家電レビュー

ニオイやコバエともサヨナラ! パナの生ゴミ処理機がスゴすぎた

パナソニックの家庭用生ゴミ処理機「MS-N53XD」

皆さんの地域では、燃えるゴミが出せる日は週に何回あるだろうか。筆者の住む地域では週に2回しかないので、生ゴミがだいたい3~4日、家庭内に停滞することになる。室内でも特に夏場は腐敗しやすく、ましてやベランダに出していたら、中身がズルズルになってコバエも湧いてしまい、どう考えても衛生上よろしくない。多くの人が悩まされるところだろう。

庭に「コンポスト」が設置できるお宅は幸せだ。だが生ゴミが埋められるような、自由に使える庭があるご家庭は、かなり地方に行かなければ難しい。ましてや筆者のようなマンション住まいでは、夢のまた夢である。

そんな問題を技術で解決してしまったのが、パナソニックが発売中の家庭用生ゴミ処理機「MS-N53XD」である。電気の力で生ゴミを乾燥させてかさを減らし、乾燥させたものは肥料にもできるという。キッチンに置いて、生ゴミをポイポイ入れてボタンを押せば完了という優れものである。

発売自体は2020年と少し前だが、今年7月から定額利用サービスを開始した。販売価格約12万円のところ、サブスクなら月額2,600円で利用できる。4年満期契約で、契約満了後はユーザーのものになるという。

とはいえ、実際にどういうものなのか、効果がわからないことにはなかなか手が出せないところだ。そんなわけで筆者が実際にMS-N53XDを3週間ほどお借りして、試してみた。

ゴミ箱サイズのボディ

キッチンにあるゴミ箱は、部屋置きするゴミ箱よりも少し大きめのものを使っているだろう。「MS-N53XD」の本体サイズは268×365×550mmの楕円柱型で、よくあるキッチン向けゴミ箱とだいたい同じぐらいの大きさだ。

ボディはアルミ張りで、清潔感がある。フタ部分は全体が大きくガバッと開く。フタの裏側には、大型のファンとヒーターがある。

ボタンを押してフタを開ける
フタの裏にはヒーターとファンがある
ガードを外して中を掃除できる

内部に処理容器があり、脇に生ゴミを細かくする固定刃と、底部にゴミをかき回すためのかくはん羽根がある。本体背面には吸気口と排気口があり、動作時には温風が出る。

処理容器の中には固定刃とかくはん羽根がある
背面の吸気口(右)と排気口

天面に操作ボタンがあり、「入」だと標準乾燥で、肥料としては効き目が長持ちするものができる。一方「ソフト乾燥」では、路地野菜など向けの即効性がある肥料ができる。予約タイマーもあり、3時間後と6時間後の2パターンがセットできる。

天面に操作ボタン

処理できるものは、家庭から出る生ゴミに限られる。つまり、調理中に出た端材や食べ残しといった、一般に人間が食べられる可能性があるものだ。ラップやシール、スチロールトレイなどは誤って入れないように注意したい。

生ゴミで入れられないものとして、超固いものはダメだ。鶏・豚・牛の骨や貝殻などは、かくはん中に処理容器を突き破ってしまう可能性があるため、控えた方がいい。少量の卵の殻ぐらいなら大丈夫である。

処理時間は、約400gのゴミに対して標準モードで約1時間40分、ソフト乾燥モードで2時間10分となる。ゴミの量が増えればそれだけ自動的に時間が伸びる。またゴミはよく水切りしてから入れないと、乾燥時間が伸びる。とはいえ、人間はすることもなくただほっとけばいいので、実用上処理時間はあまり問題にはならないだろう。

手間いらずで清潔なキッチンが手に入る

では実際に使ってみる。設置場所は調理中のゴミが捨てやすいよう、キッチンカウンターの脇とした。

フタのボタンは大きく滑り止めも付いているが、開けるには若干硬めである。ボタンを押してもフタは半分ぐらいしか空かないので、ゴミを入れるにはそれ以降を手で開ける必要がある。フタにもまあまあ機構が入っているので、ガバッと全開してどこかにぶつけて故障するみたいなことを注意深く避けた設計なのだろう。

とはいえ、調理中は両手いっぱいに生ゴミを持っていることもあるので、ボタンを押さなくてもセンサーやフットペダルでゆっくり開くようにしてもらえたら、さらに快適だった。

水気の多いゴミは、いったん三角コーナーに捨てて水気を切ってからいれればよい。常に三角コーナーは空の状態にできるので、ぬるつきや黒カビ、赤カビなども発生する隙がなくなる。

ゴミを入れたら、あとはボタンを押すだけだ。いったん処理が始まると途中では開けられないので、もう入れられるゴミがないか、よく確認してボタンを押したほうがいい。処理を始めたあと、やっぱりもう1品作ろうかなと思い立って、また生ゴミが出たということがあった。運用としては、調理を始めたら先に3時間のタイマーをセットしてしまって、あとはほっておくというほうが良さそうだ。

ボタンを押すと、まずかくはん動作が始まる。ミキサーのように羽根をぶん回してゴミを粉砕するわけではなく、小さくゴソゴソという音がするだけである。最初に数分間かくはんしたのち、130度の温風で乾燥処理に入る。このときは「コー」という低い排気音が出るが、それほどうるさくはない。炊飯器が炊飯している際の2倍ぐらいの音量だ。

排気からは、ニオイはほぼゼロである。一方乾燥したゴミからは独特のニオイがすると説明書に書いてあるが、筆者宅で試したところ、「ひじき」のニオイに近い。腐る前にナマの状態から乾燥してしまうので、すえたようなイヤな臭いはないし、フタを閉めていればそのニオイも外には漏れない。フタを開けたときに一瞬ニオイがするだけである。

処理されたゴミは、いちいち取り出す必要はない。処理された上にまた新しいゴミを追加して、処理を重ねていける。1日約400g程度のゴミであれば、2週間は捨てなくても連続で処理できるという。400gが2週間だと5.6kgにもなるが、その量が小型バケツ1杯分ぐらいにしかならないのだから、重さやかさの正体はほぼ水分ということだろう。乾燥したゴミは原型を留めておらず、見た目はほぼ、腐葉土のように見える。

畑との組み合わせで循環、気持ちもすっきり

筆者は自宅近くに広さ約9畳の畑を借りており、そこで家庭菜園を営んでいる。乾燥したゴミは肥料として使えるということだが、標準モードで乾燥したゴミは肥料として利用できるまで、土に埋めて4週間ほど寝かす必要がある。すぐに使いたければ、ソフト乾燥モードでやるべきだが、この時期は特に急いで植えなければならないものもないので、秋口に使用する肥料として畑の一角に埋めることにした。9月中旬には肥料として使えるようになっているはずだ。

畑に蒔いた標準モード処理済みの生ゴミ。見た目はほぼ腐葉土

実際に畑をやっていると、どうしても余剰に取れてしまう野菜がある。例えばゴーヤなどは、10個20個なってもそうそう食べきれるものではないし、知り合いに配ってもまだ余る。こうしたものは勿体ないと思いつつも収穫して生ゴミとして廃棄するか、そのまま畑で腐らせてしまうしかなかった。

畑で取れすぎたゴーヤを入れて処理してみる

だがMS-N53XDがあれば、こうした廃棄野菜も肥料として甦る。単に腐らせて捨ててしまうより、循環してまた畑の肥料として戻ってくると考えれば、精神的にずっといい。

ソフト乾燥モードで処理すると、半生状の肥料になる

畑なんかないよという方でも、ベランダなどでプランターを使って野菜や花を育てることは難しくないだろう。わざわざ肥料を買い込んでくるのも大変だが、日常生活の中で定期的に肥料が手に入るのであれば、ぜひミニ菜園にチャレンジしてみてほしい。

無理に肥料として使わなくても、乾燥したゴミはそのまま燃えるゴミとして捨ててもいい。容量が1/7に圧縮されるので、週に1回、あるいは2週間に1回捨てるだけで良くなる。生ゴミのニオイからも解放されるし、腐敗した生ゴミを見たり触ったり、破れたゴミ袋から腐った汁がこぼれてカーペットがクサクサになったり、ゴミ出しを忘れて絶望することもなくなる。こういうことは、自分が思っている以上に心が折れるものだ。

MS-N53XDを使い始めるまでは、ゴミが肥料にできるという実利面に注目していたが、実際に使い始めると、心の負担が軽くなることの方が大きい。月額2,600円なら、いま使っているChatGPT PlusのサブスクをやめてMS-N53XDに乗り換えた方が、ずっと人間らしくいられるような気もする。

筆者宅でも、この貸し出し機を返却したらサブスクに申し込もうかと、妻と相談しているところだ。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。