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400mハードル日本記録保持者・為末 大氏の走りを丸裸にした、スマートフットウェアを200足の限定販売

 no new folk studio(ノーニューフォークスタジオ)は、ランナーの足の動きを解析し、ランニングフォームの改善をサポートするスマートフットウェア「ORPHE TRACK(オルフェ トラック) 1.0ベータ版」の販売予約を、200足限定で開始した。

 価格は29,800円(税抜)。発送は、7月上旬〜中旬を予定。なお、同社のTwitterアカウントをフォローのうえ、指定のツイートをリツイートすると、5,000円割引になる。また、1.0ベータ版購入者には、本ベータ版でのフィードバックを元に改良された、バージョン2.0のシューズが無償提供されるという。さらに、同社主催のランニングのコーチングイベントやミートアップイベントへも無料で参加できる。

オルフェ トラック 1.0ベータ版
ソール
ミッドソール

 専用シューズSHIBUYA1.0とセンサーモジュールコンピューター「ORPHE CORE 1.0」、それに専用アプリ「ORPHE TRACK Run」で構成される、ランニング解析システム。

センサーモジュールコンピューター「ORPHE CORE 1.0」
ミッドソールの中に「ORPHE CORE 1.0」をセットする
USBで充電する
「ORPHE CORE 1.0」の裏面

 専用シューズのサイズは、24.0/26.0/27.0/28.0cmの4サイズ。現状では専用アプリがiOSのみに対応(製品版ではAndroid OSにも対応予定)。

 センサーモジュールコンピューター「ORPHE CORE 1.0」を搭載した専用シューズで走ると、様々な足の動きをリアルタイムで数値化し、専用アプリにグラフなどで表示することで、自分の走りを可視化する。

 アプリで把握できるのは、主にランナーの着地法(フォアフット/ミッドフット/ヒールストライクで分類)やプロネーション(着地時の足首のひねり角度、回内角度)、ストライドの高さ、走ったルート、ペースなど。

自分の走りを客観視し、ランニングフォームを修正

 同社代表の菊川 裕也氏は、オルフェ トラックにより、ユーザーが何を得られるかを、発表会で次のように語った。

 「ランニングによる故障で、30%の方がひざに痛みを感じるといいます。その怪我と関係していると言われているのが、着地方法です。かかとから着地するヒールストライクが一概に悪いと言うと語弊がありますが、足全体で着地するミッドフットよりも、怪我との関連性が高いです。オルフェ トラックを使い、自分の走りを客観視することで、ランニングフォームを修正しやすくします」

代表の菊川 裕也氏
ランナーの故障の3割が、ひざに起因するという
足裏のどこで着地するかによって、ひざへの負荷が変わる

 発表会では、菊川氏がトレッドミルで走った際の映像と、アプリの画面を見せてくれた。菊川氏は、ランニングの初心者。完全に、かかとから着地するヒールストライクの傾向が高いことが、映像でもアプリ上でも分かった。

菊川代表が実際にトレッドミルで走った時のデータを集計
走りの傾向が分かるサマリー(要約)画面。ヒールから、足首をややひねった状態で着地していることが分かる
着地の傾向を、より時間ごとに詳しく見たグラフ。グラフの「0」に近いほどミッドフットなのだが、菊川氏の場合は「-20」。完全にヒールストライクだと分かる
プロネーションを詳しく見ると、左右の足とも数値は「10°」前後。これは、毎回、足首をひねった状態で着地していることを示す

 次に、トップギアインターナショナルの代表であり、プロのランニングコーチである白方 健一氏の走りを分析した。サマリー画面で見ると、ヒールストライク傾向となっているが、細かく分析した画面では、よりミッドフットに近いことが分かる。また、プロネーションについては平均が「3.3〜3.5°」と、ほとんど足首をひねることなく着地していることが分かった。

白方 健一氏
白方氏の走りのサマリー画面
着地は、菊川氏が「-20」前後だったのに対し、白方氏は「0〜-10」と、ミッドフットに近いことが分かる
プロネーションの詳細画面では、「0°」前後と、ほぼ足首をひねることなく走っていることが分かる

400mハードル日本記録保持者・為末 大氏のランニングを分析

 さらに来場した、男子400mハードルの日本記録保持者である為末 大氏のランニングを分析。なお為末氏は、同社のチームスプリントオフィサーとして、同シューズの開発に参画している。

 為末氏の走りを見ると、右足はミッドフットだが、左足はヒールストライクと判定された。また、プロネーションも、左右差が大きいことが分かる。

為末氏の走り
為末 大氏
為末氏の走りのサマリー画面。右足はミッドフットだが、左足はヒールストライクとの判定。また、プロネーションは、右足が「8.0°」と気になる角度で着地していると判定された
詳しく見ると、左右ともにミッドフットに近い
プロネーションの詳細を見ると、やはり右足の状態が良くないようだ

 自分のランニングデータを見た為末氏は、「ハードル競技では左足を前に出すので、それが原因だと思います。あと、僕は左ひざの怪我で引退しているので、まさに今の自分の走りが、データに表れているんだと思います。けっこう左右差があるものですねぇ」

 続けて、為末氏は「オルフェ トラック」の有用性を次のように語った。

 「オリンピック選手だけが使えるJISS(国立スポーツ科学センター)という施設に行くと、自分の走りをデータで測定できるます。ただ、そこでは準備に1時間、測定に10分、結果が出るまでにまた時間がかかります。1日で測定できるのは多くて4人くらいです。しかも一般ランナーは使えません。

 また、そもそも測定する実験室での緊張した走りと、実際にフィールドを走っている時の走りが同じかといえば、やはり違いがあるんじゃないかと思います。

 オフフェ トラックは、誰でも普段の練習時にも測定できる点が重要です。だから、怪我をした時などは、普段のデータと比較して、こういう走りをしたから怪我をしたのかなぁと自分で予測できる可能性があります。

 今後の可能性としては、正しい走りをした時には“ピンポーン!”と音が出たり、ダメな時には“ブー!”と言ったようにすれば、より楽しく正しい走りが身につくんじゃないかなと。そうした色んな可能性がありますね。

 そして、正しい走りを身につけることが大事な理由は、怪我なくランニングを楽しみ続けるためです。そんな走りを身に付けて、生涯にわたってランニングを楽しんで欲しいです。

 走ることを楽しむ人が、一人でも増えてくれればいいなぁと思っています」