走るライター南井正弘のコレはホントにスグレモノ!

フィンランドの老舗ブランド「カルフ」による高機能ランニングシューズ

<実際に履いて使って走ってから書く、ライターの南井正弘が「コレはホントにスグレモノ!」と太鼓判を押すスポーツアイテムを、毎週レコメンド!

 フィンランドの首都ヘルシンキで1916年に誕生した老舗ブランド「カルフ」。カルフとはフィンランド語で「熊」を意味し、小さな木材加工の工房からスタートした当初は、スキー板や陸上競技の槍などを手掛けていたが、その後ランニングスパイクの開発に着手し、世界的なスポーツシューズブランドとして成長を遂げる。

 1952年、地元で開催されたヘルシンキ五輪で同社のシューズを履いたフィンランド代表が大活躍。100周年を迎えた現在、パフォーマンスシューズからカジュアルシーンまで、あらゆるタイプのユーザーからワールドワイドで愛されるブランドとなっている。

 今回テストしたのは同社が誇るランニングカテゴリーのフラッグシップモデルである「シンクロン オルティックス」。外観はどのブランドとも似ていない独創的なデザイン。同ブランドを象徴するフルクラムというテコの原理を活用したテクノロジーの搭載をミッドソール部分で強調している。

カルフ「シンクロン オルティックス」
メーカー名カルフ
製品名シンクロン オルティックス(SYNCHRON ORTIX)
価格(編集部調べ)18,144円

 実際に足を入れるとまず感じるのがかかと部分のフィット感の良さ。これならランナーの脚力をロスなくシューズに伝えることができそう。サイズ感は緩くもなく、窮屈でもなく自分の足にジャストフィット。足長と足囲のバランスも悪くない。数多くの日本人ランナーに対応するはずだ。

 走り始めてみるとまず感じるのが安定性の高さ。着地時のグラつきがほとんどなく、他ブランドを含めてもこの安定性の高さは特筆すべきレベル。一方で同社のフルクラム搭載モデルを数年前に着用した際の個性の強さが薄まっている気もするが、より幅広いランナーにマッチさせるためには、こちらの走り心地のほうがいいのだろう。

 ミッドソールのオルティックスは足に優しく、長時間のランでも快適性キープしてくれ、日課の6kmランを走り終えた。そして二度目の6kmランの際はこのシューズの特性を理解したこともあって、初回よりもフルクラムの推進力を体感することができた。決して速めのペースで走るためのシューズではないが、このエナジーリターン性能を有難いと思うランナーは少なくないはず。以前トライしたカルフのランニングシューズよりもトータルバランスに優れた1足に仕上がっていた。

ミッドソール中央部に搭載されたフルクラムはシーソーのような働きで比類なき推進力をランナーに提供
着地時の安定性を高める外付けヒールカウンターは視覚的にもインパクトがある。人間工学に基づいたオルティクスのミッドソールはアーチをサポート。疲労を軽減し、ランナーの姿勢を修正する効果も期待できる
アウトソールはアスファルトやコンクリートといったオンロードで最高のグリップを発揮し、耐久性も高い。一方で土などの路面はあまり得意ではなかった

 一方で少し気がかりなのが、その価格設定。18,144円はライバルとなりそうなアシックス「ゲルカヤノ24」の16,740円(いずれも税込)よりも高い。機能面etc.では決して劣っていないが、このプライシングによって購入を躊躇するランナーがいるかもしれない。

南井 正弘

フリーライター、『ランナーズパルス』編集長。1966年愛知県西尾市生まれ。スポーツシューズブランドのプロダクト担当として10年勤務後ライターに転身。雑誌やウェブ媒体においてスポーツシューズ、スポーツアパレル、ドレスシューズに関する記事を中心に執筆している。主な著書に『スニーカースタイル』『NIKE AIR BOOK』などがある。「楽しく走る!」をモットーに、ほぼ毎日走るファンランナー。ベストタイムはフルマラソンが3時間56分09秒、ハーフマラソンが1時間38分55秒。