すずまりの快眠スリープテック最前線

隣家の生活音もシャットアウト! 日常の騒音を逃れて眠れるBOSEのイヤープラグ

 誰でも不快な騒音に邪魔されず、気持ちよく眠りにつきたいものです。そんな目的で開発されたのが、今回ご紹介するBOSEの小型ノイズマスキングイヤープラグ「NOISE-MASKING SLEEPBUDS(スリープバズ)」です。BOSEといえば、イヤホンやヘッドホンの老舗メーカー。そのBOSEが開発したイヤープラグ。はたしてどのようなものでしょうか。

ノイズマスキングイヤープラグ「NOISE-MASKING SLEEPBUDS」
メーカー名BOSE
製品名NOISE-MASKING SLEEPBUDS
価格(編集部調べ)32,400円

クラウドファンディングで大注目されたイヤープラグ

 SLEEPBUDSはもともと、2017年11月にクラウドファンディングサイトのIndiegogoで先行テスターを募集したところ、応募が殺到して即募集が打ち切られたという大人気デバイス。2018年9月に日本でも発売が開始されました。

 専用の充電ケースがあり、1回の充電にかかる時間は最大8時間。フル充電で16時間の連続使用が可能になります。充電ケースにはバッテリーが内蔵されているので、1回分のフル充電ができます。つまり1晩8時間程度と考えると、本体と充電ケースで約4日間は使える計算です。色はホワイトの1色のみとなっています。

パッケージ
同梱物として、本体、専用充電ケース、専用充電アダプター、USBケーブル、トラベルポーチ、交換用のイヤーピースSとLサイズが付属

 見た目は最近よくある完全ワイヤレスイヤホン。しかし、一般的なイヤホンと違う点が2つあります。1つは、わずか2.3gと軽くて小さいうえに、しかもとても柔らかいため、耳に装着すると横になっても物理的な異物感がほとんどないこと。

 2つ目は一般の音楽再生用には使えないことです。再生できるサウンドは、Bluetoothで接続した専用のスマートフォンアプリにあらかじめ用意された10種類のヒーリングサウンドのみ(現時点)。アプリはiOS版とAndroid版が用意されています。

SLEEPBUDS本体
トラベルポーチが付属

 スマホのアプリとはBluetoothを使って接続しますが、一般の音楽再生機能は持たず、ストリーミング機能もないうえ、アクティブ・ノイズ・キャンセリング機能は搭載されていません。SLEEPBUDSで聴けるのは、専用アプリ内にあらかじめ用意された10種類のヒーリングサウンドと、7種類のアラーム音のみ。SLEEPBUDS自体で操作はできず、アラームの設定、サウンドのボリュームコントロール、サウンドの再生時間の設定はスマホのアプリで行ないます。

 つまりイヤーチップによる遮音と、アプリ内の10種類のサウンドを再生することで、睡眠を妨げる外部の不快なノイズをマスキングするという入眠~睡眠専用のデバイスなのです。非常に割り切ったシンプルで挑戦的なイヤープラグといえます。

 普段は専用充電ケースに収納しておき、使うときに取り出すと、自動的にスマートフォンとペアリングされます。あとは耳に入れるだけ。また、目覚めたら専用充電ケースに戻すだけとなっています。アラームで目覚めたときも、専用充電ケースに戻せばアラームを停止できます。

専用の充電器
充電中の様子。バッテリー残量はアプリで確認できます

 イヤーピースがとても柔らかいうえ、耳のくぼみにすっぽりと納まるため、耳を下にして横になっても負担がありません。耳栓のようにフィットするので、この時点で周囲の音が軽減される印象です。

 まったく異物感がないわけではないのですが、特に不快感もなく自然に眠れます。耳の中まで入るわけではないので、スポンジタイプの耳栓と比べると圧迫感もありません。これがSLEEPBUDSの大きな特徴といってもいいでしょう。

とてもソフトなのが分かります
耳にすっぽり収まり、飛び出さないので寝心地もいいです

 専用アプリ内のヒーリングサウンドは、雨音の「Shower」、打ち寄せる海の波の「Swell」、飛行音の「アルティツールド」、流れ落ちる滝の「カスケード」、モーター音と風を思わせる「循環する」、川の音の「ダウンストリーム」、モヤのかかった空気をイメージした「暖かい スタティック」、落ち葉の触れる音と風または雨を思わせる「Rustle」、ゆったりとしたメロディが繰り返す「Tranquility」、虫の音とたき火音を思わせる「Campfire」の10種類となっています。

 ヒーリングサウンドのうち旋律があるのは「Tranquility」の1種類で、それぞれを組み合わせることはできません。あくまでも選択した1種を指定時間に再生するのみです。もちろん夜通し流し続けることもできます。

アプリに10種類のヒーリングサウンドをプリセット

 イヤホンタイプなので、環境音もスマートフォンのスピーカーで流すよりクリアに聞こえます。特にアラーム音は頭の中で優しく響くので、びっくりして飛び起きるようなことはないでしょう。

アプリの画面
バッテリー残量はアプリでわかります

耳栓効果とサウンドによるマスキング効果で環境音が気にならない!

 まず、装着するだけで耳栓効果が期待できます。拙宅の場合、隣の部屋のシャワー音など水場の音が響くため、自分の就寝時に聞こえると眠りにくく、就寝中は目覚める心配もあります。しかし、SLEEPBUDSを装着しているとほぼ聞こえません。このほか秋の虫の音や、空調機、ファンなどの音、時計の秒針の音も聞こえなくなりました。単純にこれはありがたい効果です。

 ここにヒーリングサウンドが加わることで、さらに環境音がかき消され、頭の中に響いてくるのはヒーリングサウンドのみという就寝環境が実現します。もし真夏に持っていたら、想定外の時間にすぐそばの木で鳴き始めるセミの声も軽減できたかもしれません。

 筆者のお気に入りのヒーリングサウンドは、メロディアスな「Tranquility」と、晩秋を思わせる「Rustle」。これに45分間のタイマーをかけて入眠に利用しています。

スリープタイマーの設定画面
アラーム音。いずれも余韻のある優しいサウンドが特徴

 もともと寝付きが悪いほうではないのですが、SLEEPBUDSを使う行為そのものが入眠儀式として定着してきており、「Tranquility」が流れ始めると自然と眠る準備に入れている気がします。「Tranquility」は非常に単調で、同じサウンドの繰り返しなのですが、それがむしろ眠気を誘発しているようです。

 肩書きに反してあまり自慢できる生活習慣ではないので、定量的に就寝までにかかった時間は比べられないのですが、「Nokia Sleep」の記録では、横になってから20分少々で寝入っているようです。実際にはふとんの中でタイマーのセットや読書、横になったまま軽くストレッチすることも多いので、実際に睡眠に集中しだしてからは10分少々で寝ていると思われます。

 また、年齢的なものがあるのか、最近は中途覚醒しやすくなっています。一度目が覚めたときヒーリングサウンドが止まっていても、耳栓効果のおかげで周囲の音に注意がいかないのはありがたいと感じました。

“いびき”への効果は!?

 いびきへの効果が気になっている方もいらっしゃるでしょう。筆者の場合、パートナーのいびきというより自分のいびきのほうが心配な状態です。女性もいびきとは無縁ではありません。いびきなどかかなかった時代もありましたが、年齢が上がると自然発生してしまうようです。そのため、毎晩「いびきラボ」というアプリで、自分のいびきをモニタリングしています。

 そこで、録音された自分のいびきを耳元で再生しながらSLEEPBUDSを使ってみました。その結果わかったのは「いびきが消えるわけではない」ということでした。

「いびきラボ」というアプリに録音された自分のいびきを使って検証

 しかしまったく効果がないかというと、そうでもありません。最大にうるさいいびきをマスキングすることは不可能ですが、中程度のいびきなら、ヒーリングサウンドに混ぜてしまうことで、「不快感を抑えられる」場合もあるようなのです。

 できるだけ聞こえなくするには、ヒーリングサウンドのボリュームを上げる必要がありますが、あまり上げすぎると、むしろそれがうるさくてストレスになってしまう可能性もあるため注意が必要です。

 一口にいびきといっても個人差があります。いびきの発生タイミングを予測することはできません。そのときは一晩中ヒーリングサウンドを流し続けるほうがいいのか、人ぞれぞれの状況にあわせて対応を変える必要はありそうです。

 いびきの発生源には、いびき防止デバイスを使ってもらう、寝具を変えるなどしてもらいながら、いびきで悩む側がこのSLEEPBUDSを使うという組み合わせにすると、相乗効果で快眠に近づけるのではないでしょうか。

 ただし、途中で呼吸が止まる、再開時に爆音になるなど、睡眠時無呼吸症候群の疑いのある方の場合は、当人の治療を最優先にしてください。

いろんなシーンで使ってみた

 SLEEPBUDSは、寝室以外でも使えるのでしょうか。

 オフィスの場合、午後の昼寝など戦略的な仮眠を取りたい方は、スムーズな入眠のサポートと、さりげない目覚ましに活用できると思います。寝付くまでの時間を考慮して、20分後にアラームが鳴るようにセットし、珈琲などでカフェインを摂取してから寝ることで集中力の回復に役立てられそうです。

 自宅のデスクやカフェでは、ホワイトノイズを流しているような感じで利用できました。もともと就寝中にも異物感なく装着するようにできているイヤープラグです。仕事中に装着していても耳への負担は非常に軽いので、環境によっては、集中力を高める目的で使ってもよさそうです。

 さらに、国内線に乗る機会があったので機内で使ってみましたが、こちらはまったく効果なし。多少の耳栓効果はありますが、ヒーリングサウンド自体が最大にしないとほぼ聞こえないくらいなので、あまりいいことはなさそうです。目覚ましとして使うくらいしか使い道がないかもしれません。

環境音に悩む方にはおすすめ

 ヒーリングサウンドがまだ10種類しかないことや、無音の状況では自分の鼓動音が気になる場合があるなど、まだ気になる点はありますが、睡眠用のイヤープラグとしては、質感も含めてよくできていると思います。

 しかし、お値段が3万円以上するというのが大きなハードルになるので、その価値があるかどうか、正直かなり悩むはずです。

 周囲に気づかれずに起きる目的なら、スマートウォッチや活動量計のバイブレーションの方が向いているでしょう。SLEEPBUDSは、実際に就寝時の環境音に悩みがある方に価値が高いと思います。

 様々な理由から、隣家の立てる音が耳障りで眠れないという悩みを抱えている場合は、これで悩みが緩和されるでしょう。その結果いい睡眠が取れるなら、翌日イライラも感じず、意欲的に働ける可能性も高まります。その辺りを基準に判断してみてください。

すずまり