e-bike試乗レビュー

トレック新型e-bike「FX+ 2」は全部入りで日常使いにベストな1台。しかもエコ&快速系

2022年7月にトレック・ジャパンから発売されたe-bike新モデル「FX+ 2(エフエックスプラスツー)」シリーズ。クロスバイクタイプのe-bikeです。スタンダードスタイルの「FX+ 2」に加え、またぎやすいモデルの「FX+ 2 Stagger」があります。価格はどちらも324,500円。

左がスタンダードスタイルの「FX+ 2」、右がまたぎやすいフレーム形状の「FX+ 2 Stagger」。どちらの車種もフレームはS(155-165cm)・M(165-175cm)・L(175-186cm)の3サイズが用意されています
「FX+ 2」のカラーはSatin Trek Black、Viper Red、Satin Mulsanne Blueの3色があります
「FX+ 2 Stagger」のカラーはSatin Trek Black、Satin Mulsanne Blueの2色

トレックの「FX」は世界的に人気がある(人力の)クロスバイクシリーズですが、そのe-bike版が「FX+ 2」シリーズです。これまでトレックのe-bikeにはボッシュ製ドライブユニットが採用されていましたが、「FX+ 2」では新たにHYENA(ハイエナ)製のリアハブモーター(250W/40Nm)が採用されました。またバッテリーをインチューブ完全内蔵とし、軽量化とスタイリッシュな外観を目指したそうです。

確かになかなかカッコイイ! 言われなければe-bikeと思わない“スマートさ”が素敵ですね。

また、細かなスペックを見ていくと、これは日常使いのe-bikeとしてなかなか実用的な気がしてきます。ということで「FX+ 2」をお借りして試乗してみました。

Satin Trek Blackの「FX+ 2」を借りて走ってみました
クロスバイクタイプのe-bikeです。スマートな見栄え
「FX+ 2」で初秋のサイクリングを楽しんでみましたが、とても気軽かつ軽快に走れるe-bikeでした

以下写真とともに「FX+ 2」のレビューをお届けしますが、ここで筆者的な感想を書いてしまいますと「軽快に走れる」「多彩な用途をカバーできる」「通勤通学や買い物などの日常使いによく向く」「トレックが初心者向けに本気で作った」という印象のe-bikeです。価格は324,500円で、値上げラッシュが続くe-bikeのなかにあっては比較的に手を出しやすいレンジ。多くの人が魅力を感じるe-bikeかもしれません。

「FX+ 2」はどんなe-bike? 主要パーツをチェック

まずは「FX+ 2」の主要パーツをチェックしていきましょう。なお、「FX+ 2」と「FX+ 2 Stagger」とではフレーム形状の違いがありますが、それ以外の基本的な仕様は同じです。

Satin Trek Blackの「FX+ 2」。フレームサイズはS(155-165cm)・M(165-175cm)・L(175-186cm)の3サイズが用意されています。価格は324,500円。車体重量はMサイズで17.69kg。従来のトレック製e-bikeより約5kg程度軽くなっています
主なコンポーネンツはシマノ「Altus」で、ギアは9段変速。歯数はフロントが42T、リア(カセットスプロケット)は11-36Tです
ドライブユニットはHYENA(ハイエナ)製のリアハブモーター(250W/40Nm)。満充電から最大67kmの走行が可能です。また、外付けの追加バッテリーを使えば走行可能距離を2倍に延ばせます
チェーンカバーとチェーンガードが装着されており、パンツ裾が汚れにくく、チェーン外れも起きくくなっています
ペダルはBONTRAGER(ボントレガー)製。前後にやや大きめで滑りにくく、多くのシューズにマッチします
バッテリーはダウンチューブ完全内蔵式。通常は取り外せませんが、バッテリーが劣化したら販売店でバッテリー交換することが可能です。ボトルケージ用ネジ穴を使い、別売の「Hyena Range Extender Battery」(250Wh)を追加すれば、走行可能距離を2倍の最大134kmに延長できます
「Hyena Range Extender Battery」はダウンチューブ下方の充電用コネクターに接続。このコネクターは内蔵バッテリーの充電にも使いますが、開閉がスムーズで安心感のある作りになっています
ボトルケージ用のネジ穴は、シートチューブとダウンチューブにあります
ハンドル周辺。スピードなどを示すディスプレイはありません
ハンドル左側のコントローラーでアシストモードを切り替えたり、バッテリー残量を確認できます。シンプルで扱いやすいコントローラーです
ハンドル中央前方には、インチューブバッテリーを電源としたフロントライトがあります。ドライブユニットの電源と連動して点灯・消灯します
タイヤサイズは前後とも700x40Cで、転がりのよい直径です。最大タイヤサイズは、フェンダー(泥除け)なしの場合が700×50C、フェンダーありの場合が700×45C
タイヤには米式バルブが採用されています。米式バルブは自動車やバイクに採用されていて、壊れにくく空気が漏れにくいのが特徴。ガソリンスタンドやバイク店などで空気を入れられるのもメリットかもしれません
サドルは「Bontrager Sport Bike Saddle」。ややスポーツ走行向けのサドルですが、適度にソフトです
シートポスト高さ調節には六角レンチが必要です
シートステー上方左右にネジ穴(樹脂キャップ付き)
キックスタンド付き。工具を使わずに長さ(自転車を立てるときの傾き)を調節できます
フロントにフェンダー(泥除け)
リアにもフェンダー。リアキャリアも標準装備です。またこのキャリアはボントレガーMIKシステム(後述)にも対応しています
リアキャリアの後端にはインチューブバッテリーを電源とするテールランプがあります。これもドライブユニットの電源と連動して点灯・消灯します

実際に走行してみての印象は? スイスイ走る軽快さが楽しい

さて、実際に「FX+ 2」で走行してみましょう。ドライブユニットの操作はシンプルで、コントローラーの電源ボタンを長押ししてオン(オフも同様)。アシストレベルは3段階+オフで、+-ボタンでアシスト強度を選択します。

ハンドル左側のコントローラーで電源やアシストレベルの操作を行ないます

走り出しのアシスト力は比較的にマイルドで、力強さはありますが、急に前に出てしまうようなワイルドさは感じられません。e-bikeの良さとして「人力ではちょっと無理な急加速」を挙げる人もいますが、その一方で「人力を増幅しつつも自然なアシスト感」を良しとする人もいます。「FX+ 2」の場合、後者のような自然なアシストフィールだと感じられました。また、モーター音も至って静かで、通常はモーター音が意識されることはほとんどないように思います。

川沿いのサイクリングロードとその周辺で試走してみました。マイルドな走り出しと自然なアシスト、それからモーター音の静かさが印象的でした

サイクリングロードのような道だと、すぐにアシスト上限速度に達してしまいますが、それでも「FX+ 2」は速度をある程度維持しつつまずまず軽快に走れました。やはり車重が17.69kgと軽めであることと、タイヤやフレームなど走行性能もそこそこ高いという点がメリットとなっているようです。

車重は17.69kgと軽く、700x40Cのタイヤは転がりもいいので、平坦な道ではアシストをオフにしてもわりとスイスイ走れてしまいます。とはいえ、10kg前後の人力自転車と比べると、アシストオフ時は重い人力自転車となりますので、そのまま速度を維持しようとするとそこそこ疲れます

試走した日はさほど暑くなく、湿度は高いものの走行中はわりと涼しいという天候。そんななかを気分良く走っていると、やはりすぐにアシスト上限速度である24km/hに達してしまいます。そのままペダルを踏んで速度を維持。見通しの悪いカーブや上り坂などで速度を落とし、アシスト力を借りてペダリング。そしてまたすぐにアシスト上限速度の24km/hに達して……ということを繰り返していると、けっこう汗だくになったりします。

たぶんアシスト力をあまり使わずに脚の力だけで走っている時間が長いからだと思いますが、一方で「FX+ 2」は高めの速度を維持して走れるe-bikeだと言えましょう。まあ、せっかくのe-bikeなので、無理して高めの速度を維持せず、アシスト力に頼ったほうがいいかもしれません。でもアシスト力をあまり使わずとも走れるということは、バッテリーの消費も少ないということ。「FX+ 2」のインチューブバッテリー容量は250Whと数字的には少ないのですが、実使用においては「十分なバッテリー容量がある」と言えるのかもしれません。

平坦なサイクリングロードだとすぐにアシスト上限速度である24km/hに達する「FX+ 2」。バッテリー容量をあまり必要としない「エコ&快速系e-bike」かもしれません

一方で坂道はどうでしょう? サイクリングロード付近にある橋へ続く上り坂や、周辺のちょっとした激坂を試してみました。坂の攻略にもそこそこ向くギア比と十分なアシスト力により、どの坂もラクに通過することができました。

多くの坂道をスイッと上れました。この坂は人力自転車だと停車から漕ぎ出して上るのがけっこう辛いですが、「FX+ 2」なら停車から漕ぎ出して上るのも容易です

激坂を含む多くの坂をラクに上れる「FX+ 2」。でもやや長い距離の激坂だと少々辛いものがあります。もう少し激坂向けのギア比だったら……と思いましたが、どちらかといえばシティユースに重点を置いた「FX+ 2」なので、この仕様でバランスが取れているのだろうと思います。

それから、試しに浅めの砂利道(グラベル)を走ってみましたが、比較的に太めのタイヤ(700x40C)を履いていることもあり、砂利道走行も余裕でした。ちなみに「FX+ 2」の場合、フェンダーありの状態の最大タイヤサイズは700×45C、フェンダーなしなら700×50Cまでとなっています。

このくらいの砂利道なら、砂利が薄い場所でも深い場所でも安定的に走れる「FX+ 2」です。フェンダーがありますので、少々の水たまりを通過してしまっても服が汚れることはありません

平坦な道なら高めの巡航速度で走れて、坂道も激坂も余裕でクリアできる「FX+ 2」。タイヤが太めでフェンダー付きなのでグラベルも安心して走れます。「FX+ 2」はさまざまな用途にて幅広く使えるバーサタイルなe-bikeと言えそうです。

「FX+ 2」の魅力はユーティリティ性の高さ?

ある意味で「FX+ 2」は「全部入りのe-bike」かもしれません。それは、おそらく多くのユーザーが「それも欲しい」と思うであろう機能性を標準で備えているからです。

たとえばフェンダー(泥除け)。前後にフェンダーがあるので、水溜りの上を通過しても泥水が足やお尻に跳ねたりしません。スポーツバイクは重量を嫌ってフェンダー非装着にするのが普通ですが、日常使いするe-bikeと考えればフェンダーは必須ですよね。

あるいはフロントライトとテールランプ。「FX+ 2」の場合はドライブユニット連動でオンオフし、もちろんインチューブバッテリーを電源としています。安全性を十分確保しながら、暗い環境でも走行できます。

明るいフロントライトを装備
リアにはテールランプを装備。また、フロント・リアともフェンダーが付いています

リアキャリアが標準装備なのも注目したい点。ちょっとした荷物を積めて便利……というのに加え、このリアキャリアはトレックMIKシステム対応です。MIKシステムについて詳しくは製品情報サイトをご参照いただければと思いますが、リアキャリアに対してバッグをワンタッチで着脱できるしくみです。

トレックMIKシステムは、キャリアに対してバッグをワンタッチで着脱できる機構です。一般的なキャリアにMIKシステムを後付けすることもできます
ワンアクションでバッグを装着完了。しっかりと取り付けできます。外すのも簡単

筆者は他社のe-bikeでMIKシステムによく似たバッグ着脱機構を使っていますが、ワンタッチ着脱は本当に便利。容易に着脱できるバッグがあると、e-bikeの普段使いがより加速します。買い物にもいいですし、ツーリング時にたっぷり荷物を積むこともできます。着脱が容易なので、駐輪時は貴重品をまとめて持ち歩けますし、ときにはリアバッグなしでサイクリングできます。

それから「FX+ 2」の車重が比較的に軽いこと。車重は17.69kg(Mサイズ)で、e-bikeとしては軽い部類です。なので、車載や持ち上げての段差越えも容易。

クルマに対する積み下ろしも容易。e-MTBの積み下ろしをよくやっている筆者ですが、「FX+ 2」の積み下ろしでは思わず「軽っ!」と声が出てしまいました
左側と右側が側溝で隔てられ、さらに30cmくらいの段差があります。「FX+ 2」は片手で持ち上げられるくらいの車重なので、車体を持ち上げてこういう段差を越えるのも苦になりません

それと、やや余談ではありますが、「FX+ 2」の重量制限(バイク本体、ライダー、装備含む)は300ポンド(136kg)です。「えっ136kgも!」と驚かれるかもしれませんが、トレック製自転車の多くがこのくらいの重量制限というか耐荷重があったりします。つまり頑丈。さすが巨漢の多い米国のスポーツバイクブランドだと思います。

扱いやすく十分パワフルなドライブユニットを搭載した「FX+ 2」。坂道も激坂もスイッと上り、平坦路では快速系e-bikeと言える程度スイスイ走ってくれます。また汎用性が高く標準装備も充実しているため、日常使いからやや長距離のサイクリングまで、幅広い用途に応じてくれそうです。さまざまなユーザーの要望に応えてくれると思いますので、「いろいろ使えるe-bikeが欲しいかも」と考えているならぜひ実車をチェックしてみてください。

スタパ齋藤