家電製品ミニレビュー

部屋の空気汚れがひと目で分かって楽しい! 「Dyson Pure Cool」最速レビュー

 春先といえば、花粉の季節。肌寒く暖房をかける日もあれば、暑さで冷房をかけたくなる日も。そんな「窓を開けられない日」が続くこの時期に、ダイソンの新型空気清浄ファン「Dyson Pure Cool(ダイソン ピュア クール)空気清浄タワーファン」を早速試してみた。

Dyson Pure Cool(ダイソン ピュア クール)
リング前面のスリットのほか、側面のスリットからも風が出せる
メーカー名ダイソン
製品名Dyson Pure Cool
価格(編集部調べ)72,144円

外観と基本の仕組み

 直径223mmと床面積は小さいが、高さは1,054mm。当初は背の高い本体に「倒したらどうしよう?」という気持ちになったが、重心が低いので、真ん中より上を結構な力で押さない限りは倒れない印象。思ったより安定している。本体下部の編み目状の部分がフィルターのカバーになっていて、周囲360度から空気を吸って、ループのスリットから風を出す仕組み。

 送風は、羽根のない「エアマルチプライアー」方式で、送風口は前面のスリットのほか、本体側面にも配置されており、どちらかを選択して送風する。前面の細いスリットから送風した場合は勢いの良い風が、広い側面の口から送風した場合は後方へ幅広く緩やかな風が吹き出される。扇風機として涼を取るときは前面から、風に当たりたくない場合は後方へ風を出せばよい。空気清浄機として、季節を問わずに使えるのはありがたい。

12.5インチのノートパソコンとの比較。専有する床面積が小さいのは嬉しいところ
後ろ向きに風を吹き出す「側面スリット」を、やや後方から見たところ

HEPAと活性炭の二重フィルターは、パッキンで逆流防止

 フィルターは二重になっていて、外側はPM2.5よりも小さい直径0.1μmのPM0.1までを除去する「グラスHEPAフィルター」、内側は化学物質や臭いを除去する「活性炭フィルター」が配置され、空気を浄化する仕組み。

 いずれのフィルターも、周囲がゴムパッキンでシールされており、汚れた空気の逆流を防いでいる。リビングで喫煙する我が家で2週間ほど使用したHEPAフィルターは、外側はやや茶色くなっていて、内側との色の差が表れていた。視覚からも、空気浄化を実感できる。

外側からカバーの付いたHEPAフィルター、活性炭フィルター、本体
HEPAフィルターのゴムパッキン
活性炭フィルターのゴムパッキン
2週間で、外側が茶色く汚れたHEPAフィルター

4種類の汚染物質をモニターしてくれる

 空気清浄機能として使って楽しいのは「部屋の空気が、どんな物質でどのくらい汚れているか」をモニターしてLCDディスプレイへ表示してくれる点。モニターした状況は、即座に本体ディスプレイに表示される。モニターできる空気の汚れは「PM2.5」「PM10」「VOC」「NO2(二酸化窒素)」の4種類。VOCは「Volatile Organic Compounds」の略で、日本語では「揮発性有機化合物」となるが、接着剤、塗料、シンナーなどに含まれる物質で、シックハウス症候群などの原因になるもの。「NO2」には、排気ガスなどが含まれる。

「PM2.5」のモニタリング
「PM10」のモニタリング
「VOC」のモニタリング
「NO2」のモニタリング

 モニターでは、緑色が「きれい」、黄色が「やや汚れている」、オレンジ色が「汚れている」、赤色が「とても汚れている」となっている。

 2週間ほど16.75畳リビングで使用したところ、PM2.5、PM10は汚れの大きさ順で「喫煙したとき」「揚げ物をしたとき」「窓を開けたとき」に検知された。その際の変化としては、タバコを吸い始めて1分以内にモニターが「きれい」から「とても汚れている」に変わり、15分くらい経つと「きれい」に戻るといった具合だ。

タバコの場合は、PM2.5が多く、PM10はそれよりやや少ない汚れ
揚げ物の場合は、PM10が多く、PM2.5はそれよりやや少なかった

 東京の多摩地区にある我が家では、VOCとNO2があまり上下しなかったため、本当に検知してくれるのかを調べるため、ちょっとした実験をしてみた。VOCはすぐそばでマニキュアの除光液を使用、NO2はエンジンを掛けた車の排気口そばに本機を設置した。

 除光液は小さじ1杯ほどをティッシュに含ませて、本機のすぐそばで使用した。すると一瞬でVOCの値が上昇して「とても汚れている」になった。除光液は揮発性が高いため、VOCの値が高い状態は続かず、1分も経たずにモニターの値も一気に減少した。この時、部屋全体に臭いが充満せず、周辺が臭うだけで脱臭が完了したのは頼もしい。

すぐそばで、除光液を使ってみた
揮発する除光液を検知してVOCの値が上昇、「とても汚れている」となった

 またアイドリング状態の車の排気口そばに置くと、NO2は「汚れている」まで上昇した。少し風のある日だったので、「とても汚れている」とはならなかったが、NO2の汚れを検知して、浄化することが分かった。

アイドリング状態の車の排気口そばに設置してみた
排気ガスを検知してNO2の値が上昇、「汚れている」となった

操作は、付属リモコンとスマホアプリで

 付属のリモコンには7個のボタンがありそれぞれのボタンは、電源のON/OFF、扇風機風量を10段階から選択、首振り角度を45/90/180/350度から選択、モニターの表示切り替え、風量の自動調整のON/OFF、送風口切り替え、ナイトモードを1/2/4/8時間から選択、ができる。リモコン操作状況は本体モニターに表示される。

付属リモコン
首振り角度は45/90/180/350度から選択できる
空気汚染だけでなく、温度・湿度もモニターできる
送風口は前と後ろを切り替えて使用する。写真は後方モード
ナイトモードは1/2/4/8時間から選択できる

 スマートフォンアプリ「Dyson Link」をインストールすると、付属リモコンと同じ機能に加え、現在の室内・屋外の空気状況、ON/OFFタイマーのスケジュール予約、アプリ接続時からいままでの空気モニターの結果が閲覧できる。

本体と接続後の「Dyson Link」起動画面では、室内外の空気状態が表示される
アプリのリモコン画面
ON/OFFタイマーのスケジュール予約は、曜日や時間を好みで設定できる
過去の室内空気のモニター結果は、空気質(全体)、PM2.5、PM10、VOC、NO2、温度、湿度が切り替えられる

 アプリインストール後は、最初にBluetoothで本体とスマートフォンを接続する。次にWi-Fiルーターと接続する指示があるので、アプリのボタンを押せばOK。我が家のWi-Fiルーターは、接続機器をMACアドレスでフィルタリングしていたので、Bluetooth接続後に、手動でルーターを設定して本体のMACアドレスを登録した。MACアドレスは、フィルターを外した本体の正面下部にある。このとき、同時に住まいの地域を登録すれば、気象庁データなどから屋外の空気状態が表示されるようになる。

MACアドレスは、フィルターを外した本体の正面下部、赤色部分に書かれている

扇風機としての風量は?

 扇風機の機能として大切なのが、風量と首振りだ。風量は前後で10段階、首振りはナシ/45/90/180/350度から選択できる。

 前後の送風口ともに、風量は10段階で調節できる。レジ袋を3×30cmに切ったものを貼り付けて、前後送風で風量10、風量5の状態をそれぞれ撮影した。前面は細い口から、背面は広い口から出しているため、送風口のすぐそばでは送風口の前後で風の強さはあまり変わらない。

前面送風の風量10、袋は勢いよくはためいた
前面送風の風量5、袋が近いからか袋の動きは風量10とほぼ同じ
側面送風の風量10、袋は勢いよくはためいて、前面送風との差があまりない
側面送風の風量5、袋の動きは緩やかに変化した

 次に、本機から2.9m離れたドアノブへ同じコンビニ袋を貼り付けて、前後送風で風量10、風量5の状態を撮影した。前面の風量10では勢いよく袋がはためいているが、風量5では緩やかに変化した。また後方送風では、本機の向きを変え、あえてコンビニ袋が本機の後方となるように設置したが、風量10でも5でも、袋はほとんど動かなかった。前面送風では前方に向かって吹き出され、後方送風では広い範囲に向かって広く吹き出されていることがよく分かる結果となった。

 実際に風に当たってみた感覚だと、気温が高くなってきて扇風機で涼みたいときは風量10がオススメ。風がいらず、空気清浄機単体として使いたいときは、風量1~3くらいがちょうど良いが、「AUTO」モードにしておけば手間いらず。

前面送風の風量10、こちらも袋は勢いよくはためく
前面送風の風量5、やはり袋の動きは緩やかに
側面送風の風量10、袋はほとんど動かず、前面送風と大きな差がある
側面送風の風量5、こちらも袋はほとんど動かない
ドアに取り付けたレジ袋のヒモ

 首振りは、部屋の形状、設置場所で選べる。部屋の角に置くなら45や90度、壁際なら180度、たとえば部屋の中心に設置して350度首振りさせるといった使い方もできる。

 「冷房を付けるほどではない夏、扇風機として使いたい」という時期、我が家では窓が開いていることを考えると、空気清浄機能のみをOFFにできればよかったなあとも思うが、ダイソンがこの商品はあくまで「空気清浄機」として位置づけていることからも、窓を開けての利用は想定していないようだ。

 花粉症の家族がいたり、家が幹線道路沿いにあったりして「窓を開けにくい」状況にあるお宅や、そうでなくとも夏の冷房、冬の暖房時期は窓を開ける回数も激減しがちなので、いずれも窓を開けずに空気がきれいになるのを実感できるはず。特に涼みたいというわけでないなら、送風の向きを選んで風量を「AUTO」にしておけば、汚れに応じて自動で風量が切り替わるのでオススメ。

岩崎 綾