e-bike試乗レビュー
東京とは思えない里山地区のe-bikeポタリングでおもしろいカフェにたどり着く
2025年4月11日 10:05
筆者は東京の多摩地区に住んでいる。いまでこそ、どこに行っても街並みが整備されて住宅もたくさん建っているが、以前(といっても昭和の時代)は東京と神奈川の境あたりに行くと、林や田畑ばかりで未舗装路も多かった記憶がある。
そんなことをふと思い出して、当時の場所がどうなっているかをネットの航空写真地図で見てみた。すると広いエリアで大きく開発され、道路の位置や数も違う。予想していたとはいえ「変わったなぁ」としみじみ思っていたが、地図をよく見ると建造物がない一帯があった。
範囲としては広くないようだが、小山らしきモノがありそして畑があって、その中を道路が通っていてるがそこからいくつか枝分かれした細い道もあるのだ。
そこで地図表示を切り替えて詳細に見たところ、そのへんの風景は以前のあったようなのんびりとしたもののように見える。
意外な展開に「まだこんな場所があるんだ」と思って見ていたが、ひょっとするとこの風景もそのうち変わってしまうかもしれない。ならば見られるうちに見ておこうという気になり、JGR1.1のポタリング先として行ってみることにした。
目指す場所はe-bike自走でも行ける距離だが、行こうと思いついた時間が昼前だったので現地での行動時間を考えると急いだほうがよさそうなのでJGR1.1をクルマに積んで現地へ向かった。
地方だと目的地近くに有料パーキングがないことも多いが、今回は都心への通勤圏内である住宅地だけに有料パーキングはすぐに見つかった。そして、パーキングに到着してJGR1.1を降ろし、地図で見たあたりを目指して走り出すが、このとき毎回思うのが「自宅から離れた場所で自転車に乗っている」ことへの不思議な感覚。自転車は家の近所で乗るものというイメージが染みついているからだろうし、自宅からでなく現地で走り出すから余計にそう感じるのかもしれない。この感覚は少し走っていれば消えてまうけど、最初のうちに感じるちょっとした違和感や高揚感のようなものは嫌いではない。
さて、走り出してすぐは少しだけ交通量の多い道を走るが、通ったあたりは道路が以前からのもののようで、道幅が急に狭くなったり荒れていたりする、そのため臨機応変に歩道と車道を使い分けることになったが、そういうときにグラベルロードバイクの太いタイヤは便利。道路の段差が多少高めでも、車速さえ落とせば衝撃をあまり気にせずにヒョイと乗り上げることができるのだ。
名前こそグラベルと付くが、太いタイヤのこうした特性は街中でもメリットのあるものなので、街乗り重視のロードバイクe-bikeが欲しいと思うのならJGR1.1のようなモデルを選ぶのはアリだと思う。
交通量の多い道から脇道へ入ると、畑が出てきて奥のほうに林が見える。風景自体はのんびりしたものだが道路は比較的新しいようで、舗装はキレイ。それに高低差もないので普通のロードバイクでも走りやすそうなところ。実際、平日の昼間だったが数台のロードバイクが走っているのを見かけたので、地元の人にはお馴染みのトレーニングコースなのかもしれない。
筆者はポタリングに来ているのでのんびりペースで走る。あたりは山や林、畑といった風景でのんびりしているが、なんとなく昭和の時代の風景とは違う気もする。うまく表現できないが、のどかな風景ながら現代はどことなく整備された感がある。これは道の付き方や畑の区画、置いてあるもの、雑木の生え方など少しずつ違うからかもしれないし、そもそも記憶違いかもしれない。でも、そういう風に感じることもここに来た理由のひとつ。クルマやオートバイで通過してしまうと考える時間が足りなくなりそうだが、時間をゆっくり使うポタリングは小さなことまで気がつくものだとあらためて思った。
とりあえず平坦なエリアをグルッと走ってみる。クルマが走れる道ではあるがどこかへ抜けるような作りではないようで、たまに農作業の方のクルマが通るくらいだし、歩いている人もほぼいない。ゆえにまわりは静かで鳥の声や風の音、木が揺れる音なども聞き越える。
ちょっと行くと住宅地が広がりクルマどおりも多いところなのに不思議な感覚だ。こんな感じで周辺の静かさに気がつくのは、自身は音をほぼ出すことがない自転車だからなのだろう。
今回来ているエリアはそれほど広くはないので、気がつくと平坦なところは走り尽くした感じだ。そこで脇道の探索をしてみたのだけど、周辺は小山に囲まれているので脇道に行くことは山へ入ることになるので、上り区間が出てくるのだ。
脇道のほとんどは以前からある道のようで道幅は細くクルマは入れない。そして、舗装は荒れていて勾配も急なので、普通の自転車には「酷な道」だろう。でも、こういう部分に「入って行くか、それともやめておくか」で、ライドのおもしろみは大きく変わると思うから、筆者のように足に自信がなくてもチャレンジしようと思えるe-bikeは楽しみを広げてくれるもの。ゆえにe-bikeは自転車趣味の裾野を広げる存在であることは間違いないと思う。
さて、そんな脇道だが、入ってみたところやはりそれなりにキツかった。舗装はされていても荒れていて大きなギャップもあるし、山自体が小さいからか勾配が急にきつくなるところもある。それでいて道幅に余裕がなくガードレールもないという感じ。そんな場所なのでおのずとペースは遅くなるがそこはe-bike。アシストのおかげで余計にもがくこともなく、低速ながら車体を安定させつつある程度のラインを狙って上っていけるので、転びそうになるフラつきやガケ側に寄ってしまうこともない。
自転車はある程度の速度を出すことでバランスを維持するものだけに、漕ぐのが大変な状況でも走り続ける力を与えてくれるアシストは転ばないための手助けにもなる。無事故、ケガなしで帰ってこそのサイクリングだけに、こんな面でもe-bikeは頼もしい乗り物だった。
見かけた脇道はあらかた入ってみたが、距離は短いがそれぞれに雰囲気があって最初に走った畑の中の道とはまた違ったおもしろさがあった。
そして、それらの道はそれなりに舗装が荒れているけど、45Cという太いタイヤを履いている筆者のJGR1.1はタイヤがショックをかなり吸収してくれる。また、雰囲気に合わせて走行ペースもゆっくりなので常時アシスト領域(24km/h以下)だから地形のちょっとした起伏すら気にならないといい気分で走ることができていた。
そして最後に残った脇道へ向かう。回る順番としては最後になったが実はここ、最初のウチに見つけた道だった。
ではなぜ後まわしにしたかというと道の入口にこの奥に「カフェ」があることを示す看板があったからだ。
脇道の奥は入口から見えないが、山の奥に行く感じで道幅も狭くカフェどころか民家があるようなエリアに思えなかった。そのため「なんだろう?」という感じだったが、この日の行動パターンからここに行かないという選択肢はない。そこで最後に行く場所として取っておいたわけである。
たどり着いたカフェとはなんと「たき火ができるカフェ」でお店の名前は「焚き火カフェ 山」というもの。
ロケーションは写真を見てもらうと分かるように山あいの一角にキッチンカーや簡易的な作りの店舗スペースがあるというアウトドア感溢れるもの。テーブル数は多くないがすべてにたき火台があり、大人2,000円の料金を払うと、たき火台、薪(約1時間分)、焼きマシュマロセット、ドリンク2杯のセットメニューが楽しめる。持ち込みの食材はNGだが、お店にはソーセージなどのセットや焼きうどんなどもあるのでデイキャンプ的な楽しみもできるようだ。
今回は途中でコンビニおむすびを食べていたので、ガッツリ食べるのでなくホットドッグとコーヒーを注文。時間の都合もあったのでたき火もしなかったが、最初からここを知っていれば「たき火ライド」というテーマで来ていたかもしれない。焚き火カフェ 山はInstagramをやっているので、たき火ライドをしてみたい方は検索して営業時間や場所等を調べてほしい。
ということで、航空写真を見たことから始まったポタリング。回ったエリアはスポーツバイクで走るのには広くないけど、その一帯は田舎風というか、ずっと以前に見ていたような風景を連想させるようなもので、懐かしさもあれば「こんな場所が残っていたのか」という驚きがあったし、最後は思いがけないお店を見つけたりとなかなか楽しめた1日だった。
自転車系のネタといえば激坂に行ったり長距離走ったりという内容も多いが、すごいことをするためにe-bikeに乗っているわけではない。それだけに緩めの記事が多くなると思うけど「そういうのでいい」と言ってくれる方は多いのではないかと思っているけど、どうでしょうか。