家電店ちょっとイイ話
家電量販店でお酒が飲める!? 店内で"角打ち"を始めたビックカメラの狙い
第3回
2019年6月17日 06:00
"角打ち(かくうち)"って知っていますか? 普段、酒類を販売している酒屋が、店内で購入したお酒やツマミを飲み食いするスペースを、店頭や店内の一角、営業終了後などに提供するサービスです。店内に売っているお酒やつまみを自由に手に取り、常連たちと野球のナイターを見ながら立ち飲みするこのスタイルは、昭和時代によく見られました。
この"角打ち"が家電量販店で体験できるのです。今年2月、ビックカメラでは一部店舗でこの"角打ち"を始めました。正式名称には「試飲カウンター」で、数人が座れるカウンターバーと、立ち飲み用の「樽」とテーブルが数個置かれています。現在、新宿西口店、ビックロビックカメラ新宿東口店、赤坂見附店、町田店の4店舗でサービス提供中。
ビックカメラは、2001年に酒類総合販売を行なう子会社・ビック酒販を設立していますが、店舗ではそれ以前からも酒類を販売しており、20年以上の酒類販売実績があります。その経験を活かし、ここ数年は各店舗で酒類売り場を拡充しているところ。ただ、ビックカメラがお酒を販売していることを知らない客も多いため、認知拡大などの目的で試飲カウンターをスタートしたのだそうです。
概要説明はこのあたりにして、実際に試飲カウンターを体験してみましょう。今回は、新宿西口店(新宿西口ハルク内)におじゃましました。
JR新宿駅西口から伸びるペデストリアンデッキからビックカメラ店内に入ると、そこはもうお酒だらけ。以前はカメラ売り場だったフロアがお酒一色! これは呑兵衛としてはたまりません。フロア中央に十数人が座れるカンターバーと立ち飲み用の樽・テーブルが6つほど置かれています。
基本的には、このカウンターでお酒を注文。カウンターの上部に試飲できるお酒と1杯の価格が表示されていますが、手元にメニューも用意されています。カウンターに置かれているボトルだけでも60~70種類あり、それが1杯100円から試飲可能。かなり安いです。1杯の量は日本酒・焼酎・ウイスキーが30ml程度、ワインが60ml程度です。
ただ、ここはあくまで"試飲"カウンターであって飲み屋ではないので、「1人3杯まで」、「時間は30分程度」という制限がつきます。残念!(笑)。
無料の日本酒でまずは一杯
1杯目は、「大吟醸 我山荘(わがさんそう)」を頼んでみました。実はこれ無料です。ビックカメラのオリジナル清酒で、それこそ認知度拡大のために1杯を無料で提供しています。
飲んでみると、「上善如水」よりもさらにすっきりフルーティーな味わい。試飲後に多くの女性がボトルを購入していくとのことで、さもありなんです。お風呂上がりに、冷やしていただくのにピッタリのお酒です。
お酒コーナーにはソムリエ資格を保有している店員もおり、ワインだけでなくさまざまなお酒の知識を持っています。自分の好みを伝えると、それに合ったお酒をおすすめしてくれるので、どんどん相談してみましょう!
店舗に陳列してあるつまみも、ヒョイと取って会計後に食べることができます。まさに角打ち! つまみは、乾き物からスナック菓子、ベーコンやソーセージ、チーズなど、これまたたくさんあって選ぶのに一苦労するほどです。
おつまみも選んで、さて2杯目は何にしようか。ここの面白い所は、店内のお酒も会計後に飲めることです。カウンターで提供しているものだけでなく、冷蔵庫で冷えているビールや缶酎ハイなども飲めるのです。
せっかくだからビックカメラオリジナルラベルが貼ってあるクラフトビールを飲んでみましょう。
美味しいお酒とツマミで楽しい気分です。でも、あと1杯しか飲めません。普段は高くて飲めないものを選ぶのもありです。例えば、ブレンデッド・スコッチウイスキーの「シーバスリーガル アルティス」。バーで飲むとワンショット2,000円以上は確実にします。それが700円で飲めるのです。
ちなみになぜこんなに安いのかというと、「試飲カウンターで利益を出すことは考えていません。店舗に足を運んでもらって、たくさんのお酒の種類があることを知ってもらい、最終的にボトルで購入してもらいたいと思っています」(ビックカメラ広報)とのことです。良心的。
1回あたり3杯しか飲めませんが、ここには珍しいお酒があるので、毎日ちょっとずつ飲む楽しみがあります(笑)。気になっているお酒があるけどバーで飲むのには高いし、ボトルで買うにしても味が分からないと……という時に、ビックカメラで試し飲みして、気に入ったらボトルで買うのも良いかもしれませんね。
家電量販らしく、つまみ家電の提案も
ビックカメラではメーカーや販売会社とコラボして週末に試飲会も開催しています。珍しいお酒を試飲できるチャンスです。
また、新宿西口店には約1,500本ものコレクションをそろえるワインセラーもあります。筆者はワインに詳しくないのですが、かなり珍しいワインもあるとのことです。ワインに目のない人は実際に新宿西口店に行って確かめてみてください。
試飲カウンターの設置には認知度アップのほかにもう一つ、大きな狙いがあります。それは来店客数のアップ。インターネット通販の普及などが要因で、家電量販店に限らず、既存小売店の多くが来店客数の減少に悩んでいます。
来店客数を増やすためには、リアル店舗にしかない魅力を伝えていくしかない。それが実体験。客の五感に訴え、新たな発見をしてもらい、そして購入へとつなげてほしいのです。
実際に、試飲カウンターを設置した店舗の客数は伸びているそうです。会社帰りに軽く一杯を楽しむビジネスマン、買い物帰りの女性、開店と同時に一杯ひっかけにくるお客さんもいるとか(笑)。
特に若いカップルと外国人客が増えているそうです。若いカップルは、クラフトビールの流行を背景に、口コミでビックカメラの品ぞろえの多さが広がり、試し飲みに来ているとのこと。外国人客は、日本に来たお土産に日本酒とおつまみを買って行くそうです。私もまんまとビックカメラの戦略に乗っかって毎日通ってしまいそう。
なお、お客からの要望が多く寄せられていることから、ビックカメラでは今後、試飲カウンターの設置店舗を順次増やしていく予定とのことです。あなたの街のビックカメラで飲める日も近いかもしれません。