激しい上りというだけでなく、テクニカルな要素もあって上り切れると達成感も大きい。e-MTBでいうとアシストのパワーだけでなくコントロールのしやすさも求められます

下りのドロップオフは、結構危ないところもあるので、用意されているエスケープルートを使いながら走ります。難易度は非常に高めで当然まともに走れませんが、五輪のレースでハイライトともなっていたエリアなので「ここを走れるんだ」というだけで満足感はかなり高い。五輪のプレイベントでMTBレースを初観戦して以来、MTBレースのファンになっている同行した清水氏はかなりテンションが上がっていました。

下りはさらにテクニカルですが、オリンピックのハイライトになったところを走れるだけで楽しい
映像で見ていたときはわかりませんでしたが、この橋はe-bikeでないと上るのがかなりキツそうな斜度
ここで写真が撮れるというだけでも、訪れる価値はあると思う人も多いのでは?

自転車を持ち込めば、700円で1日走っていられるので、がっつり走りたい人にはかなりオススメ。富士山が見えるレストランなどもありますし、アトラクションも充実しているので、家族で遊びに行って、子供たちは自転車に飽きたらほかのアトラクションで遊んでいるという楽しみ方もあり。自分はMTBを持ち込んで1日走っていてもいいかもしれません。

富士山を忘れて夢中で遊んでいました

盛大に道を間違えた! でも笑っていられるのがe-bike

この日は、五輪のコースでMTBを楽しんだ後、修善寺まで下って観光スポットを巡るという計画でした。ただ、CSCを出発してから思い切り逆方向に行ってしまい、気持ちよく下って行ったら熱海に出てしまいました。下ってきた道を上って戻ると獲得標高は約450m。普通の自転車だったら、諦めて電車で輪行するか? と考えてしまうような上りです……。

ヒルクライムスポットとして有名な山伏峠。ここに来ている時点で道を間違えています
そこからのダウンヒルが気持ち良すぎて、まったく疑問を持つことなく熱海まで下ってしまいました……

これだけ派手に道を間違えて、しかも450mの標高を上らなくてはならないとなると、同行者と険悪なムードになってしまいそうですが、「もう一度上ればいいか」と考えられるのがe-bikeのいいところ。実際、かなりハードな上り坂でバッテリー残量が気になりましたが、結果的には何も問題なく上り切ることができました。

1日に2度もこの看板を見ることになるとは…。e-bikeでなければ、たぶん諦めて電車で帰ってました
そこから修善寺方面に下って行くルートもかなり気持ち良かったのですが、今度は途中で止まってきちんとルートを確認しました

伊豆エリアは大河ドラマの影響もあって、観光客が増えている地域。修善寺温泉周辺にもフォトジェニックなスポットはいろいろあり、温泉や足湯に浸かって帰るというのも気持ち良さそう。今回はMTBコースを走りに行きましたが、e-bikeで観光地を巡るというコースもありでしょう。

竹林の小径や修善寺温泉の発祥の地とされる独鈷の湯など、フォトジェニックなスポットも多く、こういう場所をメインに巡るサイクリングも楽しそう
名物のわさびソフトをいただいたり
修善寺から狩野川沿いのサイクリングロードを通ってMERIDA X BASEへ戻るルートも非常に気持ち良くオススメできます

伊豆の周辺はフラットなルートも選べますが、もともとアップダウンが多い地域。サイクリングを楽しむなら、体力に自信のない人はe-bikeがオススメです。我々は盛大に道を間違えたので、かなり余計に坂を上ることになりましたが、そうした失敗があってもリカバーできたのもe-bikeならでは。安心して道を間違えたり寄り道できるe-bikeは、ルートをあまり確定せずに気持ち良さそうな道や景色を見つけたら、迷わず寄り道するような走り方が合っていると思っていました。そして、はからずもそのことを証明してしまったような1日でした。旅先で密にならずに観光も楽しめるレンタルe-bikeでのライド。イベント試乗では気づけないe-bikeの実力も体感できますし、今だからこそオススメできるスタイルです。

増谷茂樹

乗り物ライター 1975年生まれ。自転車・オートバイ・クルマなどタイヤが付いている乗り物なら何でも好きだが、自転車はどちらかというと土の上を走るのが好み。e-bikeという言葉が一般的になる前から電動アシスト自転車を取材してきたほか、電気自動車や電動オートバイについても追いかけている。