トピック

ヤマハバイクレンタルを利用して3輪スクーター「TRICITY300」に乗ってきた!!

2020年9月30日に発売されたヤマハ発動機「TRICITY300 (トリシティ300)」。排気量292ccの3輪のスクーターです。価格は957,000円(税込)。

メーカー名ヤマハ発動機
製品名TRICITY300
価格957,000円(税込)

ヤマハはLMW(Leaning Multi Wheel)の乗り物を展開しています。LMWは「モーターサイクルのようにリーン(傾斜)して旋回する3輪以上の車両の総称」で、現在は4車種がラインナップされています。それぞれ、「TRICITY125」「TRICITY155」「TRICITY300」「NIKEN(ナイケン)」です。

筆者は以前から3輪スクーター(フロント2輪リア1輪のトライク)に興味を持ち続けていて、ジレラやピアジオの3輪スクーターの購入を考えたこともありました。そんなところへヤマハの3輪スクーターが登場。

2014年4月にTRICITY125が発売され、筆者は「おっ!」と注目。そして筆者はヤマハのLMWに急激に興味を抱きました。まずはメーカーとして信頼しており、また国産車なので入手性も良好。そしてやはり、フロント2輪っていかにも滑りにくそうだしコーナーで転倒するリスクが少なさそう。ただ、TRICITY125だと排気量が少し小さいので、巨漢の筆者には……ちょっと物足りない? とスルー。

続いて2016年9月にはTRICITY155が発売されました。しかしこの時も「う~ん排気量250ccクラスは出ないのか~」と、またスルー。

さらに2018年9月に「NIKEN」が発売(受注開始)。「うぉっ凄いのが出てきた!!!」とは思ったんですが、排気量が845ccなので筆者の免許では乗れな~い。残念。またスルーです。

そして2020年9月30日にTRICITY300が発売。ん!!! いいかも!!! そう思って(わりと買う気満々で)ディーラー(YSP)に実車を見にいきましたら……うっ、これは……。

TRICITY300は、ウチの車庫には収められない感じ。車庫にはスロープでバイクを出し入れしていますが、TRICITY300のフロント2輪だとスロープで片輪が脱輪しそう。また、思った以上に車格が大きい。そして重い。う~むむむ。

さておき、ディーラーには試乗車がありましたので早速試乗。TRICITY300で走り出し、交差点を2つ3つ曲がったらその走りの良さに驚愕しました。

まず直進安定性が凄い。2輪モーターサイクルとは比べ物にならないほどまっすぐ進む。同時に非常に安定して旋回する。まっすぐ走っても曲がっても、2輪モーターサイクルよりずっとスムース。これは凄い!!! 凄い凄い凄い!!! と感動し始めた頃に、試乗終了。

TRICITY300実車を見に行ったのは「YSP所沢」。筆者の愛車「SEROW250(セロー250)」のメンテナンスでお世話になっているディーラーです

でも、もっと乗りたい!!! 1日たっぷりTRICITY300で走りたい!!! などとディーラーで試走感想を述べていたら、「ヤマハバイクレンタル」の存在を教えていただきました。ヤマハのいろいろなモーターサイクルを安価にレンタルできるらしい。TRICITY300も貸し出しているらしい!!! じゃあ借りま~す♪

TRICITY300の8時間レンタルをネットで予約♪

ヤマハバイクレンタルでは、全国41店舗(主にYSP店舗)でヤマハのモーターサイクルをレンタルしています。うちの近くのお店はどこかナ~と調べたら、あらま、筆者おなじみのYSP所沢でした。ちなみに、ヤマハバイクレンタルのウェブサイトで店舗を選ぶと、その店舗で借りられる車種を調べられます。

YSP所沢ではTRICITY300を借りることができます。早速、ヤマハバイクレンタルのウェブサイトからレンタル予約。ちなみにTRICITY300のレンタル料金は、4時間で9,500円、8時間で10,500円、24時間で13,000円です(いずれも税込)。

必要に応じてヘルメットやグローブなどの用品のレンタルも可能。また、レンタルバイクを転倒させたなどした場合に備えて各種補償オプション(有料)も付加できます。「補償オプションを付加しないお客さんに限って転倒しがち」というウワサもありますので、慎重派の筆者は補償オプション全部盛りとしました。

筆者が選んだレンタルプランは、TRICITY300を8時間レンタル(10,500円)、免責オプション付加(3,000円)、安心補償プラス(1,500円)で、合計15,000円。しかし、ちょうど「TRICITY300発売記念 ヤマハ バイクレンタル"TRIプル"キャンペーン」発動中で、「8時間以上のレンタル予約で利用できる3,000円クーポン」が付与されました。なので、それを使って合計レンタル料金は12,000円となりました。なお、レンタルバイク返却時はガソリンを満タンにしての返却となります。

ちなみに、TRICITY300は8時間借りると10,500円で、24時間借りると13,000円。差額2,500円で8時間の3倍の24時間借りられるなら、24時間のほうがよくない? と思いました。が、夜間にTRICITY300(←かなり車格が大きい)を置いておく場所がな~い!!! ということで、8時間レンタルとしました。

TRICITY300でツーリング……なのに、まさかの強風!!!

レンタル予約日の午前中、TRICITY300を借りにYSP所沢へ。いつものディーラーなので安心感あるわ~緊張とかしないわ~と、気軽にTRICITY300を借り受けました。

ディーラーにて、レンタル前に一通りの車体説明や注意事項などの説明を受け、さぁ出発です。TRICITY300でソロツーリング♪

まずは高速道路を使って郊外へと走ろうと考えました。が、まさかの強風!!! でも、そこはヤマハのLMW。メーカーは「不意の横風でも、安定のある走り」と謳っていますので、検証ということで強風の高速道路を走ってみることにしました。

ところで、TRICITY300は重量級スクーターです。車両重量が237kg(!!!)もあります。ヤマハの同クラスのスクーターを見てみますと「XMAX(エックスマックス)」は179kg。筆者はホンダ「FORZA(フォルツァ)」という250クラスのスクーターに乗っていますが、これは184kg。

また、TRICITY300は車格も大きい。サイズは、2,250×815×1,470mm(全長×全幅×全高)です。XMAXは2,185×775×1,415mm(全長×全幅×全高)で、FORZAは2,140×750×1,355mm(全長×全幅×全高)。同クラスの他のスクーターより一回り大きいというイメージです。

この重さで高速道路の加速とかどうなの? 車体の大きさがあるから、横風の影響を受けやすいのでは?

しかし走ってみたら何ら問題なし。約300ccという排気量からくる加速感は、TRICITY300の重さをものともしません。合流時も追い越し時もスムースかつ力強く加速してくれますので、「スピードが出にくいから高速道路が怖い」的な小排気量系2輪車にアリガチな不安は感じられません。

それから直進安定性の高さ。二輪車で高速道路を走っていて怖いのは、道路の微妙な凹み。わだち、とまでは行きませんが、路面が縦方向に窪んでいるシチュエーションです。その凹みにタイヤを取られると、車体が微妙に向きを変えたり傾いたりしてしまう。その瞬間「ヒヤリ」とします。

TRICITY300でも多少はタイヤを取られることがありますが、「ヒヤリ」とするほど急には車体の向きや傾きは変わりません。なので「あっ凹みがあるなあ」くらいに余裕で路面状況を感じる程度。他、多くのシチュエーションで「4輪車かコレは!」とツッコミを入れたくなるほど直進安定性が高いTRICITY300。「このくらい安定感があるなら高速道路も積極的に使いたくなるなあ」という感覚です。

余談ですが、TRICITY300、パーキングエリアなどで駐めていると、すご~く目立ちます。多くの人が注目。迫力のある車体と、フロント2輪が、やはり注目される。

さておき、高速道路走行にて最も驚かされたのが、TRICITY300の横風に対する強さ。高速道路走行の後半は、まさに「突風」に何度も遭いました。筆者の感覚では「こんな風が吹く高速道路、2輪モーターサイクルは今すぐ降りないと命の危険がある」という、オッソロシイ突風が何度も。

しかしTRICITY300は抜群の安定感で走り続けます。もちろん、突風によっては多少は車体が左右に揺れたりしますが、でも短時間ゆっくり揺れる程度で、そ~んなには怖くない。車体の揺れよりも突風によりヘルメットや衣服が「持っていかれそうになる感じ」が怖かった。

ちなみに後日、気象庁のサイトでこの日の該当エリアの風速を調べたら……7.3~7.9m/sの北風が吹いていました!!! ↓こちら、気象庁のデータより抜粋。

こういう風の中でも高速道路を走れちゃうTRICITY300。なので、トラックやバスが横を通過する時の風圧などはノープロブレムです。ちょっと異次元のモーターサイクルって感じ。

高速道路での加速、路面の微妙な「わだち的な凹み」、そして横風。どれも大丈夫なTRICITY300でした。こういう安定&安心のLMWでロングツーリングしたら楽しいでしょうね~♪

峠道もグイグイ上る!!! 荒れた林道のアップダウンも安心して走れる♪

高速道路から降りて向かったのは、バイク乗りには有名な「奥武蔵グリーンライン」。ツーリングコースとして知られている林道です。筆者的にはオフロードバイクで走ると楽しいけれど、オンロードバイクやスクーターだとちょっとヒヤヒヤする道。

というのは、道がけっこう荒れていたり、路面に砂や砂利や落ち葉があったり、さらには路面が濡れていたりするから。こういう道で前輪が滑ったりすると超怖い。また、標高はけっこう高めで、ガードレールがない箇所も多く、転倒したら滑落する可能性があるのも怖い。

そんな奥武蔵グリーンラインをTRICITY300でGO!!! 緊張しつつ安全第一で走り始めます。鎌北湖から奥武蔵グリーンラインの途中までを走っていきます。

まずは上り道ですが、激坂でもグイグイ進むTRICITY300。スロットルを開くと滑らかかつ力強く前進する感じで、乱暴な加速ではありません。でもある程度加速し始めると、エンジンがスムースに吹け上がり、加速についての物足りなさというのはありません。

下り坂が現れ始めて痛感するのは、フロントに2つのタイヤがある良さ。例えば下り坂のカーブで道が濡れていたり、砂や落ち葉があったりすると、フロントタイヤが滑らないような速度・ライン取りで走ろうとしますよね、普通の2輪モーターサイクルなら。

もちろんTRICITY300でも同様に走ろうとするわけですが、時々そういう危険を見落として、「あっ濡れてた!!!」とか「うわっ浮き砂あった!!!」とか事後にビビるわけです。しかし、結果として滑ったりはしていない。そういう経験を何度かすると「TRICITY300ってこういうシチュエーションでも前輪ほぼ滑ってないよな」と知見を得る。それが続くと「そうか、前輪2本だから、どちらかがグリップして滑らないんだ」とLMWへの理解が進む。

奥武蔵グリーンラインのアップダウンを走行中のTRICITY300の足回り。この日の奥武蔵グリーンラインは濡れた路面も浮き砂も落ち葉もけっこう多かったのですが、タイヤが滑ることはほぼありませんでした
フロントタイヤが2つあるLMWは、フロントタイヤが滑ることからくる危険や恐怖を大きく抑えてくれます

それと、道路の向きに沿って存在する溝や、道路の左右の高さに差があるシチュエーション。例えば、道が部分的に数センチ陥没している箇所とかですが、フロント左右タイヤの独立したサスペンションが、そういう段差を吸収して「ないもの」にしてくれる感覚があります。

ヤマハLMWテクノロジーでは、フロント2輪にそれぞれ片持ちサスペンションがあり、左右タイヤが独立して上下に動きます。これにより、進行方向に沿った段差があって車体が傾かず安定して走行できます

路面が荒れていたり進行方向沿いの段差があったり、砂や泥や落ち葉があったり、あるいは濡れていたりしても「前輪がほぼ滑らない」という安心感はTRICITY300ならではのものだと感じます。LMWの安定性と安心感は、2輪モーターサイクルとは比較にならない次元だといえましょう。

TRICITY300の凄さは「下り」で発揮されるのであった♪

TRICITY300で峠道のアップダウンを繰り返して気づくのは、「TRICITY300は下りを安心しつつも速く走れる」ということ。「速く」というのは「いつも自分が2輪モーターサイクルで下るよりも」というイメージです。が、ぶっちゃけた話、「TRICITY300って下りめっちゃ速い!!!」という印象が強いです。

ヤマハLMWテクノロジーでは、フロント2輪にそれぞれ片持ちサスペンションがあり、左右タイヤが独立して上下に動きます。これにより、進行方向に沿った段差があって車体が傾かず安定して走行できます

その理由のひとつは、コーナリング時の安定感からくる安心感。もうひとつは、制動力の強さ。両方とも「凄~い♪」です。

TRICITY300でのコーナリングは、平坦な道でも上りでも抜群の安定感を発揮すると感じられます。少し慣れればすぐに「オンザレールのライン取り」がたやすくできる。ヤマハのLMWテクノロジーのおかげではありますが「急にライディングがうまくなった」と錯覚するほどです。

そして下りでは、フロント2輪であり両輪にディスクブレーキがあるので、より安定した強い制動力が得られます。そして下りでも直進安定性とコーナリング時の安定感がある。いつもより短時間で減速でき、いつもより少し速い速度でも安心して曲がれるんです。

結果、いつもよりずっとキビキビと下りを楽しむことができる。また、TRICITY300の走行安定性により、ライダーの心に大きな余裕が生まれているのだと思います。焦らずテンポ良く走れるという実感がある。マシンを信頼できる感じなので、何というか疑心暗鬼になって過剰に速度を落とす必要がなくなる、みたいな? もちろんTRICITY300だからといってスピード出し過ぎや安全の過信はいけませんが。

いや~でもTRICITY300、これまでは怖かった狭い舗装林道の下りが全体的に楽しくなっちゃうなんて、まぁステキ♪ たぶんコレ、2輪モーターサイクルや2輪自転車や、あるいはクルマでも味わえない、TRICITY300ならではの安心感であり爽快感だと思います。

“走りの楽しさ”と“燃費・環境性能”の両立を高次元で具現化するエンジン設計思想“BLUE CORE”ですが、TRICITY300の下りのエンジン音がちょっと楽しかった。スロットル閉じ気味の時に「ヒュルルルル~」という高めの音がするんです。

TRICITY300での下り坂って、スムースで安定していて、なんかこう、レールの上を滑らかに下っていくような感覚なんです。で、その時に「ヒュルルルル~」という音。風のような音でもあります。書くのがチョイ恥ずかしいですが、その音を聴きつつ下っていくと「今、風になった!!!」みたいな気分になります。

この日はTRICITY300により何度も風になれて、感動しました。TRICITY300により至福の時間を過ごした筆者なのでした。

疲れないTRICITY300

この日にTRICITY300をレンタルした時間帯は11:00~19:00。11:30頃から走り始めて、返却は18:00頃だったと記憶しています。その間、たまに停まって5分くらい車体を撮影したりしましたが、それ以外はほぼTRICITY300で走りっぱなしでした。まあ、6時間くらいずっとTRICITY300に乗り続けていた感じです。

TRICITY300返却後に気づいたのは「YSP所沢の人が出してくれた熱いコーヒーがおいしいっ♪」というのもあったんですが、「あれ? ずっと乗りっぱなしだったのに疲れてないかも」ということ。筆者が峠道を走るとたいていある「走行後のグッタリ感」がほとんどないんです。

まあ、ヘルメットの重さで首が少し凝ったとか、お尻がちょっと痛いとかはあるんですが、「まだ体力もやる気も余ってる」てな感じ。「今すぐ所沢から都内までTRICITY300で走れ」と言われても余裕で走れる気がしていました。

実はヤマハがTRICITY300公式ページで「LMWの運転は疲れにくい」と公称しています。その内容を以下に抜粋してみますと……。

『LMWの運転は疲れにくい、という点について3つの計測方法でLMWと比較二輪車を複数のライダーが乗り比べ、実証実験を行い検証しました。その結果、①LMWは車体の安定感が高く※1、②有効視野が広く※2、③精神的負担が小さい※3ことから、LMWの運転は疲れにくい※4ことが実証されました』

※1 フロント二輪のLMWは車体の安定感が高いため、ライダーに心の余裕が生まれます。
※2 フロント二輪のLMWは運転中のライダーの視野が広がるため、心の余裕やリスクの回避につながります。
※3 フロント二輪のLMWは運転中のライダーの精神的負担が少なく、リラックスした状態を保ちやすいことから集中力の持続につながります。
※4 フロント二輪のLMWは「車体の安定感が高い」とライダーが感じ、「より広い視野」による走行が可能となり、「精神的負担も軽減」されることがわかっています。つまり「LMWの運転は疲れにくい」というメリットがあると言えます。

だそうです。コレ、今回のTRICITY300ツーリングの前に読んだ時に「ほんとぉ~?」と、やや眉唾でした。ですがTRICITY300で走り終えて改めて読むと、「あー確かに確かに」って感じで同意しちゃいました。

実際に前述のとおり「走行後のグッタリ感」がほとんどありません。また、確かに視界が広く感じられ、いつもより風景を楽しみつつツーリングできた気がします。やるなヤマハのLMW。

TRICITY300の美点

あ。TRICITY300の走行感ばかり書いてしまいましたが、機能的な美点も多々あります。↓こんな感じ。

筆者的に「これイイね♪」と感じられたのは、なんだかんだで便利なスマートキー。独特の操作手順がありますが(ホンダのとかとだいたい同じ)、キーレスは快適です。

それからラチェットレバー式のリアブレーキロック。パーキングブレーキですね。少し傾斜がある場所でも確実に駐められるので、やはり重めスクーターにはこれがあるとありがたい。

シート下の大容量トランクも便利。ヘルメットも荷物も入ります。荷物をここに入れれば、バックパックとか背負わずリラックスして走れますヨ♪

それからTRICITY300のLMW的新機能として「スタンディングアシスト」があります。ハンドル左グリップ前方にあるスイッチを押すと、フロント2輪の傾きがロックされるという機構。

スタンディングアシストを使うと、例えば信号待ちの時、不意にTRICITY300が傾くのを防げます。あるいは、車庫入れ時にTRICITY300を押す時など、TRICITY300の不意の転倒を抑える効果もあります。タンデムシート(後席)に人が乗る時にスタンディングアシストを働かせておけば、車体が不安定になりにくくなります。

あとTRICITY300のバックミラーって、コンパクトな割には視野が広くて快適ですね♪ でも車体前方ハンドル下の膝前あたりに、な~んにもストレージがないのはちょい残念。まあLMWのフロント側機構「パラレログラムリンク」と「片持ちテレスコピックサスペンション」により、あのあたりスペースがないのはわかりますが……。

“立ちごけ”注意のTRICITY300

TRICITY300でツーリングして感じたのは、「TRICITY300は気を抜いていると危ない」ということ。TRICITY300の危なさは、その多くが車体の重さからくるものだと思います。

前述しましたが、TRICITY300は重量級スクーターで、車両重量が237kgもあります。また、足着き性はそ~んなによろしくなく、身長180cmで足は短くない筆者でも、お尻をシート前席の後ろいっぱいに着けていると、両足のつま先が地面に着く程度。「このスクーターのシートはけっこう高いなぁ」と感じます。

重いことと足着き性がイマイチであることを意識していれば、まあ特に問題ないのですが、TRICITY300は走り出すと非常に軽快でスムースで速いモーターサイクルです。なので、走行中はコンパクトで軽いスクーターに乗っているような気になりがち。

軽快な走行をして、さぁ休もうとなって、駐車場に入り、TRICITY300を停めて片足を着いたら……おっとっと、とバランスを崩して車重を支えきれず、そのまま立ちごけ!!! なんてことにもなりかねない……いや、なりかねないのではなく、けっこう立ちごけが多いそう。

今回ヤマハバイクレンタルで借りたTRICITY300は、すでに数度の立ちごけ済み車体でした。立ちごけの原因を聞いたところ「停車中にバランスを失って車重を支えきれなくての立ちごけ」だそうです。左側の簡易修復されたウインカーが度重なる立ちごけを物語っていました。

筆者も立ちごけしそうになりました。ツーリング中、一瞬道に迷い、路肩に停車してマップを参照。「あっソコを右に曲がればいいのか」と走り出そうとした時、地面の砂利で足が滑ってTRICITY300が傾き始めて……!!! 幸い、どうにかバランスを取りましたが、立ちごけ寸前でした。

LMWは自立するためのものではありません。傾ければ普通の2輪モーターサイクルと同様に倒れてしまいます。TRICITY300は車体を立たせることをアシストしてくれるスタンディングアシスト機能を持っていますが、これはあくまでも「アシスト」機能です。気を抜いていると、LMWとはいえ倒れちゃって危険、というわけです。

もうひとつ、TRICITY300は高速道路でも峠道の上りでも下りでも、ものすご~く安定して走れるLMWです。走っていると「全然コケる気もスベる気もしない」という気分にもなりがち。その気分が増長すると、危険な速度域に入りやすくなるかもしれません。無理な運転に挑みたくなるかもしれません。

まあ、これはすべての乗り物に共通することだとは思いますが、過信は禁物。安全を第一に考慮して使うべきです。TRICITY300の場合、2輪のモーターサイクルと比べると「安定感と安心感において圧倒的に上回っている」という実感が強いので、過信はさらに禁物だと思います。

交通ルールを遵守し、安全第一で走れば、TRICITY300による「これまでにない感動的な移動体験」を存分に堪能できると思います。ぜひレンタルなどして、安全&痛快にTRICITY300を楽しんでみてください。

スタパ齋藤