e-bike試乗レビュー
ボッシュ最新「Smart System」を搭載するトレックe-MTB「Rail」3車種をトレイルで乗り比べ
2024年3月15日 11:05
2月17日にトレックのコンセプトストアである「LORO bicycles(ローロバイシクルズ) 駒沢公園店」が、東京・稲城市のスマイルバイクパークでトレックのe-MTBに乗れる試乗会を開催しました。用意されたのはフルサスe-MTB「Rail 5」と「Powerfly FS 4」、ハードテイルe-MTB「Powerfly 4」3車種で、いずれも昨年登場したボッシュの「Smart System(スマートシステム)」を搭載しています。昨年の発表時にも試乗していますが、あらためて乗り比べてみるためにe-bike Watchも参加してきました。
トラクションをペダルで調整しやすくなった「Powerfly 4」
e-bikeの中でも、その魅力が体感しやすく、世界的にも人気が高いのがe-MTB。坂を上る機会が多い乗り物なので、アシストがあることの利点が感じやすいのに加えて、滑りやすい路面を走るのでアシストをいかに制御して路面に伝えるかというコントロール性も求められます。そんなジャンルでも、パワフルでいて緻密なアシストを実現したボッシュ「Smart System」を搭載したモデルは、このカテゴリーのトップランナーといえるでしょう。今回試乗した3車種は、昨年の「Smart System」発表時にも試乗しましたが、その際は雨天で路面がかなり滑りやすい状態だったこともあって、あらためて異なるコンディションでも乗ってみました。
まず乗ってみたのがハードテイルの「Powerfly 4」。フロントにのみサスペンションを装備していて、価格も556,490円と3車種ではもっとも買いやすくなっているエントリー向けモデルです。試乗車にはオプションのIntuvia 100のディスプレイが装着されていました。
実際に乗ってみると、あらためて乗りやすさとバランスの良さを感じます。85Nmの最大トルクを発揮するドライブユニットによって、急な上り坂も余裕を持って上ることができました。リアにサスペンションがないハードテイルのe-MTBは、滑りやすい路面で強くペダルを踏み込むとリアタイヤが空転しやすかったりもしますが、「Smart System」対応のPerformance Line CXはトルクの出だしが穏やかに制御されていることもあり、わざと強く踏んでみても滑ることはありませんでした。
車重は3車種の中ではもっとも軽量な22.94kg(Mサイズ)。速度の維持しやすい29インチホイールを履いていることもあり、舗装路での通勤やツーリングなどにも使いたいユーザーには適したモデルでしょう。それでいて、ペダリングでトルクの出方を調整しやすいドライブユニットでもあるので、自分の足で滑りをコントロールしながら山道を走りたいベテランMTB乗りでも満足できる完成度です。
ちょうどいいサスペンションを採用した「Powerfly FS 4」
続いて乗ったのが昨年からラインナップに加わった「Powerfly FS 4」。前後にサスペンションを装備したフルサスモデルは、大きいギャップのあるダウンヒル向けというイメージが強いですが、このモデルはサスペンションストロークを抑えたクロスカントリー向けの設計で、里山のトレイルや今回のようなコースには適した作りです。
今回乗ったコースで一番楽しいと感じたのがこのモデル。木の根などのギャップがあるところに進入しても、前後のサスペンションが衝撃を吸収してくれるので、安心してライディングができました。サスペンションのストローク量もちょうど良く、重量は24.64kgとやや重めですが、走っている間は重さを感じることもありませんでした。
リアのサスペンションは、路面にタイヤを押し付ける機能もあるので、上り坂でもリアタイヤのグリップが増して安心してペダルを踏んでいくことができます。坂を上っていても、アシストがさらに力強くなったような印象。下りを攻めるような乗り方をしない人でも、フルサスの恩恵を感じることができます。個人的には、MTB初心者もこのモデルから乗り始めると怖さや不安を感じることが少なく、e-MTBの魅力を味わえると実感しました。
どんな場所でも走れる性能を持った「Rail 5」
フルサスの「Rail」シリーズは、カーボンフレームの「Rail 9.7」が知られていて、こちらはこれまで何度も乗らせてもらっていますが、今回乗ったのはアルミフレームの「Rail 5」。価格は「Rail 9.7」の998,690円に対して、「Rail 5」は777,590円と比較的買いやすくなっています。重量は「Rail 9.7」が24.10kgで、「Rail 5」は24.29kgとほとんど変わらない重さになっています。ただ、搭載されるバッテリーは「Rail 9.7」が750Whなのに対して、「Rail 5」は500Wh。重量の違いは、このバッテリーサイズも効いています。
これまで「Rail 9.7」は何度も乗ってきて、レースなども走らせてもらっていますが、アルミフレームの「Rail 5」に乗るのは久しぶりです。重量自体はほとんど差がないので、漕いで進んでいるときは重さの違いもほとんど感じません。ただ、下り斜面で車体を切り返す際には、フレームの違いを少し感じます。重さというより、重量バランスが異なる感じで、切り返し操作で重心がちょっと高いところにある印象です。ただ、違いを感じようとして乗っていなければ、感じない程度の差かもしれません。
サスペンションの性能は、スマイルバイクパークのコースではちょっとオーバースペック。スキー場の斜面を下るダウンヒルコースなどでも十分な性能が確保されているので、このコースでは限界性能まで探ることはできませんでしたが、性能の高いサスペンションは路面にタイヤを押し付ける効果も高いので、トラクションと安心感は抜群。その分、高価ではありますが、上りから下りまで走れないコースはないというほどの性能を持っているので、最高峰の性能のe-MTBを味わいたいというベテランはもちろん、安心感高くオフロードを走りたいという人が乗っても、その恩恵を味わうことができます。
それぞれ、車体の特性やサスペンション性能の違いはありますが、3車種に共通して感じたのはボッシュの「Smart System」がよくできているということ。アシストがパワフルでありながら、唐突に力が出てきたりすることがなく、コントロール性も高いので、オフロードでタイヤのグリップやトラクションを探りながら走るというMTBの楽しさが味わいやすいシステムです。機会があったら、一度試乗してみることをおすすめします。