老師オグチの家電カンフー

激安だったダメダメ鼻毛カッターを検証する

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです
鼻毛カッターの性能の違いを可視化しようと、シリコン製の「鼻モデル」も購入

Amazonで眉毛シェーバーを物色していたら、鼻毛カッターと兼用できる製品を見つけました。USB Type-Cで充電でき、水洗い可能で、お値段なんと999円。

即ポチってみたのですが、眉毛シェーバーとしての使い勝手はイマイチ、かつ鼻毛カッターに至ってはまったく使えないシロモノでした。なにせ、鼻毛をカットしている感触がほとんどなく、イレギュラーな方向に伸びた長い毛は、何度押し当てても切れません。スペック上は立派でも、実際は役に立たないことがあるのは、人間も同じですね(辛辣モード)。

まぁ、これまで何個も鼻毛カッターを購入してきたので、安い鼻毛カッターのカット性能が低い傾向は知っていました。しかし、Amazonのカスタマーレビューを見ると、やたら高評価だったりします。たいていは、何かしらの金銭で高評価をつけるよう誘導されているからですね。詐欺師ほど見た目や経歴を立派に見せるのと同じです(辛辣2回目)。

とにかくカット性能が、10年近く使ってるパナソニックの「ER-GN20」の足元にも及ばないんで、カットして、じゃなかった、カッとして同じパナソニックの「ER-GN32-K」を注文したほどです。

こちらはUSB充電には対応していない乾電池式ですが、水洗いは可能。今どき乾電池式かよと思わないでもないですが、やはりカット能力は高く、カリカリと確実に毛をカットしている実感が得られて満足です。

しかし、この差は何なんでしょうか。外側からはわからないので内側の刃を引き出してみると、形状に違いがあります。ダメな子のほうは、内側と外側にエッジを備えた「デュアルエッジ刃」で、「天面側にくる鼻の奥の毛もきれいにカット」などと説明されていますが、奥の毛どころか、ぴろーんと鼻の外側に出るほどの長い毛すら切れません。

刃の違い。左がパナソニックで、右が某中華メーカーの「デュアルエッジ刃」。後者はエッジの鋭さに欠けるようにも見える

鼻の中のことなので直接は見えないのですが、この違いを知ってもらいたく、可視化を試みました。まずは鼻の穴の中を再現しようと、シリコン製の「鼻モデル」を購入。これに、鼻毛を模した糸状の素材を取り付けようと、100円ショップに探しに行きました。掃除用のブラシは毛が硬すぎるしなぁなどと思いながら店内をぐるぐる回って見つけたのが、「つけまつげ」。鼻毛よりは細くてやわらかいですが、長さや密度は近いものがあります。

パナソニックのエチケットカッター「ER-GN32-K」と、Amazonで購入したシリコン製の鼻モデル。鼻モデルは3個セットとあったのに、届いたのは1個だけ。まぁ3個もいらんけど
100均で何種類か購入した「つけまつげ」。レジで会計してくれた女性店員さんは何を思ったのでしょうか

つけまつげを鼻モデルの穴の中に貼り付けると、ほぼ鼻毛。ボーボーと出ている絵面は、おかしみがあります。ここに鼻毛カッターを突っ込んでカットしてみたところ、違いは出たのですが、つけまつげの取り付け方に差があるせいかもしれず、より公平な方法を考えました。

つけまつげを紙に貼り付けた状態で、それぞれの鼻毛カッターで5秒間なぞってみた結果、明らかな違いが表れました。

すでに自分の鼻ではわかっていたことですが、検証の視覚化も可能になったので、これからは「鼻毛カッターソムリエ」を名乗ろうかと思います。

鼻の穴の環境は再現されないが、紙につけまつげを貼って、そこに鼻毛カッターを5秒間当てる方法を採った
検証結果。左がパナソニック「ER-GN32-K」、右が某中華メーカー
小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>