家電ラボの徹底「本音」レビュー

加湿器3方式を比較! 電気代、性能、手入れしやすさ徹底検証

家電プロレビュアー・石井和美が、レビューハウス「家電ラボ」で徹底的に試した「本音」の製品レビューコーナーです。
左からダイニチ工業「HD-RXT525」、象印マホービン「EE-FA50」、シロカ「SD-5HC151」

乾燥した季節に欠かせない加湿器。主に「超音波式」「気化式」「スチーム式」の3つの方式と、それぞれを組み合わせた「ハイブリッド式」があり、加湿方式が異なれば、使用感や効果にも差が出ます。

「超音波式」は水を細かな霧にして放出する方式で、静音性が高く省電力ですが、こまめな清掃が必須です。最近のトレンドは、水を加熱してから霧にする「加熱超音波式」で、製品も増えてきました。いったん加熱するので衛生的です。

「スチーム式」は水を沸騰させて水蒸気を出すので衛生面で安心感があり、加湿量も安定しますが、消費電力は高め。お手入れは電気ポットと同じで簡単です。

「気化式」は水を含ませたフィルターに風を当てて加湿。電気代を抑えやすく、過加湿しにくいのが特徴ですが、フィルターの掃除が少々面倒で、空気も冷えやすくなります。「気化式」には、温風を当てる「加熱気化式」もあり、こちらは気化式よりもパワフルです。

今回は、スチーム式の代表として象印マホービン「EE-FA50」、加熱気化式の代表としてダイニチ「HD-RXT525」、加熱超音波式の代表としてシロカ「SD-5HC151」を使用し、加湿性能や電気代、お手入れのしやすさを中心にチェックしました。いずれも、適用床面積が木造和室8畳前後、プレハブ洋室14畳前後で統一しています。

象印のスチーム式加湿器は安全性が高い

象印の中でも、STAN.シリーズは若い世代向けらしい、すっきりとしたデザインが特徴です

スチーム式加湿器の代表として選んだのが、30代の共働き世帯や子育て世帯を中心に支持されている「STAN.」シリーズの「EE-FA50」です。タンク容量は約4Lで、約8時間運転可能。直販価格は33,000円ですが現在は売り切れ……。適用床面積が同じで、STAN.シリーズではなくデザインなど一部が異なるEE-DF50はまだ在庫があるようです(12月23日時点)。

水を沸騰させて水蒸気で加湿するため衛生面に配慮しやすく、電気ポットと同じ構造でお手入れも簡単です。フィルターがないので、使い終わったら水を捨ててサッと洗うだけ。ただ、使い続けると落ちにくい白い汚れがついてくるので、クエン酸などで1~2カ月に1度はしっかり掃除することが必要です。

中身は電気ポットと同様で、フィルターなどはありません
フタを外せるので水の交換やお手入れも簡単!

スチーム式加湿器はお湯を沸かして加湿する仕組みのため、小さなお子さんや高齢の方がいる家庭では、安全性にも配慮した製品を選びたいところです。この製品はチャイルドロックを備え、ふたのロックなど安全機能も充実しています。さらに、吹き出し口から出る蒸気は、独自の冷却構造により約65℃まで下げられており、うっかり手を近づけてしまっても、思わず声が出るような熱さを感じにくい設計です。

吹き出し口は「あつっ!」とはならない温度です
吹き出し口も分解してお手入れできます

寝室やリビングで使いやすい点も特徴。スチーム式は、湯沸かし時の「コポコポ」という音が気になるモデルもありますが、本機は湯沸かし音や加湿中の運転音が抑えられており、比較的静かに使えます。湿度と室温を検知するセンサーによる自動加湿調整にも対応し、運転モードは、ひかえめ(湿度40%)、標準(同50%)、しっかり(同60%)の3段階から選択できます。

正面に操作部があるので、上面に操作部があるタイプよりも操作はしにくい

タッチパネル式の操作やデジタル表示、切タイマー、給水お知らせ機能など、使い勝手への配慮も行き届いています。縦長のスリムなフォルムで省スペース設計です。

ダイニチの加熱気化式加湿器はお手入れがしやすい

スクエアデザインで薄型です

ダイニチの「HD-RXT525」は加熱気化式の加湿器。送風で加湿する「気化式」と、ヒーターで加湿をアシストする「温風気化式」を組み合わせています。湿度が低いときは自動で「温風気化式」に切り替わり、立ち上がりからパワフルかつスピーディーに加湿できるのが特徴。タンク容量は約5L、標準モードで約10時間使用できます。実売価格は26,290円。

気化式はお手入れが大変なので、一度使った経験があると敬遠してしまう方もいるかもしれません。少し手入れを怠ると、水道水に含まれるミネラル分(水アカなど)がフィルターに付着し、白い粉や黄ばみが目立つようになります。カビや雑菌も繁殖しやすくなるので、清潔に使うためにはクエン酸などを使った定期的なお手入れが欠かせないのが一般的です。

水にフィルターを浸し、フィルターに風を当てる方式です。写真は付属の抗菌気化フィルター使用

こちらの製品もフィルター掃除は必要ですが、別売で使い捨てタイプの抗菌気化フィルター「カンタン取替えフィルター」が用意されており、汚れが気になったら交換するという選択肢があります。交換の目安は3カ月。実売価格は2個入で2,845円です。

汚れたら交換するだけの使い捨てタイプ
使い捨てタイプはピンク色です

さらに、トレイには「カンタン取替えトレイカバー」を採用し、こちらも汚れた場合は交換するだけで対応可能。タンクのキャップには「Ag+抗菌アタッチメント」を搭載し、銀イオンの作用で菌の繁殖を抑えることができます。

こうした工夫により、気化式の弱点とされがちなお手入れの手間を軽減している点が支持されています。気化式ならではの自然で清潔な加湿と、扱いやすさを両立しているのがダイニチの特徴です。

「カンタン取替えトレイカバー」があれば、細かいところを掃除しなくて済みます
フタに備えられた「Ag+抗菌アタッチメント」

超音波式のデメリットを改善したシロカの加熱超音波式加湿器

ライトやアロマ機能も。超音波式らしい多機能な点も魅力

シロカの「加熱超音波式加湿器 SD-5HC151」は、超音波式にヒーター加熱を組み合わせたモデルです。一般的な「超音波式」は蒸気ではなく振動で霧(ミスト)を発生させるため、雑菌が繁殖しやすいという弱点がありますが、本製品は水をいったん約75℃まで加熱してからミストを放出するので、雑菌を抑えられます。実売価格は14,960円です。

超音波式なのでミストが目に見えます。電子機器はそばに置かないようにしましょう

実際に出てくるミストの温度は約50℃で、手をかざしても「少しぬるい」と感じる程度。やけどの心配はありません。さらに、水タンク内には銀イオンユニットを搭載し、菌の繁殖やぬめり、カビを抑制。タンク内を衛生的に保ち、清潔なミストで安定した加湿が行なえるよう配慮されています。

水タンクにはしっかりしたハンドルが2個ついています
銀イオンユニット

水受けや水タンク、ふた、吹き出し口には抗菌加工が施されており、雑菌の増殖を抑えられます。一方で部品点数が多く、お手入れはやや手間に感じました。ただし、ヒーター部分にスケール(水道水中のミネラル成分が固まったもの)が付着するのを防ぐ、使い捨てタイプのスケール吸着パッドが付属しています。汚れやすい部分で、他社製品ではここの掃除にいつも苦労していましたが、交換用(6枚入り、980円)も用意されているので、こちらを使えば手間がありません。

ココ、かなり汚れるのですが、使い捨てなら安心です

なお、超音波式は水道水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのミネラル分がミストとともに放出され、乾燥後に白い粉(ホワイトダスト)として家具などに付着することがあります。本機は加熱を行ないますが、気化式ではないため、ホワイトダストを完全に防ぐことはできません。

水タンク容量は約5Lで、最大約10時間は給水せずに使用できます。上部給水式のため、タンクを外さずに注水できる点が特徴ですが、実際にはケトルなどで何度も水を運ぶのが手間に感じたため、水タンクを持ち上げて直接給水し、そのままセットして使っていました。タンクにはしっかりとしたハンドルが付いており、持ち運びもラクにできます。

さらに設定した湿度に合わせて自動で運転する「自動モード」や切タイマーを搭載。水性のアロマオイルにも対応しており、加湿しながら香りを楽しめます。

このフットライトがとても便利で気に入っています。落ち着く色合い

ほかの加湿器ではあまり見かけないフットライトも便利でした。夜間に使う際、足元をやさしく照らしてくれるため、暗い部屋でも補助灯として使えます。

加湿能力は3製品とも優秀、電気代には差

テストは、木造一戸建て2階の6畳の部屋で行ないました。エアコンは暖房モード21℃に設定し、室内の湿度が55%前後になるよう調整した状態からスタートしています。加湿器は部屋の一番奥、エアコンの吹き出し口付近の棚の上に設置。計測器は対角線上で最も離れた、ドア前にあるベッドの上(床から約60cm)に置きました。

加湿器の設定は、象印が「しっかり(60%)」、ダイニチが室温に応じて湿度を自動調整する「のど・肌」運転、シロカがおまかせモードの「しっかり(70%)」です。いずれも水タンクは満水にし、2時間運転した結果を計測しました。

ダイニチは立ち上がりが早く、湿度が70%台に達するとキープ運転に切り替わり、必要以上に加湿されることはありませんでした。シロカも加湿スピードは速いのですが、湿度が80%を超え、最終的には90%近くまで上がりそうな印象です。一方、象印は冷水から加熱するため、湯が沸くまでにやや時間がかかりましたが、その後はぐんぐん湿度が上がりました。

ダイニチは素早い立ち上がり
シロカは90%近くまで加湿
象印は湯が沸くまでにやや時間がかかる

電気代は2時間運転で、シロカが約8.6円、ダイニチが約9.6円、象印が約31円という結果に。象印は運転開始時に水を沸かす工程があるので、ほかの方式に比べて電気代は高めです。

消費電力比較

最新モデルは、それぞれの弱点を克服

加湿器にはそれぞれメリットとデメリットがありますが、現在販売されているモデルは改良が進み、どれも使いやすく、加湿力もしっかりしていることが分かりました。電気代には差があり、象印はやや高めでしたが、フィルターレスで部品点数が少なく、お手入れのしやすさという点では優れています。

加湿器は毎年新モデルが登場する一方、基本的に売り切り販売のため、シーズン後半には入手できなくなる機種もあり、象印STAN.シリーズは既に入手困難になってきています。気になるモデルがあれば、早めに購入しておくことをおすすめします。

石井 和美

家電プロレビュアー。白物家電や日用品のお役立ちグッズなどを中心に製品レビューを得意とする。テストスペースとして守谷市に一戸建てタイプの「家電ラボ」を開設し、冷蔵庫や洗濯機など、大型家電のレビューも行なっている。レビュー歴10年以上。

http://kaden-blog.net/