長期レビュー

東芝「TORNEO(トルネオ) VC-CG510X」その2

~吸引力は維持する、でも手入れは気になる
by 正藤 慶一

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



東芝のサイクロン式掃除機「トルネオ」。第2回目では使い続けることによる吸引力や、ゴミ捨てなどのメンテナンス面にスポットを当てたい

 東芝が9月に発売した、新しいサイクロン式掃除機「TORNEO(トルネオ) VC-CG510X」について、3週に渡ってレビューを紹介している。初回では、非常に使い勝手が良く、かつ音が静かと、かなり使いやすい掃除機であることをお伝えした。

 第2回目では、サイクロン式掃除機の課題である、ゴミ捨てやフィルターの目詰まりなどによる、吸引力やメンテナンス面を中心に紹介していきたい。

 [第1回目はこちら]

サイクロン式掃除機のメンテナンスにうるさい理由

 レビュー本題に入る前に、なぜサイクロン式掃除機では、メンテナンス面が課題になるのだろうか、という点を改めて説明しよう。それは、サイクロン式ではフィルターに目詰まりが発生することで、吸引力の低下につながるからだ。

 昔からある紙パック式掃除機は、紙パックというフィルターでゴミを濾し取る仕組みになっているが、どんどんゴミが溜まっていくにつれ、風の通り道が塞がれ、吸い込む力が落ちてくる。吸引力が強いのは、紙パックを取り替えた最初の頃だけ。ゴミが溜まりに溜まってしまったあとは、紙パックを取り替えない限り、吸引力は復活しない。

 一方、サイクロン式掃除機なら、理論上は吸い込んだ空気をサイクロンで遠心分離するだけでゴミが取れる。そのため、目詰まりも発生しないから、紙パックのように吸引力が落ちるということもなく、吸引力は常に高いままで維持されることになる。

 とはいっても、これは理論上の話。現実的には、ほとんどのサイクロン式掃除機に除塵用のフィルターが搭載されている。特にこれまでの国内メーカーの掃除機では、高性能のサイクロン機構が搭載できなかったせいか、空気とゴミをサイクロンだけでは分離できず、フィルターに頼る傾向が強い。そのため、フィルターにゴミが溜まってしまい、吸引力が低下。復活させるには、面倒なメンテナンスが必要になるというケースが多かった。

 このトルネオでは、上下2つの気流でゴミを集塵する「デュアルトルネードシステム」という、新しい集塵機構を採用している。メーカーでは“吸引力を維持”すると謳っているのだが、果たして本当にそうなのだろうか。今回はトルネオの吸引力とメンテナンスについて試してみよう。

トルネオの集塵機構。上半分の強い旋回でゴミを分離し、下半分の弱い旋回でゴミをまとめる「デュアルトルネードシステム」が特徴だダストカップの下半分。カップ(左)の中に、ゴミを集める「集塵ネット」(右)が入ることになるダストカップの上半分。細かなゴミを集めるプリーツフィルター(左)と、そのフタ(右)

吸引力は維持する……が、手入れは正直、面倒臭い

 というわけで、吸引力とメンテナンス面でのトルネオの評価だが、結論から言わせてもらえば、吸引力は確かに持続する。しかし、ダストカップ内には粉ゴミが溜まりやすく、メンテナンス面については手間がかかる印象だ。

 吸引力自体については、普通に使っていれば落ちる印象はない。説明書には「吸引力を持続させるために、掃除が終わったらこまめにゴミを捨てましょう」と書かれているため、こまめなゴミ捨ては必要なものの、ダストカップの取り出しもゴミ捨てもワンタッチ。ゴミは小さくまとまっているので捨てやすく、まったく手間ではない。使い続けても、吸引力の低下はあまり気にならない。


ゴミ捨ては超が付くほど簡単。まずは、本体にあるボタンを押して、ダストカップの取っ手を出し、カップ全体を引き抜く取っ手内部のスイッチを押せば、ダストカップが開き、ゴミが捨てられるゴミはデュアルトルネードシステムによってまとまっているため、簡単に落とせる

ゴミ捨てはワンタッチでとにかくカンタン。ゴミの舞い上がりもなかった

 ただし、細かいゴミを多く吸い込んだ場合、内部の「分離ネット」や、ダストカップの隅などに、ホコリやチリが張り付いていることが多い。また、髪の毛など細長いゴミも、分離ネットに張り付きやすい。まあ、ちょっと張り付いているくらいなら、吸引力の低下はほとんど感じられないが、キレイ好きの人や細かい部分が気になる人は、すぐに掃除をしたくなってしまうだろう。

写真は、前回公開した動画で片栗粉を吸い込んだ後のダストカップ内部。正直、粉ゴミなどが分離ネットにこびりつきやすい分離ネットのメッシュ部分には、ホコリや髪の毛が付着しやすい
分離ネットを取るには、ダストカップに付属のブラシですぐに取れるが、面倒だカップのフタ内部にも、粉ゴミが付きやすい

 気をつけたいのが、ダストカップの中の「ゴミ捨てライン」を超えるほど大量のゴミを吸い込んだ時。音がうるさくなるうえ、ゴミを吸い込まなくなる。明らかな吸引力の低下が感じられる。

 このような状態になると、本体の「フィルターサイン」が赤く点灯し、ユーザー側にお手入れが促される。普段の掃除でこれが発生することはないだろうが、先日、家で大掃除をした際、ゴミを捨てるのを忘れてずーっと使い続けていると、このランプが点灯してしまった。これでは、ゴミ捨てもワンタッチでは行なえず、分離ネットにもゴミが大量に付着しているので、お手入れはさらに難しいものになる。こまめにゴミ捨てをするのが、トルネオを気持よく使うためのコツといえそうだ。

 手入れに関連してだが、運転後のフィルターの自動掃除機能についても、できれば毎回運転させてあげた方が良い。カタカタという音がうるさいため、個人的には自動掃除前に「切」ボタンを押して、しばらく運転させていなかったが、手動で自動掃除機能を回したところ、小さなホコリがたくさん落ちているのが確認できた。夜中など音を気にする状況でなければ、毎回必ずフィルターを自動掃除させよう。

フィルターに掃除が必要な場合には、本体後部のフィルターサインランプが点灯し、フィルター掃除を促す先日大掃除をしたところ、ゴミを捨てるのを忘れて、カップ内にも分離ネットにもゴミがギッシリ……さすがに吸引力は落ちる。ゴミも捨てにくいので、大掃除の場合にはこまめに捨てよう

プリーツフィルターを手動で回しているところ。フィルターからチリが落ちているのがわかる。電源OFF後の自動フィルター掃除は、なるべくならやっておいた方が良いだろう

困ったら水洗い。コレが賢い付き合い方かも

 チリやホコリがこびりついたダストカップだが、ティッシュなど乾いたものを使うと、ゴミが舞い上がって鼻がむずむずしてしまった。さてどうしよう……と説明書を読んだところ、ダストカップや分離ネットなど、ゴミが溜まりやすい部分は、すべて水洗いが可能という。そこで、洗面所で水洗いにチャレンジした。

 感想は、ハッキリ言ってラクだ。水を掛けるだけで簡単にホコリが落ちるし、ホコリの舞い上がりも抑えられる。ブラシで細かい部分をホジホジする必要もない。

 ただ、毎使用後に水洗いするというのは、洗う手間と乾燥させる時間を考えるとナンセンス。1~2週間ほど使って、ゴミが溜まってきたら水洗いで一気に片付ける、というのがうまい付き合い方だろう。

 洗った後は、当然だがしっかりとダストカップ類を乾燥させる必要がある。濡れたままだと、雑菌が繁殖してイヤなニオイがするだけでなく、ダストカップ内の変なところにゴミがへばり付いたりする。洗ってキレイにしているつもりが、汚くなってしまっては意味がない。できるだけ風通しの良いところに置いておくのが良いだろう。

ダストカップ内の機構は、基本的に水洗いが可能。掃除が面倒臭くなったら、まとめて洗っちゃうのが良いと感じたプリーツフィルターも水洗い可能。漬け置き洗いをすれば、汚れが落ちやすいという

ヘッドの吸い込みはパワフル。「イオンプレート」も効果がありそう

 メンテナンスとは話が大幅に逸れてしまうが、初回にホース先端のヘッド(吸込ノズル)に関する話をし忘れてしまったので、ここで改めて取り上げておきたい。

 本製品のヘッドは、ヘッドと床面の密着性を高めて吸い込み能力をパワーアップした、新開発の「フロアフリーイオンヘッド」を採用している。実際に使ってみても、吸引力はかなりパワフル。軽めのカーペットなら、簡単に浮き上がってしまうほどだ。

 さらに、ヘッド内部には「イオンプレート」という装置も搭載されている。これは、ヘッド内部のブラシがプレートを摩擦することで、マイナスイオンを発生、床面のホコリを取りやすくするというもの。“イオン”と聞くと「本当に効いてるのかよ~」と疑りたくなるが、ダストカップ内部に溜められた大量のチリゴミを見ると、意外と効果があるのでは、と思えてくる。

 そいうえば、前回片栗粉を吸い込んだ動画を掲載したが、吸い込み後の床面には、粉がほとんど残っていなかった。これも新しいヘッドの効果かもしれない。欲をいえば、その吸い込んだ粉をしっかりと分離してくれれば、もはや言うことなしだ。

ヘッドの裏面。床面との密着度が高く、ゴミをパワフルに掻き取ってくれる写真中央の青い枠内のプレートが「イオンプレート」。どうも、これが微細なホコリまでキャッチしてくれているのではないかと予想する

 今回の内容をまとめると、大量のゴミをダストカップに放置しない限り、吸引力は基本的には維持する。毎使用後のこまめなゴミ捨てが大事だ。分離ネットなどにゴミの張り付きなどが目立つようになったら、ダストボックス全体を水洗いするのがラクだろう。

 さて最終回は、付属品などこれまで触れなかった部分を紹介しよう。



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2010年11月17日 00:00