家電レビュー
ケルヒャーのモバイル高圧洗浄機が日本の家庭にジャストフィット!
2022年6月28日 07:05
「オレ、マイホームを手に入れたら高圧洗浄機を買うんだ……」みたいな、不穏なフラグがビンビンに立ってしまいそうなセリフを言いたくなるくらいには、高圧洗浄機はちょっとした憧れのアイテムではないかと思う。自宅に高圧洗浄機があれば、わざわざコイン洗車場に行かなくてもいつでも洗車できるし、庭や外壁の掃除に使って新築の美しさを長く保つこともできる。なにより、勢いよく噴射する水で汚れを落としていく作業自体が楽しいというか、なんだか快感だったりするものだ。
けれども、数年前にわりとパワフルな高圧洗浄機を手に入れた筆者の立場からアドバイスさせてもらうと、ちゃんと環境と用途に合った製品を選ぶべき、ではある。それこそコイン洗車場の高圧洗浄機のような力強さを狙ってしまうとパワー重視で選ぶことになり、機械自体が大きく、重くなる。面倒になってだんだん使う頻度が減り、そのうちホコリをかぶっているのに気付いた家族に「いらないんじゃない?」と言われるのだ。いるよ!
そんな風に、一家に一台欲しいアイテムの筆頭みたいなものでありながら、使いこなせる機能・性能を見極めるのが意外と難しい高圧洗浄機なのだが、多くの家庭向けにちょうどいいところを突いていそうな製品がある。
ケルヒャーの「KHB 6 バッテリーセット」だ。実売価格は21,982円。名前から想像できるとおり、バッテリーで動作するコンパクトなモバイル高圧洗浄機となっている。バッテリー駆動のものは初体験の筆者、いったいどんな風に使えるのだろう。
接続のステップが1つ少ないバッテリー駆動
「KHB 6 バッテリーセット」は、本体である「KHB 6」にバッテリーと充電器、2タイプのノズルなど基本的な装備が付属したもの。ケルヒャーのモバイル高圧洗浄機のラインナップのなかでは一番新しいモデルになる。
着脱式のバッテリーを電源にして駆動するコードレスタイプなので、コンセントなどからの電力供給は不要。高圧で水を送り出すためのポンプとモーターは手に持って使う洗浄ガンに内蔵している。
据え置き型の高圧洗浄機と比べると、その構造はかなり異なる。ざっくり言うと、一般的には「水道→本体→洗浄ガン」という構成。この場合、本体側にポンプとモーターを内蔵しているため、そこにコンセントから電力供給することになる。
ところが「KHB 6」は「水道→洗浄ガン」と1ステップ省かれていて、コンセントとの接続も不要。「本体=洗浄ガン」なので、いわば本体を丸ごと持ち運んで使う形になるわけだ。
こういったバッテリー駆動の高圧洗浄機は、メリットもあればデメリットもある。メリットは、今言ったようにコンセントの接続が不要であること。
高圧洗浄機は屋外で使うのがほぼ前提となる製品なので、電源ケーブルをつなぐ必要がある製品だと屋外コンセントの有無がもろに使い勝手に影響してしまう。が、バッテリー駆動の「KHB 6」はそれを一切気にしなくていい。
一方で、バッテリー動作の宿命として稼働時間が限られてしまうのは弱点だ。付属の標準バッテリー「バッテリーパワー 18V2.5Ah」では連続稼働時間が約12分。別売の大容量な「バッテリーパワー 18V5.0Ah」は同24分で、2倍ロングライフになるが、それでも長時間の作業には向いていない。
バッテリーが切れれば充電の必要があり、使えない時間ができてしまう。予備バッテリーを用意することである程度カバーできるとしても、その分のコスト増をどこまで受け入れるかが問題だ。
それともう1つ、「KHB 6」はポンプやモーターなどの軽量化が図られているとはいえ、それらが内蔵されていない据え置き型高圧洗浄機の洗浄ガンよりはどうしても重くなる。
モバイルをうたっているとはいえ、このあたりが使用中の取り回し、つまりは使い勝手にどう影響してくるかも気になるところだ。
コンクリの苔取り、マイカーの洗車に
というわけで、それらメリット・デメリットのことも考えると期待半分、不安半分だった筆者なのだが、「KHB 6」のトリガーをひとたび引いた瞬間、モバイルとはいえ高圧洗浄機らしい噴射の気持ちよさにそんなものはジェット水流とともに吹っ飛んでいった。
動作音はそこまで大きくなく、休日の朝に住宅密集地で使ってもおそらくクレームが出ない程度。そして、自分の足に向かって試しに噴射してみたら「アーッ!!!」と叫びそうになるくらいにはパワフルだ(みなさんは決して人に向けて噴射しないように)。
まずは高圧洗浄機として一番実力が試されるだろう、玄関前の土間コンクリートの汚れ落としに取りかかってみた。雨が降ると一部が水たまりになり、日陰で乾きにくいので、放置しているとすぐに苔で黒ずんでしまう。
それを何度も繰り返しているせいで、かなりしつこい汚れとなってコンクリートにほとんど染みついているのだ。
ここを「KHB 6」の「1ジェットノズル」で攻めていく。ホウキのような薄く広がる形状で、少し離れたところから広く浴びせることも、近づけて局所的に強力に吹き付けることもできるノズルだ。
地面に近づけて噴射すると、コンクリート表面の細かな凹凸に入り込んだ苔を掻き出していっているのがわかる。次第にコンクリートの元の色が露わになり、完全に色が沈着して取りきれないところを除き、一帯はすがすがしい白っぽさを取り戻した。
かかった時間は10分余り。標準バッテリーの駆動時間は約12分なので、途中、間に合うかどうか心配だったが、結果的にはひと仕事終えるまでしっかりもってくれた。お遊びで「ケルヒャー」の文字を書ける余裕もあったくらいだ。
残りの駆動時間の目安がバッテリーの液晶ディスプレイに表示され、洗浄しながらでもすぐに確認できるのも親切。バッテリー切れまでの心構えができるだけでも安心感が違う。
【編集部注】洗車での利用においてサイクロンジェットノズルを装着していますが、車の塗装面やタイヤへの使用は推奨されていないため、記事初出時より本文と画像を一部削除しました。洗車には1ジェットノズルの使用が推奨されています(7月5日更新)
洗車にも、「KHB 6」の駆動時間約12分というのはぴったりのようだ。標準的なサイズのマイカー(シビック ハッチバック)の洗車では、もう1つの付属ノズル「サイクロンジェットノズル」を使って、外装の表面や隙間に入り込んだ汚れをざっと落とす。
この最初の作業にだいたいバッテリーの半分(5分余り)を消費し、それからスポンジと洗剤で手洗いして、再び「KHB 6」で洗剤を落とすところでバッテリーのもう半分を使い切る感じだ。
すごく軽いわけじゃないのに、なぜか軽い取り回し
もう1カ所、筆者宅でこれまで手を付けたくてもできていなかったのが、バルコニー周りの掃除だ。床が格子状のグレーチングになっていて、1つ1つのマスのなかに雨などによる汚れが堆積してキチャナイことになっている。
手やホウキで掃除するのは難しいし、ホースから多少勢いよく水を出すくらいでは奥に付着した汚れは取れない。こういうときこそ高圧洗浄機の出番なのだが、大きな本体の高圧洗浄機をバルコニーまで移動するのが億劫でずっと後回しにしていた。
が、「KHB 6」なら楽にバルコニーに持ち込める。新築から7年、初めてのバルコニー掃除が「KHB 6」のおかげで可能になった。もちろん、ホースを屋外の蛇口から伸ばしてくる必要はあるが、考えるべきはその1点だけで、どデカい本体の置き場所やら電源ケーブルの取り回しやらに頭を悩ませなくて済むのは大きい。
電源なら室内から取ればいいのでは、と思うかもしれないが、そのためにはバルコニーに通じる窓をわずかでも開けておかなければならず、高圧洗浄中に水がそこから室内に入り込んで余計な拭き掃除の手間が増えてしまうのが単純に面倒くさいのだ。
そんなわけで、結論から言えばグレーチングのマス内に溜まった汚れは「KHB 6」でバッチリ取り除くことができたし、窓ガラスや網戸もついでに洗浄できた。ここで改めて感じたのは、「KHB 6」の取り回しのしやすさだ。
狭いバルコニーのなかで自在に動き回って使えるし、窓のサッシにしつこく残る泥やら黒カビやらもピンポイントで狙って、他への水の飛散を最小限に止めながら的確に取り除ける。本体の重量はものすごく軽いというわけではないのだけれど、なぜか軽々と扱える。どうしてなのか。
これはおそらく、洗浄ガンにつないでいるホースの違いにありそうだ。据え置き型の高圧洗浄機だと、構造上、本体から洗浄ガンの間は耐圧ホースで接続することになる。耐圧ホースは通常かなり硬く、巻いて収納しているとクセもつきやすい。使用中はそのクセのせいで耐圧ホースに引っ張られ、洗浄ガンを思ったように取り回せないことが多いのだ。
ホースを長く延ばして使う洗車のときは、耐圧ホースだと途中でとぐろを巻いたりからまったりして、ほどくのにうんざりするほど苦労する。狭いバルコニーでも、ごわごわする耐圧ホースがあると鬱陶しくてイライラすること間違いなし。
対して「KHB 6」は耐圧ホースを使うことがない。水圧がかかるのは「本体=洗浄ガン」の中だけだから、洗浄ガンに接続するのは普通の柔らかいホースでOK。クセがつくことも少なく、洗浄ガンの動きを妨げないことが取り回しの良さにつながっているのだ。
おかげで片手持ちもしやすく、掲げるようにして高いところから狙いをつけるのも容易だし、水はねが気になるときに身体から離して使うのも楽。洗浄ガンの重さが多少あったとしても、そのネガを打ち消して余りある機動力の高さを「KHB 6」は持っているのだ。
予備バッテリーがあれば万全。住宅向けにバランスのいい1台
標準バッテリーの約12分という連続稼働時間が短いと感じるか、十分と思うかは、使う場所の広さや汚れのしつこさによるので、一概にはどちらとも言えない。
しかし、筆者のまあまあ狭小な住宅における駐車場の汚れやすい箇所の清掃、洗車、バルコニーや窓の掃除といった、ルーチン的に発生する用途に限って言えば、だいたいはその12分で間に合う。念のためもう1個、同じ予備バッテリーがあれば万全かな、というところだ。
ただ、それとは別に使い勝手の面で改善してほしいところがあるとすれば、細かい部分だけれど、洗浄作業中に本体を地面に置こうとしたときに座りが良くないことだろうか。
ノズルとホースを取り付けた状態だと前方に重心が移り、バッテリーを台座にまっすぐ立てることができないので、安定させるには寝かせるしかない。これだとあまりスタイリッシュな見た目ではないので、専用スタンドをオプションで用意するとか、本体のどこかにスタンドとして機能する構造を設けてくれているとありがたかったかな、と思う。
そうはいっても、高圧洗浄機で心配な騒音は目立って大きいわけではなく、据え置き型ではなしえない取り回しの良さや、約12分というバッテリー持ちは、都市圏の標準的なサイズの戸建・マンションで使うのにちょうどいい案配だと感じた。
過剰なパワフルさはないが、コンクリートの隙間に入り込んだ苔をしっかり削り取ってくれることを考えれば、ほとんどの用途で性能に不満を覚えることもなさそうだ。
加えて、汚れをどんどん取り除いていける高圧洗浄機ならではの気持ちよさもバッチリ味わえる。必要な接続のステップが通常より1つ少なく、手間や戸惑う箇所を省けることも考えると、高圧洗浄機が初めての人にもおすすめのモデルだ。
家の周囲やマイカーが汚れやすくなる雨風の強くなる季節に向けて、手軽に扱える「KHB 6」のような高圧洗浄機を1台、家庭に導入してみてはいかがだろうか。