イベントレポート IFA 2013
パナソニック、言葉でコントロールできるスマートハウス
~人の好き嫌いにも対応。苦手な食材はクラウドが管理
(2013/9/11 15:33)
国際コンシューマ・エレクトロニクス展「IFA 2013」が、ドイツ・ベルリンの国際見本市会場において9月6日~9月11日(現地時間)に開催された。
IFAは、世界最大級のコンシューマー・エレクトロニックス・ショーで、白物家電をはじめ、テレビやオーディオなどのAV機器も多数出品される。今年で53回目で、前回の2012年は、出展企業が56カ国/1,439社、来場者数は延べ約24万人だった。
家電Watchではその中から、洗濯機や冷蔵庫などの生活家電に焦点を当てて、レポートする。
パナソニック、言葉でコントロールできるスマートハウス
パナソニックは、プロトタイプのスマートハウス向け製品をメディアや取引先など一部に公開した。家電製品とクラウドネットワークを連携させたシステムで、自宅内に大きなマイクを設置、話し言葉で家電をコントロールできる点が特徴。
デモンストレーションでは、実際に男性が朝起きてからの生活を再現。目が覚めると、すぐにエアコンや照明などのスイッチが入るほか、水を出す、お湯を沸かすなどの操作もすべて声のみで行なう。さらに「今日母がくるんだけど、何を作ろうかな」などと話すと、冷蔵庫の中に入っているもの、それを使って作るレシピ、購入しなければならないものなどをすべて音声あるいは画面で表示する。
クラウドネットワークでは随時、1万以上のレシピをストックし、その中からユーザーの傾向やそのときの流行なども反映させて、レシピを選択する。このレシピ検索は、IBMと共同で開発したもので、提案されたメニューが自分の好みに合わない場合は「それいやだ」「次のレシピ」などと言葉でいうと、それ以外のメニューが提案される。
天井に設置するマイクは集音性に優れたもので、周囲5mまでカバー。リビングダイニングに1台設置すれば良いという。「既に現在お使いの家電製品には、様々なセンサーが入っている。エアコンは人がいるところを感知して、その方向だけに風を送ることができる。また冷蔵庫でいえば、ドアの開閉を検知するセンサーが備えられています。そのセンサーを連動させることで、室内のどこに人がいるかというのはすぐにわかるんです。それを認識することで、声を拾いやすくなります」(パナソニック R&D本部 クラウドソリューションセンター 所長 岡村和男氏)
なお、今回のモデルは英語にのみ対応している。
モデルルームには、ユーザーの声に反応するアイコンのようなものも備えられている。これは、インジーゲーターのような役割を果たしており、音声を認識したことを示す青色と、処理中であることを示す緑色を表示する。実演では、このインジケーターに向かって話しかけるようなシーンが見られるがこれ自体にはマイク機能などはない。
「技術的な問題からいえば、このインジケーターは必要なく、実際最初はなしでデモンストレーションを進めていました。しかし、人の性質なのか、何か話しかける対象がないと、不安に感じてしまうようです。そこで、『話を聞いているよ』『処理中ですよ』ということをユーザーにわかってもらうためのシンボル的な意味で採用しました」(岡村氏)
その人の好みや生活に合わせたきめ細やかなサービスを提供
岡村氏によると、今回のスマートハウスのコンセプトは2つあるという。「1つは、話し言葉で操作できること。もう1つは対話できるコンシェルジュサービスであるということです」
現在でも音声認識で操作できる家電製品は存在するが、手拍子や決まった言葉を言わなければならないなど、制約が多い。その点、パナソニックのシステムでは人に話かけるときのような自然な言葉で操作できるという。なお、デモンストレーションでは、やや遅めの英語を使っているが、これは日本メディアや関係者によりわかりやすく説明するためのもので、実際にはもっと早く喋っても十分通用するという。
岡村氏はこの機能について「話し言葉には様々な言い回しがあるが、人の話す言葉にはある程度傾向がある。たとえばキッチンにいるときは、料理に関することを喋ることが多い。それをある程度想定できるので、話言葉であってもそれほど問題ない。また、言い回しにはその人のクセがでる。否定の言葉1つであっても『いや』なのか『だめ』なのか、『違う』なのか、使い続けることで、その人のしゃべり方のデータをどんどん蓄積することで、しゃべり方や言い回しが違う、いろいろな人に対応できる」という。
コンシェルジュサービスについては「ただ単に材料からレシピを決めるのではなく、その人の傾向をデータとして蓄積して、その人にあったものを提供できるようになります。たとえば、レシピ検索をして提案されたメニューの中に自分が嫌いなものが入っていたら、それを伝えれば次回のレシピ検索の時にはその材料を使ったレシピは出てきません。あるいは逆に栄養の偏りを指摘したり、ダイエットに適したメニューを提案することも可能です。ただ単に機械的な検索機能ではなく、一人一人の好みを反映したきめ細やかな提案が可能」だと説明する。
なお、今回のデモンストレーションは、実用化も視野に入れた具体的なものであるという。
岡村氏は今後の展開として、「今の家電製品はセンサーが搭載されているものや、何百というレシピを掲載したオーブンレンジなど高機能化が進んでいる。今後、スマートハウス化を具体的に進める上で、いかにこれらの高機能家電とうまく連携していくかがキーポイントになるでしょう」と語った。