藤山哲人の実践! 家電ラボ
まともに焼けるピザ窯がなかったから作りました! タイガーの本気度がヤバイ!
まともに焼けるピザ窯がなかったから作りました! タイガーの本気度がヤバイ!
2017年3月27日 07:30
炊飯器や湯沸しポットで有名なタイガー魔法瓶。そのタイガーが牙をむき出した! がお~っ!
その製品とは、電気ヒーター式のピザ窯。しかも家電量販店で売っていない業務用だ! うぬー、かなり鋭い牙。
これまでも業務用の炊飯器などを手がけてきた同社。民生機あっての業務用だったが、ピザ窯は違う。なんと業務用オンリーなのである。尖ってるなぁー、タイガーの牙!
そんな、お店では買えないピザ窯をどうやって紹介すればいいのか? 編集部で悩んだ結果、家電Watchの傭兵こと「こちらスネーク・藤山」が、牙をむくタイガーに潜入取材することになった。
潜入先は大塚にあるタイガー魔法瓶の東京支社。この界隈は道路という名のざん壕が複雑に張り巡らされており、駅から歩いて4分と聞いたのに、1分も歩いたら迷子になってしまった(笑)。
秘密のヴェールに隠された同社にたどり着くと、対応してくれた広報さんはフレンドリー。どうやらオレから溢れ出る「動物愛」で、牙をむくタイガーをフレンズ化できたようだ。
とはいえ社内に入るには、歓迎の儀礼を受ける必要があるということで、まずはショールームに通された。残念ながらここは商談スペースなので、一般には公開されていないとのこと。なので、知ってる! 知ってる! 的な商品写真を並べておこう。
結果から言おう! イタリアンレストランのピザが焼ける!
歓迎の儀を受けたあとに通されたのは、キッチンがある会議室。土足禁止で靴を脱いで上がるという。より一般家庭に近い環境を再現するために、キッチンスタジオみたいな会議室が何部屋もあるのだ。「ちょっとした撮影なら社内で済ませちゃえ!」なんて邪心からではなく、あくまでも消費者視線で企画を検討したり、製品をレビューしたりするためだろう。消費者の視線、大事!
さてこの手の調理家電(業務用だから家電じゃないのか?)は、スペック、機能云々より、できたブツを食うのが一番。ということで広報部の結城 咲さんに、実際にピザを作っていただいた。
あらかじめ仕込んで発酵させた生地は、マシュマロのようにふわふわで、大きさは肉まん2個ぶんほど。これを25cm程度に丸く広げていく。
タイガー社内にはピザ窯を開発するにあたり、ピザ屋さんで修業を積んだというエンジニアさんがいて、その腕は職人級という話。見本市やセミナーなどでは、そのエンジニアさん自らがピザを焼き、商品の説明をしてくれるので、試食品が飛ぶようになくなっていくという。残念ながらこの日は出張中ということだが、開発チームはもちろん広報チームにも、そのテクニックは継承されているようだ。
生地を軽くこね、パーラーの上に丸く広げるまで、5分もかからない。そこにトマトソースを薄く塗り、チーズとバジルの葉を載せるそう。今回作っていただいたのは、生地の味がダイレクトにわかる、シンプルなマルゲリータだ。
今回はイタリアンレストランに取材に来たわけじゃない(笑)。取材中も何をメインに取材にきているのか、テーマを見失うことがあるほど本格的でビックリだ。
いよいよ窯に入れる。ピザパーラーを窯の奥まで差し込み、サッ! と引くことでピザは窯の中へ。
焼くこと2分半。上部からはオレンジ色のカーボンヒーター2本、下からもヒーターで加熱。なんと言っても特徴的なのは、炭を超高圧で圧縮し焼成した天板(炉床)。炭は蓄熱性が高いので、安定した温度で底からピザを焼き上げてくれる。
また驚かされたのは、庫内は320℃という高温なのに、焼き窯に触っても熱くない点。逆に言えば、庫内の熱が外に逃げないということだ。
イタリアンレストランなどでは、数分焼いたらピザパーラーを窯に差し込み、中のピザを回転させて火の通りを均一にする必要がある。しかしこのピザ窯は、周りに触れても熱くないほどの保温性と炭製の炉床の蓄熱性、庫内の放射熱で、自然に熱対流が起き、わざわざピザを回転させなくても均一に熱が入るという。
そしてできあがったピザがコレだ。
焼きたてのピザは、ほどよくチーズがとろけ、耳や生地の裏にできるコゲは、まさにイタリアンレストランで食べるピザと同じ。ちなみに一般的なデリバリーピザは、ベルトコンベア式のオーブンで焼くので、底面の焼き色がトースターと同じ茶色になる。
試食してみるとソースの載ったチーズはトローリ、そしてかじったときにサクッっと感の直後にくる、モチモチフワフワの生地。瞬間的に繰り出される食感のコンボは、イタリアンレストランのピザそのもので、ブラボー! でヴォーノ! だった。
グラッチェ! タイガー魔法瓶!
お値段はなんと50万円! まぁ業務用としてならお買い得
イタリアンレストランのピザが焼ける、電気式ピザ窯。価格はオープンプライスだが、タイガーの直販サイトでは50万円(税抜)となっている。ただし通常は、相談窓口に連絡するか、飲食店用の機器類を販売する代理店経由で購入する。
スペックを見てみると、窯の上部には1,200Wのカーボンヒーターを利用。窯全体は厚さ20mm程度の断熱構造になっている。また炉床は、炭素を5万トンの圧力で成型し3,000℃で焼成した、7.5mm厚の高密度炭板を使っている。この炉床は下部から200Wヒーターで加熱し、余熱で炉床内に蓄熱しているので、下からも均一に火が入る設計になっている。
温度設定は180~320℃に10℃単位で設定でき、設定温度と現在の窯内の温度が表示できる。その表示機構は、昔の切符の販売でよく使われていた7セグメントLED。いまどきの家電は液晶なので、7セグメントLEDがいかにも業務用っぽくてカッコイイ!
なお余熱には25分かかるが、以降は2分のインターバルを置いてピザを焼くことが可能ということだ。またタイマー機能も付いているが、設定時間をアラームでお知らせするのみで、業務用ゆえ電源を切るなどはしないようになっている。
外観の特徴となっているタイルは、岐阜県の多治見で職人さんが1枚1枚手で貼り込んでいるため、同じ柄の製品は1つたりともない。
このようにモロ業務用向けのスペックながら、電源は一般家庭用の100Vコンセントから取れ、新聞紙1面ほどのスペースがあれば設置可能と、手軽さは民生機(笑)。
主に導入しているのは、ホテルやイタリアンレストラン、喫茶店やカフェなど。200Vの電気式ピザ窯が大きすぎて導入できない場合や、消防法などの問題でガス式のものが導入できない場合などの引き合いがある。
「ピザ窯を導入したいがキッチンにスペースがない」「お客様の見える場所に設置せざるを得ないが、店内のインテリアイメージを壊したくない」という、小規模な喫茶店や居酒屋店などからの相談も多く、メニューの拡充にオススメとしている。ちなみにタイガーの試算によれば、200V式に比べると電気代が年間最大13.5万円程度、ガス式に比べると年間最大65.5万円もランニングコストが安くなるという(業務用の数値なのでパネェ金額!)。
またタイガーによれば、学校からの引き合いも多いそうで、学園祭などの出し物などにも利用されているという。車を改造した移動式店舗も近々営業を開始するということだ。
さらにピザ以外にも、次のようなメニューにも対応でき、専門家を迎えて多彩なメニューを提案している。
さすがに個人では手が出せないが、このピザ窯を導入してさまざまなメニューを提供している店舗の一部をメーカーから教えてもらった。「味が気になる!」という方は、ぜひ店を訪れて見て欲しい。また飲食店を営んでいて興味を持たれた方は、タイガー魔法瓶に問い合わせてみてはいかがだろうか。
●店舗情報
・「八丁堀バル873」※夜のみピザ提供
・リーガロイヤル東京 1F「ダイニングフェリオ」