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家電量販店の「秘密と裏技」ビックカメラに聞いた 上手な買い物どうすればいい?
2024年7月19日 09:05
ビックカメラ、ヨドバシカメラ、ヤマダデンキ、エディオンなど日本全国に多々ある家電量販店。みなさんはそれぞれの店にどんなイメージを持っているだろう? 通販するならなんとなく「ヨドバシ」、週末家族でスーパーと一緒に訪れる「ヤマダ」、近くにある「エディオン」のような選び方もされるかもしれない。おそらく「近所にその店舗がある」という以外に、これを買うならここ、という店舗がなんとなくあるんじゃないだろうか?
ビックカメラはどうだろう? ユニクロとコラボ店を出店したことがあったり、各店舗で違うイラストの可愛いマスコットキャラ「ビッカメ娘(むすめ)」がいたり、ちょっと詳しい人だと「他では手に入らない超レア品」や「限定品」などの尖った商品が多いというイメージではないだろうか。
そんなちょっぴり尖った国内売り上げ第2位の「ビックカメラ」のバックヤードをのぞいてみよう!
そもそもなんで「BIG」じゃなくて「BIC」?
「茨城県」を「いばら“ぎ”」、「ねぷた祭り」を「ね“ぶ”た」と呼ぶと地元民の空気が悪くなるのはご存じの通り。実はビックカメラも「びっ“く”」と、濁点が付かない。英語表記もよく見てみれば「Big」ではなく「Bic」なのだ。
これは創業者がバリを旅しているとき、現地の言葉で「Bic」というスラングがあり、「Big」の意味を持ちながらも「大きく、重く、広く、純粋に」という意味を持つことから、そのまま会社名になったという。中でも「大きく」は、物理的に大きいだけでなく、中身も大きいという意味がある。人間で言うなら、体も心も大きい「ショーへー・オータニ」のような存在だ。
マニアックな店員さんが作る売り場だから、マニアのお客さんが納得する
ビックカメラはマニアックな製品や限定品に強い。これはイメージではなく、本当に強いのだ。それを支えているのが社内の「マイスター制度」。
ビックカメラには、趣味が写真でカメラを使いこなす「カメラマニア」や、ヘッドフォンやイヤフォンなら何でもござれ! お客さんの耳を見ると、一瞬にしてピタリと合う市販のイヤーピース(イヤフォンに付けるゴムの部品)を提案してくれるヘッドフォンやイヤフォンのマイスターがいる。
取材した有楽町店に在籍するシニアマイスターの百武さんに耳を見てもらうと「ははー! 珍しいですね。あなたの耳の穴は下の方に向いている。反対の耳はごく一般的ですね。右側のイヤフォンをよくなくしたりしないですか?」という。
話を聞いていると耳鼻科の医者か? と思うが、それだけ多くの人の耳の穴を見てきたマイスターなのだ。さらに話は続き「どんなジャンルの曲を聴くのか?」などで会話が弾み、それらを総合して密着性の高いイヤーピースなのか、少し余裕を持たせたピースなのかを選んでいるようだ。
しかもあまり知られていないのだが、実はイヤーピースの専門メーカーが数社あって、1つ1,000円ほどで色々な耳用のイヤーピースがあるのだ。
取材に同行した友人は、年中ヘッドフォンをして音楽を聞きながら仕事をするマンガ家。マイスターの話に食いついて、出されたイヤーピースに替えてみると「おお! なんじゃこりゃ! 音が全然違う!」「しかもノイズキャンセリングの具合がすごい!」と絶賛するほどだった。
ビックカメラがいわゆるマニア指向というのは、こうしたマニアックな店員さん、そして社内でマイスターとして認められた店員さんに、店づくりの権限が譲渡されているからこそ。マニアックなお客さんが納得する商品ラインナップになっているのだ。
ビックに行けば何かある! そんなワクワクを作っている
ビックカメラはマニアックなお客さんだけを相手にしているわけではない。「お客さんにワクワクしてもらう店舗づくり」をモットーとしているという。
一般の家電量販店がやっている、1カ月ごとのレイアウト変更はもちろんだが、週1で変える部分や、店舗前でイベントを開催している店もあるという。取材当時に有楽町店で開催されていたのは「日本全国ラーメン祭り」だ。
「イヤ、家電とまったく関係ないんだけど……」とツッコミたいところだが、なんとなく見てしまうから不思議。そして「え! マジか! こんなにたっかいインスタントラーメンあんのか!」みたいな驚きがあるのだ。
また全国にある店舗は、それぞれ特徴を前面に出したレイアウトになっているので、見比べてみると面白いと教わった。
たとえば秋葉原なら1~2階にゲーミングPCやeスポーツ系の品々が並ぶ。だが筆者が出張先で驚いたのは、静岡県浜松駅に隣接する店舗。一般的にスマートフォンが並んでいることの多い入口に、なんと! プラモデルコーナーがあるのだ。しかもエアブラシや工具、塗料まで並ぶ広い売り場。それもそのはず、静岡県はプラモデルの聖地。それだけにビックカメラも地域性を押し出した店づくりをしているのだという。
特売品や季節もの、変わりモノはエスカレーターを上がって回遊
ビックカメラ有楽町店の店長さんによれば「当社は自社ビルが少なく、借りている場合が多いです。ビルの間取りなどが店舗ごとに大きく異なるので、各店舗で共通した陳列ルールが特にないんです」ということだった。しかしフロアを回遊できる通路を設け、お客さんにイチオシ商品を見てもらいやすくしている。複数階ある場合は、エスカレーターを降りた正面を起点に回遊路があるという。
まずエスカレーター正面には、季節ものや話題の商品が並べられていることが多く、たくさんのお客さんの目に触れるようにレイアウトされている。
また回遊路を取り巻く左右の通路には、売れ筋やお買い得品が並べられているので要注意! 中でも陳列棚の通路に向いた面を「エンド」と呼ぶが、ビックカメラ自体が「変わりモノ大好き」なので、他店では見たことのない「尖ったもの」「変わったもの」が並べられていることが多い。人と違うアイテムを手に入れたいマニアは、ここに注目したい。
回遊路から見える範囲内には、ビックカメラのオススメやお買い得品が並んでいる。こちらで注目すべきは黄色のプライスカードだが、詳細は次項に譲ることにしよう。
回遊路から奥に入ると、少し前に流行ったものや、回遊路には並べきれなかった商品が並ぶ。いわゆる型落ちの価格をチェックするならココだ!
黄色プライスカードに注目!
例えばテレビが欲しい! 電子レンジが壊れたので買い替えたい! などでお店へ行くことも多いだろう。そんな時に目的のコーナーに着いたら、必ずすべきビックカメラならではの所作がある。
それが「まわりを見渡し黄色いプライスカードがないか探す」ことだ。
同店では「とくにお買い得品」「数量限定の値引き品」などは、黄色のプライスカードや大きな黄色の紙に書かれたプライスが貼られている。これは回遊路を歩いていても目立ち、数m先からでも確認できるので、今すぐ必要なわけではないものも、チェックしておくといいだろう。
もうひとつ見逃せない「赤」と「黒」のビックオリジナル商品
店舗を回っていると、もう1つ気付くことがある。それは真っ赤を基調にしたパッケージで「ORIGINAL BASIC」と銘打たれているもの。
お察しの通り、これらはビックカメラオリジナルのいわゆる「プライベートブランド」と呼ばれる製品だ。真っ赤なパッケージは、乾電池からトースターや炊飯器まで、暮らしに欠かせないモノを、安心の品質でお買い得価格で提供するというコンセプト。
特に人気なのは、テレビのリモコンと電池ということだ。リモコンは2つ目の予備として購入する人が多く、電池はリモコンや子供のおもちゃ用のストックにという人が多い。
一方で黒いロゴの「ORIGINAL BASIC」も存在する。こちらは「ワンランク上の品揃えとして、他社にないアイデアでお困りごとを解決するようなオリジナル商品を提供しています」と、商品企画開発室の渡邊さんは説明する。
「プライベートブランドは海外から安いものを輸入して、パッケージだけ変えて売ってるんでしょ?」と思われる方もいるかもしれない。実際にそういう店もある。でもビックカメラは違う。
渡邊さんによれば「ビックカメラでは年間の開発計画があります。これに基づいて専属の商品企画担当がバイヤーと連携しながら全国のメーカー様と協業し、ワンランク上の機能、プラスワンの便利さ、お求めやすい価格、安心の品質を追求して開発し、店頭に並べています。これがビックカメラのプライベートブランド商品です」とのこと。
筆者が驚いたのは品質管理だ。量販店だけにメーカーを横断して炊飯器や冷蔵庫、ハンディファンなど、それぞれの商品カテゴリ特有のクレームや故障の情報を持っているのが強味。
クレームや修理受付では、利用環境などもお客さんから直接聞けるので、想定外の暑さ寒さの中での利用、荒く使ったゆえの破損や故障などを機器ごとに集約できる。
この情報を基に操作性改善や耐久性向上を設計・開発段階でフィードバック可能だ。さらにメーカーとは異なるビックカメラ独自の信頼性や安全性、耐久性や破壊の試験などを行なっている。いってしまえば「あと出しの良いとこ取りの製品」が作れる。それがプライベートブランドなのだ。
客目線で見ると「得体のしれないプライベートブランド」かも知れないが、内情を聞いてみると「メーカーさながら」というより「メーカー以上に品質にこだわっている」のがビックカメラのプライベートブランド「ORIGINAL BASIC」といえるだろう。
どの販売店でも使える「上手な買い物テクニック」
さてここで販売店側から見た、上手な買い物のテクニックを伝授してもらったので、ぜひ実践してほしい。特に買いたいメーカーやモデルが決まっていない時に使えるテクだ。
1.今使っている家電の好きなところ・嫌いなところ
家電はだいたい壊れてから買いに行くので、今まで使っていた家電の悪口ばかりになってしまいがち。しかし今日の今日まで使っていたので、どこかしら気に入って使っていたところもあるハズ。店員さんには、良かったところ、悪かったところの2点を話すと、好みに合った家電を教えてもらえる。
2.冷蔵庫や洗濯機、テレビはサイズを計ってからお店に行く
家電そのもののサイズはもちろん、家電の上下左右にどんな隙間があり何が置いてあるかもメモしてあると、ドアの開きなどを考える場合に店員さんがイメージを掴みやすいという。
また大きなテレビの場合は、AVラックのサイズや壁際までの距離、窓の位置や大きさも計って行くと、どのサイズがベストかを選びやすくなるという。
3.冷蔵庫や洗濯機は搬入経路も調べて行くといい
階段がある場合は階段の幅や手すりの有無、ドアを通過する場合はドアを開けた状態で左右の幅を調べてから行くと、アドバイスしやすいということだ。
@@em|s|4.ネット通販でも17時までに購入すれば当日店舗で受け取り可能
これはビックカメラに限りだが、店舗に在庫があれば、17時までに「店舗受け取り」指定で購入すると、当日に店舗で受け取れる。また実際店舗に足を運んだが、その店には在庫がなかった場合は、他店舗の在庫を調べて取り置きできる。この場合の支払いは、商品を受け取った店舗になる。
平日の17時以降は混雑するのでタイムシフト来店もあり
ちょっと欲しいモノがあるので、今日は会社終わりに店に寄っていくか! という方もいるだろう。実はそういう人が多いので、どの店舗も17時以降は混雑する。店員さんにじっくり相談したい場合は、避けた方が良い時間帯だ。
「なら、夕食後に行くか!」となると、今度は外国人観光客で店内が混雑するそうだ。なぜなら外国人観光客は食事を終えると、観光名所はすべて閉まってしまうので、時間を有効活用するために「夕食後は家電量販店で買い物」というツアーや個人が増えているそうだ。平日なら、お昼休みに訪れるのが良さそうだ。
ネット通販の危険を回避、実際にモノを見て買える量販店に行ってみよう
ネット通販で価格だけを基準に購入して「安物買いの銭失い」を経験した人はいないだろうか。筆者もその一人だ。しかし実際にモノを見て購入できるリアル店舗での買い物なら、安心して買い物ができる。
特に家電に詳しい人でなければ、ただ安いだけのネット通販で購入するのは、かなりリスクが伴うことを忘れないでほしい。モバイルバッテリーや掃除機の電池ひとつにしても、怪しい商品が多くはびこっている。
しかし店舗で購入すれば、仕入れ担当のバイヤーの厳しい審査を通ったものだけが店頭に並ぶ。しかもプライベートブランドなら同じ価格でメーカー品よりワンランク上のものが買えたり、安く購入できることもある。ちょっと面倒かもしれないが、安心して買い物をしたい時には、実店舗に足を運んではいかがだろうか?