家電レビュー

一見ふつうなタイガーの電気ケトルはなぜ人気? 試してわかった使いやすさ

コンパクトで見た目はふつうなタイガーの電気ケトル「PCM-A080」を使ってみました

「あっという間にすぐに沸く」の衝撃から20年

電気ケトルを使ってみたい……多くの人をそう思わせたのが、2001年に日本に上陸したティファールの「あっという間にすぐに沸く」のCMではないでしょうか。約1分でコーヒー1杯分のお湯が沸かせるとは、なんて便利なんだ、と当時の筆者にとっても憧れの家電の1つでした。

あれから約20年、電気ケトルはいまやキッチン家電の定番になっています。ある調査によると世帯普及率は50%超だそうで、2世帯に1世帯は所有している計算に。今は、好みの湯温が設定できるものからおしゃれなもの、丸洗いできるもの、コーヒードリップに適したもの……とバリエーションも増え、ニーズに合ったものが選べるようになっています。

中でも、電気ケトルのパイオニア的存在であるティファールか、デザインがおしゃれなバルミューダが話題に上ることが多い印象ですが、国内メーカーのトップシェアはタイガー魔法瓶の電気ケトルとのこと。日本の老舗メーカーだし、驚くことではないかもしれませんが、そんなに話題に上らないという点で意外に感じました。

何がそんなにいいのか気になったので、同社の電気ケトル「PCM-A080」(実売価格:3,580円前後)を使ってみました。

タイガーの電気ケトルのこだわりを1つずつチェック!

【お詫びと訂正】
記事初出時、タイガー魔法瓶の電気ケトルが国内シェアトップと記載しましたが、正しくは「国内メーカーの中でトップシェア」でした。お詫びして訂正いたします(8月30日14時20分)

老舗の安心感だけじゃない、タイガーの実力とは

そもそも電気ケトルは、お湯を沸かすという点で、従来電気ポットがその役割を果たしているものでした。電気ポットは、多めのお湯をまとめて沸かして保温しておき、いつでもお湯が使えるメリットがありましたが、「朝に1杯分のお湯が沸かせればいい」「保温の電気代がもったいない」という層を中心に、電気ケトルへの移行が進んだ経緯があります。

そして電気ポットといえば、やはりタイガーの代表的な家電製品の1つ。1923年に魔法瓶を発売し、魔法瓶構造の電気ポットの開発にも注力してきたメーカーですから、電気ポットを愛用してきた世代が自然に選びたくなる理由はわかります。

かくいう筆者も、電気ケトルの便利さに感動し、「電気ケトルなんて、なくても困らないわ」と言っていた両親と夫の両親に贈ったのが、タイガーの電気ケトルでした。今では毎日のように愛用しているようで、「もう手放せない」と話しています。

とはいえ、タイガーが売れている理由は、単に安心感だけではないはず。実際に使ってみたところ、使い勝手と安全性の両面で実に細かい配慮がされていることがわかったので、さっそくご紹介していきます。

基本性能が高く使いやすい

1.沸騰スピードが速い!

公式サイトでは、140mlが約60秒で沸騰するとありましたが、気温が高かったこともあってか、200mlがわずか63秒で沸きました

電気ケトルに求められる機能といえば、やはり沸騰時間の速さ。どうせなら少しでも速く沸騰するものがいい、と思う人もいるでしょう。試しに200mlの水を沸かしてみたところ、他社製の電気ケトルが1分23秒で100℃に達したのに対し、タイガーは1分3秒と20秒早く湧き上がりました。

2.狙ったところにブレずに注げる!

注ぎ口の角度や溝、リブが注ぐ心地を大きく左右します

これはあまり意識したことがなかったのですが、注いでみてビックリ! タイガーは、注ぎたいところにスムーズに、気持ちよく注げるのです。その秘密は、注ぎ口の溝やリブにあり、お湯の集まり方を細く、きれいに出るように設計されているそう。

さらに注ぎ口を斜めに設計することで、角度を少し調整するだけで、細く出したりたくさん出したりすることができる構造になっています。

筆者がふだん使っている電気ケトルは、お湯の流れにムラがあり、思わぬところに注がれる感覚がありました
タイガーはお湯がなめらかに注がれるので安定感があり、狙った場所に気持ちよく注げます

3.二重構造で冷めにくい

本体を二重構造にすることで、保温性が高まるため、保温機能を使わなくても冷めにくいメリットがあります。温度があまり下がっていなければ、短時間で沸かし直しでき、省エネに。また本体を触っても熱くない安全性もありますね。

お子さんのいる家庭にもうれしい安全性

安全性という点では、さらに独自のこだわり設計を施しています。

4.転倒してもこぼれにくい!

安全性へのこだわりも、タイガーならでは。そもそもタイガーはフタが外れるので、水を注ぎやすかったり、お手入れしやすいメリットがありますが、フタが取れるタイプは湯を注ぐ際、傾けすぎるとフタが落ち、熱湯を浴びるリスクもあります。やかんで経験したことがある人がいるかもしれませんね。

その点、タイガーはフタにロックがかかるので、多少傾けても簡単に外れません。さらにお湯を注ぐ際も、中央のボタンを押さないとお湯が出てきません。これは昔ながらのポットに取り入れられている工夫です。

フタ自体にロックがかかるうえ、給湯ボタンを押し込まないと湯が注げない仕組み

試しに筆者愛用の電気ケトルを倒してみたところ、あっという間に水浸しになってしまいました。しかしタイガーを倒してみたところ、多少の湯はこぼれたものの、ほとんど床を濡らすことなく、こぼれにくさの違いは歴然でした。

お湯漏れゼロではありませんが、ほとんど出ていないので、火傷リスクも抑えられそう

5.湯気が少なく火傷リスクも減!

実は筆者はかつて、電気ケトルの湯気でひどい火傷をしたことがあります。使い始めて間もない頃、湯を沸かしている最中に、電気ケトルの向こう側にあるコンセントを使おうと、湯気の上に腕を伸ばしてしまったのです。

ほぼ熱湯に近い状態だったのか、腕全体を火傷し、治るまでに結構な時間がかかりました。この話を人にすると「バカだねえ」と呆れられることもありますが(笑)、その瞬間は何も考えておらず、スチームの怖さを思い知らされた出来事でした。

その点、このタイガーは省スチーム設計。蒸気がほとんど出ないので、気を付けることはいうまでもありませんが、うっかりの火傷リスクを減らしてくれます。秘密は、フタ内部に搭載された「蒸気キャッチャー構造」。湯沸かし時に発生した蒸気が、フタ内部の蒸気キャッチャーを通ることで冷やされ、結露になるそうです。

蒸気がこのフタの中を通ることで冷やされて結露となるため、放出される蒸気の量が減らせるそう

ニーズに合わせた電気ケトル選びを

電気ケトル選びというと、ついデザインや便利な付加機能に目がいってしまいがちですが、実際に使ってみると、違いはそれだけではないことが今回よく分かりました。多くの機能はいらないけれど、日々の使い勝手と安全性にこだわりたい。そんな人に選ばれ続けた結果が、国内メーカートップシェアにつながっているのかもしれません。

ちなみにタイガーのハイエンドモデルには、プリントヒーターを搭載し、140mlの水を45秒と業界最速(原稿執筆時点)で沸かせるほか、温度調整機能もついた「蒸気レス電気ケトル(温度調節機能つき) PTQ-A100」もありますので、より高性能を求めるなら、こちらもチェックしてみてはいかがでしょうか。

使い勝手と安全性へのこだわりが見えました。今回使ったのは容量800mlの「PCM-A080」
従来のタイガー電気ケトルとは一線を画したデザインも注目の「蒸気レス電気ケトル(温度調節機能つき) PTQ-A100」
田中 真紀子

家電を生活者目線で分析、執筆やメディア出演を行なう白物・美容家電ライター。日常生活でも常に最新家電を使用し、そのレビューを発信している。専門家として取材やメーカーのコンサルタントに応じることも多数。夫、息子(中学生)、犬(チワプ―)の3人と1匹暮らし。