長期レビュー

東芝「TORNEO(トルネオ) VC-CG510X」最終回

~使いやすさならコレ、バランスの取れた“優等生”
by 正藤 慶一

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



東芝のサイクロン式掃除機「TORNEO(トルネオ)」。最終回は排気や付属品など、これまで取り上げきれなかった部分を紹介する

 東芝の最新サイクロン式掃除機「TORNEO(トルネオ)」について、初回では使いやすさ、第2回目ではゴミ捨てなどメンテナンス性について紹介した。

 最終回となる今回は、排気のキレイさやイオン放出機能、付属品といった、これまで取り上げなかった部分について触れたい。また、せっかくなので主婦歴約30年の私の母親が使った使用感もついでにお伝えさせていただきたい。

[第1回目はこちら] [第2回目はこちら

排気は基本的にキレイで問題なし

排気は本体背面から出る。この中には3重のフィルターが入っているため、顔を近づけない限りニオイは気にならない

 掃除機を購入する際には、「排気がキレイか」を購入のポイントとしている人も多いだろう。吸い込んだゴミが集塵しきれずにそのまま放出されてしまったり、強い排気で床のゴミを舞い上がらせてしまっては、室内は掃除するどころか、逆に汚くなってしまうからだ。

 しかしトルネオなら、排気についてそこまで心配する必要はない。実際に何度も使ってみたが、使用後にニオイも気になることはほとんどなく、排気の勢いも弱めなので、床のホコリが舞ってくしゃみをすることもなかった。

もちろん、排気口にむやみに顔を近づけたり、ゴミがダストカップに溜まり過ぎた場合は、ニオイを感じることもあるが、普通に使っていれば、排気でイヤな思いをすることはまずない。

 これはおそらく、トルネオの排気の吹出し口にある3層のフィルターのおかげだろう。本体後方の吹き出し口付近には、微細塵をキャッチする「HEPAフィルター」、排気のニオイを脱臭する「ゼオライト脱臭フィルター」、ウイルスやアレル物質をキャッチする「フラボノイドフィルター」が重なって備えられているという。本体は簡単に分解できないため、普通に使っていて目にすることはないが、特に排気を気にすることなく使えるということは、これらの装置がしっかりと機能しているのだろう。


ピコイオンの効果は正直不明

ピコイオンは、写真中央のタテに開いたスリットから放出される

 排気に関連して、本製品には空気をキレイにするというイオン「ピコイオン」の放出機能もある。

 ピコイオンとは、東芝独自の除菌・脱臭技術。水分子に包まれたイオンで、これがウイルスや菌、ニオイ成分を抑える効果があるとされる。運転中のほか、プラグを入れた後、運転をストップした後にも発生しているようだ。

 “しているようだ”と表現したのは、正直、除菌効果が良く分からないから。言われてみればそんな気もするが、じゃあ本当に効いているのかというと、目に見えてコレと示せる根拠もない。他社の掃除機でもこのようなイオンを放出する機能があるので、それに合わせたカタチだろう。少なくとも、流行りの機能はしっかり抑えてるということだけは言えそうだ。

 ここで家電に詳しい方なら、「あれ、ピコイオンって、水タンクに水を入れて使うんじゃなかったっけ」と気づくかもしれない。そう、東芝の空気清浄機などピコイオン機能付きの家電製品の多くは、イオンの発生を安定化するために、ピコイオン専用の水タンクにあらかじめ水を入れておくものが多い。しかし、このトルネオのピコイオンは、室内の空気中の水分を利用するため、水タンクがない。そのため、湿度が約30%以下になり、空気中の水分が少なくなると、ピコイオンが発生しにくくなるそうだ。イオン機能を重視している人がもし居たら、加湿器などで湿度を上げてから使うのが良いだろう。


付属品はシンプル、すき間ノズルと丸ブラシの2つ

付属品は丸ブラシ(左上)とすき間ノズル(左下)の2つとシンプル。写真右の「ピカっとどこでもブラシ」は、最初からホースに付いている

 付属品は、ドア枠など細かい部分に使う「すき間ノズル」と、テーブルや棚の上のホコリ掃除などに使う「丸ブラシ」の2種類。別売りでふとん掃除用のノズルも用意されている。高級モデルなのに標準の付属品が2つだけとは寂しい気もするが、逆に考えればシンプルと受け取ることもできる。

 丸ブラシを使う場合は、掃除機のヘッドブラシを取り外したところにある「ピカっとどこでもブラシ」を使う方が便利だ。丸ブラシの方がブラシの毛が長いが、ピカっとどこでもブラシはヘッドを取り外すだけですぐに使えるため、使いやすい。おまけに、LEDライトまで付いているので、暗いところの掃除にも向いている。

 なお付属品ではないが、ホースの長さ調節も簡単な点に触れておこう。足でヘッドを押えて、ハンドルを押す/引くだけで簡単に調節可。背が高い人も低い人も、楽な姿勢で使うことができる。

すき間ノズルはふすまやドアのレール部分の掃除に便利母親は丸ブラシを仏壇のホコリ取りに使っていたホースの長さはカンタンに調節できる


母親には「使いやすい」と大好評

 せっかくの機会なので、母親にこのトルネオを使ってもらい、感想を聞いてみた。母は以前もレビューでシャープの高級サイクロン式掃除機「EC-VX210」を使っていたのだが、結論から言うと、トルネオをかなり気に入ったようだ。

 まずはLEDで床を照らす機能に大ウケ。「そこまで便利な機能じゃないけど、おもしろい」と、笑いながら掃除をスタートした。

 使い続けていくうちに、「らくわざグリップ」の使いやすさに気付いたようで、「ハンドルが握りやすく、操作が凄くラク。意図したところがちゃんと取れる」との感想。掃除後には、ワンタッチで取り出して、ワンタッチで捨てられるダストカップを「素晴らしい!」と感心していた。

 また、デザイン面でも「シャープのは“マシーン”って感じだったけど、これ(トルネオ)は家電製品らしい、家に馴染むデザイン」と気に入った模様。さらに、本体を持ち上げた際にも「意外と軽くて小さいのねぇ」と、軽くコンパクトな点も評価した。

母親はトルネオの使いやすさを気に入ったようす。ワンタッチのダストカップ取り出し、ワンタッチのゴミ捨てにも感心したようす以前レビューした、シャープの「EC-VX210」(奥)と並べたところ

 あまりに気に入ったようなので「ちょっと手入れが面倒なんだよね」と意地悪なことを言ってみたが、まったく気にならなかったようで、最終的には「シャープのよりもコレがいい」と発言。EC-VX210は2009年モデルなので、2010年モデルのトルネオと比較するのは厳密にはフェアではないが、母は使いやすさにおいてトルネオに軍配を上げたようだ。


機器全体のバランスに優れた、使いやすいサイクロン式掃除機

音も静かで本体も小さめ、操作性も優れているなど、全体的なバランスが取れた、使いやすい掃除機といえそうだ

 というわけで、トルネオについて3週に渡って紹介してきたが、本製品の良さは“機器全体の使いやすさ”にあるだろう。

 というのも、高級タイプの掃除機では「音はすごく静かだが大きくて重い」、あるいは「コンパクトだけど音がうるさい」というようにバランスが取れていない製品があったりする。しかしトルネオは「コンパクトで音も静か」と、バランスが取れているのだ。

 また、らくわざグリップやピカっとどこでもブラシ、ワンタッチのゴミ捨てなど、操作面でも使いやすい機能が搭載されている。さらにいえば、ゴミの吸い込みもパワフルだし、毎回ゴミを捨てていれば、吸引力の低下も抑えられる。先の段落で挙げたコンパクトさと静かさを合わせれば“使いやすいサイクロン式掃除機”ということが言えるのではないだろうか。

 これから年末の大掃除に向け、掃除機を新調するという人もいるかもしれないが、トルネオを買っておけば、おそらく大きな問題は起きないハズ。全体的なバランスに優れた、“サイクロン式掃除機の優等生”としてお勧めしたい。




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2010年11月24日 00:00