難波賢二のe-bikeアラウンド

e-MTB、クロスバイク、ミニベロ、どれを選べばいい? e-bikeでストレスフリーな通勤とアクティブな週末をゲット!!

 新元号も発表されて、いよいよ平成時代も歴史の1ページに刻まれようとしています。そして、4月といえば新生活。就職や転勤、入学といった新生活のための移動手段を探している人も多いのではないでしょうか。クルマ? スクーター? それとも自転車? 新時代にはもう一つの選択肢があります。それがe-bikeです。

e-bikeは新生活にオススメの移動手段

通勤・通学にも便利なe-bike。しかも安全で楽しい

 あらためて簡単に説明しますと、e-bikeとは電動アシストの付いたスポーツ自転車のこと。この連載でも、e-bikeは坂道を上ってこそ最も本領が発揮されると紹介してきましたが、もちろんそれだけではありません。通勤や通学にもe-bikeは非常に有効です。

e-bikeは電動アシストの付いたスポーツ自転車。写真はクロスバイクタイプのミヤタ「CRUISE」
ミヤタ「CRUISE」が搭載するドライブユニットは、シマノSTEPS「E8080シリーズ」
36V/11.6Ahの大容量バッテリーを搭載
モードや電池残量などを表示するサイクルコンピューター。HIGHモード/78km、NORMALモード/106km、ECOモード/115kmのアシスト走行が可能(※ダウンチューブ用バッテリーBT-E6010の場合)
左手近くの操作スイッチ

 例えば、通勤で複数路線を利用するとなれば、距離はそんなに長くないのに乗り換えも含めると結構な時間がかかってしまい、自転車通勤のほうが時間を短縮できそうな人も少なくないでしょう。とはいえ人力の買い物用自転車だと、途中のちょっとした坂道を上るだけでも疲れてしまったりと、朝イチのミーティングに汗ダラダラで参加するわけにもいきません。かつて学生時代に山の上にある大学へ通学するのに、必死になって自転車を漕いだ経験がある人もいるのではないでしょうか。

裏道を使った自転車通勤のネックとなるのが急な上り坂

 しかし、e-bikeであればスマートな通勤ができるだけでなく、ロードバイクやクロスバイクでの通勤のように幹線道路を中心に走らずとも、裏路地のストップ&ゴーもラクラクなので、東京のように裏道とセットでついてくる坂道も余裕でクリアできるのです。そして、結果的には過酷な“痛勤ラッシュ”ともお別れできるでしょう。

e-bikeなら急な上り坂も余裕で上ることができる。坂の途中では今まで気づかなかった新しい発見も

 以前も「e-bikeは安全」という記事を書いていますが、e-bikeはパワフルな電動アシストだけでなく、油圧ディスクブレーキによる強力な制動力、オンロードタイプを選んでもやや太めのタイヤによるグリップ、乗りやすいポジションなどを備えています。そのため、減速しやすく再発進もラクラクなので、積極的に事故の予防や安全のために止まる気になれて、様々な交通が交錯する市街地も安全にクリアできるのです。

ミヤタ「CRUISE」はフロント・リアとも、油圧ディスクブレーキを搭載。強力な制動力があり雨の日でも効きが悪くなりにくい

 そして、アシスト速度の上限があるために、漕いでいる感覚は意外とのんびりペースとなります。「ゆっくりなので楽しくない」ということではなく、e-bikeの楽しい速度で走ると、自然と軽くアシストされている20km/h前後の速度に落ち着くため、結果的に「走っていていちばん快適で楽しい」スピードに落ち着くことになるのです。

20km/h前後の速度でのんびり走ると快適で楽しいのが、e-bikeの特長

新生活を想定してe-MTB・クロスバイク・ミニベロをチョイス

 今回は新生活でのe-bike利用を想定して、e-bike部のメンバーでインプレス(東京・神保町)を出発して東京都心と臨海部を巡ってみました。いつも走っている地方でも編集部のメンバーと走ると、「ちょっと脇道の坂を上ってみましょうか?」という話になりますが、それは都心でも同様です。東京の街はアップダウンも意外と激しいうえ、また今まで行ったことのなかった裏路地のさらに“裏”を見つけて走るのは新鮮です。

神保町を出発し皇居を通過し丸の内へ
東京駅をバックに
自転車は走行禁止区域もあるので気を付けつつも、意外と入ってOKな場所もあります
愛宕神社車道の激坂もe-bikeならラクラク上れる
芝公園で東京タワーとモモの花を眺めながら一休み
徳川二代将軍秀忠が眠る台徳院霊廟の惣門
浜離宮恩賜庭園の水上バス
観光地の定番の東京タワーへ

 今回用意したe-bikeは、e-MTBタイプのメリダ「e.BIG SEVEN 600」、クロスバイクタイプのミヤタ「CRUISE」、そしてミニベロタイプのルイガノ「ASCENT e-sports」の3車種。それぞれカテゴリーは異なりますが、共通するのはシマノが欧州で展開しているフラッグシップのドライブユニットのシマノSTEPS「E8000」を、日本仕様へ最適化したしたシマノSTEPS「E8080シリーズ」を搭載している点です。

今回はe-MTBタイプのメリダ「e.BIG SEVEN 600」、ミニベロタイプのルイガノ「ASCENT e-sports」、クロスバイクタイプのミヤタ「CRUISE」で東京を走りました

 最大70Nmのトルクを発生するこのドライブユニットは、本格的な山岳地帯を走ることも考えて作られているので、街乗りには十分な性能を持っています。また、実際に街乗りしてみると、シマノSTEPS「E8080シリーズ」のドライブユニットは、出だしで唐突にパワーが立ち上がらずに自然なフィーリングで、レスポンスが非常に良いためにペダリングを止めるのでなく、踏む力を弱めるだけで即座にトルクを絞ってくれます。そのため、街乗りのストップ&ゴーで意のままに走ることが可能で、とても気持ち良いのです。

e-bikeは街乗りにも最適。シマノSTEPS「E8080シリーズ」のドライブユニットは、ストップ&ゴーで意のままに走ることが可能

通勤・通学にどのタイプのe-bikeを選ぶ?

 e-MTB、クロスバイク、ミニベロタイプのどれが通勤・通学向き? と悩むかもしれません。しかし通勤で使うe-bikeは、従来の人力のスポーツサイクルと比べて自転車のカテゴリーによる性能差や重量などがあまり関係ありません。ですので個人的には、10km以内程度の移動ならe-MTBタイプがタイヤも太くて乗り心地が良く、路面に現れる凸凹も気にせず走れるのでオススメです。週末にMTBコースに持ち込んでe-MTBならではの特別な時間を楽しんでもいいでしょう。

e-MTBタイプのメリダ「e.BIG SEVEN 600」
シマノSTEPS「E8080シリーズ」のドライブユニットをうまく収めた専用フレーム
公称容量504Whタイプのシマノ製大容量リチウムイオンバッテリーを搭載
サイクルコンピューターは角度調整が可能で見やすい
操作部はクリック時にビープ音が鳴るので分かりやすい
オフロードタイヤを装着していてもe-bikeならヒルクライムはラクラク
マニトウ製のロックアウト可能なエアサスペンションを装備
ドライブトレイン、ブレーキ関係もシマノ製で統一されている

 平らな地域で移動距離が長めなら、クロスバイクタイプは、スリックタイヤの巡航性能が効いてくるので走っていて気持ち良いです。街乗り中心だったり、新たな趣味としてサイクリングを始めたい人にはオススメです。

 そして、ミニベロタイプといえば、やはりその取り回しの良さが魅力でしょう。外出先での駐輪場の環境や自宅での保管環境を考えると、ミニベロタイプはMTBタイプよりも扱いやすいでしょう。また、見た目がオシャレなので、「デザイン重視派」の人にはぴったりかもしれません。

都市部の住宅事情にあったコンパクトさが魅力のルイガノ「ASCENT e-sports」
チェーンガード付きなのでバンドなしでも裾が汚れにくい
公称容量418Whタイプのシマノ製リチウムイオンバッテリーを搭載
定評あるシマノDEOREをドライブトレインに採用
大きなフォントで視認性に優れるサイクルコンピューターは画面の白黒反転も可能
バスケット(前カゴ)の台座をヘッドチューブに装着

東京2020オリンピック・パラリンピックの観戦にも、e-bikeは最高のツール!!

 都心部を抜けて、来年の東京2020オリンピック・パラリンピックの競技会場が多くある臨海部で豊洲大橋を越えて、脇道のオフロードを走ると見えてきたのはバレーボールが行われる有明アリーナ。さらに走ると水泳競技場のアクアティクスアリーナ。そして5kmほど走ると、海の森競技場の対岸の若洲臨海公園(東京ゲートブリッジを歩いて渡れます)。e-bikeで競技会場を巡っていると、e-bike部メンバーで合致したのが、「e-bikeがあれば来年のオリンピック観戦も最高だね」という結論。

 ちなみにこの日は約50km走りましたが、どのe-bikeもバッテリーは半分以上残っていました。モードや乗り方にもよりますが、片道10km程度の距離ならば1週間充電不要で通勤できるでしょう。

東京2020オリンピックに向けて新しく開通した都心と臨海部をつなぐ環状2号線
自転車走行可能な幅広い側道が整備されている
築地市場の整地が進む今しか見れない景色
環状2号線を走ると見えてくる新豊洲市場
選手村は晴海に建設中で、さながら10年前のドバイのような景色
今から半年ほどの間に施設の整備が一気に仕上げられるそう
新豊洲からもう一つ橋を渡ると有明。BMX競技のコースも目下造成中
体操競技会場も隣に整備される

 新生活とは直接関係ないかもしれませんが、e-bikeはクルマの渋滞や混雑した電車、そして橋や坂道にも影響されません。1日に複数のオリンピック競技会場を巡りながら観戦するスタイルには、この上ない最高のツールとなることでしょう。そのためには、ルートの綿密な予習も欠かせないので、開催まで約500日となった今こそ、e-bikeのある新生活をスタートするには絶好の時期なのかもしれません。

バレーボール競技会場の有明アリーナ。五輪終了後にはコンサートホールなどの多目的ホールとして使用される
東へ少し走ると競泳競技会場の東京アクアティクスセンターが建設中
アクアティクスセンターのすぐ近くにある辰巳国際水泳競技場。こちらは飛び込み競技などで使用されたあとに、アイススケートリンクにする話も持ち上がっている
お台場・有明方面から辰巳・新木場方面へのアクセスは、サイクリングしやすい幅広い道が整備されている
若洲臨海公園の周囲には驚くほど開けたサイクリングロードが
こうした景色に出合えるのも自転車ならでは

 e-bikeは、スポーツ問わず楽しく移動するためのツールなので、通勤はもちろん、週末にも使うことを考えて、自分のライフスタイルに合っている1台を購入するのが幸せへの近道でしょう。私が紹介しているような「eバウンド」的な使い方をするならe-MTB、もしくはクロスバイクがマッチしますし、カメラを持って裏路地の猫やカフェを探しに行く生活を夢見るならミニベロが最適でしょう。

 平日は通勤に、週末はアクティビティに。365日毎日使える乗り物がe-bikeなのです。人生がきっとより豊かになるので、この新生活のタイミングで1台いかがでしょうか?

難波賢二

国際派自転車ジャーナリスト 1979年生まれ。20年近く昔のe-bikeの黎明期よりその動向を取材してきた自転車ジャーナリスト。洋の東西を問わず自転車トレンド全般に詳しく世界の自転車業界に強いコネクションを持つ。MTBの始祖ゲイリー・フィッシャーの結婚式にアジアから唯一招待された人物として知られる。