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【基本の薬膳16】東洋医学の診断方法「四診」で、自分の体を知ろう!
2016年 9月 18日 06:30
東洋医学や薬膳では、見た目の印象に始まり、お腹を触った感じや舌の状態などを通じて体質を見ます。診断方法に沿ってチェックすると、今まで気付かなかった症状を知ることもあるので、この機会に学んでみませんか。診察の方法は大きく分けて「望診(ぼうしん)」、「聞診(ぶんしん)」、「問診(もんしん)」、「切診(せっしん)」の4つで「四診(ししん)」と呼ばれます。東洋医学ではこれらを基準に患者さんの「証(しょう・反応や症状のこと)」を見極めて、鍼灸の治療を行い、薬膳では適した食材を選んで(「五味調和」)、食べ物やお茶で体調を調え、健康な状態を目指します。
その人の見た目、顔色などから証を診る「望診」
「望診」は、まずは外側から患者さんの様子を「目で診る」方法で、体型や顔色、しっかり歩けているかなどをチェックをします。一般的にも「顔色が良くなってきたので、体調も良さそうですね」といった会話を医師と交わしますよね。自覚症状を見極める「寒」「熱」や「虚」「実」の証で挙げた体質や体型を頭に置きながら、自身の症状と照らし合わせてみましょう。東洋医学に特徴的なのは、風邪でなくても「舌」の状態を診る点で、舌全体に舌苔(ぜったい・舌の表面に付く付着物)がなく、健康的な色で鬱血(うっけつ)のない舌を正常と考えます。血の巡りが悪いと舌の色も暗く、熱がこもっていると赤くなり、舌の周囲に歯形が付けばむくみがあると診ます。
体が発する音や匂いを捉える「聞診(ぶんしん)」
西洋医学で代表的な「聞き取り」には、聴診器で胸などの音を聴くことが挙げられますが、東洋医学の「聞診」は体から発せられる音を「耳や鼻」で捉え、聴診器は使いません。患者さんの話から声のハリや大きさを聞き、口臭がある(=胃腸の不調がある場合が多い)かで病を探ります。積極的で、よくしゃべっていたら「熱性」タイプ、呼吸が早めなら「熱証」といったふうに判断し、胃内停水で水音がポチャっと鳴ったら「虚証」傾向と考えます。高熱や毒性のある病の最中や病後は「体臭」が健康体とは異なるため、特に医学が発展する前には病気の診断時に重視されてきました。
どんな症状があるか、生活習慣も問う「問診」
病院に行くと初診時に問診票を書きますが、この点は東洋医学も同じで、感じている患者さんに体調を尋ねます。自分で症状をチェックするときは、下記を参考にどこに不調があるか振り返ってみましょう。
<主な診断項目>
- 熱があるかないか、または熱っぽさがあるか
- 悪寒がするかしないか、普段から寒がりか冷えがあるか
- 口の渇きの有無
- めまい、頭痛の有無(あれば時間帯やタイミングも)
- 肩こり、腰など体の痛みの有無
- 胸のつかえを感じるかどうか
- 便の状態(便秘、下痢・あればその頻度)
- 汗の出かた
- 食欲の有無、食生活
- 仕事のストレス
- 特に気になる症状があったとき、いつから起こり、きっかけを自覚しているか
患者さんの食物アレルギーの有無や睡眠時間、月経周期、医療機関への通院状況などもここで把握します。問診の項目を知るだけでも、自分の偏りをチェックできますね。
体に触れて脈や緊張状態を診る「切診
西洋医学にも体に触れてその状態を調べる触診(しょくしん)がありますが、東洋医学では「触覚」で診る「切診」と呼ばれ、脈やお腹のハリなどを確かめます。脈が弱ければ「虚」の傾向と考え、脈から「五臓」の弱りも検知できるとされます。お腹の皮膚の厚みや弾力からは患者さんの緊張状態を調べ、特に「腹診(ふくしん)」と呼ばれます。患者さんは仰向け(あおむけ)になり、先生が胃腸の辺りを中心に上下左右に押して、凹み具合や弾力、しこりなどに気を付けながら不調を探ります。 腹壁が厚く、押して痛みがないなら「実」証と考えます。
東洋医学の診療を受けたいときは
健康ではなく、何かしらの不調や不快を感じて調和が取れていない「未病」に対して、薬膳では体に合った食べ物(薬膳)でアプローチして健康を目指しますが、症状が重く治療が必要な場合は病院を受診します。西洋医学(化学療法)を選ぶか東洋医学を選ぶかは個人の自由で、両方を取り入れる方も増えています。大学病院に東洋医学科や東洋医学診療科が置かれたり、クリニックでも漢方薬が処方されたりしますね。東洋医学の治療は主に鍼(はり)と灸(きゅう)の治療で、先生の判断で漢方薬も処方されますよ。治療を受けたい方は、有資格者(専門医)を置く治療院をお尋ねください。来週は「気虚」「気滞」、「血虚」「血瘀」、再来週は「水毒」「津液虚」に分けて体調判断をしていきます。具体的なチェックリストを使って判断していくので誰でも簡単にでき、自分の状態を把握できるので、案外楽しめますよ。どうぞお楽しみに!