家電トレンドチェッカー
各社、有機ELテレビの新製品を相次ぎ発表。中国勢を含めコンシューマイベントとしての流れが復活~CES2017
2017年1月13日 08:00
今年も「CES 2017」が2017年1月5日~8日、米ネバダ州ラスベガスで開催された。例年通り、ラスベガスコンベンションセンターをメイン会場に、サンズエキスポ、マンダレイベイ、ベネチアン、ウエストゲートなど、ラスベガスの街全体を巻き込んだイベントとなった。全世界150カ国以上から、16万5,000人以上が参加。3,800社以上が出展した。
今年は、第1回のCESが1967年に開催されてから、ちょうど50年目の節目を迎えており、記念碑的なイベントになった点も特筆できよう。だが、CESはここ数年、家電見本市の色彩から大きく変化。自動車メーカーの出展が相次いだり、電機大手もBtoB関連の展示を増やすといった動きが見られたり、かつてはコンシューマ・エレクトロニクス・ショーと呼んでいたものを、略称の「CES」に呼称を統一。一部では、「CESのCは、コンシューマのCではなく、カーのCではないか」とも揶揄されるほど。
今年のCESでも、基調講演に日産自動車のカルロス・ゴーン社長兼CEOが登壇するなど、その様相が強くなることが見込まれたが、蓋をあけてみると、ソニーやLG電子、パナソニックが、有機ELテレビの新製品を相次ぎ発表。さらに、中国勢を含めて、コンシューマ製品が相次いで展示され、コンシューマイベントとしての流れが復活した感もあった。
会場を視察したパナソニックの津賀一宏社長は、「ソニーやサムスン、LG電子は、テレビを中心としたコンシューマエレクトロニクスの世界にもう一度戻ろうというトーンだった」と指摘。ソニーの平井一夫社長も、「ソニーは、CESにおいて、コンシューマエレクトロニクスの領域に正面から取り組んでいることを示した」などと述べた。
パナソニックの津賀社長は、同社がBtoB中心の展示としていることを強調する意味で、「パナソニックは『先祖帰り』をしていない」と表現したが、電機各社の展示には、そうした方向性が見られたともいえ、コンシューマエレクトロニクスの展示に関心が集まったCES 2017になったともいえよう。
パナソニック、 BtoBを中心に「Smart Home」など近未来の家電など幅広く展示
パナソニックブースは、津賀社長の言葉通り、BtoBを中心とした展示を行なっており、昨年は約6割を占めていたBtoB関連の展示を、7割強にまで拡大し、その様相をさらに強めている。とくに、自動運転を視野に入れた車載関連事業の展示や、スマートシティへの取り組みなどに力を注いでいた。
だが、家電関連の展示が大幅に縮小されたわけではない。同ブースでは、「Smart Home」のコーナーを設置し、「つながる家電で実現するこれからのくらし」をテーマに近未来の家電の姿を展示してみせた。
すでに、CEATEC 2016などでも公開済みの透明ディスプレイを展示。ふだんは透明のガラスのようになっているが、必要に応じて情報を表示。展示では、シェフが登場して調理手順などを説明したり、冷蔵庫に収納している銘柄などを表示したりといった用途を提案していた。
また、電子レンジの技術を応用して、テーブルで調理する新コンセプトフラットクッカー、鍋を置いた部分のIHだけが反応し、調理を行なうフリースタイルIH、画像認識技術を応用してIHクッキングヒーターの制御に活用する技術などを展示した。
新たな調理家電としては、C-I-Oと呼ばれるカウンタートップインダクションオーブン「NU-HX100S」を展示。オーブン機能に特化した新たな提案を行なった。C-I-Oでは、グリルやローストなど、6つの調理モードを利用でき、ステーキや鶏肉、ジャガイモ、野菜を簡単に調理できるのが特徴だ。「健康的な食事を、2時間もかからずに調理できる製品」だという。レシピ情報の提供については、allrecipes.comと提携することも発表。まずは北米市場に限定して展開することになるという。
また、北米市場でも力を注いでいる理美容製品も展示。ナノイーヘアドライヤー、洗顔美顔機、スチーマー、5枚刃メンズシェーバーを展示したほか、2017年6月から欧州で発売予定のHDR対応4K OLEDテレビ「TH-EZ1000」、Ultra HD ブルーレイプレーヤーの普及モデルとなる「DMP-UB400」、「UB300」を参考出展した。
日本では、スマ@ホームとして展開しているホームモニタリングシステムも展示。北米向けには換気扇との接続により、室内の空質調整が可能になるという。また、小型のHDカメラも新たに展示した。
ソニー、世界初の画面から音が出る有機ELテレビを投入
ソニーブースでは、CES 2017で発表した有機ELテレビ「BRAVIA A1E」の展示に力を注いでいた。
BRAVIA OLEDと呼ぶように、BRAVIAのひとつのバリエーションに位置づけた製品で、4K HDR対応プロセッサである「X1 Extream」を搭載。これにより、「ソニーが追求している画質が得られる有機ELテレビが完成した」(ソニー・平井一夫社長)とする。さらに世界で初めて、画面から音が出る機構を取り入れたのも特徴で、2010年に「XEL-1」の生産を終了して以来、ソニーが投入した有機ELテレビに注目が集まっていた。
その一方で、リビングにおける新たな提案を行なったのが、Life Space UXである。グラスサウンドスピーカーやLED電球スピーカー、ポータブル超短焦点プロジェクターの既存商品に加えて、新たな4K超短焦点プロジェクターを初公開した。
これまでの4K超短焦点プロジェクターを、テレビが設置できるようなテーブルサイズにまで筐体サイズを縮小。木目調のデザインを採用してみせた。壁にぴったり寄せた状態で設置しても、壁には約80インチの画像表示が可能だ。
今回の特徴は、「It's all here」をコンセプトにしたサービスを付加したことだ。It's all hereと書かれたタイトル画面のバックの細かい模様は、実は、4Kの800万画素ひとつひとつに書籍のサムネイルを当てはめたものであり、これを拡大すると、目的の本や関連する本、あるいはこれまでに出会うことができないような本に出会う環境を提供できるというものだ。ソニー TS事業準備室の斉藤博室長は、「本屋に行ったときに、予想していなかった意外な本に出会える楽しみと、同様の体験ができる」と説明する。
本のほかにも、音楽や映画などのコンテンツを表示することが可能で、リビングにいながらも本屋などに出かけた楽しみを提供できるとしている。また、自分のお気に入りの写真やイラスト、動画、音楽を選択すると、壁にそれらのコンテンツをお洒落に表示したり、音楽を流したりできることから、自分に最適なリビング環境を演出できるという。「テレビとは異なる映像の楽しみ方の提案」(平井社長)というわけだ。
It's all hereは、Life Space UX向けに開発されたコンセプトだが、技術的にはテレビなどの他の商品に応用することも可能だという。
LG電子、シースルーで中身が見える冷蔵庫や衣類のシワが伸ばせる電子クローゼット
LG電子は、有機ELを前面に打ち出したブース構成が特徴だった。恒例となっている有機ELディスプレイを活用した大型展示は、もはやアトラクション化している感じだが、今回のCES 2017では、従来製品に比べて輝度を約25%向上させた55型有機ELディスプレイを216枚使用したトンネル空間を作り、有機EL特有の黒の発色を生かした宇宙空間の様子を表現していた。
今回の目玉は、2.57mmという驚異的な薄さを実現した有機ELテレビ「LG SIGNATURE OLED TV Wシリーズ」だ。約2kgという軽量化も実現しており、背面の磁石を使って壁に張り付けた利用も可能だ。北米で販売するが、日本では検討中としている。また液晶テレビでは、新たに「Nano Cell」と呼ぶ技術を採用した商品を展示。量子ドットを超える画質を実現できるという。
テレビの目玉展示に加えて、ホームアプライアンス分野の商品展示にも力が入っていた。冷蔵庫は、これまでのDoor in Door冷蔵庫を進化させ、扉には29型の大画面ディスプレイを搭載。画面を2回ノックすると、シースルーになって中の様子を確認でき、さらに2回ノックすると、通常の画面に切り替わり、様々な情報が表示される。
「LG Smart InstaView Door in Door」によって実現されるもので、同社では、「Home Bar」、「Door in Door」に続く第3世代への進化だと位置づけている。ここでは、WebOS 3.5が動作し、様々な用途での利用が可能になる。
タッチ操作などにより、メモやTo Doリストなどの利用のほか、冷蔵庫のなかには「Panaorama View」と呼ばれるカメラが設置してあり、撮影した画像はスマホで確認。冷蔵庫のなかになにが入っているのかがわかるという。買い物先で、なにかを購入すればいいのかわからない場合にも、スマホで確認できるという提案だ。
さらに、液晶ディスプレイの「Recipes」ボタンを押せば、調理のレシピを教えてくれるといった機能も持つ。
そして、アマゾンとの連携を強化。Amazon Dash Replenishmentと、LGのSmart ThinQを組み合わせることで、Amazon.comへの注文ができるほか、「Amazon Alexa」とも連携し、音声操作により、音楽の再生など、各種サービスを利用することができる。
今回の製品発表にあわせて、「DeepThinQ」を発表。今後は、他の機器やサービスと連携したソリューション提供に力を注いでいくことになる。今回のLG電子のブースでは、冷蔵庫を、家事の中心に置くといった新たな提案が行なわれたともいえるだろう。
そのほか洗濯機では、以前から製品化している2つの洗濯槽を持つTWINWashを展示し、洗濯物の違いによって分け洗いをする提案を継続。「Cord Zero」のコンセプトを打ち出している掃除機では、ロボット掃除機やスティック掃除機、キャニスター型掃除機を展示していた。
また、電子クローゼットの新製品も展示。より効率的にシャツやズボンのシワを伸ばしたり、臭いを除去する機能を強化した。とくに今回の新製品では、Wi-Fi機能を搭載して、ネットワーク接続できるようにすることで、遠隔からのも利用できるように操作性を高めた。
これまで韓国、中国、台湾、チェコなどでコンシューマ向けに販売しているが、日本でも、ホテルへの導入をはじめとするBtoB用途に限定して、2017年1月から販売を開始するという。
また、LG電子ブースでは、ロボットの展示にも力を注いでいたのも特筆される。アシスタント機能を持つロボットとして「LG HUB-BOT」および小型の「HOME-BOT Mini」を展示。コミュニケーション機能に加えて、家電製品の制御などを行なうという。
そのほか、CES 2017の終了後には、韓国・仁川空港に導入され、利用客に情報を提供する「Airport Guide Robot(AIR BO)」や空港の掃除を行なう「Airport Cleaning Robot」を展示。また、芝刈りロボット「Lawn Movving Robot」や、業務用掃除機「Robot Vacuum Cleaner」といったロボットも展示した。
サムスン、量子ドット技術を活用した「QLED」採用の液晶テレビを発表
世界ナンバーワンブランドを自負するサムスンは、やはりテレビの展示を前面に打ち出していたが、ソニー、LG電子、そしてパナソニックが有機ELテレビを徹底して訴求していたのに対して、同社は、量子ドット技術を活用した「QLED」採用の液晶テレビ「QLED TV」を発表。プレスカンファレンスでは、「有機ELテレビよりも高画質である」と訴えてみせた。
さらに、サムスンは「IoTのグローバルリーダー」も標榜。SmartThingsとSamsung Payとの組み合わせにより、新たにサービスを提供することなども発表した。
一方、白物家電でも、Family Hub 2.0を打ち出し、家電製品同士を接続。スマホを通じて白物家電と対話をしながら、遠隔操作を行なうなど、各種サービスを利用できるといった特徴を訴求した。
サムスンが発表した冷蔵庫では、扉に液晶ディスプレイを搭載するとともに、音声で操作をすることが可能なのが特徴。庫内撮影用のカメラで内部の様子をディスプレイに表示したり、レシピなどの各種情報の表示、To Doリストなどが利用できることを紹介した。
また、洗濯機と乾燥機の2つの筐体を組み合わせた新製品を発表。さらに、それぞれが上部にもそれぞれ2つ目の槽を持つことから、「Four in One」という提案を行なった。同社独自のFlex Wash、Flex Dry機能を搭載。「洗濯と乾燥が同じ時間に完了する」というメリットを打ち出していた。スマホでの操作も可能にしているという。
そのほか、ロボット掃除機では、室内を計算して効率的な動きを行なったり、室内の汚れ状況を確認したりするほか、遠隔からの操作なども可能になるという。
ハイセンス、ハイアールなど中国メーカーのテレビや冷蔵庫を出展
そのほか、中国メーカーも、白物家電製品の展示を行なっていた。シャープのライセンスを受けて北米市場でテレビを販売しているハイセンスは、ブース奥のエリアで3台のシャープブランドの液晶テレビを展示。さらにハイセンスブランドの98型8K液晶テレビを展示してみせた。
また、ハイアールは、液晶ディスプレイを搭載した冷蔵庫や、Sm@rt airによる空調製品群を展示。買収したGEアプライアンスの白物家電製品の展示し、北米市場に対してアピールした
オムロン、血圧測定の頻度を上げるウェアラブルの血圧計に注力
一方、オムロン ヘルスケアは、2016年に引き続き、開発中の新たな血圧計を参考展示した。同社は、循環器事業において、「脳・心血管疾患の発症ゼロ(ゼロイベント)」を掲げており、血圧測定の頻度をあげるためにウェアラブル型の血圧計を開発することに力を注いでいる。
今回の試作品は、「Project Zero 2.0」の名称で参考展示したもので、腕時計型とすることで、常に身につけておくことができる。気になったときに血圧を測れるようにすることで、血圧測定の頻度を高め、ゼロイベントを実現するという。関係当局の認可を得て、2018年中を目指すという。
また、同社では、喘息発作を検知できる喘鳴(ぜいめい)検知器の試作品も参考展示した。独自の音検知技術を活用することで、喘息の喘鳴音を捉えることで、約30秒間で喘息発作が出ているかどうかを確認できる。
「全世界で増加している喘息患者の喘鳴を検知することで、適切なタイミングで投薬することができるようになる。乳幼児など、自分で喘息発作を確認できない場合に利用できる」という。喘鳴検知器も2018年の商品化を検討しているという。