家電レビュー

テレビの音ハッキリ聞こえる! 東芝の無線スピーカーが大活躍

無線スピーカー「TY-WSD20」

パリ五輪が開催されていた時期に、テレビにかじりついて主にサッカーや柔道、レスリングを興奮しながら見ていた。大事な試合は夜中に行なわれていた。当然、家族は眠りにつき、家は静まり返っている。そんななかで大活躍したのが、東芝エルイートレーディングが、AUREX(オーレックス)ブランドから発売した無線スピーカー「TY-WSD20」。実売価格は19,000円前後。

同機はテレビ音声を近くで聞けるようにする小さなスピーカー。テレビの音声を間近で聞けるため、リビングに寝転がりながら観戦していても、実況や解説者の声がよく聞こえる。無駄にボリュームを上げなくても良いから、家族をテレビの音で起こすこともない。五輪開催中はもちろん、その後も我が家では必須のアイテムになっている、その理由を記していく。

無線だけれど、わずらわしい設定は不要!

同機はスピーカー本体と充電台、それにテレビから音声を飛ばす送信機で構成されている。

準備は送信機をテレビに接続することから始める。テレビとは、イヤフォンなどで使う径3.5mmステレオミニジャックコードもしくは、光デジタルケーブルでつなげる。光デジタルケーブルの方が音の劣化が少ないためおすすめだ。なお、いずれのコード/ケーブルも付属している。

そして送信機はUSBケーブルで給電。筆者はテレビ背面のUSB Type-A端子が余っていたので、テレビから給電させて使っている。ただしテレビ側のUSB端子に余裕がない場合には、ACアダプターでコンセントに繋げれば良い。なお、USBケーブルやアダプターも付属する。

本体スピーカーに音声を飛ばす、送信機。これを光デジタルケーブルまたは径3.5mmステレオミニジャックコードでテレビとつなげる
テレビ背面にある光デジタル(音声送信用)とUSB(給電用)に、ケーブルを繋げる
光デジタルとUSBを送信機にも繋げる
送信機の準備が完了

送信側の準備が終わったら、あとはスピーカー本体の電源を入れれば、テレビの音声が流れてくるはずだ。テレビ自体の音量はゼロにしてもいい。

またスピーカーのバッテリーが少ない場合には、充電台にポンッと置くだけで充電がスタートする。充電台には、USB Type-Cケーブルで給電する仕様のため、コンセントが近くにあれば、テレビの位置とは関係なくどこに設置しておいても良い。

充電台はコンセントが届く位置ならば、どこに置いてもいい。給電用のUSB Type-C端子が配置されている
スーピーカーを充電台に置いた様子

ちなみにスピーカーの連続動作時間は約16時間で、充電時間は約4時間。寝ている時に充電しておけば、起きている間にバッテリーが切れることはない。

最初に使う前に接続設定はしないの? と思うかもしれないが、出荷時にあらかじめ送信機とスピーカーがペアリングされているため、接続設定は不要だ。

左のダイヤルで電源のON/OFFを、右のダイヤルで音量を調整できる。基本操作はこれだけ

音質に関しては専門家ではないが、このサイズのスピーカーとしては、普通に良い。一部のBluetoothスピーカーのようなチープな音ではなく、ノイズも少なくクリア。小さなスピーカーユニットしか搭載できない、最上位機ではない、大部分のテレビの内蔵スピーカーよりも、良い音だと思う。

またテレビ映像に対して音が遅れて聞こえる……いわゆる遅延問題に関しても、ほとんど感じない。

東芝のオーディオブランド「AUREX(オーレックス)」
音は良く、遅延もほとんど感じない

人の声が聞き取りやすくなって、ちょっと感動!

冒頭で五輪を観戦している時に、ものすごく便利だったと書いたが、少し感動するほどに良かった。

観戦時に聞こえてくる“実況”は、アナウンサーが話しているので滑舌も良く声量も申し分ないので、テレビのスピーカーでも基本は聞き取りやすい。ただし、“解説”については、例えば柔道であれば話しているのは、大野将平さんや穴井隆将さんなどのアスリート。こちらは話をするプロではないし、なにより声が低め。特に大野さんはボソボソとした感じで話すと思っていたので、内容は分かりやすくて良かったものの、テレビのスピーカーでは注意して聞き取る必要があった。

それが無線スピーカー「TY-WSD20」であれば、自分の隣に座って解説してくれているような雰囲気で聞こえる。

テレビから流れてくる、人の声が聞き取りやすい

印象としては、柔道やレスリングでいえば重量級の低くてかっこいい男性の声は、テレビのスピーカーでは聞き取りにくい。そのほか滑舌が良くない人や、喉が少し乾き気味でガラガラしている人の声ほど、「TY-WSD20」の方が格段に聞き取りやすくなる。

例えば録ってあったNHKの「玉置浩二ショー」の、玉置浩二さんの声などは、かっこいい声のまま聞き取りやすくなった。

また「これはいいな!」と思っているのが、NHKの大河ドラマ「光る君へ」の視聴時だ。紫式部(吉高由里子)などの女性の声は良いとして、藤原道長(柄本佑)など男性陣の声の聞き取りやすさが段違いに良く感じた。また時折、後ろに流れる音楽で聞き取りにくくなるナレーション(伊東敏恵)も、このスピーカーを使えば実に聞きやすい。大げさではなく、ストーリーの理解度が以前よりも高まった。

これは別に大河ドラマではなくても、人が何を言っているのか聞き取ることが重要になる、ドラマやドキュメンタリーなどの全般でいえること。特にドキュメンタリー番組が好きな筆者には、手放せない存在になっている。

それで思い出した……すごくかっこいい声の代表みたいな、窪田等さんや津田健次郎さんのナレーションも、とても聞き取りやすくなった。

家族の中で最も愛用しているのが、小学生の息子

この種のスピーカーは、他のメーカーからも発売されている。だが、「高齢者など耳が遠い人向けでしょ?」と思われているフシがある。もちろん間違いではないけれど、あまりにも「高齢者限定」のように思われてしまっているためか、受け容れられない人も増えてしまわないか心配だ。

先日、義父母の家で、同機をテレビにつなげて試してみることにした(ちなみに設置したのは、小4の息子)。妻の実家は、60インチ以上はあるテレビから、一番近いソファまでの距離が3〜4mほどで、ダイニングテーブルまでが5〜8mほど。天井は5〜6mはありそうな、吹き抜け構造。

そうした家の設計ということもあり、いつもテレビの音が(わかりやすさのため少し大げさにいえば)「ライブ会場か!?」と思うほどに音量が大きい。家の構造上、大音量にしないと聞き取りにくいのだと思う。

さっそく、義実家でテレビを見る時に筆者と妻がよく座る、ダイニングテーブルにスピーカーを置いて使ってみた。筆者も妻も「すっごく聞き取りやすくなった」と大満足。食事中にテーブルの上にスピーカーを置いておくと、これまでのようにテレビに意識を釘付けにしなくても、内容が耳に入ってきて良い。

だが義母は……「これってアレだよね! 耳が聞き取りにくくなってる人が使うやつだよね! うちはお父さんもわたしも耳は大丈夫だから! 必要ないよ!」とのこと……それに義父もうなずいている。

「いや……すっごく声が大きいし……」と思いつつ、「違うんですよぉ……」と言いかけたが、たしかに普段は当人たち2人で生活しているのだから、テレビの音量を大きくしたって問題ないのだろう。マンション住まいの我が家とは異なり、隣近所への迷惑を考える必要がない環境というのもある。

義父母には拒否反応を示されたが、我が家の場合、最も同機を愛用することになったのが、意外にも小学生の息子だ。おそらく家族の中で、聴覚が最も正常に近いはずなのにだ。

何を見る時に使うかといえばアニメ、またはYouTubeをこっそりと見る時。

アニメでは、セリフが聞き取りやすいという。特に「声はっきりモード」を「大」にするのがお気に入りだ(他に「小」と「切」がある)。「声はっきりモード」は、テレビの音の高域端と低域端(主に非可聴域)を少しずつカットすることで、人の声などが含まれる中・高音域が目立つようにするモード。中・高音域を無理に引き上げるわけではないため、不自然さはなく、単純に声が聞き取りやすくなる。

「声はっきりモード」を使うと、より人の声が聞き取りやすい
瞬時にスピーカーからの音を切れる「消音」ボタン

息子に取材したところ「モードを大にすると、音がクリアに聞こえる」と、それっぽい回答。筆者の印象でも、ノイズのような微妙な音が減って、音がクリアになる。中年の筆者よりも可聴域が広いだろう小4の息子は、筆者よりもスッキリとした音に聞こえるのかもしれない(あくまで推測です)。

またYouTube視聴時には、同スピーカーを抱かんばかりに手元に置いて、音が聞こえるか聞こえないかの音量にまで下げて聞いていることもある。

耳元に置いて聞く息子

YouTube動画は、何を見るかにもよるが、なにか妻をイラッとさせる音が混じっているようで……息子が見ていると、かなりの割合で妻が……時々は筆者が「音がうるさい!」と怒り出す。かといって、音量を下げてテレビに貼り付くように視聴していると「テレビに近づきすぎ!」と、また怒られる。

ということで、我が家に無線スピーカー「TY-WSD20」を導入してからは、同スピーカーを近くに置いて、音量を下げて視聴している。要は自分だけが聞こえるように、ヘッドホン代わりに使っているのだ。

じゃあイヤホンやヘッドホンを繋げればいいんじゃない? という人もいるかもしれないが、この1人だけが聞く使い方だけであれば、ヘッドホンでもいいだろうと思う。ただし、ヘッドホンの音声ケーブルは長くても2mくらい。離れて聞くのには向いていない。

Bluetoothのヘッドホンでもいいんじゃない? と思うかもしれないが、5〜6年前くらいに買った我が家のテレビでは、Bluetoothで音声を飛ばせない。別途にBluetoothのトランスミッター(送信機)が必要になる。

なお、無線スピーカー「TY-WSD20」は、イヤホン端子も備えている。そのためスピーカー部にイヤホンやヘッドホンの音声ケーブルをつなげて使うことも可能だ。

背面にはイヤホン用の音声出力端子を備える

息子が夏休みで家にいて、妻が在宅勤務でオンライン会議をする時などは「うるさいからテレビを消して」と、よく息子が言われていた。そうした時に「これなら文句ないでしょ?」という顔をして、息子は有線ヘッドホンをつなげて使っていた。

結果、60歳半ばの義父母には受け容れられなかったが、まもなく10歳になる息子は、気に入って使っている。

料理しながらのテレビ視聴にも良いかも

めったに料理をしないので恐縮だが、テレビから距離のあるキッチンで、料理をしながら使うのにも良いはずだ。

筆者は料理をしないものの、キッチンのレンジフードの下でタバコを吸う。そうした時に、視聴途中の番組を一時停止しなくても、スピーカーをキッチンに持っていけば、テレビ音声をラジオのように聞き続けられるのはうれしい。サッカーのハーフタイムに、もうすぐ後半が始まるけれど、タバコも吸っておきたいという時などにも重宝している。

なおスピーカー部の重さは約520gと軽いうえに、ハンドルがあるので持ち運びやすい。またIPX2の防滴仕様なので、少し水がかかるくらいであれば問題なく使い続けられる。浴室に入れて使うのは推奨されていないが、浴室の外に置いて聞くのなら問題ない。

スピーカーは約520gと軽くて持ち運びやすい

また家族の誰かはテレビのスピーカーで視聴し、その一方で、キッチンや浴室では、他の誰かが同機で音だけを聞くということもできる。

テレビの音量問題の多くが解決した!

前項までに記したとおり、我が家では無線スピーカー「TY-WSD20」が大活躍している。

同機を使って分かったのが、自分たちの耳に問題がなくても、我が家のテレビの音や視聴環境には問題があったということ。テレビ本体のスピーカーでは、遠くまでクリアな音を届けられなかったり、小さい音では聞き取りにくい音質だったことが、浮き彫りになった。今までは、それをボリュームを大きくすることでカバーしていたのだと。

もちろんテレビがハイエンドなモデルだったり、サウンドバーなどを使っている人たちは、また状況が異なるかもしれない。だが、筆者と同様にリッチとはいえない音響環境でテレビを視聴している、おそらく多くの人に、この無線スピーカー「TY-WSD20」がフィットするはず。こうしたレビュー記事で普段は“おすすめ”という言葉をあまり使いたくないと思っているが、同機に関してはかなり“おすすめ”だ。

河原塚 英信