すずまりの快眠スリープテック最前線

いびき対策から寝具のスマート化まで、CES 2019で見てきた最新スリープテックまとめ

 1月8日から11日まで、ラスベガスでコンシューマー・エレクトロニクス・ショー「CES 2019」が開催されました。1年の始まりというタイミングで世界中のスタートアップが集結する場所だけに、その年のトレンドを占う展示会ともいわれています。私は去年に引き続き、今年もスリープテック製品のトレンドをチェックしてきました。

今年もCES行きました

CES 2019のスリープテック事情は?

 昨年から登場したスリープテックゾーンは今年も健在。もう少し規模が拡大しているかと思ったのですが、ブース数は19でエリアの規模は昨年と同等という感じでしょうか。

 専門のスリープテックゾーンだけを見ると拡大していないように見えますが、睡眠関連の製品を展示するブースはSands Expoのスリープテックゾーンだけに限らず、スタートアップが集まるエウレカパークやLVCCにも存在しました。展示内容を見る限り、睡眠そのものへの関心は依然として高いといってよさそうです。

スリープテックゾーン

 展示されていたのは、スマートマットレス、いびき対策製品、寝具や枕の温度を調節できるシート、脳波を測定できるヘッドセット、睡眠前のリラクゼーションを目的としたアイマスク、その他にスリープトラッカー、ベッドサイドライト、体内時計を調整できるアイウェア、睡眠サポートロボットなどでした。

 昨年と同じ製品の展示も多かったものの、寝具のスマート化が進み、いびき対策製品や脳波を活用したヘッドセットが増えたという印象を強く持ちました。今回は代表的な製品をご紹介しましょう。

睡眠のトラッキングなど、IoT化する多機能べッド

 場所を取るだけあって、展示品としても存在感を放っていたのがベッドです。ぱっと見では全然わからないのですが、マットレスの中にセンサーを内蔵しており、スマートフォンと連携できるなどスマート化しています。

 睡眠のトラッキング機能や、いびきを検知すると自動的に上半身を持ち上げるいびき防止機能を備えるほか、足下をあたためたり、足のマッサージ機能、室温の検知機能やIFTTT連携できるものなどもありました。2人で眠れるにもかかわらず、ベッドの動作は個別に行なえるというのも共通した特徴です。

Sleep number

 デモ用のモニタも用意して行列ができていたのは、Sleep number。展示していた「Sleep Number 360 スマートベッド」は、CES2017でInnovation Awardを受賞しているベッドで、動きを自動的に検知し、マットレスの固さを好みに合わせて調節してくれるといいます。睡眠のトラッキング機能のほか、いびき防止機能、足下のあたため機能なども備えています。

Sleep numberの展示コーナー
Sleep Number 360 スマートベッド。デモ用の映像にあわせてベッドが変化していました
MagniSmartech

 Magniflex USAの「MagniSmartech」は睡眠のトラッキング機能に心拍数、呼吸リズム、体温の検出機能、いびき防止機能、部屋の温度や明るさ、周囲の環境のノイズレベルの検出機能のほか、アラーム機能までありました。その機能の多さに驚かされます。

MagniSmartech
足下が持ち上がっています
Rocking BED

 逆にシンプルで面白かったのは、スタートアップが集まるエウレカパークで見かけた左右にスイングするだけのベッド「Rocking BED」です。赤ちゃんのゆりかごのような効果で眠れるというだけなのですが、ある意味イノベーティブだと思いました。

 たためる日本の「ふとん」と、大柄な体全体を支える欧米の「ベッド」では寝具文化が異なるというのもあり、進化の違いを感じました。

 また、日本では高反発マットレスが睡眠に効果的ということで種類も増えていますが、いずれのスマートベッドも寝心地はソフトで低反発よりの感触。このあたりの違いも印象的でした。

Rocking BED

寝具の温度を調節できるデバイスも

 枕やマットレスの温度を管理して、睡眠の質を高めようという製品も見られました。パッドやシートタイプなので、普段使っている寝具に追加して使えるところがメリット。ふとんを使用する日本人向きとも言えます。

OOLER

 マットレスの上に敷いて使うのはKRYOの「OOLER」です。本体のほかとても薄いシートでできていて、温度を43℃から15℃まで調整できるといいます。アラームはバイブレーションや音ではなく、温度で自然な目覚めを促すとか。

 Fitbit、Jawbone UP、Misfitなどと連携して睡眠をトラッキングできるだけでなく、IFTTTにも対応するなど機能的です。温冷両方のデモ機に手を入れてみましたが、優しい温かさや冷たさを感じられました。

OOLER
スマートフォンのアプリで温度を変えられます

 枕の中に入れて頭を冷やすことでスムーズな入眠を目指すのは「MOONA」です。22℃~36℃に対応し、スマートフォンで管理できます。実際に頭を乗せてみましたが、優しい涼しさでした。

 睡眠には頭寒足熱といいますが、MOONAで「頭寒」、OOLERで「足熱」をカバーできるわけです。いずれもチューブで繋がった本体があるので、両方使おうとするとベッドサイドがごちゃつきそうですが。

La French Techの「MOONA」
頭部がひんやりしました

いびき対策製品が多数登場

 今回いたるところで目にしたのが「snore」という単語。スマートベッドにも標準機能としてあるのではと思われるいびき対策機能ですが、いびきは人類共通の悩みのようで、いびきにフォーカスした製品がとにかく目立ちました。

 いびき対策は音の発生源となる当人用と、その音に悩む人用に分かれるわけですが、製品としては当人用のほうが多いようです。

いびきに悩む人は世界中に。筆者もそのひとり
Motion Pillow

 前述のスマートベッドではいびきを検出するとベッドの上半身部分が持ち上がりますが、まくらを膨らませて頭の向きを変えようというのが「Motion Pillow」です。稼働部位が4カ所あり、いびきを検出するとそのうちの1カ所が膨らみます。

 いつどのようないびきに対して、どこが動作したかをあとからアプリで確認できます。類似の製品は多いのですが、スムーズな変化と、動作音の小ささがポイントのようです。

Motion Pillow
自分の枕でも使えそうですが、厚みがあると効果が薄れそうです
SNORE CIRCLE

 いびきを検出すると、なんらかの刺激をあたえようという製品も多いものです。SNORE CIRCLEは、すでにアイマスクやイヤホンタイプがあり、日本からでも購入できますが、新たにあごに貼り付けるタイプがINDIEGOGOに登場予定。いびきを検知すると電気刺激を与えるとのこと。睡眠が中断しないか心配になります。

SNORE CIRCLE
新モデルはアゴに貼るタイプ
アゴに貼っていびきを検知するそうです
Snoring relief band

 起こさない程度の刺激を与えるとしているのは、1月6日から199ドルでトライアルをスタートしているというPhilipsの「Snoring relief band」です。お腹に巻くタイプのセンサーで、優しいバイブレーションで就寝中の体の位置を変えさせるといいます。強度やパターンは個々のニーズに応じて自動的に調整されるということですが、使用感が気になりますね。

Snoring relief band
センサーの入った本体部分
QuietOn Sleep

 いびきを聞かされる側の対策製品として、かねてより筆者もクラウドファンディングで注目していたのが、アクティブノイズキャンセリング搭載のいびき対策用イヤープラグ「QuietOn Sleep」。タップすることで、装着したままでも外部の音が聞こえるヒアリングモードを新たに搭載したといいます。

 実際に使わせてもらったところ、確かにノイズキャンセリング機能が働いていました。ただし、それがいびきのノイズに有効かどうかまで判断することはできませんでした。

 耳に装着したまま眠るイヤープラグとしては、BOSEのNOISE-MASKING SLEEPBUDSがあります。耳への負担をかなり減らそうとソフトに作られていますが、それでもまったく違和感がないわけではありません。「QuietOn Sleep」の場合は小さいながらも硬め。装着しながら眠り続けられるかどうか気になりました。

QuietOn Sleep
かなり小ぶりではあります
QuietOn Sleepをつけた状態

脳波を使って睡眠の質をアップ

 リストバンドタイプの活動量計では心拍数の測定がスタンダードになっていますが、スリープテックで注目されているのはズバリ脳波です。就寝中に深い眠りに入ったことを検出したら、脳波に働きかけて睡眠の質を向上しようとするものと、自分の意思で気持ちをコントロールし、集中力を高めたり、リラックスして瞑想しやすい状態に導くトレーニング用デバイスの2種類に大別されます。

 たとえば「Dreem」やPhilipsの「Deep Sleep headband」はいずれも音を利用して深い眠りに働きかけ、睡眠の質を高めようとする製品です。

 「Dreem」の場合、アプリとして専用のコーチングプログラムも用意されており、リラックスのトレーニングにも使えるようです。リラックスセッションを体験してみましたが、骨伝導なので耳をふさいでも音が聞こえました。耳を塞がないので、装着した状態で横になっても違和感は少ないかもしれません。

Dreem
Dreemを装着した様子
フィリップス「Deep Sleep headband」

 落ち着きや集中力をトレーニングするためのヘッドバンド型のデバイスとしては「muse」や「URGO night」などがありました。自分で習慣化するにはかなり高い意識が必要になりそうです。

muse
URGO night
URGO nightを装着してみた状態

あの製品もふたたび! その他のスリープテック製品

 このほかに、会場ではさまざまな睡眠をサポートする製品を見かけました。

 マットレスの下に敷いておくだけで、自動的に睡眠時間や眠りの深さ、心拍数、いびきの有無などを記録してくれるシート型の睡眠トラッキングデバイス「Sleep」。2018年のCESではNokia Healthのブースに展示されていましたが、今年はもとのWithingsブランドに戻っての展示となっていました。

 CES 2018で話題をさらった、呼吸のリズムを眠りやすい状態に整えてくれる抱き枕のような睡眠サポートロボット「Somnox」が今年もエウレカパークにブースを構えていました。

Sleep
Somnox

 同じく睡眠をトラッキングできるデバイスとして、指輪型の活動量計「Motiv Ring」もふたたび見かけました。指輪型なので腕時計やスマートウォッチと手首で競合しません。歩数や消費カロリー、移動距離、心拍数、睡眠がモニターでき、チタン製で防水。90分でクイック充電でき、バッテリー持ちは3日間です。

Motiv Ring

 その大きさに驚かされつつ、試す人が意外と多く見られたのは、音楽と光と深呼吸で眠りに導くというアイマスク「Dreamlight」です。素材自体は柔らかいので、つけ心地は悪くありませんが、巻いた状態を朝まで維持できる自信はありません。ちなみに美肌効果もあるそうです。

眠りに導くアイマスク「Dreamlight」

 いびきの音をキャンセリングしようというのが「QuietOn Sleep」ですが、周囲の雑音をアクティブノイズキャンセルで打ち消そうというヘッドホンが「KOKOON」です。装着したまま就寝することを前提としており、フラットな形状なのが特徴。装着したところ確かに静かになったので、ノイズキャンセリングは効いているようでした。仕事中に使いたくなるかもしれません。

KOKOON
結構ノイズが抑えられていました

 ひとくちにスリープテックといっても、製品が多岐に渡ってることがわかる展示でした。個人的にはいびき分野の進化に大いに期待しているところです。

すずまり