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【夏の節電】エアコンの省エネ表示方法が変わった? 待たずに賢く買う方法をビックカメラで聞いた

取材に協力いただいた、ビックカメラ 有楽町店の塚本佳奈美さん

今年も春のうちから暑い日が始まりました。つい先日まで暖房にしていたエアコンを、もう冷房で使い始めたという人もいるのではないでしょうか。

昨今は電気代が急激な勢いで上昇しており、エアコンの使用をためらってしまう時もありそうですが、熱中症は室内にいてもかかるので油断できません。それに電気代を惜しんだことで結果的に病院へ通うことになったり、救急車で運ばれたりして、電気代より多くのお金が飛んでいくのは本末転倒です。この記事では、新しくなった「省エネラベル」の見方と、エアコンの賢い買い物の仕方について紹介します。

エアコンの省エネ度をわかりやすく教えてくれる新ラベル

エアコンを新調する場合は、省エネ性能の高いモデルを選びたいですね。そんな中、注目したいのが、経済産業省の主導する壁掛形エアコンの「省エネラベル」のデザインが新しくなっていること。2022年10月1日から新しいラベルに移行しています。

これは家電量販店のエアコン売り場に行くと、同じフォーマットのものが各製品に必ず掲示されていますので、よく見てみると良いでしょう。

製品ごとの省エネ性能がわかる省エネラベル。2023年10月末までにこのフォーマットのものに切り替えることになっています

省エネラベルのデザインが変更されたのは、エアコンの省エネ基準が2027年度を目標に新しい基準になることに合わせたもの。

新基準では寸法区分を廃止。一般地と寒冷地による区分分けを正式に設定しています。これは石油暖房よりも省エネ効率の良いエアコンを寒冷地で普及促進する狙いがあります。かつて「寒冷地ではエアコンだと物足りない」とされていたこともありますが、各メーカーも性能を年々確実に進化させています。エアコンの寒冷地仕様については後ほど改めて触れます。

新しい省エネラベルで分かりやすいところでは、ラベルのデザインの視認性が高まりました。従来は★による5段階の評価でしたが、エネルギー消費効率(APF)に基づいて算出した評価点を、★で9段階(★が5つと半分の★が4つ)と、1.0から5.0までの0.1きざみの41段階で表示するよう変更しています。製品によって、より細かな違いを比較できるようになったといえます。

省エネラベルの改正前と改正後の比較。★の横に数値による評価点を表示し、年間の目安電気料金も大きく見やすくなっています

なお、目安電気料金は公益社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会の定めた、電気料金目安単価1kWhあたり税込27円として算出しています。高騰する電気代の現状に即していないとの考え方もありますが、この表記は電気代を調べることが主目的ではなく、各社製品の省エネ性能を横比較するためのものであり、電気代の動きをこまめに追いかけて更新していません。この点は注意が必要です。

節電が気になる夏。エアコン性能比較は店頭で聞くのが分かりやすい!

ビックカメラ 有楽町店

ビックカメラ 有楽町店を訪れ、家電コーナー担当の塚本佳奈美さんに、店頭での省エネラベルの見方や賢い買い物の仕方について話を聞きました。塚本さんはエアコン売り場の担当が同店舗で一番長いベテランです。

塚本さんによれば、電気代を気にするお客さんは「ほぼ全員」とのこと。昨今の電気代高騰は誰もが実感しているようです。

「省エネラベルを見るお客様が増えました」と語る、ビックカメラ 有楽町店の塚本佳奈美さん。「エアコンの室内機に貼られた丸い数字と色が、エアコン比較表の数字と色と連携します」と比較表の見方を説明してくれた

エアコンはこの10~20年で電気代が劇的に下がった家電の1つ。最新モデルに変更することで電気代は確実に安くなるため、ランニングコストを意識して買い替える人が増えています。

またコロナ禍の影響を受け、自宅でリモートワークする際に、今まで長時間滞在することがなかった個室で仕事をするようになり、個室のエアコンの電気代が気になって買い替えるお客さんも多いそう。

店頭では一番販売台数が多くなる14畳用を基準に、年間電気代を比較できるようにしています。

「多くのお客様が購入価格というイニシャルコストだけでなく、使用時の電気代というランニングコストまで気にするようになりました。省エネラベルの年間の目安電気料金(ランニングコスト)を気にされて、長い目で見た時にどの製品が省エネかを詳しく聞いてくるお客様は、以前より増えたと感じています」

能力(kW)の大きいエアコンは、動き始めの電力消費は大きいものの設定温度には早く到達するため、長く使うほど電気代は抑えられます。

この目安電気料金を製品の価格と勘違いする人はまずいないそう。ただ、目安電気料金が年間なのか月間なのか分からない人は少なくないそうで、「1日何時間ぐらい運転したときにこの数字になるのか?」と質問するお客さんもいるとのことです。

目安電気料金は単純に12で割ればひと月分の目安だと考えるのは誤りです。エアコンは使う月と使わない月があり、冷房より暖房のほうが電気を消費します。一番運転時間が長くなる冬の3カ月くらいで3分の2程度を占めると考えると良さそうです。

省エネラベルが新しくなったことで、接客そのものに大きな変化はないものの、店頭で説明はしやすくなったといいます。

「販売員はお客様のニーズを引き出して、ぴったりなものをおすすめするのが一番の仕事です。省エネラベルはそのための道具の1つとして、省エネ性能をより分かりやすく説明できるようになりました。ただ自分達のやっていること自体は変わったとは感じていません」(塚本さん)。

店舗によっては畳数ごとやメーカー別の展示のほか、お掃除機能などの注目機能が横並びで確認しやすいよう展示されていることもあります

事前見積もりを取ってもらおう

エアコンの購入を相談するときは、設置するのはどんな部屋か(リビング、個室、寝室など)、どんな使い方をするのか、部屋の大きさ、重視する機能(自動お掃除機能、気流制御、スマホ連携など)を販売員に伝えて、オススメを聞きましょう。販売員はランニングコストなども踏まえて、使い方に合った後悔しない製品をピックアップしてくれます。

店頭で自宅の様子を思い出しながら話す場合は、部屋の間取りや設置する位置など、自分の記憶と違うこともよくあるので気を付けてください。室内や使用中のエアコンなどをスマホで撮影してくる方もいるそうです。

ただし、以前と安全基準が変わっているため、今まで取り付けていた場所につけ直すという場合でも取り付けられないこともあります。

このため、ビックカメラでは事前見積もりをオススメしています。事前にスタッフを現地に派遣してもらって見積もりしていれば、工事に掛かる時間や追加費用が必要かといったことが事前に分かり、設置が難しい場合にそれがなぜなのか説明してもらって代替案も提示してもらえます。

「設置工事に行ったら、その日のうちに取り付けられず、業者に二度手間三度手間を強いれば、工事費用が思っていたより高くなりかねません。新生活の場合、引っ越しで鍵を受け取っているのであれば、引っ越し前に見積もりを呼ぶと良いです。確実に工事ができるか確かめてから商品を選ぶと間違いがありません」(塚本さん)。

ビックカメラの見積もりは基本的に2,200円。天井埋め込みやマルチエアコンなどは、ケースバイケースです。対象機種を決めた上で見積もりを取る場合は、見積もり料金が無料になる機種もあるので、気になっている具体的な機種があるときは店頭で相談してみましょう。

店頭でサイズを見て「部屋に入るから」といって設置工事の業者が訪問すると、実際には入らないこともあるのは、いかにもありそうなミスです。部屋を採寸してスペック表で調べて、ギリギリで入るという場合でも、安全基準で入れられないケースもあるというのは盲点になりそうですね。

ビックカメラ 有楽町店には、メーカーごとに製品シリーズの機能や電気代の違いが分かる表も用意されていました(取材時点のもの)。製品選びの参考になりそうです

みんながギリギリまで待ちたがるなら早めのほうが有利

具体的にエアコンの新規導入や買い替えを考えている場合、いつ買いに行けば間違いがなく、有利な買い物ができるか気になりますね。

エアコンは設置工事が必要で、店頭で購入してその場から持って帰るわけにはいかない商品なので、「今日から使いたい」と思うより前に買いに行く必要があります。

「人気のモデルはピークの時に入荷まで時間をいただくケースがあります。工事業者のスケジュールが埋まっていて、品物はあるけれども工事が遅くなることもあります。このため、ピークになる前に店頭に足を運んでいただくのが理想です」(塚本さん)。

エアコン売り場が混雑するのは夏と冬がメイン。3つめの山として世帯が増える3~4月の新生活シーズンもあります。夏がしっかり暑い、冬がしっかり寒いと、エアコンの需要が高くなって売り場にお客さんがたくさん訪れます。新生活の時期は暑さ寒さの影響はほとんどありません。

ちなみにコロナ禍の影響は夏と冬はあまりなかったものの、新生活シーズンは大きかったそうです。

「ギリギリまで待ってしまうことで、ピーク時に買い物にくると、その時に欲しい製品の品切れや、設置工事の待ち時間が長くなってしまうなど、希望に沿えないことがあります。このため一番オススメなのは暑すぎず寒すぎずの時期です」(塚本さん)。

エアコン売り場に来店者が集中するのは暑くなってから。買いに行くならすいている涼しいうちに!

消費者からすると、暑すぎず寒すぎずの時期は「今じゃなくてもいいんじゃない?」と思ってしまいそう。でも、みんながそう思うからこそ、早めのタイミングがベストなのですね。

ピークの1カ月くらい前に来店してくれれば余裕を持って買い物ができ、品揃えも安心とのことでした。

型落ちの旧製品の投げ売りは「ない」と思ったほうが良い

気をつけたいのが、安売りを狙いすぎて欲しいものが買えないケースや、かえって高くついてしまうケースです。

最近は流通業界全体の傾向として、各社とも在庫をなるべく持たないようになってきています。特にエアコンなどの大型商材は倉庫のスペースがかさばるため、維持費削減を目的に在庫は少なくしています。

「本体が小さいスマートフォンなどは、型落ちを待って安価に入手できる場合もありますが、エアコンは新製品と旧製品が並行しないので、ものによっては完売して、新型が出ていないうちに生産終了になることもあります」(塚本さん)。

旧型の製品の在庫がなくなってしまえば、在庫処分で安く出てくることもありません。旧型の底値を狙うのは、昔に比べると難しくなっているのです。

「製造されておりません」は製造終了の意味ではなく、その畳数用がラインナップに存在しないという意味です

寒冷地じゃなくても「寒冷地仕様」は購入して設置できる?

最近のエアコン売り場では、暖房性能に優れた寒冷地仕様(暖房強化型)のエアコンを販売しています。エアコンは夏と冬に使うものなので、夏に買うときでも暖房性能は無視すべきではありません。

そもそも寒冷地とは、冬の寒さが厳しい地域のこと。北海道や東北・甲信越の豪雪地帯をイメージしますが、行政上や学術上の定義はないとされています。

とはいえ、寒冷地に寒冷地仕様を普及する上で業界としての定義が必要との考えから、寒冷地を具体的に定めました。国土交通省が2016年(平成28年)に告示した、省令の中で示されている地域区分です。この省令文書における、別表10の1~4に区分される地域が寒冷地となります。そこには北海道や東北のほか、全国の寒い地域が市区町村単位で列記され、実は東京都の奥多摩町なども含まれています。

また、寒冷地という表現があまりなじみのない言葉なことから、日本冷凍空調工業会が従来「寒冷地仕様」と呼ばれてきた機種の別称として、「暖房強化型」を業界の用語として統一しました。

寒冷地仕様(暖房強化型)はこうした寒い地域でも、エアコン暖房が快適に使えるよう暖房性能を高めたモデルのことで、各社とも外気温が-25℃前後でも暖房運転が可能になっています。元々、寒冷地は石油暖房でないと十分な暖かさが得られないとされ、エアコン暖房が普及するようになったのは比較的最近なのです。

このような寒冷地仕様は寒冷地でしか使えないものではありません。部屋の間取りなどによっても、寒い時期にエアコンの効きが悪いと感じている人や、日当たりの悪い部屋などに導入する人は、寒冷地ではなくても導入を検討してみても良いかもしれません。

寒冷地エアコンのコーナー。毎年、極暖エアコンコーナーを設けるようになったそうです。有楽町以外の店舗でも展開しています

「関東圏で取り付けるときには、寒冷地仕様も通常モデルとそんなに違いはありません。ただし、寒冷地仕様は室外機が通常モデルより大きい場合があります。また、霜を溶かすためのヒーターを、室外機の下の方に搭載している場合、設置時に下に台が必要になることもあり、設置場所は注意が必要です。換気機能付きのエアコンも同様で、換気のユニットが入っているために室外機が通常より大きくなります」(塚本さん)。

とにかく涼しくしたい、暖かくしたいという冷暖房機能を最重視する場合は、どのような点に留意すべきでしょうか。

「その場合は、適用畳数を小さく見ないことです。適用畳数はパワーの目安です。畳数が大きいほどエアコンもパワーがあります。8畳の部屋に10畳用を設置してはいけないということはありません。例えば、8畳の部屋でも10畳用を入れたほうが早く涼しくなるし、早く暖まるのです。エアコンが電気を消費するのは、室温を変化させる時。室温の維持にはそれほど電気は使いません。設定温度に早く到達すれば、それだけ節電にもなるのです」(塚本さん)。

同じ8畳の部屋でも陽の当たる部屋と日陰の部屋では室温が大きく違います。8畳に住んでいるから8畳用じゃないとダメというのは思い込み。暑くなりやすい部屋や寒くなりやすい部屋では、パワーのあるエアコンも視野に入れましょう。

最近はエアコンの性能が良くなっているから、買い替え時には畳数が小さくても良いんじゃないかと考える人もいますが、適用畳数以下の小さいサイズを選ぶとせっかくの性能が活かされず、節電にもならないので気を付けましょう。

エアコンの効きが足りないと感じていた場合は、より広めの畳数も検討を

早割キャンペーンでお得に買おう

夏を控えた買い物は、どうしても夏場の利用を重視してしまいがち。しかし、エアコンの利用時間が長く、電気代をより多く使うのは冬です。標高が高めの地域や、日当たりが悪い場所に住んでいる人は、寒冷地仕様も視野に入れましょう。

導入を検討している人は、早めに決断して買いに行くのがコツ。特に今シーズンの購入を既に考えていたり決めている場合は、ギリギリまで待っても得することはあまりなく、逆に早く導入したほうが、すぐ快適に過ごせるようになることにつながります。

注目したいのは各社の早割キャンペーンや下取りキャンペーン。通常、4月から5月末くらいまで開催していますが、法人や店舗によって期間や名称は異なります。近所の量販店で確認し、始まったらすぐにお店に行くのが一番お得といえそうです。

キャンペーンは店舗ごとのほか、メーカーごとにも実施されます。自分がよく行く量販店で確認しましょう
諸山 泰三