トピック
公道が自転車に優しくない? だったらゴリゴリ走れるSMALO「LX2」のe-bikeだ!!
2024年4月2日 08:00
「公道には魔物が潜んでいる」という言葉は、どこで聞いただろうか。20年前に亡くなったじっちゃんだったか、公道じゃなくて甲子園の間違いだったか。とにかく、その教えを心に刻んでいる筆者は、どんな乗り物でも公道に出るときは「魔物」がどこかに隠れていないか目を皿のようにして走る。
とりわけ都内で自転車に乗っているときは、その魔物の数が多く感じられるものだ。細いタイヤが2本だけの不安定な乗り物。なのに段差はそのへんに無数にあるし、ハンドルを取られる溝や穴もあちこちにあって、人やクルマや他の自転車などにも注意しなければならない。
できることならサイクリングロードだけを気持ち良く走っていたい。でも、自転車で移動する必要がある以上はそういうわけにもいかない。公道で毎日神経をすり減らしているそんな筆者に、ちょっと乗ってみませんか、と軽い感じで編集部から貸し出されたe-bike。それはe-bike専門メーカー・BESV(ベスビー)3つ目のブランド「SMALO(スマーロ)」の「LX2」というモデル。これに乗ってみたら、魔物の大部分はゴリゴリ踏み潰せる(比喩)ようになって、「あっ、これが正解かも!」と思った。
最適なシフトチェンジを実現する「AIドライビングシステム」で軽やかに
スマーロ「LX2」は、アーバンスタイルを感じさせるシルエットながら、クロスバイクのようなスポーティさも併せ持つe-bike。適応身長目安が169cm以上ということもあり車体はかなり大柄で、車重も約23.1kgとやや重め。極太のフレームとタイヤもその印象をさらに強めている。
ただ、そのゴツさはいい意味で普通の自転車とは違う「バイク(オートバイ)らしさ」につながっている。どっしりした車体の取り回しはバイクのそれだし、またがったときに存在感ある幅広のトップチューブが視界に入ると「これはもはやバイクだな」とも感じる。また、内側にほどよく絞り込まれたハンドルも、ほとんどストリートファイター系バイクのポジションだ。以前そういうバイクで競技していた筆者としてはめちゃくちゃしっくりきてニヤついてしまった。
かといって、走り自体は当然ながらストファイ系のような荒々しいものではなく、穏やかにコントロールされている。トップチューブにあるボタンで電源をオンにしペダルを踏めば、大柄な車体に似合わず軽やかに加速し、その後は人間が何も操作しなくても最適なタイミングでシフトアップ・ダウンしてスムーズに巡航できる。
この自動化されたシフト制御がスマーロ「LX2」の特徴的なポイントだ。ハンドル左にある「S」ボタンを押すことで発動する「スマートモード」では、「AIドライビングシステム」によってペダルにかかっているトルク、ペダル回転数、車速をもとにAIが判断してギアチェンジするしくみにもなっている。フラットな道路も急な坂道も、7段変速機を上手に制御して自転車を前へ前へと押し出してくれるのだ。
とはいえ、AIが常に人間にとって「快適」と感じるギアにしてくれるとも限らない。もっと早めにシフトアップして踏み込んで加速したいとか、疲れているので軽いギアでのんびり走りたいとか、人間側の気分によってどう走りたいかは変わってくるもの。なので、そういうときはハンドル右側にあるプラスマイナスボタンを使ってシフト操作を補助することもできる。もしくは、後述するスマホアプリでアシストレベルを変更するのもアリだ。
荒れた路面もラクラク走破する大径・太めのタイヤ
スマーロ「LX2」で都内を走っていて「これが正解かも」と感じた大きな要因は、「スマートモード」によるアシスト走行と、それに組み合わされたタイヤだ。ゴツいフレームにマッチしたタイヤは28インチ、太さ約5cmの迫力のあるもの。この大径・極太タイヤが高い走破性を発揮し、適切なアシストと合わさってゴリゴリ走っていける。
基本は車道を走ることになる自転車において、筆者が「魔物」が潜んでいると感じていることの1つは、路側帯や側溝部分を含むいわゆる車道外側線の外側(歩道寄り)だ。近頃は自転車通行レーンのある車道も増え、ある程度は安心して走れる環境になってきているけれど、それでも速度差を考えると(クルマに申し訳ないので)できるだけ端に寄ったほうがいいかな、なんて考えてしまう。
ただ、車道外側線の外側(歩道寄り)に潜むいろいろな「魔物」のせいで、端に寄りたくない場面がよくある。段差もあれば、表面が荒れてガタガタになっていることもあるし、隙間の大きい排水溝のグレーチングも待ち受けている。時には砂や泥が浮いていたり、落ち葉が積もっていたりするだけでなく、釘やガラスが落ちていてパンクする危険もある。
普通の自転車(特にロードバイク)で走るときは、それらに細心の注意を払い、走り心地の悪さにも耐えてきた。しかし、できれば道路の端ではなく、きれいに舗装されていることが多い車道外側線の内側(車道寄り)を走りたい。けれど、車道寄りを走るとクルマに迷惑かもしれないし、そもそも怖いし……(以下ループ)。
ところが、スマーロ「LX2」だと路面がきれいだろうが、きれいでなかろうが、おかまいなしに平気で突っ込めた。大径タイヤが多少の路面の段差や粗さは吸収してくれるうえ、極太ならではのビタッとした安定感もあるからだ(パンク耐性も高そうに思う)。
通常なら、路面の凹凸による物理的な抵抗感から余計に体力を消耗するところだが、いつでも適切なギアを選んでくれるオートマなAIドライビングシステムのサポートもあってまったく負担に感じない。むしろずっと荒れた路面を走っていてもいいなあ、と思えるほど。
自転車だと不快に感じやすいタイル張りの路面などに遭遇したとしても、スマーロ「LX2」なら避ける必要はなかった。踏み潰すようにしてゴリゴリ進んでいけばいいのだ。後続のクルマのストレスも少しは軽減して、互いに楽しく走れるのでは、なんて思ったりもする。
コントローラブルで楽しいディスクブレーキ仕様
こうしたメリットの多い極太・大径タイヤを採用できたのは、前後輪に油圧式ディスクブレーキシステムを搭載したおかげでもある。従来のキャリパータイプのブレーキではタイヤが太いと対応できなかったためだ。
もちろん、スマーロ「LX2」のディスクブレーキ自体のパフォーマンスも十分に高い。筆者の体重も加えれば全体で100kg近くにもなる重量をガッチリ受け止めるストッピングパワーがあり、それでいて握り込み具合によるブレーキングの強弱の幅が広い。
このあたりも油圧式ディスクブレーキのバイクに近い感じがあって、操る楽しさが生まれてくる部分だと思う。ブレーキを軽く当てつつ、太いタイヤのラウンド形状(丸み)を活かして車体を少し傾けながら小回りするときなんかは、まさに「バイクに乗ってる感」があってまたニヤついてしまった。
ちなみに今回、スマーロ「LX2」をお借りしている期間はあいにく天候に恵まれず、雨が降り続いたり、晴れたものの強風が吹き荒れたりとさんざんだった。
が、雨の中であってもレバーのタッチや制動力がほとんど変わらない油圧式ディスクブレーキのアドバンテージを再確認できたし、車重とアシストパワーのおかげで横風にも向かい風にもひるむことなく、長距離をラクに走ることができるのもわかった。悪天候のときほど、スマーロ「LX2」の強みは活きるのではないだろうか。
専用スマホアプリで盗難防止も
最後にもう1つ、SMALO LX2とともに活用したいアイテムがある。専用アプリ「BESV Smart plus」だ。スマホとBluetoothで連携し、走行可能距離(バッテリー残量)や一定期間ごとの走行距離を確認できるほか、車体のGPSを利用した位置追跡やロック解除などのセキュリティ機能も持つ。
アプリを使うと「スマートモード」のアシストレベルの変更も可能だ。「リラックス」「バランス」「ダイナミック」の3段階があり、ダイナミックはもっとも積極的にアシストしてくれて、急坂でも最小限の力で上れる。リラックスやバランスはだいぶ控え目になるので、e-bikeに乗りながらも体力をつけたいと思っている人におすすめだ。
走破性の高い車体で、さまざまな路面状況に遭遇する街乗りにぴったり、と感じたSスマーロ「LX2」。しかし。その一方で気になる部分も少しだけあった。たとえば自動でギアチェンジするときのモーター音や、スマホとBluetoothでつながったときの音がけっこう大きい(設定でオフにもできない)。駐輪場で近くにいる人や、走行中にすれ違った人たちの注目を浴びがちだ。
あと、サドルは幅広かつ防水性を考慮した堅めの素材のせいか、長距離ライドだと角が当たって痛くなってくる感じがあった。サドルレールは一般的な43mm幅のものなので、気になるなら好みのものに交換すると良さそうだ。
スマーロ「LX2」は"IoT自転車"を標榜することもあり、自転車の機能をソフトウェア的にアップデートする機能も用意されている。それによって今は不都合に感じている部分(接続時のサウンドなど)がきっと改善されるだろうし、「AIドライビングシステム」がもっと賢くなったりするかもしれない。乗り物として成長していくことも期待できるe-bikeとして、スマーロ「LX2」をぜひとも長く乗り続けていきたいものだ。