家電製品レビュー
バルミューダからスピーカー登場! 光の演出で音楽がもっと好きになれた
2020年5月12日 08:00
扇風機の「The GreenFan」やスチームトースター「The Toaster」など様々な製品でインパクトを与え続けてきたバルミューダから、今回登場したのはワイヤレススピーカー。これまでのような生活家電ではなく趣味の製品だが、同社が手掛けるからには単なるスピーカーではないはず。特徴は、LEDを使った“光が曲とシンクロする”機能だが、どんな体験をさせてくれるのだろうか? 気になる新製品を使ってみた。発売は6月中旬で、現在予約を受け付けている。
・バルミューダ「The Speaker」32,000円
どこに置いても、不思議なほど音がいい
まず特徴的なのはそのデザイン。円筒形の本体天面に上向きに直径77mmのスピーカーユニットを備え、360度方向に音を広げる仕組みを採用している。これにより、置き場所を選ばず、気軽に設置できるのがポイントだ。
スピーカーとしての機能はとてもシンプルで、スマートフォンなどとBluetoothでワイヤレス接続して聴くのが基本的な使い方。
“どこでも自由に置けるスピーカー”は他社にも存在するが、これを良い音で聴かせるのは簡単なことではない。一般的なスピーカーが、音を鳴らすユニットをリスナーの正面に向けているのは、楽器やボーカルなど一つ一つの音の存在感や、輪郭をハッキリ伝えられるようにするため。これをただ上向きにしただけでは、音が正しくリスナーに届かず、ぼやけたように感じられ、元の音が持つ情報量、濃密さが損なわれてしまう。
The Speakerを聴いてみて最初に感じるのは、上向きのスピーカーとは思えないほど、音の存在感がしっかり再現されていること。とても同社オーディオ製品の第1弾とは信じられない驚きがある。音響メーカー出身の開発者が手掛けたとのことだが、厚みのあるボーカルや、こもらず抜けの良い高音など、聴き始めてすぐに“いい音だ”と分かる。
スピーカーの真正面で聴かなくても、歌い手や演奏者がすぐ近くにいるような存在感や、明確な音の輪郭などを表現。輪郭がはっきりしていると、自然に音が立体的に感じられ、自分の近くでミュージシャンたちが演奏しているような実在感につながってくる。
かつてミュージシャンとして活動しており、生音の良さを知るバルミューダの寺尾玄社長も自信を見せる音質は、「ボーカルが目の前で歌っているかのような臨場感」を重視したとのこと。他社スピーカーには、低音を強烈に響かせるモデルもあるが、The Speakerはそれとは違うキャラクターで、ボーカルの音域を中心にバランスの取れた音質に仕上がっている。ボーカルだけでなく、バイオリンやトランペットなど、人の声に比較的近い音域の楽器の響きも濃密に味わえた。
音楽の躍動感も、落ち着いた雰囲気も光で表現
The Speakerの最大の特徴といえるのが、3つのLEDユニットが音楽を演出してくれること。“楽曲に追従してライブステージのように輝く”というもので、スピーカー内をステージに見立て、3ピースバンドが演奏し、中心にボーカルがいるイメージだという。
光り方は3つのモードが用意されており、最もダイナミックに明滅する「Beat」、ほどよい抑揚をつける「Ambient」、曲に連動せず落ち着いた揺らぎを表現する「Candle」から選べる。切り替えは、背面の☆マークのあるボタンで行なう。
有機ガラスを使った外装も、インテリアとしてのクオリティが高く、一見すると“スピーカーっぽくない”デザインは、初めて見る人にも興味を持ってもらえそうだ。その中で、真空管のような形をした3つのユニットが、それぞれわずかに違う光り方をするのも良い。単なる照明ではなく、音楽と向き合って聴くという体験をさせてくれる。
「独自のアルゴリズムによって、0.004秒の速さで音を光の輝きへと変換する」とのことで、アップテンポな曲にも光がしっかりシンクロ。音楽と絶妙に連動して光るのを眺めるのも楽しいものだ。
ビートのはっきりしたダンス音楽などは、明滅がハッキリしており、同社の表現する“ライブステージ”のようで見ていて面白い。その一方で、静かなジャズなどは光の変化は少ないものの、ゆっくり揺らめいている様子は音楽とも合っていていい雰囲気。
製品を試す前は「光が明滅するのは音楽を聴くのに邪魔になる時もあるかもしれない」と思っていたが、曲調の落ち着いた曲に対しては光り方も穏やか。音楽を邪魔せず、あくまで演出としての役割に徹していると感じた。
ラジコ(radiko)などを流すときは、声に合わせて光らせる必要はあまりないので、「Candle」モードでゆらゆら光らせるのがちょうど良さそうだ。
機器の追加でスマートスピーカーのような使い方も
Wi-Fiは搭載せず、設定できる機能としてはボリューム増減や、点灯モードの変更くらいで、とてもシンプル。Bluetoothのほかに、3.5mmステレオミニのAUX端子も備えており、Bluetoothに対応しないオーディオ機器などと有線で接続して聴くこともできる。内蔵バッテリーで7時間動作し、充電は同梱するUSB Type-CのACアダプターで行なう。
AUX入力を活用すれば、ちょっとした工夫でスマートスピーカーのような使い方もできた。それは、AmazonのデバイスEcho Inputを使う方法。Echo Inputは、手持ちのスピーカーに接続するとスマートスピーカーのように音声操作で様々な機能(スキル)が使えるのが特徴で、5月11日現在、Amazonで購入できなくなっていたのは残念だが、既に入手している人は活用できるだろう。
この方法により、「アレクサ、ジャズをかけて」のように声の操作でAmazon Musicを聴いたり、Kindle本の読み上げ、ラジコを聴くなどの使い方ができた。スマホを触らなくても、声でボリューム調整などもできる。“置き場所を選ばない音質”という特徴が、こうした使い方にもとても合っていると思う。
音楽とのいろいろな向き合い方ができる
SpotifyやApple Musicなど、サブスク音楽が身近になったことは、多くの曲へ気軽にアクセスできる便利さがある一方、1つ1つの曲にしっかり向き合う体験は減っているともいえる。何度も繰り返して聴き続けた曲への思い入れや、久々に聴いた曲の懐かしさなど、その曲でしか味わえない感情の動きが生まれるのも、音楽の面白いところ。The Speakerの光り方も曲の個性の一つと考えると、独特の揺れ動く光が、アーティストの新たな一面を見せてくれるようにも感じてくる。
もちろん、音楽の楽しみ方は自由であり、単に聴き流すのも一つのスタイル。置き場所は自由なので、デスクの脇や食卓などに置いても、インテリアに自然に溶け込む、ちょうどいい存在感だと思える。
既に様々なメーカーから特徴ある製品が登場しているワイヤレススピーカー市場に、新たにバルミューダが参入したのは驚きだったが、同社が自信を持って提供するだけあって、スピーカーそのもの性能だけでなく、デザインや光の演出なども含めて、ただのスピーカーという存在以上に、ずっと部屋に置いて、使っていたいという気持ちにさせてくれた。
単純にカッコいいスピーカーとして、部屋の印象を変えてくれるという意味でも満足感は高い。家で音楽を聴く時間を、今までよりも贅沢な気分にしてくれる一台だ。