スマートハウス構築を目指した通信規格「ECHONET Lite」が一般公開

~太陽光発電を含むHEMS標準化へ第一歩

 ホームネットワークの規格推進団体であるエコーネットコンソーシアムは21日、都内で記者発表会を行ない、スマートハウス構築を目指した新規格「ECHONET Lite」の一般公開を22日より同コンソーシアムのホームページを通じて行なうことを発表した。

エコーネットコンソーシアム運営委員長 平原茂利夫氏同技術委員長 村上隆史氏

 ECHONET LiteはHEMS(Home Energy Management System)を実現するための通信規格でスマートメーターや家電機器、また太陽光発電システム、蓄電池などの間で情報のやりとりを行ない、エネルギーをより効率よく制御することを目的としたもの。

 シャープ、東京電力、東芝、日立製作所、パナソニック、三菱電機の6社が中心となって1997年に設立されたエコーネットコンソーシアムでは、これまで物理層からアプリケーション層までOSIの7階層すべてを規定した「ECHONET」規格の策定を行なってきたが、伝送メディアをフリーにし、OSIの5~7層の通信ミドルウェアのみに特化し、より柔軟性の高い新規格「ECHONET Lite」を策定した。

 ECHONET Liteは、6月30日より、エコーネットコンソーシアムの会員向けに公開された。それをより幅広く、さまざまな分野の企業がHEMS事業に取り組みやすくすることを目指して、今回一般公開することにしたのだ。

「ECHONET Lite」規格化の範囲コンソーシアムの歩みスマートハウス構築に適応した項目を追加するなどして改定を行なっている

 もともとエコーネットコンソーシアムでは、白物家電および設備系機器を対象に規格作りをしていたが、CO2削減やエネルギーの効率的利用に向けたホームネットワークの実現ができるように、家庭用太陽光発電システム、燃料電池などエネルギーを作り出す設備や、家庭用燃料電池などエネルギーを蓄える設備についても新たに機器オブジェクトとして追加するとともに、すでに規格化済みの機器オブジェクトについても、エネルギーマネジメントに適応した項目を追加するなどして改定を行なっている。これら機器オブジェクトの詳細規定もECHONET Lite規格と併せて一般公開される。

 ECHONET規格はすでに大半が国際標準となっており、今回一般公開されるECHONET Lite規格および機器オブジェクトの詳細規定についても2012年度中の国際標準化を目指している。経済産業省やメーカーなどによる協議団体であるJSCA(Japan Smart Community Alliance)の国際標準化ワークグループの中の「スマートハウス標準化検討会」においては、スマートハウスの中核を担うHEMSの公知な標準インターフェイスとして、ECHONET Lite規格を推奨することが認証されており、今後国際標準となっていくことで、異なるメーカー間の機器同士で相互接続性が高まっていくことになる。

 実際のユースケースとしてもさまざまなパターンが考えられる。たとえば時間帯別料金変動に応じて、充電池の充放電の制御をできるようにすると、電力価格が安い深夜時間帯に蓄電池に充電し、電力価格が高い日中に蓄電池から放電するように制御することで、家庭の電気代を安くできるとともに、ピーク電力を抑えるという効果も得られる。また燃料電池の運転制御を行なうことで、計画停電時の故障リスクを回避するということも可能だ。これは現行の燃料電池製品が停電時に使えなくなるという問題から来るものだが、燃料電池のシステム上、自動停止を繰り返すと故障してしまうリスクが高まる。そこで計画停電に併せて一定時間前にシステムを停止させることで、そうした問題を避けることができるわけだ。

充電池による充放電制御を行なう。ピーク電力を抑える効果もある計画停電に向けて、燃料電池による運転制御を行なうシナリオ太陽光発電の電力抑制は、今後大きなニーズが出てきそうだ

 また太陽光発電の電力抑制というのも、今後大きなニーズが出てきそうだ。現在、太陽光発電システムを電力会社の送電線網と系統連系という形で接続し、日中は逆潮流という形で送電線網へ電気を送るようになっている。

 しかし、電力の需給バランスの関係で、逆潮流に制限がかかるケースもある。とくに、今後太陽光発電の家が増えてくると、そうしたケースがより増えてくる可能性があるが、現状においては電力会社と家庭の間でのインテリジェントな情報のやりとりが行なわれていないため、逆潮流ができないと発電した電気が無駄になってしまっている。

ライバルとなるプロトコルとの比較。機器対応が広いのがECHONETの特徴

 そこでインターネット経由で家庭内のコントローラに信号を送り、逆潮流をとめる際には、家庭の蓄電池に充電を行なったり、ヒートポンプなどの電気温水器に利用するといった制御を行なうことで、系統全体の需給バランスを保ち、効率のいいエネルギー活用ができるようになる、というわけだ。

 ただ、こうした機器制御用のプロトコルとしてはECHONET/ECHONET Liteのほかにもヨーロッパで進んでいるKNX、またZigBeeやZ-Waveといった規格もあるため、今後どれが標準になるかは予断の許さないところ。現状で太陽光発電や蓄電池、またIHクッキングヒータ、選択乾燥機、電気式床暖房などに明示的に対応しているのはECHONET/ECHONET Liteだけなので、エコーネットコンソーシアムとしては、この辺をテコに国際的標準規格へと押し上げていきたい考えだ。






(藤本 健)

2011年12月22日 00:00