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【基本の薬膳5】薬膳で「気虚」「気滞」を改善して、毎日を過ごしやすく

前回ご紹介したように、薬膳では「気」「血」「水」のバランスが崩れると、体調不良が起こると考えます。今回はそのなかの「気」に着目し、「気虚」「気滞」の状態や、薬膳による対処法を学んでみませんか。私たちが生きるうえで最も重視されるエネルギーは「気」で、体中を巡って代謝を促したり、菌から体を守る働きもします。「気」が不足したりバランスが崩れると、体の各所に不調を感じるため、薬膳で「気」のバランスを良くして、健康で過ごしやすい毎日を送りましょう。

 

必要なエネルギーが足りない「気虚」

「気」の付く言葉がたくさんあるように、「気」は、人の発育に欠かせないエネルギー(活力)です。本来必要なエネルギーが不足し、五臓(ごぞう、肝・心・脾(ひ)・肺・腎)の各所に現れる不調状態を「気虚(ききょ)」と呼びます。例えば、「気虚」が「心」に現れる心気虚の主な症状は、息切れや動悸。腎気虚は頻尿、足腰のだるさ、耳鳴りといった症状です。食べると眠くなったり、朝起きるのが辛い、風邪を引きやすい、肩こりや頭痛が続く、慢性疲労があるときは「気虚」の場合が多いので、自分の体調を知る目安にできます。「気虚」の原因は、食生活の乱れ、睡眠不足、過労、季節の変わり目、環境の変化などさまざまですが、思い当たるときは日常生活を振り返ってみましょう。とは言え、差はあるものの誰でも「虚」の症状は見られるので、過度に心配しなくても大丈夫ですよ。

 

エネルギーの循環が滞り、バランスが崩れる「気滞」

「気滞(きたい)」とは、体全体を巡るはずの「気」が行き渡らず、エネルギーの循環が滞った不調状態を言います。体の重さ、胸のつかえ、肩こりなどを感じており、イライラ、焦燥感、執着、神経質といった特徴的な感情があります。女性では、生理前のおなかの張りも「気滞」と関係すると言われます。肌質では、シミ、そばかすがあったり、肌のくすみが気になるときもあります。「気滞」は、「気鬱(きうつ)」と同義に使われることがありますが、なかでも特に不安が強かったり、気力が湧かない状態を「気鬱」と呼びます。

 

薬膳(食べ物)で「気」の不足や停滞を補える理由

東洋医学や薬膳の「気」は、3つの要素が合わさっていると考えます。

  1. 生まれ持った「先天の気」
  2. 食べ物を吸収しエネルギーに変換した「穀気(こっき)」、またはそれに水が加わった「水穀の気」
  3. 自然界の酸素を呼吸から取り入れた「精気」

このことから「気」は、薬膳(食べ物)で穀気を補い、精気が体を循環するよう運動するといった工夫をして、活力を取り戻せると考えます。

 

「気虚」「気滞」に効果のある食べ物

「気虚」「気滞」に効果のある食べ物には、疲労回復や免疫機能の向上に効果のあるタンパク質や、爽やかな芳香のある葉物食材などがあります。

 

  • 「気虚」におすすめする食材
    豆類(豆乳、納豆など)、肉類全般、卵、ニンニク、ウナギ、タマネギ、カボチャ、ショウガ、ヤマイモといった食材で、一般的なスタミナ食材も多く含まれます。

 

  • 「気滞」におすすめする食材
    イライラや不快感を改善するためには、イカ、シジミといった肝に作用する魚介類、玄米 など
    オレンジ、ミカンなどの柑橘類、杏(あんず)、セロリ、ミント、ラベンダー、ローズマリーといった香りの高い食材もおすすめです。

 

「気虚」「気滞」で避けたほうがいい食べ物

食べることで「気」を停滞させ、悪循環を招きやすい食材もありますので、「気虚」「気滞」のときには、多食を避けるようにしましょう。

 

  • 「気虚」で避けたほうがいい食べ物
    天ぷら、揚げ物といった高脂質な食べ物、氷の入った飲み物、冷たい海藻類。
    唐辛子やワサビといった刺激の強い香辛料。
    「気虚」は早食いによる消化不良でも起こるので、ゆっくり食べることを心がけます。

 

  • 「気滞」で避けたほうがいい食べ物
    冷製スープなどの冷たい食べ物や飲み物、味の濃い食べ物。
    イライラや不安感が強いときは辛い料理を避けましょう。
    「気滞」は、冷えや睡眠不足が関係している場合があるので、体を温めて休息をとるといいですよ。

 

【プチポイント】

【旬の薬膳4】で、あったかキュウリのスープをご紹介していますが、ここまでできなくても、フルーツ豆乳を試したり、サラダ用に買った海藻を市販のワカメスープに入れるだけで、「気虚」や「気滞」から遠ざかる立派な1歩になりますよ!

 

薬膳と気持ちの整理で「気」をスムーズに!

「気」は、薬膳で補えますが、精神的なストレスや衝撃の強い出来事で乱れることがあります。日々ストレスを溜めずに、なるべく楽しく、嬉しい気持ちで過ごすと「気」の流れが良くなるのは言うまでもないですね。辛いことや悲しいことがあっても、「なかったことに」して過ごそうとする方もいますが、そのときどきで感じた気持ちは、1度味わってからストレスを発散した方が、「気」の流れはスムーズになります。また、適度な運動や散歩は、血流を促進するだけでなく、リフレッシュ効果も得られるので、薬膳や自分に合ったリフレッシュ方法で健康な毎日を目指しましょう。

 

 

 

A's Pumpkin(薬膳マイスター)

日々健やかに過ごしたいと考える、おばちゃまライターです。
薬膳マイスター資格を取得、自然由来食材のエネルギーをよりよく活かすことで、ひとりでも多くの方が健やかに過ごせるお手伝いが出来ればと思っております。国際薬膳食育師3級。