難波賢二のe-bikeアラウンド

メリダの新型e-bike4車種が発表!! e-MTB、クロス、ママチャリタイプも ~ドイツでの試乗インプレッションレポート

 メリダは7月上旬に1週間以上に渡って、ドイツ南東部の避暑地・ルーポルディングでグローバル発表会を開催しました。2020モデルでは、4種類の新しいe-bikeが市場に投入されます。

 新規投入がたった1車種だった2019モデルから3モデルも増強された背景には、市場の急速な拡大があります。メリダは、商品の企画・開発をドイツで行なっていますが、そのドイツの昨年のe-bike出荷は暫定値で98万台、確定値では100万台を超えると言われているほどです。

ドイツのルーポルディングで開催されたメリダのグローバル発表会
昨年度のドイツでは100万台を超えるe-bikeが出荷されたという

 今回発表された4モデルですが、1つ目がパフォーマンスカテゴリーとメリダが呼ぶ、本気のe-MTB「eONE.SIXTY」。日本では昨年発売された「eONE.SIXTY」のフルモデルチェンジです。2つ目が「eSpresso TK/CC」で、簡単にまたげるステップインフレーム、つまり日本の軽快車(通称ママチャリ)にも似たフレーム形状を持ったe-bikeです。

 3つ目が、フルモデルチェンジしたクロスバイクタイプの「eSpresso」。ダイヤモンド型のフレームとインチューブバッテリーを採用したSUV的なモデルです。4つ目が、29erのアルミフレームを採用したe-MTB「eBig.Nine」です。「eSpresso」よりもさらにスポーティな走りを目指したモデルです。

メリダは4種類の新しいe-bikeを発表

メリダの本気のe-MTB「eONE.SIXTY」

 メリダの2020モデルで最も注目したいのが「eONE.SIXTY」です。メリダがパフォーマンスカテゴリーと呼ぶ、本気のe-bikeです。本国では3年前、日本では昨年発売された「eONE.SIXTY」のフルモデルチェンジです(ただし、アルミフレームモデルは継続)。

 メリダが今まで発売してきた、ロードバイクを含むハイエンドスポーツサイクルにおいて、ダントツで成功したという「eONE.SIXTY」は、例えば昨年のオーストラリアでは3,000台以上が出荷されたといいます。

「eOne.SIXTY」

 今回のフルモデルチェンジでは、フルカーボンのメインフレーム、シマノ製のインチューブバッテリーが採用されています。従来モデルと同じく、ドライブユニットにはシマノSTEPSを採用。160mmのトラベルを持つ前後サスペンションを装備し、フロントホイールに29インチ、リアホイールに27.5インチの前後異径ホイールを採用した点が大きなポイントです。

シマノ製のインチューブバッテリーを採用
電源ボタン

 多くのオフロードモーターサイクルと同じく、トラクションが求められる後輪には小さい径のホイールとワイドなタイヤを装備。ハンドリングとロールオーバー性能が求められる前輪には29インチを採用したことで、理想的な走行性能を実現できたと開発責任者のレイノルド・イラガン氏は語っていました。

 実際にテストしてまず驚いたのは、ドライブユニットは変わっていないのにバイクの駆動音が静かになっていること。従来アルミフレームに反響していたドライブユニットの駆動音が静かになっているのです。カーボンフレームとインチューブバッテリーの採用により、フレーム内部の空間が少なくなったからでしょう。やはりe-bikeもスポーツサイクルなので、静かなのに越したことはありません。

 またカーボンメインフレームを採用したことで、フレームの下部にインチューブバッテリー装着用の大きな開口部を設けても、ロングストロークe-MTBとして申し分のないフレーム剛性を実現しています。これによって、サスペンションの動きを最大限に活かした走りが可能となっています。

e-bikeならではの悩みも解消し、完成度の高いe-MTB

 e-bikeでフルサスペンションのフレームを設計する際に、ドライブユニットの大きさや取り付け位置が問題となり、場合によっては、理想的なサスペンションのストローク軌跡を作りにくくなってしまいます。

 この点はシマノSTEPSを搭載することで、「eONE.SIXTY」は先代からすでに理想的な走りを手に入れています。それが大ヒットにつながったこともあり、新型モデルにも踏襲されています。ちなみにリアスイングアームはアルミ製です。

 インチューブバッテリーのメリットは見た目だけでなく、フレーム下部にバッテリーを搭載できるため、全体の重心を下げられる点にもあります。メリダは、シマノSTEPSを採用する最大メーカーでもあるため、シマノ製インチューブバッテリーでは、開発の初期段階から情報を共有してフレーム設計を行なっていたそうです。そのため、フレーム内部でのバッテリー取り付け位置も理想的な重量バランスを実現できたのだそうです。

 また、高負荷の連続時にインチューブバッテリーが熱の影響を受けないよう、フレーム上部にはヒートシンクとスリットが採用されています。さらにインチューブバッテリーは防滴仕様のため、スリットからの水滴の侵入に関しては問題ないとのことです。

インチューブバッテリーを外したところ。防滴仕様のため、スリットからの水滴の侵入に関しても問題ない

 チロル山中の特設ルートで、新しい「eONE.SIXTY」を3時間ほどテストした印象は、e-MTBとして十分すぎる完成度と言えます。というのも、160mmトラベルのフルサスペンションMTBとして十分なオフロード走破性を持ちながら、そのストロークを活かして快適な乗り物に仕上がっているのです。そして、ドライブユニットにシマノSTEPSを搭載することで、上り坂でもスポーツサイクルらしさを失わず、さらにはどんな激坂でも快適に登坂できる性能を実現しています。

 インチューブバッテリーの採用によって、先代の精悍だったデザインはさらに進化し、またカーボンフレームの走りへの影響はやはり絶大で、アシストなしでも乗っていて楽しい自転車へ進化を遂げています。

ステップインフレームを採用する「eSpresso TK/CC」

 もう1台の注目バイクが「eSpresso TK/CC」です。日本の軽快車にも似たステップインフレームを採用し、簡単にまたげるe-bikeです。乗り降りしやすい形状が特徴的で、日本の軽快車よりも遥かにしっかりしたフレームを採用。フロントサスペンションや太めのタイヤで、ツーリング用途にも使えるのが魅力です。

ステップインフレームの「eSpresso TK/CC」

 このカテゴリーの自転車は、伝統的にオランダで人気だったのですが、このタイプの自転車は重量がかさみがちなため、平坦なオランダならばまだしも、起伏のあるドイツの地形には似合わずあまり普及しませんでした。しかし、e-bikeの登場とともに年々その考えは古いものとなっているようです。少々自転車が重くてもドライブユニットを装着するため、坂道は何でもないのです。

メインチューブにバッテリーを装備
フロントサスペンションや太めのタイヤを装備する

 すでにメリダは、欧州でこのステップインタイプの「eSpresso」を発売していましたが、昨年登場したモデルからわずか1年で新形状のフレームを採用した「eSpresso TK/CC」を発表しました。昨年のモデルはバッテリーがシートチューブに装着されていたのですが、新型ではメインチューブにバッテリーを装着して重心の最適化を行ない、スポーティな走りと、さらなるステップイン性能を実現したそうです。

 この形状から、本場ヨーロッパではシニアの方も愛用しており、乗り降りのしやすさから日本の軽快車的な用途である買い物にも使わますが、シマノSTEPS搭載の登坂性能で、山岳リゾートなどの観光用で非常に広く使われているそうです。レンタサイクルやガイドツアーはもちろん、オーナーがクルマに積んでリゾート観光に使うというのがヨーロッパのスタイルです。

 実際に試乗してみると、シマノSTEPSの圧倒的なアシスト力はもちろんですが、フレームの基本設計ができているため、ハンドリングは思いのほかにスポーティで、普通にオフロードですら走れるレベルです。実際に試乗会では、標高1,500mまで上るスキー場のゲレンデに作られたMTBコースをヨーロッパの関係者は笑顔で上っていました。これがステップインフレームのe-bikeという乗り物。関係者は「自転車のSUV」だと語りますが、確かに便利でどこにでも行ける乗り物という意味でSUVなのかもしれません。

「自転車のSUV」的に扱える「eSpresso」

クロスバイクタイプの「eSpresso」

 また一方で、ステップインフレームには乗らないと決めているサイクリストも多いわけで、デザイン性とさらなる走りを求めるユーザーのためにダイヤモンド型のフレームとインチューブバッテリーを採用した「eSpresso」もフルモデルチェンジして登場しました。こちらもシマノSTEPSを採用したe-bikeで、「eSpresso TK/CC」よりも少しスポーツ寄りのSUV的なモデルです。

クロスバイクタイプの「eSpresso」

 インチューブバッテリーを採用したことで、シルエットが非常に洗練されている点が特徴です。また、フロントライトや前後フェンダー、キャリア、サークルロックなどを装備することで、コミューティングにも週末のツーリングにも対応可能なe-bikeとなっています。ダイヤモンド型のフレームを採用しているので、走ってみると極めて素直で癖のないハンドリングが印象的でした。

フロントライトや前後フェンダー、キャリア、サークルロックなどを装備

29erのアルミフレームを採用するe-MTB「eBig.NINE」

 最後にご紹介する4モデル目が、29erのアルミフレームを採用したe-MTB「eBig.Nine」です。欧州では二代目となる「eBig.NINE」ですが、シマノSTEPSのドライブユニットとインチューブバッテリーを採用したモデル。もちろん、e-MTBなのでオフロード走行が考えられていますが、「eSpresso」よりもさらにスポーティな走りのe-bikeでコミューティングしたいというユーザーのことも考えたモデルです。

アルミフレームを採用するe-MTB「eBig.NINE」
シマノ製のドライブユニットとインチューブバッテリーを採用

 ポジションはアップライトとはいえスポーティな走りを実現。ドライブユニットはシマノSTEPSを採用しているので、レスポンスに優れた意のままのアシストが感じられます。すでに日本で発売されている「eBIG.SEVEN」と比べると、欧州仕様のドライブユニットが搭載されているという点を差し引いても、やはり29erなのでスピードの乗りが良く、29erならではのハンドリングや走りが楽しめます。非常にオススメできるモデルに仕上がっています。

 同じインチューブバッテリー搭載モデルでも、「eONE.SIXTY」のバッテリー脱着には鍵が不要なのに対して、「eBig.NINE」では鍵が用意されている点も、シティライドを考慮したバイクの性格を表しているものと思われます。

e-MTBに興味がある人にはオススメのモデル

 これらのメリダの新型e-bikeですが、日本でも販売されるかは、本稿執筆時点では詳細な情報が得られていません。カーボンフレームを採用した「eONE.SIXTY」はもちろんですが、筆者が非常に気になったのはステップインフレームを採用した「eSpresso TK/CC」。シマノSTEPS+ステップインフレームの組み合わせは、坂のある観光地が多い日本での観光を革命する起爆剤になるのではないかと想像してしまいます。欧州で発表された4種類の新モデル、そのすべてが日本に入ってくることを期待したいのは筆者だけではないでしょう。

難波賢二

国際派自転車ジャーナリスト 1979年生まれ。20年近く昔のe-bikeの黎明期よりその動向を取材してきた自転車ジャーナリスト。洋の東西を問わず自転車トレンド全般に詳しく世界の自転車業界に強いコネクションを持つ。MTBの始祖ゲイリー・フィッシャーの結婚式にアジアから唯一招待された人物として知られる。