藤本健のソーラーリポート
サクラを家の蓄電池に V2H電池残量の謎、そして屋根のソーラーパネル全交換!
2024年3月7日 08:05
電気自動車に充電した電気を、家に放電して電気として使うV2H(Vehicle to Home)。大容量の家庭用蓄電池が数百万円と高額な中、電気自動車とV2Hのシステムを購入すれば、比較的安く済むのでは……と思って導入した日産サクラとニチコンのV2Hシステムだった。
ただ、そんな使い方をしている人がまだ少ないだけに、情報が少なすぎて試行錯誤、悪戦苦闘の日々。このシステムによって、家全体の電気をバックアップできる体制はできたし、確かに、使えはするのだけど、いろいろ納得いかないことが次から次へと出てきた。今回は、その謎を解明しつつ、サクラを積極活用するために、設置から19年が経過して劣化が目立ってきた太陽光発電システムをリプレイスした話を紹介したい。
電気を使っても「ずっと100%表示」だった意外な理由
スマホもタブレット、ノートPCもみんなリチウムイオン電池が搭載されていて、いつも非常に便利に使っているが、こうした蓄電池に「どれくらいの電気が溜められて、その結果どれだけの電気を取り出せるか」と考えることは、あまりないかもしれない。
確かにスマホを何年も使っていると、だんだん充電容量が減ってくることは実感するけれど、「ためられる電気」と「取り出せる電気」を比較するのって、なかなか難しい。まあ、スマホやパソコンのバッテリーならフル充電しても0.1~0.5円もかからないので、あまり気にする必要もないけれど、電気自動車となると話が変わってくる。それがV2Hとなると、まさに死活問題ともいえる重要なポイントなのだ。
でも、こうしたシステムであってもスマホやパソコン同様に残量が何%なのかの表示はされても、どれだけ溜めて、どれだけ取り出せたかを表示させるような機能はない。ある程度の概算と予測も含みつつ、自分で計測しないと分からないのが実際のようだ。
もし100溜めた電気をそのまま100取り出せるなら、まったく問題はない。でも、実情はそうはいかなかった。いろいろな資料やらネット情報を見て、100突っ込んだら85~90程度を取り出せるんだろう……と思って導入したが、ニチコンのモニターとにらめっこしながら見ていると50程度しか取り出せてないように見えるのだ。
ただ、このシステムを導入してから1週間程度経ったときに、フル充電したら、しばらく電気を使っているのに100%のままの状態が続いたのだ。V2Hのリモコン操作ができるニチコンのスマホアプリで確認してもそうだし、クルマに乗ってディスプレイを見ても100%と表示されている。
こうしたことはスマホなどでもよくある現象なので、実際は120%程度の容量があるけれど、100%以上はずっと100%と表示されているだけなのでは? と予想した。それなら100貯めて50程度しか取り出せないという結果は間違えであり、実際はやはりかなりの割合取り出せるのではと、ニンマリしたのである。
ところが、一度V2Hのコネクターをサクラから外し、再度接続し直してみると突然100%から85%程度に下がってしまった。やはり期待外れなのか。それとも何らかの初期不良で、これだけしか取り出せないのか? その現象について日産のディーラーに伝えた上で、後日またディーラーに行ってチェックしてもらった。
その結果「それが仕様です」と予想外の答えが返ってきた。「資料はお見せするだけで、渡せません」という約束の元、1枚のA4用紙を見せてくれたが、やや不可解なことが書いてある。V2Hのシステムの場合、サクラに限らずリーフでもアリアでも、100%充電し、そのままコネクターをつなぎっぱなしにして放電した場合、10分ほど(数字は少し違ったかもしれない)経過するまで100%表示のままで、その後で通常に戻るというのだ。ただし、コネクターを抜き差しすれば、その時点で通常に戻る、とのこと。
実際にはつなぎっぱなしでも、接続を外しても100%のままであり、10分たっても1時間たっても100%から変わらなかった。その説明とは食い違うけれど、確かにコネクターを接続し直すと正常表示に戻るという意味では、その通り。
なお、コネクターは、物理的に抜き差ししなくても、ニチコンのアプリから「コネクタロック解除」「コネクタロック」という操作をすればいいようだ。
ここまでの結論としては、表示の仕様についてはともかく「100入れた電気は50程度しか取り出せない」ように思える。まだ、計測の仕方が甘いので、これはさらに検証を続けるが、なかなか厳しい現実が見えてきた感じだった。
劣化したソーラーパネルを思い切って交換!
ちょっと話題を変え、サクラを充電するためのシステムを大きくリニューアルしたことについて紹介していこう。もともとサクラを導入しようと思ったきっかけは、ウチの屋根にあるソーラーパネルによる電気を有効に使いたいということからだったが、その太陽光発電システムも2005年1月の新築時に設置したものなので、18年以上が経過してまもなく19年というところ。
やはり徐々に劣化が進んできており、発電量も当初と比較するとだいぶ落ちてきたように感じていた。とはいえ、ちゃんと発電はしているので、いつまで使い続けられるのかチャレンジしよう……なんて思ってもいた。
最近の太陽光発電システムなら、日々の発電量の実績がシステムに記録されるとともに、クラウドにも記録されて簡単に状況を確認できるようになっているが、18年前のものにはそうした機能はなく、1日の状況と累積を見ることしかできない。
とはいえ、日々どれだけ発電しているかは重要なデータであるため、この18年間毎日ノートに発電量を記録してきた。
それとともに、月次の発電量を筆者が所属しているNPO太陽光発電所ネットワーク(PV-NET)のシステムに記載している。このシステムでは自宅の住所情報とともに屋根の方角や傾斜、パネルの容量などを入力していて、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による日射量データベースを元にした推定発電量との比較、またPV-NETメンバーの近隣の発電所との状況比較ができるようになっており、これを見ても徐々に劣化しているのを感じていた。
その一方で、サクラの納車およびV2Hシステムの導入を1年間待っていた中、たまたま2022年末に自宅の壁の塗装工事を行なったこともあり、家に足場が組まれたため、自分で屋根にも上ってみた。
普段は屋根のソーラーパネルを見ることなどないので、貴重な機会でもあったが、ざっと見渡したところ、1つのパネルが明らかに変色していたことを発見した。最悪火事になる可能性もあるので、交換するなりバイパスする必要がでてきた。
電気工事士の資格は持っているものの、さすがに屋根に上がって自分で工事するのは怖すぎるため、18年前に工事をしてくれたシャープの代理店である業者に連絡をして、見てもらった。
いつも連絡している営業担当の方が、その日のうちに見に来てくれたのも驚きだったが、急いで対応したほうがいいだろう、ということに。ただ、持ち帰って見積もってもらったところ、パネルを交換すると数十万円という金額になってしまうので、バイパスしましょうとの提案があり、3万円で処理してもらうことができた。もしこの故障のせいで1ストリングが落ちていたとすると、このバイパス工事で劣化していたものが復活するのではとちょっと期待していたが、そこではあまり変化がなかった。
そうした中、もう一つウチの太陽光発電システムの劣化に関する貴重な情報を得ることができた。前述のPV-NETは全国に約2,000人のメンバーがおり、各県ごとに地域交流会という組織に分かれて活動しているが、筆者が参加している神奈川地域交流会では、設置開始から現在までの累積発電量の推移を元に、劣化状況を見るユニークなシステムを開発している。
これを使ってウチの状況を見てもらった結果、単純な累積発電量を見る限りは大きな問題はなさそうだったが、年乖離度というものを出してもらった結果、明らかに問題がありそうなことが見えてきた。
年乖離度とは過去12カ月の実際の発電量と、前述の推定発電量の乖離度を毎月計算してプロットするというもの。ソーラーパネルは年に0.5~1%程度ずつ劣化していく、と言われている。そのー0.5%と-1%での目安線と比較してみると、175カ月(14年半)あたりまでは、-0.5%のラインに乗っているが、そこから急速に下降していき、216カ月(18年)を過ぎたあたりから-1%も切って急速にダウン。バイパス工事をしたのが、まさにこの-1%を切った辺りだが、復活どころかかなり難しい状況に。18年前と比較すると-20%を切る状況にまで落ちてしまっている。
せっかくサクラを導入するのに、発電がうまくできなければ元も子もない。そこで頭をよぎったのが太陽光発電システムそのもののリプレイスだ。もともと太陽光発電の余剰電力を有効活用するためにサクラの導入を決めたのに、そのサクラに充電する太陽光発電システムを買い替えるとなると、なんだか本末転倒な感じではある。とはいえ、ソーラーマニアとしてはそれもありだろう、と早々に気持ちを切り替えた。サクラの納入の半年近く前、2023年2月~3月ごろに見積もりを取り始めた。
筆者が19年前に太陽光発電システムを導入した際には、個別に3~4社を探し出して、見積もりをとって比較をしたが、今は一括見積もりサイトなどがいろいろと登場している。今回はそれらを使ってみることにした。条件を入れると数日後に連絡があり、電話などで少しやりとりした上で見積もりがやってくる仕組み。とはいえ先日バイパス工事をしてくれた、19年前に施工してくれた業者にも個別に見積もりをお願いした。
激安パネル増えても「置き換え」はできない? 結果的に総額は……
最近は中国製のパネルが激安で、日本での勢力地図も大きく変わってきている。19年前はシャープ、京セラ、三洋電機、三菱電機の国内4社が競い合ってほとんどのシェアをとっていたが、その後日本メーカーのシェアはどんどん小さくなっていった。中国メーカーのものも結構いい製品が多いので、価格次第では中国メーカーもありだな、なんて思いながら見積もりを待っていたところ、予想外の結果となってしまった。
というのも、見積もりサイト経由の会社はどこも新規設置しか行なっておらず、リプレイスはできないとの返答だったからだ。「撤去作業の金額を払う」という話をしても、どこも「経験がないので、できない」と拒否されてしまったのだ。
その中で1社だけ、韓国のハンファQセルズのパネルを使った施工図と金額を出してくれた業者があった。価格を見ると比較的安かったけれど、撤去に関する記載がなかったので、電話で確認してみたところ、やはり「撤去作業はできない」と拒否されてしまった。これが、いまの多くの太陽光発電設置業者の実態なのかもしれない。その後のサポートなどを考えると、安易に安い業者に飛びつくのも危険な感じがした。
そうした中、お願いしていたシャープの代理店からはリプレイスのための撤去費用も入れた形のしっかりした見積もりが届いた。こちらはハンファQセルズの見積もりと比較すると25%~30%程度高め。ただもう一つ気になっていたパネル容量という面ではシャープのほうがかなり優れていた。
ウチの屋根はそんなに広くはないため、サクラを充電するにはできるだけ大きな容量のパネルを載せたい。となると発電効率がカギとなってくるわけだが、ハンファQセルズの場合、かなり無理やり敷き詰めて5.035kWだったのに対し、シャープは余裕を持たせた設置なのに5.472kW。これまでが3.6kWだったので約1.5倍となるわけだ。
この見積もりにあったのはシャープの「NU-228AP」というモジュール変換効率20.0%の単結晶の新製品パネル。実はシャープの場合、このNU-228APというスタンダードモデルよりも、ブラックソーラーというパネルのほうが発電効率はいいのだが、ウチの屋根の形状や設置面積から考えるとブラックソーラーを最大限置いても5.208kWにしかならず、メリットがないということで却下。結果的にはほかに選択肢がなかったこともあるけれど、信頼している業者でもあるので、ここへお願いすることにした。
このパネルの電気を交流に変換するパワコンはJH-55KF4Bというもので、蓄電池も取り付けられるタイプのもの。この時点では先日シャープから発表されたV2Hも使えるタイプ「JH-55NF3」はなかったが、ニチコンのV2Hとの接続において問題ないということも確認をとってもらい、導入することを決定した。
価格は撤去と処分費用も合わせて183万円也。サクラとV2Hの合計額が補助金差し引いて303万円だったので、これと合わせれば486万円と、膨大な金額。これの元が取れるとは思わないけれど、10年ほど使っていけばある程度の回収は見込めるわけだし「趣味としてみれば悪くない」と決めた。
北側にソーラーパネルのせるのはNG? 交換後の発電は好調、そして結末へ
ちなみにこれまでのソーラーパネル、劣化したとはいえ、まだ動いているのも事実。だったら、北側の屋根に載せ替えるのはどうだろうかと代理店に相談してみた。その結果、「当社では北側への設置はお断りしています」と言われてしまった。理由を聞いたところ、北側にまったく家がないところならいいけれど、家がある場合、パネルからの光の反射でクレームが出て裁判になったケースもあるので、そうしたトラブルを避けたいとのこと。
さらに今回のパネルの場合、かなり劣化しているので北側の設置だとほとんど発電が期待できないこと、さらに設置にコストがかかり金額的にもメリットが出せないという返事をもらい、納得して諦めたのである。
このようにして新太陽光発電システムの導入を決めたのはいいけれど、サクラとV2Hの導入前に太陽光発電だけリプレイスしても、単に使いきれずに捨ててしまうことになるのが見えている。もちろん本当は捨てるのではなく売電するのだが、リプレイスユーザーの場合は再び高く売電できるという制度はなく、1kWhあたり8.5円という激安で売電しなくてはならないのでメリットがゼロ。そのため、V2Hの導入が決まるまで少し待ってもらい、V2Hの工事が終わった後に工事をする形にした。
その後、先日の記事でも紹介した通り2023年8月末にV2Hの工事を行なったわけだ。その工事予定が決まった段階ですぐにこのシャープの代理店に連絡を入れてモノの手配、人の手配をお願いしたところ、10月30日、31日の2日間かけて工事を行なうことになった。10月2日にサクラ納車となっていたので、ほぼ1カ月は旧太陽光発電システムを利用し、その後で新システムに替わるわけだ。
工事当日の10月30日は、快晴。作業の方が3人ほど来て工事開始。足場をかけるわけではなく、はしごを使っての作業だったが、撤去に1日掛かるのかな……と見ていたら、撤去自体は午前中に完了。
新しいパネルも2時間程度で取り付けが終わった。その後、パワコンの取り換え作業、室内配線工事などと手分けしながらテキパキと初日の16時過ぎには工事が完了した。
ただ10月30日の横浜の日没時間は16時49分。ウチの場合は南側に家があることもあり、16時には日が当たらなくなってしまうため、この時間では発電チェックができないということで、稼働は翌朝に持ち越した。翌31日の朝、工事作業のリーダーの方と営業担当者が来て、各種チェックの上、スイッチオン。無事に新しい太陽光発電システムが動き出してくれた。
10月31日、11月1日、2日、3日、4日と晴天が続いたこともあり、発電は絶好調。もともとのパネルは3.6kWの容量だったのが5.472kWと1.5倍になったのに加え、経年劣化で30%ほど発電量が落ちていた問題が解決すれば、これまでの2倍程度になるかなと予想していたが、その5日間の発電量を見る限りこれまでの2.5倍を記録。
11月5日の夜にモニターを撮影したものを見ると、たまたまなのかもしれないが、冬至に向かって徐々に発電量が落ちていくことが実感できる結果となっていた。ちなみに11月5日の天気は曇り。曇っていても10kWhを超える発電をしてくれたのはうれしい。
もちろん日中に家でどれだけの電気を使うかによっても異なってくるが、これだけの発電をしてくれれば20kWhの蓄電容量のサクラにとってはフル充電してお釣りがくる電力量だ。11月でこれだけあるので、夏場ならさらに余裕があることが期待できる。太陽光発電による電気だけで生活するという夢も実現できそうな感じだ。
あとは最大の懸念点が、冒頭でも触れたサクラとV2Hの蓄電/放電効率問題。それをより正確に計測するツールを入手できたので、次回はV2Hシリーズの最終回として計測結果を見ながら、現状をレポートしたい。
(シリーズ最終の第4回へ続く)