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高齢の親にエアコンをつけてもらうには、どう言えばいい?

高齢者に、エアコンをつけてもらうコミュニケーション方法とは?

総務省の発表によると、2021年5月~9月に熱中症で緊急搬送された人の半数以上が高齢者であり、熱中症発生場所は、「住居」が3割以上を占めたという。住居での熱中症対策の1つとしてエアコンの使用が推奨されているが、様々な理由からエアコンをつけない高齢者がいるのも事実。

そんななか三菱電機は、高齢の親を持つ子供世代を対象に、親のエアコンの使用状況に関する調査を実施(東京・大阪に在住の男女600名)。調査によると、夏場、積極的にエアコンを使用しない高齢者が1割以上いることが分かったという。

アンケートの質問は、「同居している親御さんの夏のエアコン使用状況について、下記の中からあてはまるものを選んでください」というもの。回答のうち「エアコンを使用しないが、家族が付けた場合、嫌がらない/嫌がる」や「エアコンを使用しない」の合計が全体の13%にのぼったとする。

夏場、積極的にエアコンを使用しない高齢者が1割以上いる

また「同居している親御さんに、夏はエアコンを使うよう促したことはありますか」に対しては、「促したことがある」が74.4%となった。さらに「親御さんに、夏はエアコンを使うよう促した結果、いかがでしたか」についての回答では、「以前より使うようになったが、未だに使わない日があるので、悩んでいる」が44.8%、「全く使わない」が19%となったという。

なかなかエアコンを使わない高齢者も少なくない
エアコンをつけるように言っても、応じない高齢者も多い
高齢者がエアコンを使いたがらない理由

主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)の寺岡純子氏は、同氏が高齢者の家族と接する中で「高齢の親が夏にエアコンをつけたがらず困っている」という話をよく聞くという。

高齢者がエアコンをつけたがらないのは、暑さを感じづらくなっているから

寺岡氏は、高齢の親がエアコンをつけたがらない理由は、老化によって皮膚の感覚や内臓の機能が低下しているため、暑さを感じづらくなっていることが、原因の一つとして考えられるという。

同氏が高齢者の自宅を訪問してきた経験から、「高齢になると暑さを感じる感覚が鈍くなるため、『暑くない』と言っていても、しっとり汗をかいている場合や、気温に合わない服装をしていることがある」という。また内臓の機能が低下していると体温の調節が上手くできず、脱水に陥りやすく熱中症に移行しやすいため、注意が必要だとする。

暑さを感じにくくなっている高齢者もいる

エアコンをつけてもらうための意識改革とコミュニケーション方法

寺岡氏によれば、高齢者自身に「エアコンをつけることが重要である」ことを、正しく理解してもらうことが重要だという。そのため、高齢者の意識を変える必要がある。具体的には、下記3点を理解してもらう必要がある。

1. 昔と違い、今は気温が上がっていることを理解してもらう
2. 高齢者自身に、暑さを感じにくくなっていることを理解してもらう
3. エアコンは、つけ始めに一番電力を消費することを理解してもらう

以上の理解を深めてもらいつつ、高齢者がエアコンをスムーズにつけるような、下記3つの環境作りや声がけが必要だという。

デジタル温度計&注意書きを目につくところに設置し、家族で室温を気にする習慣をつける

冷蔵庫やテレビなど、高齢者がよく使用する場所に、デジタル温度計を設置しておくとよい。同時に、「室温28℃以下」、「エアコンはつけたままにする」などの注意事項を書いて、目につくところに貼っておく。

デジタル温度計などを目につく場所に設置する

これにより、高齢者が視覚的に理解しやすくなり、自分の感覚よりも室温が高くなっていること、また気温が35℃を超える日が多くあり、昔と違い気温が上がっていることに気づいてもらう。さらに、家族との日常生活でも、室温を確認する習慣をつけると良い。

「エアコンはつけ始めに電気代がかかるから、つけっぱなしでいいんだよ」と周囲の人から何度も伝える

高齢者には、周囲の人たちが繰り返し伝えていくことが大切だという。例えば、かかりつけの医者からの「(エアコンは)つけっぱなしにすることが大事」というメッセージを、文字にして枕元に貼り付けるなど、視覚で訴えながら、「(エアコンは)入り切りを繰り返すよりもつけっぱなしがよい」ということを、いろいろな人から繰り返し伝えてもらうのが良いという。

つけっぱなしを維持することで、室温も一定に保たれるため、熱中症対策としても有効。また、前項のようにデジタル温度計を設置したことで、エアコンを消すと室温が上がっていく様子が視覚的に分かる。この「視覚」と、「繰り返し伝える」ということを意識しましょうというと呼びかけている。

「いつまでも元気でいてほしいからエアコンをつけてほしい」と伝える

高齢者に、誰がどう伝えるのかも重要。

主治医やケアマネジャー、ヘルパー、孫などの言うことは、聞く傾向があるという。また「エアコンをつけないとダメ」という言い方ではなく「いつまでも元気でいてほしいから、エアコンをつけてほしい」といった言い方が適しているとする。