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セキスイハイム、大容量太陽電池の搭載で光熱費ゼロを目指すスマートハウス
(2013/10/21 17:19)
積水化学工業 住宅カンパニーは、エネルギーの自給自足を目指す次世代住宅「スマート・パワーステーション」シリーズを、10月26日より北海道、沖縄、豪雪世帯を除く地域で発売する。
スマート・パワーステーションは、積水化学工業の提案する次世代住宅。創エネ、蓄エネ、省エネのそれぞれの機能を高め、家庭で消費するエネルギーと同等以上の電力を創り出せる点が特徴。春や秋には電力をほぼ自給することができ、暖房などの消費電力の多い冬場を含めると、通年の「エネルギー自給率」は約60%を実現した。
開発の背景には、政府が2020年までに普及を目指す次世代住宅「ネット・ゼロ・エネルギーハウス(ZEH)」の存在がある。ZEHとは、世帯が消費するエネルギー量を、同等かそれ以上に創り出し、世帯の年間の一次エネルギー消費量が正味(ネット)でゼロになる住宅と定義されている。
積水化学工業では、スマート・パワーステーションを“2020年まで見据えて進化させたフラッグシップモデル”と位置付け、ZEHを可能にする住宅としている。
具体的には、スマート・パワーステーションは、10kWを超える大容量の太陽光発電システムによる創エネ、室内に設置できる大容量リチウムイオン蓄電池による蓄エネ、ホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)「スマートハイム・ナビ」による省エネという3つの機能を搭載する。
まず創エネの点では、10kW超の大容量ソーラーを標準で搭載する。大きなソーラーパネルを搭載するために、屋根の形状を工夫し、鉄骨系住宅では庇を延長し、木質系住宅では南側を広くした片流れ屋根を採用した。
ソーラーパネルには、ソーラーフロンティア社と共同開発した高効率の「CISソーラー」を採用。この屋根形状と一体型パネルの採用により、30坪台の住宅で平均的な発電量と言われる4kWを大きく上回る、10kW級の大容量ソーラーパネルを搭載できる。
なお一体型パネルは積水化学工業の自社工場で生産するため、生産や取り付けコストを抑えたという。
蓄エネの点では、据置型のリチウムイオン蓄電池「e-Pocket」を改良。容量は従来と同じ7.2kWhのまま、本体サイズは従来の約60%となる約700×520×670mm(幅×奥行き×高さ)に小型化した。これにより屋内の階段下や収納スペースに設置が可能。さらに室内に設置できるようになったことで、屋外よりも温度環境が安定するため耐久性が向上し、保証期間は従来の1.5倍の15年間に延びた。
省エネ面では、同社のHEMS「スマートハイム・ナビ」を搭載し、家庭のエネルギーの需給状況を見える化する。通信規格は「ECHONET Lite」に対応し、タブレットやパソコンからグラフや数値を確認できる。
また、独自の全室空調システム「快適エアリー」と連動させて、各部屋ごとに人感センサーが人の不在を見分けて冷暖房を自動で制御したり、スマートフォンを使って外出先から冷暖房の運転をONにできる。このほか、専用サイト「スマートハイムFAN」では、ユーザーの使用状況を判別して省エネアドバイスを行なうサービスも用意する。
こうした創エネ、蓄エネ、省エネの連動により、スマート・パワーステーションの光熱費は、売電量込みで年間24万円のプラス収入となる。一般的な高断熱住宅の光熱費が29万円かかるのに対し、一年間で50万円以上の差が出るという。また、10kW以上の太陽光パネルを搭載する場合、固定価格買取期間が20年となるため、一般的な高断熱住宅とは20年で約1,000万円ほど光熱費に差が付く計算になるという。
販売価格は、鉄骨系住宅で坪単価が66万円台から、木質系住宅で69万円台から。蓄電池を標準装備から省略したEXシリーズの坪単価はそれぞれ59万円台から、64万円台から。
通年で90%のエネルギー自給率を目指す
積水化学工業は、これまでにもスマートハウスの開発、販売に力を入れてきた。太陽光発電を搭載する住宅は既に約12万棟建設しており、2012年4月からは太陽光発電、HEMSに加え、蓄電池を標準搭載した住宅を販売している。
スマートハウスは、ハウスメーカー各社によってその定義が異なる。高下貞二プレジデントは、積水化学工業のスマートハウス事業の方向性として「3つのゼロ」を挙げる。
すなわち、電力会社から電気を買わずに済む「光熱費ゼロ」、太陽光発電による創エネで家庭のエネルギー消費を賄う「エネルギー収支ゼロ」、電力自給率を高めて災害時のリスクを軽減する「電力不安ゼロ」の3つのゼロを示す。このうち光熱費の電気代収支については、売電を含めて既にゼロを実現しており、エネルギー収支については、従来は家電製品を含めずに計算していたが、新製品ではより高い目標として、家電製品を含めたエネルギー収支でゼロを実現した。電力不安ゼロの点では、通年で60%のエネルギー自給率を実現しているが、さらに90%の達成に向けて、蓄電池の大容量化やHEMSと連携するソフトウェアの開発に着手していくという。
高下氏は「スマートハウスが特別な家ではなく、これからの住宅選びのスタンダードにしたい」と期待を込めた。