難波賢二のe-bikeアラウンド

日本最大級のe-bike旗艦店・サイクルベースあさひ 洛西口店は販売だけでなく、京都観光にうってつけのレンタルも!! e-bikeの現状を聞いてみた

 日本最大級の自転車量販店「サイクルベースあさひ」をご存じの方は多いでしょう。そのサイクルベースあさひが、昨秋に京都の阪急京都線・洛西口駅にオープンしたe-bike旗艦店が、サイクルベースあさひ洛西口店(以下、洛西口店)。日本でのe-bike文化を醸成していくためのパイロットストアとしてオープンした洛西口店では、単なる販売にとどまらない、e-bike普及のための様々な取り組みを行なっているとのこと。そこで、筆者とスタパ齋藤氏で同店を訪れて、店長の谷口 達誉さんにお話を伺いました。

阪急京都線・洛西口駅に昨秋オープンしたサイクルベースあさひ洛西口店
住所:京都市西京区川島六ノ坪町29-2
URL:https://www.cb-asahi.co.jp/lp/store/rakusaiguchi/
e-bikeとは、電動ドライブユニットを搭載するスポーツ自転車のこと。洛西口店の店内には最新e-bikeがズラリと用意されています(筆者の知る限りでは日本一の取り扱い)

e-bikeの旗艦店を出店した理由とその取り組みとは?

――どうして桂離宮にほど近い、京都の洛西口にe-bikeの旗艦店を出店することにしたのですか?

谷口店長(以下、店長):「これからのサイクリングは、ヨーロッパのように間違いなくe-bikeが中心なってくると、サイクルベースあさひでは考えています。e-bikeの時代になると、単純に“自転車を買う”というストアのあり方から、“レンタルする”“ツアーに参加する”など、遊び方も広がってくるのではないかと考え、そのパイロット店としてオープンしたのが、この洛西口店です」

店長の谷口 達誉さん。豊富なe-bikeの知識を持っている

――店内を見渡すと驚くほど多くのe-bikeが展示されていますが、この店舗では具体的にどんなことができますか?

店長:「私たちが“eスポーツバイク”と呼んでいるe-bike、やや街乗り寄りの電動アシスト車を含めて、およそ30台のレンタル可能なe-bikeを用意しています。すべてレンタルできるだけでなく、ガイドツアーも行なっています。洛西竹林公園などを巡るガイドツアーにも1名からで参加可能です。販売だけを目的としている店舗ではありませんので、レンタルや試乗目的として、遠方から店舗を訪れていただくことも大歓迎です」

レンタル料金やガイドツアーの案内板

スタパ齋藤:「e-bikeは決して安くはないですから、購入前に満足するまで試乗できるのは良いですね~。レンタルの途中で自転車の交換もできるんですか?」

店長:「もちろん可能です。シマノ、ボッシュ、ヤマハといった各社のドライブユニットを搭載しているレンタルバイクがありますから、それぞれ乗り比べて特性の違いを試していただくことも可能です」

スタパ齋藤:「それは良いですね~♪ ゼヒ、いろいろ乗り比べてみたいですっ!!」

店長:「京都旅行のついでに、洛西口店でe-bikeをレンタルして観光して、気に入ったバイクはいつか地元のあさひ店舗で購入していただくような流れができると理想的です」

――連休などの繁忙期は、全車両出回る感じですか?

店長:「昨年のオープン以来、レンタル車両が全車同時に貸し出されたことはまだありませんが、今年のハイシーズンがどうなるかはわかりません。ただ、問い合わせも増えていますし、確実に人気は高まっていますので、ハイシーズンは予約していただくほうが確実かと思います」

レンタサイクルのメニュー表
スタッフのおすすめポイントなども書かれている
どのe-bikeも1日5,000円(税込)でレンタルできる

スタパ齋藤:「複数日をまたいでのレンタルも可能ですか?」

店長:「予約状況によりますが、もちろん可能です。また、追加料金なしで前日の夕方18時から貸し出しできますので、お客様の旅行のご予定に合わせてレンタルを存分にご活用いただけます。ヘルメットも無料でご用意しておりますし、グローブなどのレンタルもあります。もちろん専門ストアですので様々なアクセサリーをご購入いただけます」

様々なデザインのヘルメットが用意されている

スタパ齋藤:「前日に借りられたら、開店を待たずに出かけられるのでイイですね。素晴らしいっ!!」

京都観光との組み合わせと充実サービスで、e-bike人気がさらに高まる

 三方を山に囲まれた盆地の京都は、碁盤の目状になった洛内エリアを除いては、起伏が多くe-bike向けの地形。清水寺や金閣寺、嵐山など、主要な寺院や観光スポットは、実は山裾沿いにあるので、周囲を自転車で巡るとアップダウンの連続です。

 一方で、洛内エリアは地下鉄の路線が多くないため、ビジネスエリア以外へのアクセス(要するに観光地)は、バスもしくはタクシー、レンタカーとなるうえ、幹線道路は渋滞が激しいです。また、京都といえば趣のある裏路地。交差点や袋小路の多い裏路地は、e-bikeの低めの速度感と再発進のしやすさが活きてくる地形であり、e-bikeキャピタルといえる理想的な都市環境でもあります。

――洛西口はJRで京都駅から2駅(の桂川駅から徒歩圏)ですが、近くにはどんな観光地があるのでしょうか?

店長:「店舗の近くには「洛西竹林公園」という見事な竹林があります。竹林といえば嵐山が有名ですが、同等かそれ以上に立派な竹林です。桂川沿いにはサイクリングロードがあり、市内へのアクセスも容易ですし、嵯峨野はもちろん、金閣寺方面にもアクセスできます。京都の街は面積が大きくないので、e-bikeで走るのにちょうど良いですし、タクシーやバスで巡るよりも、自分のペースでいろいろ観光を楽しめますよ」

洛西竹林公園をはじめ、京都を楽しめるガイドツアーやサイクリングコースを複数用意

――すでに自転車に乗っている人なら鞍馬方面などに行っても良さそうですし、初心者が嵐山や市内観光のツールとして使うと、e-bikeと観光のコンビネーションの素晴らしさが体験できそうです。

店長:「それこそ、洛西口店が狙っているところです」

――どんな地域のユーザーがレンタルに訪れていますか?

店長:「地元や京阪神からのお客様が多いですが、先日は購入前にいろいろなモデルを試したいと徳島から訪れた方もいました。販売だけが目的の店舗ではありませんので、関東など遠方のお客様が増えるなど、より多くの方にe-bikeを体験していただけると良いと思っています」

スタパ齋藤:「シリアスなサイクリストの人が多いのですか?」

店長:「年齢的には50代の男性の方が多く、若い人なら30代後半から40代のお客様といった感じです。シリアスなサイクリストというよりも、かつて自転車に乗っていた、もしくはニュースや雑誌などでe-bikeを知って実際にレンタルしたいということで、京都観光をするお客様が多いです。なかには、e-bikeが気に入って何度も週末にレンタルされる方も多くいらっしゃいます」

スタパ齋藤:「なるほど~。洛西口店のレンタルは、手ぶらで来れるのがなんといっても良いですね~。カメラだけ持って、e-bikeで気軽に京都を巡るのはすごい楽しそうです」

店長:「ご夫婦でレンタルして観光してみたら、奥様がe-bikeを気に入って購入するというお客様も多いように思います。e-bikeでの京都観光が広がることを期待しているんです」

スタパ齋藤:「それ、わかります。この前、試乗車を借りていたルイガノのe-bikeを奥さんに乗せてみたら、「これ凄い!! 坂道でもグイグイ走る!!」どこでも行けちゃうね、という話になりました。普段運動してない人ほど、e-bikeの凄さがわかるのかも」

ミニベロタイプのe-bikeのルイガノ「ASCENT e-sports」。ドライブユニットは高いドライブ性能を誇るシマノSTEPS「E8080シリーズ」を搭載。注目度も非常に高く、ポタリングはもちろん、ロングライドから激坂まで、パワフルかつスムースにアシストしてくれる

店長:「e-bikeは、グループで遊ぶのに本当にちょうど良い乗り物なのです。もちろん、楽だという理由もあるのですが、“楽の先に楽しい”があって、その先に楽だからこそ他のことをして遊ぶ余裕が生まれるんです。京都ならお寺や竹林巡り、カフェ巡り、山に上って景色や花を眺めたり、今までになかった楽しみ方を提供してくれます。そして、グループで遊べるため多くの人に体験してもらえると、自然と広がっていくのかなと思っています」

e-bikeのレンタル状況は? 人気モデルは?

 世界のe-bikeの中心地である欧州でも、e-bike普及の初期はシニアのサイクリストが中心だったことを考えると、e-bikeが始まったばかりの日本のレンタル需要がシニアのサイクリストに集中していることは、普及のステップとしては順当だといえます。

 欧州では5年ほどの間に、シニアサイクリスト→周囲にサイクリストの男性がいる一般女性→40代のサイクリスト→全年齢層のアウトドア好き市民→若年サイクリストという流れで拡大していったので、国内でのe-bike興味層も、この先目まぐるしく変わっていくでしょう。

――ドライブユニットやバイクを指定して、レンタルされる方もいますか?

店長:「真剣に購入を検討されているお客様は、やはりいろいろ勉強されていますから、シマノ製ドライブユニット搭載車を指定してレンタルしたり、複数のドライブユニットを乗り比べたりするお客様が多いですね。BESV(ベスビー)のTRS1やメリダのeBIG.SEVEN 600、ミヤタのRIDGE-RUNNERは特に人気です。個人的にはミヤタのRIDGE-RUNNERが気に入っています。e-bikeのメリットがわかりやすく感じられるオススメの1台です」

店長がオススメするミヤタの「RIDGE-RUNNER」。余裕のあるアップライトなポジションのMTBタイプのe-bikeで、搭載するドライブユニットはシマノSTEPS「E8080シリーズ」。130mmトラベルで、ストロークに余裕のあるフォークと2.65の幅広タイヤのエアボリュームで初心者にも乗りやすく、快適な乗り心地を提供してくれる

――欧州で展開しているフラッグシップのシマノ製ドライブユニット(の日本仕様)が搭載されていることで、シマノSTEPS「E8080シリーズ」に注目する人は多いと思いますが、その魅力はどこにありますか? 私は、他のドライブユニットと比較してバッテリーの減りが少なく、純正バッテリーが付いてくる点もメリットのひとつだと思いますが。

写真はシマノ製のドライブユニット「DU-E8080」。シマノは欧州で3種類のドライブユニットを展開しているが、そのフラッグシップモデルの日本仕様版がシマノSTEPS「E8080シリーズ」。ミヤタの「RIDGE-RUNNER」、BESV(ベスビー)の「TRS1」、メリダの「eBIG.SEVEN 600」といったMTBタイプ、クロスバイクやミニベロなど、全7モデルに搭載されている
シマノSTEPS「E8080シリーズ」のサイクルコンピューター「SC-E6010」。アシストモードやアシスト力、バッテリー残量などが表示される
シマノSTEPS「E8080シリーズ」は、バッテリーが大容量な点も特徴。写真はシマノ製「BT-E8010」で、公称容量504Wh(36V/14Ah)で最長100km以上の航続距離を可能にしている

店長:「RIDGE-RUNNERに搭載されているのもシマノ製のドライブユニットですが、サイクリスト目線でほかのユニットと比べて、“本当にアシストして欲しいところ”をわかっているな、という感じがしています。アシストが欲しい時に、すかさず、しかもスムースにアシストしてくれて、“極めて自然”といった印象です。さらに踏むのをやめると即時にアシストされなくなるので、オフロードや混雑した街中で必要ない時に押されることを意識しなくて済むのも良いですね」

シマノ製のドライブユニットは、アシストのタイミングやスムースさなどが絶妙だという

――レンタルを開始してから約半年経ちますが、ドライブユニットやバッテリーなどの故障はありましたか?

店長:「ドライブユニットとバッテリーの故障は、1件も起きていないですね。日本のe-bikeは発売から間もないですが、海外ではすでに10年近く売られているので、製品の信頼性を心配する必要はないと思います。一方、メンテナンス面では通常のスポーツサイクルと違って、ヘッドパーツの増し締めだったり、e-bike特有のメンテナンスのポイントがあるのは事実です。これはトルクがあるのと重量が通常のスポーツサイクルより重いためです」

 ひと言にe-bikeといっても、自転車本体の性能とドライブユニットの性能で走りはまったく異なります。まずは、e-bikeそのものを知るために乗ってみる。そして、その次は製品ごとの違いを知るために乗り比べてみると、自分に合った最適な1台が見つかるのではないでしょうか。もちろん、イベントや試乗会を訪れて乗ってみるのも良いですが、サイクルベースあさひ洛西店ならレンタルして観光と坂道を楽しみながら、思う存分試乗比較ができるという点で、遠くから訪れてみる価値も十分にあるでしょう。

店長:「e-bikeがあれば、今まではシリアスなサイクリストでしか行けなかったようなスポットにも上っていけます。今まではサイクリスト同士でも坂を上るときには会話がなかったわけですが、e-bikeなら初心者でも会話を楽しみながら走れますので、今までになかった自転車の楽しみ方もできると思います」

――街並みを眺めて観光をしながら会話もできる。しかも、誰でも。これこそe-bikeじゃないとできない体験ですね。

店長:「決して安い価格ではありませんが、e-bikeがあれば平日は通勤や街乗りとして使って、週末は観光やアクティビティを楽しめます。e-bikeのあるライフスタイルというのは、新たな楽しみ方や発見を与えてくれる、これまでの自転車とは少し違うものだと思います」

e-bike旗艦店への期待

 これまでにもスポーツタイプのドライブユニットを搭載するe-bikeの魅力日本ならではのe-bikeの楽しみ方e-bikeがヨーロッパで大流行している理由などをご紹介してきました。そして、日本最大級の自転車専門店サイクルベースあさひが、e-bikeへの本気度を感じさせる旗艦店をオープンしました。

 正直、ここまでe-bikeのレンタル試乗車を用意していることに驚かされました。特に、私が何よりも重要だと感じたことは、サイクリストが足を運ぶ専門店ではなく、一般の人たちにも非常に馴染みのある店舗であること。また、これまでとは違う自転車層が実際に店舗へ足を運んでいます。e-bikeへの認知・普及をさらに加速してくれるのではないでしょうか。

 みなさんもまずはe-bikeを試乗して、ぜひ、気に入ったモデルを見つけて楽しいe-bikeライフを送ってください。

難波賢二

国際派自転車ジャーナリスト 1979年生まれ。20年近く昔のe-bikeの黎明期よりその動向を取材してきた自転車ジャーナリスト。洋の東西を問わず自転車トレンド全般に詳しく世界の自転車業界に強いコネクションを持つ。MTBの始祖ゲイリー・フィッシャーの結婚式にアジアから唯一招待された人物として知られる。