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掃除機の毛がらみを解消する「からまないブラシ」は初の“円すい形”。その理由は?
2020年7月13日 19:04
パナソニックは、新開発の「からまないブラシ」を搭載したコードレススティック掃除機「パワーコードレス MC-SBU840K/640K」を7月20日に発売する。価格はオープンプライス。店頭予想価格は、90,000円前後/75,000円前後。
円すい形のダブルブラシ構造を採用した「からまないブラシ」。髪の毛が99%からまないとし、現在は特許申請中だという。これまでにない形のブラシが生まれた経緯を、開発担当者が語った。
回転ブラシ初搭載から53年。ゼロからの開発
パナソニック アプライアンス社 ランドリー・クリーナー事業部 クリーナー事業 クリーナー技術部 クリーナー設計課の堀部 勇氏によると、「からまないブラシ」の開発には3年の期間を要したという。
同社が掃除機のヘッドにブラシ付ノズルをはじめて採用したのは1967年。それから50年の間、毛がらみを解消するためにブラシの素材や径を変更するなどの工夫を重ねてきたが、いずれも根本的な解決には至らなかった。そこで、毛がらみ問題を解消すべくゼロベースからの開発をスタートしたとする。
まずは市場調査を行ない、さまざまな掃除機のヘッドを研究した。また回転ブラシの代わりに、キャタピラや犬かきのように動作するモデルの試作もしたが、ゴミがしっかり取れなかったため、回転ブラシの必要性を再認識。
試行錯誤を繰り返すうちに、堀部氏はブラシにからまった毛が中央と両端に集まっていることに気付く。従来ブラシのV字構造による効果で毛が中央に集まり、掃除機をかける際に左右に動かすことで、毛が両端に移動したと考えられるという。
これがきっかけとなり、同氏は「ブラシでかきとった毛を動かすことができるのではないか」と考えることになる。
偶然目に入ったコップがヒントに
ブラシでかきとった毛を動かすために、ブラシの毛の長さを変えたり、ブラシの横から送風したりと研究を重ねたが、毛を短くすると掃除性能が低下し、横からの送風に至ってはほとんど効果がなかったという。
苦戦を強いられる中、同氏の目に留まったのはプラスチックのコップ。重ねてもすぐに取り外せる先細りの形状に注目し、早速円すい形のブラシで実験をしたところ、かきとった毛が径の太い方から細い方へよく動いたとする。
当初は片側を細くした1本の円すい形ブラシで実験を行なっていたが、吸込口付近で吸引によりブラシに巻き付いてしまい、毛がらみを解消できずにいた。また片側が細くなっているため、掃除機を使用したときに斜め方向へ動いてしまうという問題が生じた。
これらを解消するため、ブラシを2本搭載するダブルブラシ構造を採用。吸込口のある中央に向かって細くなるよう設置し、2本の間には空間を備えた。空間があることにより、中央へ移送された毛がブラシに巻き付くことなく吸い込まれるという。
さらにブラシの毛量を従来の1.9倍に増量。ブラシの毛の密度を高め、毛髪が奥に入り込まないようにしたという。ほかにも、ヘッド内側にリブ(縦線)を採用。リブが当たることでブラシに巻き付いた毛がより移動しやすいという。
ダブルブラシ構造を採用したため、モーターも2個に増え、ヘッドは200g重くなったという。しかし同時に自走性もアップしており、実際手に取ってみると、前後方向へスムーズに動かせた。
髪の毛が落ちているフローリングや、ペットの毛が散らばったじゅうたんを掃除してもまったく毛がからまない。2カ月間使用したヘッドも見せてもらったところ、細かなほこりの付着はあるが毛がらみは一切なかった。
なお「からまないブラシ」は、8月25日発売のキャニスター掃除機にも搭載される。ラインナップは紙パック式「MC-JP830K」と、サイクロン式「MC-SR580K」「MC-SR38K」。価格はオープンプライス。店頭予想価格は順に57,000円前後、62,000円前後、52,000円前後。