消費増税前の家電購入術

エアコン買うなら“今でしょ!”大事なのは正しい知識と選び方

 来年2014年の4月に消費税率が現在の5%から8%へ引き上げられる。つまり冬のボーナスは、消費税5%で大きな買い物ができる最後のチャンス。住宅や車の購入を検討している人も多いかと思うが、家電Watchからはエアコンの買い替えを提案したい。

 東日本大震災以降、家電製品の省エネ性能は、各メーカー飛躍的に向上していて、もう10年以上前のエアコンを使っているという場合は、電気代が格段に違う。電気代の違いでハッキリと分かるほどだ。少なくても筆者宅の場合は、千円単位で電気代が安くなった。

 そしてこれからの冬。多くの人が、いちばん安い暖房機器はどれ? という疑問を持っているだろう。詳しくはこちらの記事、「エアコンの光熱費は暖房器具の中で一番安い――東京電力」を参照して欲しいが、エアコン暖房がいちばん安い。昨年に比べると電気代も若干値上がりしたが、原油の高騰が続き石油ストーブはエアコン暖房よりランニングコストが高い。なにせ灯油が1L、100円近くするご時勢だ。灯油缶を満タンにして1,000円でお釣りが来る時代はもう過去の話になっている。

東京電力による、暖房器具別のランニングコストとCO2排出量の比較。エアコンは他の暖房器具よりも低い数値となっている

 ちなみにガスヒーターは灯油より燃料代が高い。つまりエアコンは、冷房としてはもちろん、暖房時の機器としても、最も省エネで安いといえるのだ。

 しかしいざエアコンを買い換えようと、家電量販店を覗いてみると、各社それぞれに特徴を打ち出したエアコンがリリースされ、どれを買っていいのか分からない。ここでは、2013年冬のボーナスから消費税アップ前までにかけた、オススメのエアコンや機種選びのポイントをお届けしよう。

表示されている畳数は冷房時の場合が多く+2畳がオススメ

 ほとんどのエアコンは、冷房性能より暖房性能の方が低く、冷房では12畳を快適にできるのに、暖房はさっぱり効かないこともある。

 エアコン選びの第一歩は、何畳用のモデルにするかだ。今年からエアコンを買うという人は、カタログに記載されている「暖房時の対応畳数」を参考にして欲しい。最近のカタログや店頭のポップには、必ず冷房時と暖房時の畳数が併記されているので注意して見ること。加えて寒がりの人で、お金に余裕があればワンランク上の(だいたい2畳上のモデルになる)モデルにするといい。

 また筆者がよく聞かれるのは、今100Vモデルを使っているけど、電気工事をして200Vモデルにした方がいいのか? という質問。筆者がアドバイスしているのは、一戸建てで家の大きなブレーカーに赤、白、黒の3本の電線が見える場合は、200V化工事をオススメしている。この場合の工事費はだいたい1~2万円程度。場合によってはもっと安く済むこともある。ただ電線が2本しか来ていない(たいてい古い家屋)場合は、10万円ほどかかる大工事になるのでお勧めしない。

省エネ性能は「APF」が6.0以上がオススメ

 エアコンを買う上で、最も重視したいのが、省エネ性能だ。各社が省エネを前面に売り出しているが、やはりバラ付きがあり、十年近く使うと大きな差となる。

 おすすめは「APF」と呼ばれる値で比較すること。APFは、JISで定められた「通年エネルギー消費効率」と呼ばれる値で、夏の冷房、冬の暖房の1年を通して、一定の電力でどのぐらいの冷暖房能力があるかを示している。つまりAPFが高ければ高いほど、省エネ運転できることになり、現在5.0~7.0が主流だ。したがってAPFが5.0のエアコンで1年過ごすより、APFが7.0のエアコンで過ごしたほうがダンゼン電気代がお得というわけ。

 ちなみに2010年製のAPF4.9モデルと、最新の2013年製のAPF7.0モデルでは、次の表ぐらい電気代が違うので、侮らない方がいい。

モデルAPF年間電気代
2010年製4.935,990円
2013年製7.025,200円
2.110,790円

 このようにAPFの値が2ほど違うと、1ヶ月の電気代が1,000円ほど変わる。2013年秋に発売されているエアコンは、安いものがAFP5.0で高級機が7.0(7.2ぐらいまである)という幅を持っているので、コストパフォーマンス的にバランスの取れた6.0以上あたりがお買い得だろう。

霜取り運転中に部屋を冷やさない機種がチラホラ出はじめる

霜取り運転時の温度低下を抑える機能を搭載しているエアコンも(写真は富士通ゼネラルのエアコンnocria Zシリーズの機能)

 暖房性能でメーカー間の差が出やすいのは、室外機の霜取り運転中に部屋が寒くなってしまう問題だ。そんなのは寒い北国だけの話と思ったら大間違い。12月の横浜でも霜がびっしり付くのを筆者は確認している。だいたい、日本全国どこでも霜取り運転が見られるという。

 室外機に霜が降りたままの状態で運転を続けると暖房効率が悪くなるので、定期的に霜取り運転が行なわれる。しかし霜取り運転というのは冷房運転(暖房運転すると室外機が冷え、冷房運転すると室外機が温まる)のことで、室内機の送風機が回っていないだけの状態なのだ。それゆえ霜取り運転中(だいたい10分程度)は、エアコンから冷気がドローンと落ちるように流れてきて部屋が寒くなる。

 この霜取り運転中の寒さ問題は、エアコン暖房の宿命としてそのまま放置しているメーカーと、なんとか霜取り運転中も部屋を冷やさないようにするメーカーで温度差がある。もし今使っているエアコンで霜取り運転中の寒さが気になるようなら、運転中も温風を吹き出せる機種を選ぶといい。

部屋の形が特殊な場合は気流制御もポイント

 畳を敷き詰めていた日本家屋とはことなり、最近の住宅は部屋の形がさまざまだ。細長い間取り、四角ではなく三角や多角形、L字型などさまざまだ。普通の間取りとはちょっと違う部屋に設置するエアコンは、気流制御も見逃せないポイント。

 エアコンからの奥行きが極端にある場合は、大型のフラップやフラップが2枚搭載されている機種がいい。このような機種は遠くまで冷気や暖気を送風できる。逆に極端に幅が広かったり、L字の部屋の場合は、フラップが左右に別れそれぞれ独立して制御しているタイプがいいだろう。センサー搭載機だと、部屋の形や人のいる場所を見分けて2箇所同時に送風する機種もある。

光や人、部屋の温度を見分けるセンサー搭載機が主流に

 これまではハイグレードモデルにしか搭載されていなかった省エネセンサーがミドルレンジにも搭載されるようになってきた。センサーには、色々なものがあり、複数搭載してより高精度に省エネをする機種もある。

三菱のエアコンに搭載されている「エコムーブアイ」。中央下部にある丸いもので、運転中は左右に動く
冷房は青、除湿は緑、暖房はオレンジに光って、リモコン操作で選んだ運転を示す
光センサー部屋の明暗を感知して夜と昼、人が居るか否かを判断するもの。消し忘れて寝た場合などに自動で電源を切る
人センサー人の動きを感知するセンサーで、人が居るか否かを検知する。またおおまかな場所を検知して、風を集中させたり、逆に避けたりする
赤外線(部屋)センサー部屋の暑い(寒い)部分や人の居る場所、熱源をを見分け、冷暖房を集中できる。部屋の足元から天井まで温度管理をしているのが特徴。また人がいないことを検知してエアコンをアイドル運転または停止させる
カメラセンサー人と同じように画像として感知し、部屋の形やどこに人が居るか? 家具はどこに配置されているか? を判断して運転をする

 エアコン本体の省エネ性能は、センサーの有無ではなく、先に紹介したAPFで比較したほうがいい。センサーの違いで機種選びをする場合は、次のような場合だ。

・エアコンを消し忘れてしまう(光、人、赤外線、カメラ)
・家にいる家族が多く、リビングの出入りが多い(人、赤外線、カメラ)
・エアコンの風に直接当たりたい、逆に当たりたくない(赤外線、カメラ)
・直射日光が差し込むなどで部屋の温度にバラつきがある(赤外線)

事例光センサー人センサー赤外線センサーカメラセンサー
エアコンを消し忘れてしまう
家にいる家族が多く、リビングの出入りが多い
エアコンの風に直接当たりたい、逆に当たりたくない
直射日光が差し込むなどで部屋の温度にバラつきがある

リビング用ならお掃除機能を備えたものがオススメ

 エアコン暖房で忘れてはならないのが、日々のメンテナンスだ。せっかく省エネエアコンを選んでも、フィルター掃除を怠ると電気を食うようになってしまう。人の出入りが多いリビングや洗濯物を取り入れるなど、ホコリが立ちやすい部屋には、必ずお掃除機能のついたエアコンを選びたい。運転を終わるたびに掃除をしてくれるので手間いらずで、省エネ性は買ったその日のまま持続される。

 お掃除機能を内蔵したエアコンの難点を挙げるとすれば、従来機に比べて本体の奥行きが20~30cmほど出っ張る点。据え付けの家具や間取りの問題で、奥行きが確保できない場合以外は、お掃除機能は必需品としていいだろう。

各メーカーのオンリーワン機能で選ぶ

 エアコンメーカーによっては、他社がマネできないオンリーワンの機能を持たせているものがある。代表的な例を一覧にしてみたので、参考にして欲しい。

ダイキン室外機が外気から水分を得て、無給水なのに部屋の加湿ができる「うるる」加湿を搭載している。室外機の高さが10cmほど高くなるのが難点
三菱エコムーブアイで特殊形状の部屋や日差しの強くエアコンの効かない場所、人がいる場所などを賢く検知して、左右独立フラップで2カ所に送風する
東芝エアコンを運転しているだけで、花粉やカビ菌、黄砂にウィルス、さらに今問題となっているPM2.5という極小微粒子も取り除ける本格的な空気清浄機能を持つ
日立赤外線とカメラセンサーを持ち、日差しの入っている場所や部屋の熱源、人がどこにいるかだけでなく、部屋にいる人数や肺活量まで考慮した制御を行なう
パナソニック暖房運転中に室外機で発生する熱をエネチャージシステムに蓄熱し、霜取り運転中に部屋を冷やさないように暖気として放出するエコなしくみを持つ
富士通ゼネラル送風運転のみを行なうサイドファンが特徴。サーキュレーター的な役割で、室内の気流を効率的にコントロールする
加湿機能を搭載したダイキンの「うるさら7」。写真は12月10日発売のRシリーズ
パナソニックの「Xシリーズ」。霜取り運転中に部屋を冷やさない機能を搭載
日立の「ステンレス・クリーン 白くまくん Zシリーズ」。2つのカメラできめ細かい制御を行なう
東芝の「プラズマ空気清浄エアコン 大清快GDRシリーズ」。エアコンとして唯一PM2.5に対応する空気清浄機能を備える
三菱「霧ヶ峰 Zシリーズ」。独自のムーブアイ機構による制御が特徴
富士通ゼネラル「nocria(ノクリア) Xシリーズ」。室内機の両サイドから風を送って快適に空調する

室外機にも一工夫するとさらにエコ性能アップ!

ダイキンの「うるさら7」の室外機。加湿機能を搭載しているため、一般的なエアコンの室外機よりはやや大きめ

 エアコンの電気代を大きく左右するのは設定温度というのはよく知られている。でもあまり知られていないのは、室外機の風通しのよさだ。エアコンの設置は、電気屋さんがやってくれるので問題ないが、室外機の前を物置にしてしまったりしていないだろうか?

 さらに室外機が家の景観を損ねるといって、木製のラティスなどで囲いをしていないだろうか? エアコンの室外機は、夏は部屋の熱気を外気に放出し、冬は外気の温度を室内に取り込むという働きをする。

 つまり空気の抜けが悪いと、冷房や暖房の効率が悪くなるので、省エネ性が損なわれ電気代が高くなってしまうのだ。もしベランダが狭い場合は、壁に吊り下げたり、地上もしくは屋上に設置するなどの相談をしてみるといいだろう。多少工賃がかかるかもしれないが、電気代に大きく跳ね返ってくる場合もある。

 エアコンは家電の中でも長く使うもの。いい買い物をするためにも事前の機種選びが重要だ。

藤山 哲人