走るライター南井正弘のコレはホントにスグレモノ!

リーズナブルな価格ながら、高い走行性能を発揮する1足「ナイキ ズーム ライバル フライ」

<実際に履いて使って走ってから書く、ライターの南井正弘が「コレはホントにスグレモノ!」と太鼓判を押すスポーツアイテムを、毎週レコメンド!

 かつて陸上部やサッカー部に所属していたなど、現役時代と比較しても、それほど走力が落ちていない方もいるだろう。そんな方が、一般的な初心者向けランニングシューズを選んでしまうと、保持する走力とマッチしないためにフラストレーションが溜まりがち。

 そう思った時にオススメなのが、「ナイキ ズーム ライバル フライ」。自慢の脚力を効率よく路面に伝えてくれ、適度な保護性もある。スタイリッシュなデザイン&リーズナブルな価格設定も嬉しい1足だ。

ナイキ ズーム ライバル フライ
メーカー名ナイキ
製品名ナイキ ズーム ライバル フライ
実勢価格9,180円(税込)

 「ナイキ ズーム ライバル フライ」は、日本市場向けに開発されたモデル。中学・高校の陸上部の学生から高い支持を得ていた「ナイキ スピード ライバル」など、一連のプロダクトの系譜にある1足だ。

 今回全く新たなモデルに生まれ変わったことにより、「ナイキ ズームヴェイパーフライ4%」や「ナイキ ズームフライ」といった厚底モデルのアッパーデザインとソールユニットを思わせるフォルムを採用。従来モデルよりもスタイリッシュな印象となった。

 実際に履いてみると、見た目のスリムなフォルムほどは窮屈な感じはなく、若干足長が、長い気がする。だが、一般的な日本人にフィットしそうな足型だ。使用しているアッパー素材も柔軟なので、優しいフィット感。ソールユニットに関しては、前足部は薄めで、立っている状態でも地面の感覚が伝わってくるが、ヒール側はある程度の厚みがある。

ラスト(木型)は日本人の足にピッタリとフィットする形状。アッパーは柔軟な素材で優しいフィット感

 走り始めると、まず感じるのは、デザインなどは似ているものの、「ナイキ ズームヴェイパーフライ4%」や「ナイキ ズームフライ」とは全く別の走り心地ということ。

 その最も大きな理由は、ミッドソールにカーボンファイバーやカーボンナイロンのプレートが、内蔵されて“いない”から。これらプレートが配されたシューズでは、独自の反発感や転がるような感覚を、走ってすぐに感じられる。だが、この「ナイキ ズーム ライバル フライ」は、それらの走行感は提供してくれない。しかしながら着地から蹴り出しまでのスムーズかつクイックな走行感を与えてくれるので、これはこれで楽しい。

ミッドソール前足部は地面に近い感覚で、ランナーの脚力を効率よく路面に伝える

 前述のモデルが中足部より前寄りの着地でないと本来のパフォーマンス性能を引き出せないのに対し、このモデルはヒール着地を含めたあらゆる着地箇所でも本来の走行性能を発揮してくれる気がした。

ナイキ ズームヴェイパーフライ4%、ナイキ ズームフライといった厚底モデルでもおなじみの後端が突き出したエアロソールを装備。ヒール部分は厚みがあるので、充分なクッション性を確保

 自然とペースを上げたくなるシューズであり、このシューズなら現在も走力をキープしている元陸上部のようなランナーをも納得させることができるはずだ。

 最後はKm/4分15秒までペースを上げて日課の6kmランを終えたが、Km/6分のようなペースよりもKm/5分を切ってからのほうが、このシューズが持つ本来のポテンシャルを発揮していた気がした。そして、このシューズのもうひとつの特徴だと思ったのが、そのアウトソール。部活生をターゲットに開発されただけに、土のグラウンドでも高いグリップを得るべくアウトソールパターンがデザインされている。その点が、公園内の土の部分でも、その優れたグリップ性能を発揮してくれるのだ。

アウトソールはアスファルトやコンクリートといった舗装路はもちろん、ある程度の深さでアウトソールパターンが刻まれているので、土のグラウンドでも高いグリップ性を発揮する

 このように「ナイキ ズーム ライバル フライ」は、高い走行性能を保持するランニングシューズであり、オーバープロネーション(着地時の過度な倒れこみ)のないランナーで、速めのペースで走りたいというランナーにはピッタリのシューズである。

 元来は陸上部の学生をメインターゲットとした1足だが、彼らだけに独占させるのはもったいない。9,180円(税込)という希望小売価格は、本当にお買い得であり、個人的にはここ3年で最もコストパフォーマンスの高いランニングシューズのひとつだと思った。

南井 正弘

フリーライター、『ランナーズパルス』編集長。1966年愛知県西尾市生まれ。スポーツシューズブランドのプロダクト担当として10年勤務後ライターに転身。雑誌やウェブ媒体においてスポーツシューズ、スポーツアパレル、ドレスシューズに関する記事を中心に執筆している。主な著書に『スニーカースタイル』『NIKE AIR BOOK』などがある。「楽しく走る!」をモットーに、ほぼ毎日走るファンランナー。ベストタイムはフルマラソンが3時間52分00秒、ハーフマラソンが1時間38分55秒。