家電レビュー
最強ルンバはすごかった! 障害物が「何か」まで見極め、水拭きもしっかり
2023年11月14日 08:05
最近、中国メーカー系ロボット掃除機の進化にブーストがかかり、エコバックスやRoborockなど各社がすごい勢いだ。レーザーを使った空間認識「LiDAR(ライダー)」を搭載したり、前方カメラを数年前から搭載し障害物を回避するなど、これまでは水拭きも同時にできる「のに」ルンバより安いなんて事態になっていた。
かたやiRobot(アイロボット)のルンバシリーズは、自らの進行方向を知るジャイロと車輪の距離センサー、バンパーセンサと赤外線センサーと昔ながらの装備で、カメラの搭載も水拭き機能の搭載も、かつては遅れを取っていた。
しかし遂に眠れる獅子ルンバが牙を剥く! 「新しい技術をすぐ突っ込むばかりが開発じゃない!」とばかりに、これまでのセンサー技術を研ぎ澄まし、制御プログラムを洗練させた「ルンバ j9」をリリースした。
正直なところ、最初はj9の性能に懐疑的だった筆者だが、今回のレビューで考えが180度変わった。「マジごめんなさい! ルンバ舐めてました……」とアイロボット社に謝罪したい。
「ルンバ j9シリーズは、フルモデルチェンジと言えるほどの進化を遂げていたのだ」
これまで「安さ」と「スペック的な最新技術」を売りにしてきた中国系ロボット掃除機だが、全体的に価格は上がる傾向にあり、現在は単純な安さという魅力はほぼなくなったともいえる。
この記事は、「新しいルンバってスゴイんでしょ?」というライトな読者から、「LiDARも搭載してないルンバ? はぁ?」とその性能に懐疑的な人までぜひ読んでほしい。
モデルの統廃合で、製品ごとの違いが明確に
そろそろ「ロボット掃除機が買いたいな」ということで、ここ数年ルンバをチェックしていた人も多いだろう。しかし「i」やら「j」やら、それに続く番号や「+」があったりなかったりと色々なモデルが発売され、それぞれの位置づけがわかりづらかった人もいるかもしれない。
しかし「j9」シリーズの登場に合わせてモデルの統廃合が進み、ラインナップがきれいになり、それぞれのモデルの特色もはっきりした。以下に簡単にまとめておく。
2023年11月1日時点で、このようなラインナップにまとめられたようだ。あれ? この前まで売ってたアレは? というモデルは、流通残となっているようなので注意してほしい。
このなかで今回紹介するのは「ルンバ コンボ j9+」。コンボと+が付いた、水拭き機能や自動ゴミ収集のクリーンベースを持つj9となる。カメラ搭載で障害物回避、5部屋以上にも対応でき、吸引力がiシリーズの2倍。さらに「自動給水」機能を本体とクリーンベースに備えている。事実上、現在販売されているルンバの最新機能を持つハイエンドモデルとなる。
最初にマップを作成、部屋ごとに賢く掃除してくれる
ルンバで最初に家を掃除させると、まず家全体の間取りマップを作成。ルンバで掃除させたい部屋の扉をすべて開け、進入できるようにしてからスタートさせる。ルンバはクリーンベースから出発し、主に時計と反対の左回りに部屋の壁や段差などの輪郭を読み取り、そのフロアの間取り図を作成してくれた。
すごいのは、どこがリビングでキッチンで、寝室なのかという情報もある程度自動で認識してくれるのだ。これは多くのルンバが同社のサーバーにアクセスし、世界各国の間取りから「ここはキッチンぽいぞ!」「ここはリビングっぽいぞ!」という判断をAIが行なっているため。もしAIの判断が間違っていたら、自分で「納戸」「子供部屋」というように名前を付けられる。
「わざわざ部屋に名前を付けるなんて面倒」と思われるかも知れない。しかし部屋に名前を付けることで、指定した部屋だけを掃除することが可能になる。最初に設定するだけなので、ぜひ名前はしっかり付けてほしい。たとえばリビングとキッチンは毎日掃除するけど、廊下や納戸は3日に1回というように、掃除の予定表を作れるのだ。
また一度マップを作成したら、たとえばペットの水飲み場や子供の遊び場などへ進入できないような設定も、マップ上でできるようになっている。
残さない、濡らさない、見逃さない!
ロボット掃除機の性能は、アレコレ語るよりもまず動きと、清掃前後の状態を見るのが一番分かりやすい。掃除モードには色々あるが、まずはプリセットの「お掃除開始」をさせてみよう。この様子を定点カメラで撮影して紹介する。全体の動きがわかりやすいように実際の20倍速にしたものだ。
部屋には砂ゴミや食べこぼしなどの大きい粒子、花粉サイズのゴミ、そして綿ゴミに相当するものを床にセットしておいた。また一部はカーペットを敷き、その上にはペットの毛をこすりつけている。
ルンバはクリーンベースを出ると、まず背中についているモップを床面まで降ろす。これは初期の掃除設定が「吸引+水拭き」になっているからだ。
掃除中の様子を見ていると、まるでフローリングの木目を読んでいるように縦横に掃除しているのが分かる。これはほぼ人間が掃除するパターンと同じで、部屋を素早く合理的に掃除しているのがよく分かるだろう。
このデフォルトの掃除モードは、吸引+拭きだ。そのためクリーンベースの近くにあるカーペットの上はサラリと掃除するだけで少しゴミが残っていた。またキレイさよりも、掃除が終わる早さを優先する設定だったので少し取り残しも見られたが、キレイさを優先するモードに切り替えも可能だ。これらの指定は「お気に入り」として設定できるので呼び出しも簡単。部屋の汚れ具合などで変更しておくといいだろう。
一通り掃除を終えると自動的にクリーンベースへ戻り、ルンバに内蔵されているダストケースにたまったゴミをクリーンベースの紙パックに吸い込む。この自動ゴミ収集機能が、以前のルンバや他社製の同機能ではもの凄くうるさい場合があった。しかしルンバ j9は以前と比べると静かになっているのが特徴だ。
掃除モードによってはゴミを除去しきれない場所がある点に注意
先ほどは吸引+水拭きモードで掃除したが、今度は吸引のみで掃除してみよう。ほとんど違いはないが、カーペットに違いが出ているのが分かるだろう。
アプリをしばらく使ってみたが、筆者の感想としてはスマホの操作画面が少し分かりにくく、選択肢を変えるとどう掃除が変わるのか気になった。また独自の名称などもあったので、機能の意味を教えてくれるヘルプに直接リンクしていると、より使いやすくなるだろう。とりあえずは、掃除をする前にトップ画面の一番下にある「ヘルプ」を一読することをオススメする。
掃除を終えると、マップ上に汚れていた箇所を表示してくれるのは便利だ。こうして汚れを可視化してくれるので、どこが汚れやすいかを把握でき、普段の生活から気を付けたり原因の究明ができる。
次は掃除前と、掃除後(吸引+水拭き)の汚れの状態を見ていこう。部屋の色々な場所にさまざまなゴミをまいて吸引+水拭きで試してみた。
部屋中央のホコリは、1発目でしっかり吸い取り問題なし。壁際の掃除は、最初の水拭きでは少しゴミを残してしまったようだが、吸引掃除だけにしたときはキワまでしっかり掃除できていた。またロボット掃除機にとって斜めの移動は非常に難しいが、斜めになっている壁際も1発目でしっかりゴミを残さず掃除した。
粒ゴミの掃除は、前方の回転ブラシの速度が速いのか、また滑りやすい粒子ゴミだったためか、一度通過したときにゴミを広げてしまった。しかし、その後近くを掃除したときに、広げてしまったゴミもほぼ9割以上を吸い取った。
続いて砂ゴミの掃除。重い砂ゴミはうっすら残るかと思いきや、強い吸引力のおかげでフローリングの目にはまっていた砂ゴミも吸引。裸足で歩いても、ほとんど砂を感じなかった。
花粉ゴミの掃除は、フローリングの目に入り込んだ微粒子もかなり吸い込んだが、完璧とまではいかなかった。拭き掃除をしてもフリーリングの目の奥にピンクの花粉が少し残った。
カーペット上のペットの毛は、1本も残すことなく取れていた。ただカーペットとフローリングの境目に、ブラシで丸まった5mmほどの毛ゴミが残った。ただし毎日掃除していれば、次回の掃除で確実に回収できるものなので、事実上問題はない。
カメラで見てAIが障害物を判断、回避する
ルンバ j9の大きな特徴が前方に設置されたカメラだ。もし前方に障害物があると、リアルタイムでAIが「それが何か?」を解析し、それぞれに適した距離をおいて回避する。
AIが障害物を判断するのに使う情報は、世界各国で稼働しているルンバの画像だ。様々な形状のペットの粗相、子供やペットのおもちゃ、床に置いてあるスリッパや洗濯物、さらに絡まりやすいケーブルを見分けて回避する。
現状、アイロボット社が認識できるとしているのは、以下の障害物となっている。
- コードやケーブル
- ペットの排せつ物(下玉などの吐しゃ物や液体を除く)
- 靴やスリッパ、靴下
- ファブリック、衣服
- リュックサック
- ペットの食器、猫用トイレ
- ペットのおもちゃ(ボールやロープなど)
- ペットそのもの犬・猫など
ルンバは本当にこれらを回避できるのだろうか。そこで、ルンバ j9に障害物競争をしてもらった。
障害物にはいろいろなパターンがあるので完璧とはいえないが、7割は回避していたようだ。また障害物の回避に関しては、日々アイロボット社の元に集まる障害物の画像写真が増え、それに伴いAIの精度が上がるので期待が持てるだろう。
さらに、場合によっては障害物を発見すると「これは障害物なのか?」を問い合わせることもあるという。こうして日夜ルンバのAIは賢くなっているのである!
上に物を置けるようになりスペースを活用できるクリーンベース
今回紹介している「ルンバ コンボ j9+」は、「SD」が付かないタイプなので、掃除をする前にクリーンベースの水タンクから自動で本体水タンクに注水する。そのためSDよりも少しクリーンベース部が大きくなっている。
タンクの下には、本体のダストケースからゴミを収集する紙パックがあるので、約1年間ゴミ捨てが不要になる。1年間というのは物理的に紙パックがゴミでパンパンになる期間の目安なので、衛生面で気になる場合は1カ月で取り換えてもOKだ。
クリーンベースの扉を開けると替えの紙パックやモップ、マニュアルを収納できるスペースがあるので、必要なものを一式まとめておけて便利に使える。
クリーンベースには水タンクと自動ゴミ収集機構を備えているため、ルンバ収納時は本体スタートボタンが見えなくなり、充電状態も外から確認できなくなる。しかしクリーンベース上部に充電ランプやスタートボタンなどを備えていて、本体のボタンが見えなくも大丈夫だ。もちろん連携しているスマホにも充電状態やスタートボタンがあるので、使いやすさはこれまでと同様。
クリーンベースの天面は木目調になっていてインテリアになじむ。そこに小物を置けるので、充電中のスマホやテレビのリモコンなどを置いておくのにちょうどいい。このちょっとした気遣いがうれしい。
これまで通り毛が絡まないブラシと2cmの段差越えが有能
吸い込みのブラシはルンバ独自の幅広ゴム製ローラー式。そのためブラシに毛が絡まることもなく、メンテナンスも水で丸洗いできて簡単。ロングヘアの家族がいる家庭にもぜひオススメしたい。
本体は2cmの段差も越えられるので、フローリングから畳の和室への入り込みなどもスムーズだった。もし段差を乗り越えようとしてもがいたとしても、しっかり自分の進んでいた経路をジャイロセンサーで把握しているので、途中から進路が変わったりということもない。
部屋の形状をしっかり把握し、自分の居場所を認識できるので、途中でバッテリーが切れそうになっても安心。掃除を一時中断し、充電後に中断場所からの再開も可能となっている。
ルンバの最終形態はAIが自己学習して日々進化する
ルンバ j9シリーズには、水拭きができるタイプと吸引だけのタイプがあるが、どちらにも共通していえるのは「ロボット掃除機のために部屋をきれいにするというのが嫌な方」にオススメしたい。
最近は家具屋さんに行くと“ルンバブル家具”があり、なるべくロボット掃除機が立ち往生しない家具が販売されている。しかしj9シリーズなら前方カメラによる障害物回避で、より安定して掃除ができる。
さらにペットと一緒に暮らしている方にも、水拭きありなしに関わらずj9シリーズはオススメ。とくに夏冬の換毛期があるペットは、自動ゴミ収集機能がある「j9+」がいい。これなら掃除のたびに本体ダストケースに指を突っ込んで毛を掻き出す作業もなく、換毛期を楽に乗り切れるだろう。
水拭きができるコンボ j9シリーズをオススメしたいのは「家では裸足でいたい人」。やはり水拭きで仕上げたフローリングのツルツル感は気持ちがいい。
ペットと一緒に過ごしている家庭だと、猫砂やフードの細かい食べかすなどが出るので、吸引だけでなく拭き掃除をしてくれる点がうれしい。特に花粉やPM2.5の季節には拭き掃除が肝心。気持ちいい床に仕上がることは間違いない。
自動給水機能のない「SD」と通常の「J9+」どちらにするかは、家の広さと、お財布の余裕を見て選べばよさそうだ。部屋の数や広さなどによっては、そんなに頻繁に水を入れる必要がないかもしれないので、SDで十分という家庭もあるだろう。