難波賢二のe-bikeアラウンド

e-bikeに乗って日本を再発見!! 電動アシストで“eバウンド”してみよう

 e-bikeに乗って何をするか? もちろん、これはあなた次第ですが、何をしたら楽しいのかは、乗り物の特性がおのずと導いてくれます。

 この1年間、日本各地でe-bikeを乗りまくった私は1つの結論に達したので、今回はそれをご紹介しましょう。インプレスe-bike部でも書かれているとおり、スポーツタイプのドライブユニットが搭載されたe-bikeは、坂を上るのが驚くほど楽な自転車。特に急な坂になればなるほど、感覚的には楽になっていきます。その一方で、アシスト上限速度があるので平地の河川敷などをずっと走るのなら、e-bikeでなくとも普通のクロスバイクやロードバイクで良いという気もします。

e-bikeなら、今まで他の交通手段では訪れることが難しかった場所へも気軽に行ける

e-bikeだからこそ出合える日本の風景がある

 そして、坂が楽なので坂のあるところばかり走っていたところ、ふと1つの発見がありました。日本の山中はあえてもの凄い山中に出向かなくても、街道から一本入っただけで坂があり、そこには今まで通り過ぎていた観光スポットがあります。特に文化的・歴史的なスポットが無数に広がっているのです。

日本ならではの田舎の景色や地形を再発見できる

 例えば、仏教寺院。修行といえば山・滝というのは何となく想像しやすいかもしれませんが、歴史に名を残す寺院になればなるほど、山深い場所にあったりします。比叡山・延暦寺、高野山・金剛峯寺、京都・三千院といった具合で、どれも山中にあるものの、寺院だけならクルマでのアクセスも容易です。しかし、周辺の修行場まで回ろうとすると、徒歩では文字どおり修行となります。クルマでも道が狭くてアクセスしにくく、モーターサイクルでのアプローチもUターンなど小回りの点で難があり、人力の自転車では坂が急すぎてグループ全員で楽しめません。

 しかし、e-bikeならある程度の道さえあれば坂道もものともせずに、その土地ならではの森林や厳かな雰囲気も味わいながら、みんなで同じペースで散策することができます。速度域がクルマやモーターサイクルほど速くないからこそ、小鳥のさえずりや森の香りを味わったり、これまで見えてこなかったことが感じられるようにもなるのです。

ちょっとした脇道の看板や、スマートフォンの地図アプリでローカルな観光スポットを巡れる

 これは別に寺院巡りに限った話ではなく、山中で中世や戦国時代の遺跡を巡って戦国武将に想いを馳せてみるというのも、e-bikeの距離感やスピード感と非常にあっていますし、今はスマートフォンを活用すれば地図だけでなく、その場で文化遺産の知識も容易に学ぶことができます。

 有名な滝のあるエリアには、実は周辺にも、有名ではないものの、それでいて味わいのある滝があったりします。そういった滝巡りをしてみるのも、またおもしろいですし、滝のあるところは基本的に急勾配の山奥。さらには、滝のあるエリアは地学的にも興味深い地層があったり、そういう地層だからこそ植生も特殊だったりして、ゆっくりと見て回ると実に奥深いのです。

脇道を数百メートル入っただけで、クルマで眺める風景とはまったく異なる世界が広がっている

e-bikeを使った「e-バウンド」で日本の魅力を再発見

 秘湯巡りや誰も知らないプライベートビーチを探すのにも、クルマではアクセスしにくいので、これまたe-bikeが便利。もちろん、山岳植物やバードウォッチング、果樹園巡りや秘境のレストラン巡りをするのもよいでしょう。

 こうしたe-bikeを使った観光の総称を私は「eバウンド」と名付けることにしました。「eバウンド」とは、e-bikeを使って、知られざる日本の魅力を再発見し、地域観光や歴史文化の認識を深める行動の総称といえばよいでしょうか。

徒歩でもクルマでも入って行こうと思わない脇道に入ると、意図しない景色が広がっていたりする(許可を得て撮影しています)

 それらの目的地となるとっておきスポットの多くは、山間部や離島など、いわゆる過疎地にあり、既に使われなくなっているインフラの再活用や過疎地振興にも繋がるのではないかと考えます。

 こうした考え方のパイロットモデルとして、メリダが伊豆半島の大仁で展開しているMERIDA X BASEで、私が監修したeバウンドの公式ガイドツアーをこの2月から週末を中心に開催することになりました。シマノSTEPS「E8080シリーズ」を搭載する最高級のe-bikeで伊豆のジオパークや文豪の足跡を巡る太鼓判のガイドツアーです。

スポーツ走行だけでなく、観光ツールとしても活用できるのがe-bike

 スポーツ走行するのも楽しいe-bikeですが、こうした観光ツールとして活用してみると、今までありそうでなかった道具だということが見えてくるはずです。ちなみに、過疎地の滝や温泉にアクセスする道は、舗装されていても既にひび割れていたりする場合が多いので、個人的にはMTBタイプのe-bikeをオススメします。オンロードメインで乗ることを考えても、eバウンドの多用途にも使えます。

e-bikeに乗って日本を再発見する旅の仕方がeバウンド

 ここまでに掲載されている写真がなんだか凄いと思ったら、現在書店で発売中の自転車専門誌「サイクルスポーツ」で私が連載しているeサイクルスポーツを読んでみるのもよいでしょう。日本のどこにこんな景色があるのか? と感じるかもしれませんが、実は東京都をはじめ関東近郊。これがe-bikeで出かけて見つけられる風景です。

 「eバウンド」に興味があるようでしたら、前述のガイドツアーに参加したり、レンタルe-bikeで出かけたり、e-bikeを購入して始めてみてもよいのではないでしょうか?

難波賢二

国際派自転車ジャーナリスト 1979年生まれ。20年近く昔のe-bikeの黎明期よりその動向を取材してきた自転車ジャーナリスト。洋の東西を問わず自転車トレンド全般に詳しく世界の自転車業界に強いコネクションを持つ。MTBの始祖ゲイリー・フィッシャーの結婚式にアジアから唯一招待された人物として知られる。