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電気自動車を家の電力に。パナソニックのV2H蓄電は太陽光発電を有効活用

パナソニックがV2H蓄電システム「eneplat」を発売

パナソニック エレクトリックワークス社は、電気自動車と住宅を双方向接続するV2H(Vehicle to Home)蓄電システム「eneplat(エネプラット)」を発表した。受注を2023年2月21日より行ない、出荷は3月末に開始する。

eneplatを構成する製品群として、中枢システムで太陽光発電におけるパワーコンディショナーの機能も備える「パワーステーション(6.0kW) LJRE31B」(968,000円)や、「蓄電池用コンバータ LJDB151B/LJDC301B」(407,000円)、電気自動車との接続をするための「V2Hスタンド LJV1671B」(1,760,000円)のほか、3.5kWh~6.7kWhの「蓄電池ユニット」(1,144,000円~2,090,000円)を披露した。いずれも価格は工事費別。そのほか、既発売のスマートHEMS「AiSEG2」のアップデートも実施する。

eneplatを構成するパワーステーションや蓄電池ユニットなど
活用イメージ

蓄電池だけでなくEVからも電力を供給。電力の自給自足へ

これまでもパナソニックは電気自動車やプラグインハイブリッド車(PHEV)に充電をするシステム「ELSEEV hekia」シリーズを展開してきたが、今回のV2H蓄電システムを使うことで、クルマから住宅への電力供給も可能になる。

各製品を組み合わせて太陽光発電の自家消費向上を図る

実際に接続可能なクルマは日産のリーフやサクラ、三菱のアウトランダーやi-MiEV、トヨタのプリウスPHVなど国産車が中心。こうした電気自動車を蓄電池と組み合わせることで、家庭の太陽光発電システムで作られた電気を売電するのではなく、効率よく充電に利用することを実現し、自家消費を高めることが可能になる。

また、電力がひっ迫する時間帯に電気自動車/蓄電池から住宅へ電力を送り環境負荷を抑えたり、電気料金が高い時間帯の電力を貯めた電気で賄うことにより、高騰している電気代を大きく削減できるというメリットも生まれる。

一方、これまでもパナソニックが販売してきたスマートHEMSのAiSEG2が2023年夏にバージョンアップし、eneplatに対応する。AiSEG2は7型モニター付きが101,420円、モニターなしが50,600円(いずれも2023年4月1日出荷分からの価格)。

「AiSEG2」の7型モニター付きモデル「MKN713」
eneplat発売に加え、「AiSEG2」のアップデートも実施

AiSEG2は日々の電力使用量と翌日の日射量予報を元に家庭の太陽光発電による余剰電力量を予測し、蓄電池の充放電を自動制御できるようになる。パナソニックによれば、このAiSEG2とV2Hの導入により、自家消費効率が約50%から約90%に向上し、CO2排出量として年間約1.0tを削減できるという。杉の木でいえば約87本分から約160本分に相当する量とされる。

パナソニックのシミュレーションによる、自家消費率向上とCO2削減

V2Hのシステムは既に他メーカーが製品を出していたが、今回のeneplatは業界初となる「電気自動車と蓄電池による同時充放電」を実現。これにより、より多くの太陽光発電を家庭内で有効活用できて、太陽光発電の売電量や系統からの購入電力量を減らし、電気の自給自足を高められる。具体的には最大9kWの太陽光発電を電気自動車や蓄電池への充電に利用することが可能になる一方、最大6kWの放電が可能になる。

EVへの充電だけでなく、EVから宅内への放電も可能で、太陽光で発電したエネルギーを有効活用できるとしている
昼間は蓄電池とEVへ同時充電、夜間は同時放電

停電に備える蓄電容量をAIで賢くコントロール可能に

2023年夏のAiSEG2のバージョンアップにおいては、新機能として「AIソーラーチャージPlus」が追加される。通常、蓄電池システムは停電に備える蓄電池容量を確保するため、あらかじめ平常時は放電しない放電加減値を設定している。新機能のAIソーラーチャージPlusは、日々の使用電力量と日射量予報を元に、停電に備える蓄電容量をコントロールするもの。

例えば翌日、太陽光発電システムでの余剰電力が多いと予測した場合、翌日の太陽光発電を加味して停電時に必要な電力を確保。残りの電力は蓄電池から家庭内へ放電する。停電への備えを考慮しながら自家消費を向上させることができる。

また、大雨や暴風などの警報が出ると、AiSEG2が察知。電気自動車や蓄電池へ自動で充電を指示する機能も備わっている。これにより、万が一の停電時に備えて電気を蓄えることが可能となる。

AIソーラーチャージPlusで実現すること

そしていざ停電が発生した場合には、AiSEG2がエコキュートの自動沸き上げを停止。これにより緊急時の電力消耗を抑えることも可能となる。こうした仕組みにより、60kWhの電気自動車と、6.3kWhの蓄電池(屋内)、6.7kWhの蓄電池(屋外)を組み合わせた際、標準的な家庭で約4日分の電力を賄うことができるという。

停電した際の約4日分をバックアップできるとしている

このeneplatを導入する前提として、太陽光発電システムが搭載されていることが必須であり、中枢システムであるパワーステーションの導入が不可欠。

将来、電気自動車を購入するという場合は、V2Hスタンドは後付けとし、蓄電池ユニットと蓄電池用コンバータのみを導入するのも手。逆に、まずは電気自動車との連携を行ない、必要に応じてあとで蓄電池ユニットと蓄電池用コンバータを追加するという導入も可能となっている。

パワーステーションと蓄電池用コンバータ。蓄電池ユニットも容量を選べるよう別体に
将来の増設などにも対応
V2Hスタンドなどは後から追加することも

パナソニックはV2H蓄電システムについて、2025年度の販売目標を5万システム(パワーステーション台数)と設定。eneplatは今後、神奈川県藤沢市で展開されているFujisawaサスティナブル・スマートタウンの戸建住宅に導入予定となっている。