トピック

従来モデルと何が違う? 種類は? ボッシュe-bike向け新型「Smart System」をまとめてみた

つい最近、ボッシュから新型ドライブユニット「Performance Line SX(パフォーマンス ライン エスエックス)」が発表されました。システム全体で約4kgという軽さが特徴であり強みのドライブユニットです(Performance Line SX/CompactTube 400/Mini Remote/System Controller使用時)。2023年秋からヨーロッパで市販されます。

ボッシュの新型ドライブユニット「Performance Line SX」。軽量で、MTBやグラベルロード、クロスバイクなど多くの車種に向きます

このPerformance Line SXもボッシュのe-bike向け最新システム「Smart System(スマートシステム)」に対応しています。スマートシステム対応ドライブユニットのPerformance Line CX搭載のe-bikeはすでに日本でも発売されています。また、同じくスマートシステム対応のPerformance Line SXも、今後日本で発売される可能性が高いです。

トレックから発売されているPerformance Line CX(スマートシステム対応)搭載のe-bike
トレックはスマートシステム対応モデルを4車種発売
オルベアからもPerformance Line CX(スマートシステム対応)搭載のe-bikeが発売されています
日本初上陸のモデルはフルサスe-MTB「WILD M20」

そこで、あらためてこの「スマートシステム」についてまとめてみたいと思います。現在わかっている「ボッシュ スマートシステムのすべて」です。

スマートシステムはボッシュの第3世代e-bikeパーツ群

スマートシステムは、ボッシュのe-bike向けのパーツ群を指します。2023年モデルで、世代としては第3世代です。

なお、それ以前の世代としては、2011年版の第1世代、2013年版の第2世代がありました。また、スマートシステムは第1・2世代のパーツ群とは互換性のない、すべてが一新されたe-bikeシステムとなっています。

地味なところですが、充電用のACアダプターも一新されました。左がスマートシステム対応品、右が従来品です
ACアダプターのコネクター形状が変わりました。左がスマートシステム対応品、右が従来品。こんな感じで、コネクター類まで一新されたので、従来品と最新スマートシステム対応品は物理的なレベルで接続できません(互換性がありません)

互換性がないと「じゃあ手持ちの旧システム用バッテリーを最新スマートシステム搭載のe-bikeに使うことができないじゃないか」といったネガティブな要素も出てきます。しかし、それを補ってやまないくらい、スマートシステムにはメリットが多々あります。それらメリットを含め、スマートシステムの具体的な部分を見ていきましょう。

より扱いやすく自然なフィールになったドライブユニット

まずはドライブユニット。現在発売されているスマートシステム対応Performance Line CXについて見てみましょう。……その前に、いきなりですが、ここでクイズです!

新旧のドライブユニット(Performance Line CX)を並べた写真です。どちらが新型でしょう?

新旧ドライブユニットの左サイド
新旧ドライブユニットの右サイド

正解は左側。左が最新のスマートシステム対応Performance Line CXです。ネジの本数やコネクター形状が変更になっています。完成度の高いドライブユニットで、大きな変更は加えられていませんが、それでも本体の強度を高めるための改良なども加えられています。

第2世代と第3世代のボッシュ製「Performance Line CX」を撮影。ほとんど違いはありません
スマートシステム対応Performance Line CXの断面モデル(カットモデル)。主な部品は金属製。超がつくほど高密度ですね。見ていて惚れ惚れしてしまいます。ボッシュのe-bike関連のイベントで展示されることが多く、指でギア類を回転させることもできます。機会があればぜひ実物に触れてみてください
各部の説明。従来モデルについて「ドライブユニットが岩に強く当たって割れた」という稀なトラブルがあったそうですが、最新版はその点も強化されて「さらに割れにくくなった」そうです

ほかドライブユニットの変更点は、リムマグネット対応のスピードセンサーの内蔵(スポークマグネット/ブレーキローターマグネットにも対応)などがあります。しかし最も大きな更新点はアシストモード数とチューニングの変更です。

従来品ドライブユニット(国内流通品として)はActive Line Plus(最大トルク50Nm)とPerformance Line CX(最大トルク85Nm)がありました。アシストモードは、前者がEco、Tour、Sport、Turboの4つで、後者がEco、Tour、eMTB、Turboの4つ。モードにSportとeMTBの違いがあります。

最新となるスマートシステム対応Performance Line CX(最大トルク85Nm)は、旧Performance Line CXと同じe-MTBなどオフロード車種向けのドライブユニットですが、アシストモードが7種類に増えました。具体的には、Eco、Tour、Tour+、Sport、Auto、eMTB、Turboの7種類。Tour+とAutoという2つのモードが追加されています。

スマートシステム対応Performance Line CXは7種類のアシストモードが使えます。その出力イメージが上図。横軸が踏力(ペダルを踏む強さ)で縦軸がモーターのアシスト力です。eMTBモードとTour+モードはアシスト比が可変で、踏力に応じてアシスト力がダイナミックに変化。ほかのモードでは踏力とアシスト力の高まり方がほぼ比例しています

新搭載のTour+モードは、踏力が弱いとEcoモード程度のアシスト力となり、踏力が強いとTurboモードと同じアシスト力となります。平地では節電しつつ走り、坂道にさしかかったら強力にアシストさせるという走り方ができます。ただeMTBモードほど急激なアシスト力変化はなく、踏力に対するアシスト力の反応は滑らか。なので、緩やかなアップダウンがあるような状況によくマッチします。

上図にはAutoモードのグラフはありませんが、Autoモードは「向かい風や上り坂で車速が落ちたとき、車速を補おうと強くペダルを踏まなくても、自動でアシスト力が増えて車速を回復・維持する」というモードです。Autoモードのアシスト力はTourからTurboモードの間です。「自転車のギアチェンジを頻繁に行なわなくても快適に巡航できるモード」というイメージです。

Autoモードは車速に応じてアシスト力が大幅に変化するアシストモード。TourからTurboモードの間でアシスト力が変わります

従来のドライブユニットと比べると、スマートシステム対応Performance Line CXではソフトなアシストモードから強力なアシストモードまで幅広く使えるようになりました。また、ドライブユニット任せの可変アシストモードも実用的。e-MTB向けのドライブユニットではありますが、多彩な車種・走行シーンをカバーできそうです。

ちなみにスマートシステム対応Performance Line CXの場合、7種類のアシストモードのうち、ディスプレイ/コントローラーに登録可能なのは「4モード」まで。7種類全部を切り替えて使えるわけではありません。なお、登録するモードの切り替えは販売店にて行なえます。

Smart Systemはこちらの動画でも解説しています

多彩で自由度の高いコントローラーとディスプレイ

続いてディスプレイとコントローラー。現在のところ、日本国内向けとしては電源ON/OFFやアシストモード変更などを行なうコントローラーが3種類、各種情報を表示するディスプレイが2種類発売されています。なお、ディスプレイはオプションとなっており「装着しなくてもアシスト走行が可能」です。

スマートシステム対応コントローラー類。左から、LED Remote、System Controller、Mini Remote。LED Remoteはハンドルに装着するコントローラーで、System Controllerは自転車トップチューブに埋め込むタイプのコントローラーです。LED RemoteやSystem Controllerは、それだけ装着すればe-bikeとして走ることができます。Mini RemoteはSystem Controllerと組み合わせて使う必要があります。System Controllerに触れず手元でアシストモードなどを切り替えるためのコントローラーがMini Remoteというわけです
スマートシステム対応ディスプレイ。左がKiox 300で、右がIntuvia 100です。これらは必要に応じて取り付けますが、取り付けなくてもe-bikeとしての走行が可能で、オプション品という位置付けです

コントローラーとディスプレイは組み合わせて使えます。コントローラーは最低ひとつ必要ですが、ディスプレイは必要に応じて2種類のどちらかを追加できます。

コントローラーは必須で、ディスプレイは必要や好みに応じて追加するオプション品。コントローラーとディスプレイの組み合わせは自由です

各種コントローラー/ディスプレイの実物に触れましたが、非常にコンパクトになりボタン類の操作感も良好。コントローラー類は「これならディスプレイはつけなくてもいいかも」と思わせる機能性があり、ディスプレイの代わりに自前のサイクルコンピューターを装着したい向きにもよく合うと思います。ただ、新しいディスプレイもコンパクトで視認性がいいので、こちらもなかなか捨て難いという印象。ともあれ、こういう選択肢の自由があるのは大歓迎ですね。

スマートシステムでは、コントローラーやディスプレイの装着に関しても改良があります。高さ違いのコントローラー用マウントやディスプレイ向きを変えられるしくみが加えられ、より自由に設置位置を決めることができます。

これまでありがちだった「コントローラーが近い/遠いけど、位置を動かせない」とか「ディスプレイマウント位置が変えにくい」といった不便が解消されています

インチューブバッテリーに750Whの大容量品が追加、ABSも搭載可能に

バッテリーは、インチューブバッテリーとして750Whの大容量品が加わりました。従来品とは互換性はありませんが、従来品ラインナップと比較するとバリエーションが増えた形です。

インチューブタイプバッテリー容量は3種類になりました。それぞれ750Wh、625Wh、500Whです
750Whタイプだと、Ecoモードで198kmも走れます。最強のTurboモードでも128km。大容量は心強いですね

ただし、すべてのe-bikeに各容量のバッテリーを入れられるわけではありません。チューブ長さによる制限があったり、完成車メーカーの仕様があったりで、車種により使用できるバッテリーは異なります。

それからABS。すでに記事でも紹介していますが、スマートシステムではe-bikeにAnti-lock Breake System(アンチロック・ブレーキシステム)を搭載可能になりました。

ABS搭載e-MTBでの実走動画
スマートシステムのABS搭載e-bikeは、日本国内ではまだありません。搭載されるかどうかは各完成車メーカーの意向次第とのこと。今後搭載車種が増えることが期待されます

といったあたりが、ボッシュの新しいスマートシステムのについて現在わかっていることです。今後、パーツが増えるなどの可能性もありますが、都度記事にてお伝えしたいと思います。

スタパ齋藤