長期レビュー
東芝「TORNEO(トルネオ) VC-CG510X」
■国内メーカーも“本格サイクロン”を続々投入。今年の掃除機市場はアツい!
東芝の新サイクロン式掃除機「Torneo(トルネオ) VC-CG510X」 |
12月の大掃除に向けて、掃除機の購入を検討している読者もいるだろうが、今年の掃除機市場――特にサイクロン式はアツい。なぜなら、国内メーカー各社とも本格的なサイクロン集塵機構を採用した掃除機を投入してきたからだ。
国内メーカーは、これまでサイクロン式掃除機に弱かった。サイクロン式掃除機といえば、イギリス・ダイソン社が“吸引力が落ちない”をキャッチコピーに日本市場に攻勢を掛けているが、国内メーカーは、一部を除いてダイソンのような強力なサイクロン機構をなかなか搭載できなかった。そのため、サイクロンとフィルターを併せてゴミを濾し取るタイプの製品が多かったが、これだとフィルターの目詰まりが発生しやすく、吸引力が低下する問題点があった。
しかし、それは2~3年も前の話。最近は、国内各社も独自のサイクロン機構を高級モデルに採用するようになり、今年は三菱電機が「風神」、東芝が「トルネオ」という、新しいサイクロン集塵機構を取り入れた新モデルを投入。ほとんどのメーカーで、ダイソン同様に“吸引力が落ちない”が謳われるようになった。いよいよ、“本格サイクロン”の時代が到来したようだ。
そこで今回の長期レビューでは、サイクロン式掃除機を取り上げよう。選んだのは、東芝が今シーズンから投入した、新型サイクロン式掃除機「Torneo(トルネオ) VC-CG510X」だ。初回となる今回はファーストインプレッションを、2回目ではゴミ捨てなどメンテナンス面、3回目では付属品などその他の事項を紹介させていただく。
メーカー | 東芝ホームアプライアンス |
商品名 | サイクロン式掃除機 TORNEO(トルネオ) |
品番 | VC-CG510X |
希望小売価格 | オープンプライス |
参考価格 | 54,797円 |
店舗 | Amazon.co.jp |
なお、前述した三菱電機の「風神」については、過去にレビューで取り上げているので、こちらのリンクより参照していただきたい。
■新サイクロン機構、新グリップ、低騒音――トルネオを選んだ3つの理由
今回、東芝のトルネオを選択した理由は3つある。それは、(1)新しいサイクロン集塵機構「デュアルトルネードシステム」の採用、(2)運転音53dBという“低騒音”、(3)他社にはない新形状のグリップ(持ち手部分)「らくわざグリップ」の採用だ。
今年新たに採用された集塵機構「デュアルトルネードシステム」。カップ上半分の高速の風でゴミを分離し、下半分の低速の風でゴミをまとめる効果があるという |
(1)の新サイクロン集塵機構とは、今回のモデルから搭載された「デュアルトルネードシステム」という機構のこと。これは、ダストカップ上半分に高速気流、下半分に低速気流を送るというもので、上ではゴミを分離、下半分でゴミをまとめることで、ゴミが捨てやすくなるという。
この“ゴミをまとめて捨てやすくする”というのは、掃除機業界で注目されている機能。シャープの2008年のサイクロン式掃除機「EC-VX200」で初めて搭載され、以来、このトルネオでも、またパナソニックや日立の製品でも、ゴミを圧縮して捨てやすくする機能が備えられている。私も以前シャープのサイクロン掃除機も使っており、このゴミ圧縮機能によるゴミの捨てやすさを体験している。
しかし、シャープではダストカップ内のスクリューで圧縮するのに対し、トルネオでは、空気の力でゴミをまとめる、という違いがある。本当に風の力だけでゴミを圧縮できるのか、そしてゴミは捨てやすいのか。ぜひとも見てみたい。
(2)の運転音は、53dBという“低騒音設計”となる。実は、8月のリリース当初は「業界No.1」という謳い文句が付けられていたが、その後、シャープから10月に、運転音52dBというさらに静かな製品「EC-VX220」、が投入され、現時点ではNo.1ではない。とはいえ、業界的に見れば、53dBという運転音は静かな部類に入る。マンション住まいの身としては、夜でも使えるほどの静かさなのかどうか興味がある。
メーカー | 愛称 | 品番 | 最大運転音(新基準) |
東芝 | トルネオ | VC-CG510X | 53dB |
シャープ | プラズマクラスター掃除機 | EC-VX220 | 52dB |
パナソニック | - | MC-SS300GX | 55dB |
三菱 | 風神 | TC-ZK20S | 68dB |
日立 | 2段ブーストサイクロン | CV-SR3300 | 53dB |
三洋 | エアシス | SC-XD4000 | 62db |
ダイソン | DC26 モータヘッドコンプリート カーボンファイバー | 記載なし |
新採用の持ち手部分「らくわざグリップ」。最初に見たときは、広告キャラクターの天海祐希さんのお勧めカードを付けるほど自信のある機能なのだろうか? とも思ったが、この使いやすさについては後述する |
(3)の「らくわざグリップ」は、トルネオに限らず、今シーズンの東芝の掃除機全体に搭載された新機能になる。何でも人間工学に基づいた設計らしく、ホースの延長線上に持ち手部分を設けることで、腕の負担が少ないらしい。言ってしまえば三角形のハンドルで、他社でもありそうな形状に見えるが、改めて他社製品を見比べてみると、このような形のものはない。
このほかにも色々な機能が付いているが、今回は掃除機の基本性能である、ゴミ捨ての簡単さ、運転音、操作性という3点に注目したい。
■なんでコレが今までなかった? 使いやすい機能が盛りだくさん
前置きが長くなったが、ここから製品を実際に使用していこう。
家に到着した本体を見て、率直な感想は“意外にコンパクト”。本体サイズは385×253×253mmで、体積を見ても、他社の高級モデルよりも小型であることがわかる。重量も、国内メーカーでは軽い部類に入る。
メーカー | 愛称 | 品番 | 本体サイズ (幅×奥行き×高さ) | 体積 | 重量 (本体のみ) |
東芝 | トルネオ | VC-CG510X | 385×253×253 mm | 24,643 立方cm | 4.9kg |
シャープ | プラズマクラスター 掃除機 | EC-VX220 | 276×444×261 mm | 31,984 立方cm | 5.8kg |
パナソニック | - | MC-SS300GX | 268×400×313 mm | 33,554 立方cm | 5.1kg |
三菱 | 風神 | TC-ZK20S | 254×422×298 mm | 31,942 立方cm | 4.9kg |
日立 | 2段ブースト サイクロン | CV-SR3300 | 276×405×284 mm | 31,745 立方cm | 5.4kg |
三洋 | エアシス | SC-XD4000 | 280×347×240 mm | 23,318 立方cm | 4.8kg |
ダイソン | DC26 モータヘッドコンプリート カーボンファイバー | 205×320×266 mm | 17,450 立方cm | 3.3kg |
本体サイズは385×253×253mmと、高級モデルながらコンパクト | 右は、ウチに随分昔からある東芝の紙パック式掃除機。トルネオの方が大きいが、大差はない | 横から見たところ。ホイール(車輪)は大きめ |
本体にホースを装着し、電源を入れれば準備完了。グリップ部にある「エコモード」ボタンを押せば、自動で床面の状況に応じてパワーを切り替えて運転をしてくれる。
さっそく数回、部屋を掃除してみた。率直な感想は「この掃除機、やたら使いやすい!」。
特に、らくわざグリップは、なぜこれが今までの掃除機で採用されていなかったのか不思議なくらい、取り回しが簡単だ。押すのも簡単だが、引く動作も簡単にできる。壁面を掃除するために、ヘッドを左右に倒するのも、手首をひねるだけ。何をするにも、安定感が抜群だ。
また、高級機種ながらも小型で軽いため、本体を持ちあげて移動するのも楽だった。高級機種は大きめで重い製品が多く見られるが、本製品は例外だ。
このらくわざグリップ、謳い文句どおり使いやすい。押す動作も引く動作も簡単だ | ヘッドは左右に曲がり、壁面に接着できるのだが、倒す動作もらくわざグリップなら簡単 |
さらに、床にゴミがあるかないかを判定する「ゴミ残しまセンサー」も便利だった。これは、ゴミやホコリの吸い込みを感知し、グリップ部とホース中間部にある赤いランプで知らせてくれるというもの。これが赤く光らなくなったら、その部分の掃除はOKということになるため、掃除の目安として活躍してくれる。2つのランプで知らせてくれるので、目に付きやすく、わかりやすい。ゴミを感知しなくなったら、運転は弱まるため、省エネへの貢献も期待できる。
あと、意外に便利だったのが、ホースの先にあるLEDランプ。これが床面をピカッと照らすのだが、暗いテーブルの下や部屋の隅を掃除するときには、床面をしっかりと照らしてくれるため、床面の状態が確認でき、掃除しやすい。LEDはボタン操作でOFFにもできるのだが、これをなしにすると、何だか心もとなく、どこを掃除しているのか不安になってしまう。オーバーな表現かもしれないが、もう床面が光らない掃除機には戻れないような気がする。
第一印象をまとめると、取り回しが良く、とても使いやすい掃除機に感じられた。高級機種ではあるものの、取っ付きにくいところはなく、「機能が多すぎて使い方がわからない」「機能があるのは良いけと、使いにくい」なんてことにはまずならないだろう。
ゴミのあり/なしを教えてくれる「ゴミ残しまセンサー」。これが点灯していると、まだゴミを吸い込んでいるという知らせになる | ホース中間部にもランプがある。目に付きやすい |
ホース先端部には、床面を照らすLEDランプを搭載 | 床面の状態が分かるので、意外と言っては失礼だが、便利。特に、机の下の掃除には欠かせない機能だ |
■吸引力も問題なし。音も静かで、パワーブラシOFFなら夜でも大丈夫そう
しかし、いくら取り回しが良くても、掃除機はゴミが取れないと意味がない。肝心の吸引力についてはどうだろうか。
これについていうと、現時点ではまったく問題ない。畳でも、クッションのような起毛した素材でも、ラクにゴミを吸い込んで取れる。どうやら、ヘッドが床に接着するパワーが強いようで、パワフルに吸い込んでくれる。
実際にゴミを吸い込んでいるようすは、下の動画を見ていただきたい。
床に落とした片栗粉を吸い込んでいるようす。よく取れている(パワーブラシあり)。なお動画後半では、フィルター自動掃除機能の「カタカタ」が一瞬鳴っているが、撮影時は夜だったので、途中でストップさせている |
起毛のクッションの上に片栗粉を落とし、パワーブラシONで吸い込んでいるところ。掃除機をかけた後は、まったく粉が残っていなかった。 |
ただ、これは使い始めてまだ1~2週間くらいの話。もう少し使い続けた後で、本当に“吸引力が維持”されるのかが大事になってくる。次回、メンテナンス面との話と一緒に、紹介させていただく。
運転音についてはやや高めだが、確かに静かな部類に入る印象を受けた。個人的には、よほどの深夜でない限り使っても問題ないのではないかと思う。ただ、ヘッドのパワーブラシが床に響くので、夜間の使用時はブラシをOFFにしておくのが良いだろう。グリップ部のスイッチで切り替えられる。また、運転後のフィルター自動掃除機能も、運転ストップ後にもう一度「切」ボタンを押して起動させないことをお勧めする。
■丸見えのダストボックス、でもこれが意外に楽しい
今回このトルネオを使ってみて、「掃除って楽しい」と感じることができた。何故かというと、サイクロンがゴミを吸い取っているようすが一目瞭然だからだ。
これ見よがしに露出しているダストカップだが、常に中の様子が分かるため、「吸い込んでいるなぁ」というのが分かる。気分的な問題かもしれないが、キレイにしようという意識が強くなる |
サイクロン式掃除機は紙パックと違って、もともとダストボックスを本体表面に露出する傾向が強く、それ自体は珍しいことではない。しかし本製品では、ダストカップ表面をクリアに保つUVコーティングが施されており、さらにダストカップ自体が、カップ表面にホコリが付きにくい帯電防止効果のある素材を採用している。あからさまにダストボックスを見せる仕様になっているのだ。そのため、吸い込んだゴミがクルクルと集塵される様子が丸見えで、「あー、掃除しているなー」というのが実感できるのだ。
上に掲載した動画でも、吸い込んだ片栗粉が、ダストカップ内の上の方から下の方へと流れていくのがわかるだろう。実際の掃除では、ここまであからさまに見えるゴミは少ないかもしれないが、それでもホコリが溜まっているゾーンを掃除機がけすると、カップ内でホコリがクルクルと回っている姿が確認できる。“掃除している”というのが実感できるのだ。
また、ゴミが溜まっているのが一目で分かるため、ゴミ捨てが頻繁にできるのも良い。ゴミ捨てについては次回まとめて紹介するが、本体から取り出してワンタッチでてきるのでカンタン。サイクロン式掃除機は、基本的には毎回のゴミ捨てが必要なものが多いが、これなら自発的にゴミが捨てられそうだ。
今回は基本的な使用感について述べたが、操作もカンタンで使いやすく、音も静か。しかも、小型で軽いという、バランスが取れた掃除機だ。「良い掃除機は欲しいけど、うるさかったり、大きかったり、重かったりするのはダメ!」という人には、まさにピッタリと言えるのではないだろうか。
操作面でのマイナス面はほとんど見あたらかなかったが、では“吸引力の維持”という、サイクロン式掃除機で最も重要なポイントについてはどうだろうか。これについては、次回紹介させていただく。
2010年11月10日 00:00
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)