ぼくらの自由研究室

e-bikeがヨーロッパで大流行! でも電動ママチャリは存在しない!? じゃあe-bikeって何だ?

シマノボッシュといったサプライヤーが日本仕様のドライブユニットを市場投入して日本におけるe-bike元年と呼ばれている本年。でも、そもそもe-bikeって何? どこまでがe-bikeなの? どうやって充電するの? 公道走れるの? 免許要るの? と思っている読者のみなさんもいるかもしれません。

近代e-bikeの中心地ドイツの現状を紹介して、日本でのe-bikeについて考えてみたいと思います。

2010年にドイツにe-bikeが登場

まず、e-bikeという言葉の指す範囲についてですが、ドイツでe-bikeが市場に現れ始めたのは2010年ごろの話です。ボッシュがアクティブラインというドライブユニットを市場に投入したのをきっかけに、主要自転車ブランドがクロスバイクや日本のいわゆるママチャリ(軽快車)に似た形状の、フレームをまたいで自転車に乗るステップスルーバイク(ハイブリッドバイクとも呼ぶ)でe-bikeを発売したあたりから現代のe-bikeが本格的に始まったといえます。

2010年ごろのe-bike。後付けのe-bikeキット(今春に事業停止したBIONX製)を装着したe-bikeや、ステップスルーフレームの日本のママチャリに似た構造のe-bike

e-bikeという単語自体は、Electric Assisted Bicycleの略称というか愛称なので、モーターアシストの付いた自転車、そしてスロットルのついたフル電動アシスト自転車すべてをカバーします。しかし、2018年現在での一般名詞としての使われ方は、スポーツタイプの自転車にドライブユニットが装着された乗り物に対して使われる言葉となっています。

ドイツでの電動アシスト自転車のカテゴリーは大きく分けて2種類あります。最高アシスト速度25km/hまでのペダルアシスト電動自転車(通称eペデレック)と、最高45km/hまでアシスト可能なスロットル付きアシスト自転車に分かれます。

2013年にはボッシュやシマノなど各社がe-bikeドライブユニットを発売。e-bikeがサイクルショーのトレンドになった頃の台北ショーの様子

前者は日本の電動アシスト自転車と同じで、免許・税金・ナンバープレートのすべてが不要でサイクリングロードを走行可能な自転車。後者は日本の原付と同じで、免許やナンバープレートが必要で若干の税金も必要になる乗り物です。ドイツで昨年70万台の出荷台数を超えたe-bikeですが、このうちのほぼすべてが前者のeペデレックカテゴリーで、主要な自転車ブランドが発売しているe-bikeはこのカテゴリーの自転車となります。

また、日本でのいわゆるママチャリにあたる電動アシスト自転車はドイツには存在しません。世界各国の自転車メーカーの社員も日本独自の電動アシスト自転車のことを会話の中で使うときは、「eママバイク」と呼んでe-bikeと区別しています。このことからもe-bikeはスポーツ用電動アシスト自転車のための名詞と考えるのが妥当です。ちなみに、オランダに行くと日本のママチャリに似た形状のダッチバイクがありますが、そちらの電動化は平坦な国なのでそれほど盛んではなく、こちらもドイツの自転車メーカーの社員は「eダッチバイク」と呼んだりしてe-bikeと明確に区別しています。

2017年には各社がカーボンフレームなどの新世代e-bikeを投入
5000ユーロオーバーのカテゴリーのebikeが一気にブレーク
シティタイプのe-bikeも新世代ユニットを搭載したスタイリッシュなものが増えて来ました

とはいえ、この数年で市場規模が5倍近く拡大していることもあって、e-bikeという単語の指す自転車の幅が広くなりすぎたため、例えばMTBのe-bikeは「eMTB」と呼んだり、10,000ユーロが見えてくるような本気のフルサスペンションeMTBのことを、「パフォーマンスeMTB」や「FULL-E」と呼んだりしています。また、今年から市場が急拡大しているロードバイクタイプのe-bikeは「eROAD」の名称で定着しつつあります。

2018年にはシマノがE8080を国内に投入
日本国内でもe-bike時代が始まりました

ヨーロッパに続き、日本でもe-bikeがブレイクするか

日本でもスポーツサイクルが普及したこともあって、「スポーツサイクルに乗っています」とは言わず「ロードバイクに乗っています」「マウンテンバイクに乗っています」と言うのが普通です。それと同じ感覚と思えば良いのではないでしょうか?

あらゆるカテゴリーがe-bike化しており、メリダの国際発表会では半分以上の試乗車がe-bike。元祖e-bikeのステップスルータイプe-bikeも新型ユニットシマノE6100の投入によりステップインしやすくくなるなど進化を続けています。e-roadカテゴリーは新しいトレンド。イタリアでは一気にe-roadの波が来ています

さて、日本でのe-bikeという単語の扱いですが、ドイツのこうした現状を見るとシマノボッシュヤマハバーファンといった主要サプライヤーのドライブユニットが装着された「スポーツタイプの電動アシスト自転車」に対して使われて行くと思われます。

欧州リゾートのe-bikeの様子(フランス・カンヌ、ドイツ・ルーポルディング)。あらゆるカテゴリーのユーザーがe-bikeに乗っており、リゾートでのe-bikeユーザー率は9割に迫っています
子どもは24インチe-bikeで、家族全員でe-bikeで遊ぶという光景や、70歳を上回るシニア夫婦がステップスルーe-bikeで山岳リゾートを散歩という光景も普通に見かけます

ヨーロッパ全域でe-bikeを年間数百万台を出荷している本場欧州ですら、まだまだ進化の途中のe-bike。7月の1週目に開催された欧州最大の自転車ショー「ユーロバイク」に合わせて、日本のシマノが3種類のドライブユニットを一挙に投入してきたように、群雄割拠の様相のe-bike最前線は、高画素化競争時代のデジカメやiPhone 5が登場したころのスマートフォンや、4年ほど前のドローンのように、ここからが一番おもしろい時期。「体力に自信がないのでスポーツバイクはちょっと難しいかも……」と思っていたガジェットおじさんのための時代がやってきたかもしれません。今こそe-bikeを始めてみる絶好のチャンスではないでしょうか?

オーストリアのショップの様子(2018年7月)
ドイツのショップの様子(2018年7月)。トレック取扱店やスペシャライズドのミュンヘン旗艦店ですらe-bikeが店舗展示の6割を超えています。スペシャライズドストアに至っては、もうほとんどe-bikeショップの勢い

難波賢二

国際派自転車ジャーナリスト 1979年生まれ。20年近く昔のe-bikeの黎明期よりその動向を取材してきた自転車ジャーナリスト。洋の東西を問わず自転車トレンド全般に詳しく世界の自転車業界に強いコネクションを持つ。MTBの始祖ゲイリー・フィッシャーの結婚式にアジアから唯一招待された人物として知られる。