難波賢二のe-bikeアラウンド

新型コロナの流行で自転車通勤初心者にe-bikeがオススメのワケ

自電車通勤にオススメなのがe-bike

世界的に猛威を振るう新型コロナウイルスの流行。感染拡大を防ぐために緊急事態宣言が発令され、3密を避ける行動が呼びかけられている今、自転車に注目が集まっています。いきなりテレワークが敢行され自宅で働いている人も多い中、月末処理やセキュリティの都合上どうしても月に数度の会社への出社は避けられないという人もいることでしょう。

これまでの満員電車状態にはなっていないとはいえ、ストレスが溜まっている人も多いこの状況で「できれば通勤電車には乗りたくない……」という人たちから、今、熱い視線を集めているのが自転車。それも中長距離を比較的速いペースで走ることのできるスポーツサイクルに注目が集まっています。

実際に筆者は、職業柄的にも自転車店の店主の友人が多いのですが、7都府県に緊急事態宣言が発令されて以降、ロードバイクの販売に大きな動きは見られないけれど、e-bikeやクロスバイクの販売は爆発的とはいえないものの明らかに上昇傾向にあると聞いています。そして、電話やメールなどでの問い合わせの数は明らかに増えているそうです。

e-bikeや自転車通勤に注目が集まっています。ただし、その際にもソーシャルディスタンスやマスクの着用が推奨されています

自転車通勤にe-bikeがオススメな理由

そんな状況で、郊外から都心に通っている人が自宅からオフィスまでの通勤のために自転車を買うのならば、クロスバイクやロードバイクよりもe-bikeが筆者的にはオススメ。もちろん、そもそもe-bike Watchなのでe-bikeはオススメなのですが、筆者は信念的にオススメでないものはオススメとは言わない主義です。

なぜe-bikeがオススメなのか? 結論は「ラクで楽しいから」という話になるのですが、その結論に至るまでにいろいろなストーリーがあるのでご紹介しましょう。ここでは、新型コロナウイルスについて多くは語りませんが、一般的な自転車通勤と風邪の関係について気管支炎持ちの筆者の経験からお伝えしますと、体感的に“e-bikeは風邪を引きにくい乗り物”です。もちろん医師ではないので、あくまで個人の体験談として読んでいただけると幸いです。

初夏を迎えて、朝晩はまだ冷える日が多いのですが、人力のスポーツサイクル通勤の坂道と冷えた空気の相性は非常に悪いのです。ウォーミングアップが終わっていない状態で街中の坂道で心拍数を上げると冷たい空気を吸い込んで、筆者の場合は気管支炎発症→風邪を引きやすくなってしまいます。トレーニングとしてスポーツサイクルに乗るのならば、十分なウォーミングアップを取るうえに、自転車も高性能なので少々の坂道では息が切れませんが、通勤ではそんなにウォーミングアップをする時間もないと思います。

e-bikeならあわただしい朝の時間にもウォーミングアップは不要

もうひとつは巡航スピードが30km/h弱に達するため、ダイレクトに風を受けて体が冷えるうえに、巡航時の心拍数も上がっているので汗をかきやすく、そして機能性の高いウェアを着込んで乗るわけでもないので、夜の帰り道に信号で止まるたびに汗が冷えて、発進すると気化熱で体温を奪われての繰り返しとなります。これも風邪を引きやすいと筆者が考えているもう一つの理由です。

その一方で、e-bikeは上り坂については、街中で現れるような15%程度の坂道などは坂道とすら感じることはありません。巡航スピードについては、もちろんアシスト速度域を超えた巡航も可能ですが、走っていて一番気持ちいい速度域は、ギリギリアシストされるぐらいの22km/h程度。風は微風。体は温まるぐらいの運動量ですが、汗はかきません。よって、走っていて体が冷えることがないのがe-bikeならではです。これらの理由から風邪を引きにくい乗り物だと思っています。

安全性の高いe-bikeは通勤に最適

そして、大切なのは安全性。初心者がいきなりスポーツサイクルに乗り始めて幹線道路を走るのは、その緊急回避のテクニックから見ても安全な行為ではありません。一方で、一本入った路地といえば、左右から一旦停止を無視した人たちが飛び出すケースも多いですし、ストップアンドゴーも多いので体力も余計に使います。ラクに走りたいという理由で、クロスバイクを選ぶ際にも細めのタイヤのモデルが人気ですが、濡れた路面でのスリップや急制動の際の安定感では、タイヤの太いMTBが安全性に勝ります、段差の乗り越えの安定性でも比べ物になりません。

e-bikeはストップアンドゴーがラクな乗り物。歩道も走ることができるのがメリット(写真はハンドル幅が広いe-MTBなので押し歩きになります)

こうした問題もe-bikeならば一度に解決。ストップアンドゴーでは、ラクに再加速ができるので譲り合いの心が生まれますし、予防安全という意味でも積極的に減速しようという気持ちになります。20km/h程度でアシストを受けて走っているなら、タイヤが細くても太くても総じてラクなことに変わりないので、e-bikeならばMTBや幅太タイヤのクロスバイクという選択が当然となってきます。そして、何よりも巡航スピードが人力のスポーツサイクルより遅くなるので総じて安全・安心です。

そんなにラクに移動したければ、「スクーターや電車のほうがラクじゃない?」という話も出てきそうですが、このご時世で「混雑した電車に乗りたくない」ということでスクーター。平均的なe-bikeよりも50ccのスクーターのほうが安い、もしくは同じぐらいということに筆者も異論を挟むつもりはありませんが、幹線道路を埃まみれで走るスクーターと、人通りの少ない裏道や河川敷のサイクリングロードを走るe-bikeでは、そもそもからして乗り物としての目的が異なります。

オフィスに駐輪場がなくても、公共の駐輪場も増えつつあります

これほどにストレスの溜まっている状況だからこそ、余裕を持って通勤をこなし、そのフィットネス効果でリフレッシュすらもできてしまうe-bikeこそが、今だからこそ「通勤に使うべき乗り物」ということなのだと筆者は真剣に考えております。ここまで読んで、じゃあ、何を買えば良いの? と思った人向けのモデルはまたの機会にご紹介しましょう。

難波賢二

国際派自転車ジャーナリスト 1979年生まれ。20年近く昔のe-bikeの黎明期よりその動向を取材してきた自転車ジャーナリスト。洋の東西を問わず自転車トレンド全般に詳しく世界の自転車業界に強いコネクションを持つ。MTBの始祖ゲイリー・フィッシャーの結婚式にアジアから唯一招待された人物として知られる。